空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

ニッカが造ったスコッチ、フォートウィリアム

 ボウモアやラフロイグなど、サントリーが幾つものスコッチの蒸留所を買収して傘下におさめた事は、ウイスキー好きの間では有名である。
 サントリーだけでなく、実はニッカもスコッチの蒸留所を買収している。
 それがベン・ネヴィスである。

 そして近年の日本でのウイスキー(と言うよりハイボール)人気を見てか、ニッカと親会社のアサヒビールが、そのベン・ネヴィスをキーモルトとしたスタンダード・スコッチを売り出した。
 それが今回紹介する、フォートウィリアムである。

フォートウィリアムP1100400

 瓶の裏面のラベルの説明を読んでみると、このフォートウイリアムは品質になかなか自信ありげである。
スコッチの伝統技法で作られた原酒をニッカウヰスキー社ブレンダーにより日本人の繊細な味覚にかなう、甘くやわらかでスムースな味わいに仕上げ」たと書いてある。
 そしてまた、「ストレート、オンザロック、水割り・ハイボール(ウイスキー1:水またはソーダ2の割合)でお楽しみください」と。
 千円程度のスタンダード・スコッチで、まずストレートで飲むことを勧められるスコッチは少ない。
 しかもこのフォートウィリアムは、水割りはともかくハイボールも1:2とかなり濃いめに作ることを勧めているのだ。
 これはニッカが自信を持って作った、よほど良いものに違いない。
 筆者はそう信じて迷わず購入した。

 で、キャップを開けてみるとまずアルコールの匂いが鼻を突く
 グラスに注いで軽く揺すってフレーバーを立ててみても、ただアルコールの刺激が強烈になるだけだった。
 スタンダード・スコッチも含めて筆者は数多くの外国製ウイスキーを飲んできたが、ここまでアルコールの匂いがキツいものはそう多くない。

 それでも匂いはともかくとして、味の方は良いのかも知れない。そう思い、気を取り直して飲んでみたのだが、味の方もまたアルコールが強烈で舌が痺れるほどだ。
 飲むというより僅かに唇を浸す程度にして、チェイサーで舌を潤してもアルコールの刺激が強過ぎて、とても美味しく飲めたものではない。

 裏のラベルには「甘くやわらかでスムース」と書いてあるが、断言するが嘘だ。
 甘さは他の一般的なウイスキーより弱めで、ビターでドライな味わいだと筆者は感じた。
 そして何よりもアルコールの刺激が強烈すぎて、やわらかでスムースどころか熟成の足りない若い原酒の刺々しさしか感じられない。
 これをストレートで楽しんで飲める人がいるとすれば、甲類焼酎をそのままグイグイ飲めてしまうようなかなりの酒豪だろう。

 それでもこのフォートウィリアムも、「英国政府の管理の下にスコットランドにおいて、蒸留、貯蔵、ブレンド及び瓶詰めされた」本物のスコッチだ。
 日本の安価なウイスキーによくある、原材料にはグレーンと表記しつつ所蔵ナシの穀物アルコールで原酒を希釈するような事はしておらず、モルトもグレーンも三年以上樽貯蔵したウイスキーを使用している筈だ。
 それでこんなにアルコールの刺激が強いとは、筆者もかなり驚いてしまった。
 若い。
 断言するが、フォートウィリアムに使われているモルトとグレーンはかなり若く、三年という貯蔵規定をギリギリ満たす程度のものだろう。

 で、その若いアルコールの刺激がキツいフォートウィリアムだが、トワイスアップにしてみてもまだアルコールがツンツンする。
 しかし甘さとなめらかさも少しだけ出てきて、ストレートよりは飲みやすくなった。
 ニッカのブレンダーが手がけたと言うが、スモーキー香は殆どなく、ウッディな樽香が主体のように思える。

 オンザロックも案外に飲みやすい。美味しいとは言えないが、氷で冷やすとアルコールの刺激が少し減る。そして良い意味でも悪い意味でもスッキリした味わいになる。

 ハイボールにすると、アルコールのツンツンする感じが消えてかなり飲みやすくなる。
 ただ裏のラベルでは水割りだけでなくハイボールも1:2で割るように推奨していたが、ハイボールにその割合はいささか濃すぎるのではないか。
 このフォートウィリアムは元々ビターでドライな味わいなので、ハイボールにすると冷やされることで少ない甘味が殆ど無くなり、苦味がより際立つ結果になる。
 推奨されている1:2の割合のハイボールでは、ただドライなだけでなく少し苦すぎる。
 ただこのフォートウィリアムのハイボールはドライで甘くないので、1:3~4に割って食事をしながら飲むには良いだろう。

 あと、1:2の水割りも案外悪くなかった。
 ニッカの創業者である竹鶴政孝氏は、日頃はハイニッカを1:2の水割りで飲んでいたという。
 そのハイニッカの1:2の水割りは、筆者には少しばかり水っぽ過ぎて物足りないように思えた。
 しかしフォートウィリアムの1:2の水割りは、意外なほど薄くなり過ぎずにウイスキーらしい味が残る感じで悪くなかった。
 フォートウイリアムはストレートやオンザロックではもちろん、トワイスアップですらアルコールの刺々しさを感じる。しかし1:2の水割りにするとそのアルコールの刺激が消え、それでいてウイスキーらしさもまだ残るのである。
 ただその1:2の水割りを飲む時には、ストレートやオンザロックやトワイスアップで飲む時のようにチビチビ飲んではいけない。日本酒を飲むような感じで、少し多めに口に含んでスイスイ飲むと良い。
 とは言うものの、この1:2の水割りも「飲みやすい」とは言えるものの、「美味しい」とまでは言えない。

 少し以前、当ブログを読んで下さった方から、美味しくなかったスコッチについて書くよう要望をいただいた。
 ズバリ言って、このフォートウィリアムがその「美味しくなかったスコッチ」だ。
 正直に言うが、コレを飲んだ後でジョニ赤などの定評のあるスタンダード・スコッチを飲むと、その味の違いに愕然としてしまう。
 このアルコールの刺激のキツさばかりが際立つフォートウィリアムが、日本のニッカが手がけているとは、実に残念な話だ。

 ハイボールを好んで飲む者を対象に、キリンがどんなウイスキーを飲むかを調査したところ、次のような答えが返ってきたそうだ。
「すっきりしている」
「飲みやすい」
 それでキリンは、樽香が華やかに香る、スッキリとキレのある味わいに仕上げたオークマスター樽薫るを販売したという。
 そういう意味で、「ニッカのスコッチ」フォートウィリアムも、ハイボールにして飲めば「スッキリとしてキレが良く飲みやすい」と言えるのかも知れない。
 しかし個人的には、じっくり飲むには向かない、及第点以下の二度と買って飲もうとは思わないスコッチに分類したくなってしまう。

 最後に、ウイスキーの評価をする時に気を付けなければならないのは、「開封して飲んですぐ味と香りの良し悪しを決め付けない方がいい」という事だ。
 樽の中で何年も眠っていたウイスキーは、ブレンドされ瓶詰めされてもまだ味と香りが眠っている事が少なくない。
 で、開封してグラスに注いだ直後には、主に香りと、そして味が充分に広がりきらずにまだ縮こまっている事が多いのだ。
 その長年樽の中で眠っていた香りが広がるまでには、それなりの時間を必要とする。

 試してみてほしい、ウイスキーを開封した直後と、それから数日経った後では、香りと味が変わっている筈だ。
 良いウイスキーは最初から味も香りも上等だが、程々の値段のウイスキーの場合、開封してウイスキーが空気と触れ合うことで、数日後には驚くほど華やかな香りになっていることがある。
 また、主に国産のお手頃価格のウイスキーの中には、開封直後には華やかな香りがしたのに、数日後には妙に香りが減ってしまっているものもある。そしてそれは、何らかの手法で香りを後から人工的に付けている証拠だ。

 今回話題にしたフォートウィリアムだが、筆者は「水準以下のあまり出来の良くないスコッチ」と判断した。
 しかし開封して一週間後には相変わらずアルコールの刺激がキツい駄目なウイスキーのままだったが、半月ほど経ってからはそのアルコールの刺激が少し和らいで、メープルシロップに似た甘い香りが漂いマイルドになり、飲みやすくなってきた上にコクも出てきた事も付記しておく。

 皆さんも、もしあまり香りも立たずアルコールの刺激がキツい、不味いウイスキーに出合ってしまったら。
 短気を起こして捨ててしまったりせず、数日放置してみてほしい。
 そして味を見て、まだ不味いようだったらまたキャップをしてさらに数日置いておく。
 これはダメだと諦めて処分してしまう前に、その数日置いておいてはまた味を見てみるプロセスを何度か繰り返してみてほしい。
 今回のフォートウィリアムも、ツンツンした強いアルコールの刺激の下から甘さやコクが出て来るまでに、半月もの時間を必要とした。

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コメント


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味が「開く」。

味が「開く」。

ワインにもウイスキーにも
起こる現象ですよね。

ただ2,000円未満のウイスキーで
ストレートでも何とか呑める物は
ほとんど無かったです。

ogotch | URL | 2016-10-16(Sun)14:32 [編集]


ご指摘のように、ウイスキーの香りが開くのには時間がかかる物があります。
ニッカのブレンデッドは特に、そういう場合が多く
今は終売となったブラックニッカ8年を最初に飲んだ時は、何コレ的感想でしたが、2週間ほどで驚くほど甘い香りが出てビックリしたのを覚えています。
フォートウィリアムは、5年以上前に飲んだっきりですが、普通の安ウイスキーという印象だったので、味が変わってるのかもしれませんね

KAZ | URL | 2016-10-17(Mon)07:58 [編集]


Re: 味が「開く」。

> 味が「開く」。
>
> ワインにもウイスキーにも
> 起こる現象ですよね。
>
> ただ2,000円未満のウイスキーで
> ストレートでも何とか呑める物は
> ほとんど無かったです。

 お手頃価格のウイスキーは、スコッチも含めて確かに割って飲むのが前提、という感じですよね。
 ストレートで飲もうにも、とにかくアルコールの刺激がキツ過ぎるものが大半を占めています。

 まともなウイスキーを飲もうと思ったら、二千円くらいは出さないとダメという気がします。

黒沢一樹 | URL | 2016-10-19(Wed)14:40 [編集]


Re: タイトルなし

> ご指摘のように、ウイスキーの香りが開くのには時間がかかる物があります。
> ニッカのブレンデッドは特に、そういう場合が多く
> 今は終売となったブラックニッカ8年を最初に飲んだ時は、何コレ的感想でしたが、2週間ほどで驚くほど甘い香りが出てビックリしたのを覚えています。

 ブラックニッカ8年、アレは私も初めて飲んだ時には驚きました。
 とにかくアルコールの刺激がキツくて、「コレが8年だなど嘘だ!」と腹を立ててしまいました。
 数日後に改めて飲んでみた時にも印象は大して変わらず、さらにまた1週間以上放置してまた飲んでみたら、アルコールの刺激がかなり薄らぎ、甘く芳醇な香りに変わっていて2度驚かされました。
 KAZ様のコメントに、その時の2度の驚きをなつかしく思い出しました。

 実はフォート・ウィリアムも、開封して半月ほど経ったら、「美味しい」とは言わないまでもアルコールの刺激が薄らいで、ごく普通の安ウイスキーという感じになってきました。

 

黒沢一樹 | URL | 2016-10-19(Wed)14:55 [編集]