空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

大失恋(9)・女の子の武器は乳や尻だけじゃアリマセン

 修学旅行の班は男女別でアズサとも基本は別行動だったけれど、普段の教室に戻れば同じ班で、しかも席も隣同士だったからね。
 何かさ、それまでレベル2の「好き好き」だったのが、その修学旅行で一気に最高レベルの「好き好き好きー」にランクアップしちまって。
 幸いと言うべきなのか、教室での席も「窓際の一番後ろ」という好位置で、だから授業なんかそっちのけで小声でずっと喋ったり、それが無理な時はノートを破ったメモを交換したりしていたよ。

 どんなことを書き合ってたか、って? まあ今時の中高校生がメールし合ってるような他愛ないコトかな。例えば「好きなモノは何?」とか、「××って、どう思う?」とか、「日曜は何してた?」とかね。
 だから授業中も教科書なんか、殆ど見てなかったね。黒沢が眺めていたのは、もうアズサの横顔ばっかりで。

 で、アズサは黒沢が渡したメモの中身によって、頬を染めて微笑んだり、桜色の唇をキュッと結んだりしながら、すぐに答えを書いて戻してくれてさ。
 アズサは色白で頬は薔薇色で、黒沢が回したメモに少し俯いて答えを書き込んでいる時、僅かに茶色がかった細く柔らかな髪が二筋か三筋、その頬にはら……っと落ちかかるんだよね。

 ……魂、その横顔に丸ごと持って行かれちゃってたよ。
 頬に落ちかかるその髪に、触れてみたい……って心から思ったし。
 いや、実はその誘惑に抗い切れなくて、ホントに触れてしまったコトもあったよ。

 黒沢の中学の席って、どのクラスも男女が隣同士に並んでいてさ。
 けどその隣り合わせになった机の距離が、並んだ男子と女子の仲や相性によってかなり違うワケ。ぴったりくっつけ合っていたり、微妙に離れていたり、或いはあからさまに離していたりとかね。
 例えばリホさんとかナカノさんは、黒沢と隣同士になった時、席をぴったりつけてくれていたな。そしてアズサと並んだ時も、席をくっつけ合っていたよ。
 だから手を伸ばせば届くどころか、殆ど肘が触れ合うくらいの距離にアズサが居たんだ。

 で、方程式の解き方を話す教師の声など軽く聞き流して、アズサの髪に指先を伸ばしてさ。
 U中の校則で決められているより少し長めの、柔らかな髪の端をそっと撫でると、アズサは薔薇色の頬をさらに染めて、口元に僅かに戸惑ったような笑みを浮かべて、そのまま好きにさせてくれていたよ。
 だからその後も黒沢は授業中にメモを交換し合いながら、時々アズサの髪を撫でたりもしてたよ。

 ただ残念ながら、これ以上のエロ展開とかは全然ナイから。
 今時の中学生とかなら、好きな女の子がいてしかも反応が悪そうじゃなかったら、ガンガン押してすぐエッチとかに持ち込んじゃうのかも知れないけど。
 でもその頃の黒沢(彼女いない歴=実年齢の田舎の中坊)としては、それで幸せいっぱい、胸いっぱいだったんだよ。
 はぁぁ……天国っ!
 本っっっっ当にもう、どーしよーもないアフォですな、この頃の黒沢は。

 しかーし! その黒沢の束の間の幸せ気分に水を差してくれる、思いがけない邪魔者が現れまして。
 マツオでアリマシタ、あの腐れ縁の悪友の。
 授業中にメモを交換し合ったり、時には髪を撫でたりみたいの、席が教室の最後列でさらに隅の窓際だったから、教師だけでなく他の同級生らにも気づかれて無かったのだけど。
 ただアズサのさらに隣の席のマツオにだけは、その様子がすぐ気付かれちゃったんだよね。

 わかりやすく言うと、アズサを真ん中に挟んで、左が黒沢で右がマツオという感じで並んでいてさ。
 で、気付いたマツオはどうしたかと言うと、冷やかすでも止めるでもなく、黒沢を真似るようにアズサの髪を撫で始めたのだ。
 黒沢のように「いろいろ話しかけて、二ヶ月以上かけて仲良くなる→今時のメル友みたいに、メモを交換し合う仲になる」というステップを踏むのではなく、マジでいきなり髪をナデナデだよ。
 それで「マツオも髪を撫でてるけど、どう思ってるの?」ってメモを回したら、アズサは「マツオって、何かホント女に飢えてる……って感じ」って。
 事実マツオに髪を撫でられている時のアズサって、黒沢の時とは微妙に違う困り顔だったんだよね。

 黒沢としては、「アズサに触んじゃねーよ!」って怒りたい気分だったよ。
 けど黒沢だってアズサの髪に「触ってる」わけだし、「何の権利があって、オレはマツオに文句をつけられるんだ?」って、ふと考えちゃってさ。
 ただ自分の感情のままに突っ走っちゃうんじゃなくて、どんな修羅場の中でもまず理屈でモノを考えちゃうのが、黒沢の生まれついての性分なんだよね。

 で、その時の黒沢の思考の流れを簡単にまとめると、おおよそこうなるかな。

 マツオがアズサに触るのは気分ワルい。
    ↓
 けどアズサに対する黒沢とマツオの立場や行動は、客観的には同じ。
    ↓
 だから「アズサに触るな!」とマツオに言える権利や道理は、残念ながら黒沢には無い。
    ↓
 ではアズサをマツオに触らせないには、どうすれば良い?
    ↓
 ちゃんと告って、黒沢がアズサの彼氏になるしかない。

 ……ホントもう黒沢の思考や行動原理って、恋愛の場面でさえ笑っちゃうくらい「感情より理屈」なんだよね。

 ただマツオだけでなく、気をつけて見ているとアズサの周りをウロついては、ニヤケた薄笑いを浮かべながらチョッカイを出して来るヤツらが複数いたんだよね。それもどちらかと言うとDQN系の、素行も人柄もあまり芳しくない連中でさ。
 そいつらについて「仲いいの?」ってアズサに尋ねてみると、まず軽い非難めいた口調で「みんなそういうコト言うんだね」って。そして微笑んで「気にしないで、ただ一年の時同じクラスだったせいで、何か絡んで来られてるだけだから」って言うんだ。

 けどそう言われても、自分の好きな子が他のヤローどもに目をつけられてたら、気にならない方がおかしいし、ただ気になる以上に心配になるじゃん。
 で、アズサの周りをウロつく、サカリのついたオスどもに尻に火をつけられるようにして、黒沢は生まれて初めて「告白というモノをしてみよう!」と決意したのでアリマス。

 好きになった子なら、それまでにも何人もいたよ。保育所の頃はナカハシさんに小学校の頃にはカナコちゃん、そして小学校の終わりから中一の頃にはセイコさんって子が好きだったし。
 前にもチョロっと触れたけれど、中二の頃にはリホさんと仲が良かった他に、一時期はナカノさんのことも「かなり好きかも」って思っていたしね。
 でもそれはみなただの「好き」か、せいぜい「好き好き」ってレベルの話で、MAXレベルの「好き好き好きー」って感情とは違っていたんだよね。
 好きだったのは事実、けどその子たちの顔が見られて仲良く喋ったりできるだけで、もう十分に幸せな気分になれてさ。だから「つき合いたい、彼氏になりたい!」とか、思ったことも無かったよ。

 いや、それは嘘デス。もし相手の女のコの方から告られたとしたら、もう舞い上がって即OKしてつき合ったと思う。
 ただその子の姿を眺めたり喋ったりして幸せ気分に浸ったり、「こんな彼女が居たら良いナ」とか夢想してニヤケたりしているだけで、自分の方から何か行動を起こそうとは、マジで思ってなかった。
 黒沢にその殻を破らせて、「好き好き好きー」のパワーで初めて告白までさせてしまったのが、このアズサだったんだよね。

 何でそこまでアズサを「好き好き好きー」になっちゃったのか……って、実は自分でも「わかんね」ってのが正直なところだよ。
 美人度ならリホさんの方が間違いなく上だったし、可愛さでは生徒会の書記で元幼なじみのカナコちゃんの方が勝ってたし、スタイルだってナカノさんやユカさんの方がスゴかったし。
 アズサと言えば、よく見れば整っているのだけれど地味顔のうちで、勉強もスポーツもかなりダメだし、さらに大人しくて声も小さくて、ホント「居ても居なくてもわからない子」って感じでさ。
 だから「二年生の時ずっと同じクラスだったのに、進級して同じ班になるまで下の名前すら知らないでいた」ってのも、前に話した通りだよ。

 性格? うーん……。
 アズサの性格なんて、実は好きになった後でさえ殆どわかって無かったくらいだよ。ただもう「大人しくて、女らしい子」ってだけでさ。
 だから「告白せざるを得ない気持ちにまで黒沢を追い込んだ“アズサの魅力”って何なの?」とか聞かれても、具体的には何も思い浮かばないんだ。
 ただ敢えて言うなら、圧倒的なまでの女度の高さ、ってトコかな。
 他のアイテム類は並かせいぜい中の上……ってトコだけれど、「防御不可の色気と艶」ってスキルをフル装備していたんだよね。

 例えば今時のJCが大人っぽいと言っても、それはただ「体が育ってる」というだけの話だよね。まあネットや雑誌とか、場合によってはAVで、エッチ関係の知識もオトナ並みに頭に詰め込んではいるよ。けど女度という意味では、はっきり言って殆どガキのままじゃん。
 色気っていうのはさ、「ただ胸とかがバーンと出てウエストがくびれてオマケに足も綺麗ならOK」ってワケじゃないんだよね。いくらカラダは大人でも、バカで下品でギャーギャー騒々しくて傍迷惑に振る舞ってるのを普段から見ていれば、同級生の男子のテンションは急降下でドン引きだってば。
 つーかさ、JCだけでなくもっと年上の成人女性も含めて、「男みたいに下品でガサツに振る舞う=媚びてなくて自分に正直でカッコイイ」みたいな今時の女の人の誤解、マジで何とかして欲しいと思うよ。

 例えばどこかレストランに、ステーキを食べに行くとしてさ。

 a)質より量で勝負のチェーン店の、サンダルくらいのデッカい肉を焼いてドーンと出した、お手頃価格のいかにもアメリカンなステーキ。
 b)やや小さめだけど見るからに柔らかそうな子牛の肉に凝った上品なソースをかけ、サイドにもポテトだの野菜の煮物だのいろいろ添えた、少々お値段は張るもののお洒落で雰囲気も良いお店のフレンチ風のステーキ。

 もしキミなら、さて、どちらの方を食べたいと思うかな?

 飢えてハラが減っててたまんない時なら、そりゃあaの方だろうさ。
 けど気合いを入れてオシャレもして料理の味を堪能しに行こうと思うなら、「bの方を」って思うんじゃないかな。
 色気もそれと同じでさ、男はただデカい乳や尻を目の前にドーンと出されれば満足……ってものじゃないんだよ。ココのあたり、特に今の女性はすごく誤解してると思う。

 そりゃ、女に飢えてて「穴があれば入れたい」みたいなオトコを捕食するんだったら、まず乳や尻だろうけど。
 そうではなくて、オトしたい男のチ○コでなくココロを掴もうと思ったら、ただ「肉をドーン!」ではダメなんだよ。素材の肉の量って言うより、料理の仕方とか見せ方とか、店の雰囲気とかの方が大切だったりするんだよ。
 で、アズサってのはまだJCの小娘にして、その自分って素材の料理の仕方と演出が、抜群に巧かったんだよね。それこそもう、その辺りの並の大人の女性以上に。

 物静かな、女らしい子……ってのが、アズサのまず最初の印象でさ。
 リアルなJCとかJKって、賑やかと言うより騒々しくて、平気で男言葉を喋るし、相手が男でも乱暴な口をきいたりするじゃん。
 でもアズサに関しては、他の女子たちのように大声で騒いだりギャハハって笑ったりするのを見たこと、ホントにただの一度も無かったよ。
 と言っても、近寄りにくいような無口な陰キャラというのではなくて、むしろいつも口角を上げ気味にして微笑んでいる感じで。そして話しかけると微笑んだまま真っ直ぐ見つめ返して、頷きながらちゃんと話に乗ってくれるんだよね。

 そしてまた、アズサは喋り方が可愛いんだ。
 と言っても、いかにも……って感じの声優さんみたいな高い声というのではなくて。
 その年頃の女の子としてはむしろ低めなくらいの、けれど本当にもう柔らかな声で、一言ずつゆっくり、囁くように喋るんだ。

 喋る言葉もいつも優しい女言葉で、他の女子たちみたいに乱暴な男言葉を喋るのを聞いた記憶って、ホントに全く無くてさ。そして普段は「ワタシ」の一人称が、フラグが立って親密度が上がってくると「ボク」に変わって……。
 このアズサの桜色の小さな唇からこぼれる、優しく柔らかな“ボク”を初めて聞いた時には、もう「萌え死に寸前!」って感じだったよ。
 そして前にも触れた例の女子同士のふざけっこ(軽いイジメ?)で脱がされかけて、セーラー服の胸当てを取られても。アズサは一言も声を上げずに唇をキュッと締めて俯きながら、頬を赤く染めて胸元を強く握り締めて耐えていて。

 ……当時のことをあれこれ思い出しながらこう話してみると、アズサのキャラって、ギャルゲーや男の子向けのマンガのヒロインそのものだよね。
 で、肌は卵のように滑らかな白で、頬はほんのり薔薇色に染まって。さらに少し茶色がかったフワフワの柔らかな髪に、やや地味ながらよく見ると整った顔立ち……と。
 こんなキャラの女の子って、リアルの世界で養殖でなく天然に存在していると思う?
 けどあの頃の黒沢はそんな疑念などカケラも持たずに、底無しの泥沼の下へ下へと、文字通りズブズブはまり込んでしまったのでアリマス。

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