空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

本当の非国民は誰か(沖縄高江のヘリパッド建設に考える)

「ボケ、土人が」
「シナ人」

 これが沖縄の東村高江で米軍用ヘリコプター離発着帯(ヘリパッド)建設工事に抗議活動する住人らに、大阪府から派遣された機動隊員が浴びせた言葉である。
 そしてその機動隊員の言動に対し、
「一生懸命命令に従い職務を遂行していたのがわかりました。出張ご苦労様」
 と労いの言葉をかけたのが、松井一郎大阪府知事である。

 沖縄では米軍とその基地に対する反感が強いが、沖縄の人達の反基地運動を、本土の右寄りの人達は「サヨクの一部の運動家のしている事」と見なしている。
 違う。
 10月22日のTBSの報道特集でも、TBSはヘリパッドの建設が強行されている東村高江の住人たちの家すべてを個別訪問してアンケートを取っていたが、高江の住人の大半はヘリパッドの建設に反対で、夜の十時過ぎにも米軍のヘリが轟音を立てて離着陸している現状を訴えていた。
 ヘリパッドの建設に賛意を示した高江の住人は、僅か一人であった。

 米軍の為のヘリパッドの建設に反対なのは、現地の人々の民意である。
 一部のサヨクの運動家などでは決してない。
 そしてそれらの住人に大阪府の機動隊員が浴びせた罵声が「ボケ、土人。シナ人!」であり、その行為を「一生懸命命令に従い職務を遂行していたのがわかりました」と賞賛したのが松井府知事である。

 ここで沖縄の歴史を少し振り返ってみよう。
 沖縄は、元々は日本とは違う文化を持つ琉球王国であった。
 それを薩摩藩が侵略し、明治維新後には琉球処分を強行して日本の一つの県にした。
 そして知事を始めとする公的機関の要職には、本土の者が送り込まれた。
 また、教育では標準語励行県民運動を押し進め、学校で沖縄の言葉を使った子供には、罰として方言札を首にかけさせた。

 戦争が始まると本土と軍部の沖縄支配はもっと過酷なものとなり、沖縄を「守った」我が大日本帝国軍は標準語以外の使用を禁じ、沖縄の言葉で喋る住民をスパイと見なして処分した。
 処分という意味は、もちろん「殺す」という事である。
 その一方で、島田叡知事など一部の立派な人々は別として、沖縄に戦火が近付くと本土から来ていた多くの役人が「出張」と称して本土に逃げ帰った。
 そして実際に沖縄で戦いが始まると、現地では14歳以上の中学生まで鉄血勤皇隊として軍に徴用され、その多くが命を落とした。
 さらに沖縄戦の中で、お年寄りや女性や子供を含む県民の約四分の一が亡くなった。

 沖縄戦の後、沖縄はアメリカが支配する土地となったが。
 アメリカが民主主義の国などと言うのは名ばかりで、アメリカは、少なくともアメリカ軍は沖縄で支配者として振る舞った。
 銃剣とブルドーザーで住民を追い立てて広大な基地を作り、夜は女を求めて民家に押し入ってきた。
 口では民主主義と言いながら、米軍のやり方に抗議する住民には「戦争にどちらが勝ったか、わかっているのか!?」と言い放った。

 本土の右寄りの者には「沖縄の人間は土地を基地として貸して儲けていて、基地を返されると困るのは彼ら自身だ」などと言う者がいるが、全くの間違いである。
 沖縄の人達は進んで土地をアメリカ軍に貸したのではない、銃剣とブルドーザーで追い立てられて無理に接収されたのだ。
 アメリカ軍は最初、その土地代を一括で払おうとした。
 つまりアメリカは、接収した沖縄の土地を永遠にアメリカの基地として使おうとしたのだ。
 住民たちはそれを拒み、いつか返還される日を夢見て、そしてその土地の本来の所有者は自分(沖縄の住人)である事を示す為に、土地代が毎年払われるように頑張った。
 にもかかわらず一部の右寄りの本土の者たちは、沖縄の人がカネを得る為に喜んで土地を基地として貸しているように言い立てる。

 日本人の沖縄支配も差別的なものだったが、アメリカによる支配は明らかに武力による植民地支配だった。
 だからアメリカ兵による犯罪も頻発した。
 それで沖縄は本土復帰を目指し、1972年に沖縄はアメリカから日本に返された。
 しかしアメリカ軍とその基地は、そのまま沖縄に残る事になった。

 ヘリパッドの建設に反対する住民に「ボケ、土人、シナ人!」と罵声を浴びせた機動隊員を出した大阪府と、その言動を「一生懸命命令に従い職務を遂行していたのがわかりました」と賞賛する松井府知事を支持して一票を投じた大阪府の人達に、ぜひ想像して貰いたい。
 もし大阪府に、米軍基地の七割が集中し、米軍関係者による犯罪も起き、そしてその罪を犯した米兵は日米の地位協定によって守れているとしたら。
 もし大阪府の土地の一割以上がフェンスで囲まれた治外法権の米軍基地で、深夜にも米軍機が轟音を立てて離着陸するのが当たり前の日常になっていたら。
 そんな状況の中で、さらに大阪府の自然の森を切り開き、集落を囲むようにヘリパッドが新しく建設されるとしたら。
 それでも貴方は、基地の建設に賛成できるだろうか。
 それでも「基地に反対するのは、一部のサヨクだけ」と言えるだろうか。

 貴重なやんばるの森を切り開いてのヘリパッドの建設に反対する住民に「ボケ、土人、シナ人!」と暴言を吐いた大阪府の機動隊員を「一生懸命命令に従い職務を遂行していたのがわかりました」と誉めて労う松井府知事を支持して一票を投じた大阪府の人の見識を疑う。

 問題は、松井府知事とそれを支持している大阪府民だけではない。
 2013年に、沖縄の全市町村の首長らが、米軍輸送機オスプレイの沖縄配備反対を安倍首相に訴えて、東京の銀座でデモをした。
 その際、沿道からこんな言葉が飛ばされたという。
「非国民!」
「日本から出て行け!」


 もう一度言う。
 住民の同意無しに銃剣とブルドーザーで奪われ、強制的に米軍基地にされた土地は、沖縄県の一割を越える。
 そして在日米軍基地の七割は、沖縄にある。

 米軍基地に反対する沖縄県の人をサヨクの運動家と決め付け、「非国民」だの「日本から出て行け」だのと罵声を平気で飛ばせる本土の人間に問いたい。
 貴方は自分の土地を、米軍に基地として差し出しているのだろうか?
 貴方の頭上を毎日毎晩、米軍機が轟音を立てて飛んでいるのだろうか?
 貴方の近辺に、日米地位協定で守られた米軍関係者がいて、若い女性にちょっかいを出すなどして身の危険も感じたりしているのだろうか?

 自分は米軍に土地も取られず、轟音を上げる米軍機が頭上を飛ぶ事も無く、酔った米兵にからまれたりした事も無く。
 そのくせ国防の為には米軍と沖縄の基地は必要だと言い立てて、米軍基地に反対する沖縄の人に「非国民が、日本から出て行け!」と平気で言える面の皮の厚い本土の右寄りの人こそ、日本から出て行くべき非国民であろう。

 米軍基地に反対する沖縄の人に「ボケ、土人が!」と言う機動隊員を「一生懸命命令に従い職務を遂行していたのがわかりました」と労う松井府知事と、それを支持する大阪府の人々は、沖縄の米軍基地の移転先として「ぜひ大阪にいらして下さい」と名乗り出るべきだろう。
 大阪府の機動隊員や府知事に限らず、自らの土地に米軍基地と米軍機と米兵を受け入れる気も無いくせに、自分は基地や米軍機の騒音や米兵の存在とは無関係に暮らしているくせに、沖縄の人達をサヨクの非国民扱いしている人達にもまた同様の事を言いたい。
 沖縄の米軍基地の移転先として自分の住む町を立候補させ、自らの土地もその用地として貸し出す。
 在日米軍とその基地に反対する沖縄の人達を「ボケ、土人、非国民!」などと罵るのは、まずそれからだ。


 繰り返すが、沖縄は日本の米軍基地の七割を引き受けさせられ、県の土地の一割以上が治外法権の米軍基地となっているのだ。
 こんな現状が、日本の他の都道府県で想像できるだろうか。
 それでもなお、その現状に抗議すると本土の日本人からサヨクの非国民扱いされ、大阪府から派遣された機動隊員からは「ボケ」だの「土人」だの「シナ人」だのと罵られるのである。
 そしてその機動隊員の言動を「一生懸命命令に従い職務を遂行していたのがわかりました」と誉めて労う府知事と、その知事を支持して一票を投じた人々が大勢いるのが、今の日本の在日米軍を巡る現状だ。

 一部週刊誌などの報道によれば、高江のヘリパッド建設に反対する人々の中には、「ぶっ殺すぞ!」などの暴言を吐いたり、沖縄防衛局職員をペンチで殴ったりした者もいるという。
 大阪府の機動隊員の暴言も、そうした現状があっての事なのだろうが。
 しかしそれでも、警察官が民間人の暴言にヘイトスピーチ顔負けの差別的な暴言で応じるのは、全くよろしくない。

 実は筆者の大学生時代からの友人に、今も警視庁の警官として勤めている者がいる。
 彼はテレビでよく放送される、『警察24時』などの取材も受けた。
 筆者も『警察24時』は時々見ているが、絡んでくる酔っ払いや暴言を吐く市民にも辛抱強く穏やかに対応している姿には、いつも心を痛めつつ感心している。

 で、筆者はある時、その警官の友人に「どうしてそんなに辛抱強く応対できるのか」と尋ねた。
 すると友人は笑ってそれが仕事だからと言い、さらにこう付け加えた。
「ただ暴力を振るわれたり限度を超えることをしてきたら、公務執行妨害で逮捕するから」

 そうなのだ。
 警察官は、市民を逮捕拘束できるという権力を持っているのだ。
 そうした強い立場だからこそ、限度を超えるまでは紳士的かつ穏やかな態度で市民に接する必要がある。
 高江のヘリパッドの問題でも、反対派の住民が暴力をふるうなど法に反する行為に及んだら、法に則ってただ逮捕すれば良いだけのことである。
 警察官とヘリパッド建設反対派の民間人を同等に扱い、「反対派の住民も暴言を吐いたのだから、大阪の機動隊員も暴言で応じたのも理解できる」と言いたげな、新潮社の週刊誌などの論調は筆者にはまるで筋違いに思える。

 沖縄には本土の者が体験した事の無い悲惨な歴史があるだろうし、ヘリパッド建設の強行という国の横暴を許せない気持ちもわかるが、暴力は良くない。
 だからヘリパッドの建設に反対する為にもし暴力をふるった者がいたとすれば、法に則りすみやかに逮捕すれば良い。
 ただ暴言に差別的な暴言で応じるなど、法を執行する警察官にあるまじき愚行だということは明らかだ。
 そしてその暴言を吐いた警察官を管理する大阪の公安委員会を所轄する府知事が「一生懸命命令に従い職務を遂行していたのがわかりました。出張ご苦労様」と発言する始末なのだから、松井府知事と彼を支持する大阪の人々の意識の低さには呆れる他ない。

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