空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

福徳長種類の“無銘”を飲んで考えた

 近所のスーパーのお酒売場で、無銘という200mlのペットボトル入りのウイスキーを見つけた。「そのまま飲み頃!」というのが売り文句の、最初から度数12%に薄めた、水割りウイスキーだ。
 メーカーは、博多の華などの焼酎等を製造している福徳長酒類だ。
 この福徳長酒類は、博多の華も同じ度数12%の、同じ200ml入りのペットボトルで売り出している。
 キャップの色も「そのまま飲み頃!」という売り文句も、無銘と博多の華は全く同じだ。

水割りウイスキー無銘P1100949

福徳長酒類P1110112

 で、そのまま割らずに飲める焼酎と同じアイディアで売り出されたものと思われるが。
 税込みで130円という安い値段に興味を引かれて、どんなものか試しに買って飲んでみた。

 キャップを開け、グラスに注いでも、ウイスキーとしての香りはほのかでしかない。
 それでありながら、僅かだがアルコールの臭いがするのはいただけない。
 が、飲んでみると、度数12%まで水で薄めているにいては、意外にウイスキーらしい味がする。特にウイスキーの甘い味を感じる。
 ただやはりアルコールの刺激だけが舌に残り、アフターフレーバーは残らない。

 度数12%というと、度数37%のお手頃価格のウイスキーを1:2で水割りにしたのと、ほぼ同じ度数になると思われる。
 それでブラックニッカ・クリアを1:2の水割りにして、この無銘と飲み比べてみた。
 すると意外にも、この無銘の方がウイスキーらしい味わいと甘味を強く感じた。
 ただブラックニッカ・クリアは1:2まで水で薄めると、アルコールの刺激は全くと言って良いほど感じなくなる。しかし無銘は、ほぼ同じ度数の水割りなのに、熟成していないアルコールの刺激を間違いなく感じる。

 この無銘の原材料は、モルトとスピリッツだ。グレーン・ウイスキーを使わず、モルト原酒を樽熟成ナシのただのアルコールで希釈して、更にそれを水で割って作っているのだ。
 だからそのアルコールの刺激的な臭いと味を、間違いなく感じる。

 前にも書いたが、この水割りウイスキー無銘を売り出した福徳長酒類は、麦焼酎の博多の華も水で割って同じ度数12%のものを売り出しているが。
 熟成の義務や必要の無い焼酎を普段飲んでいる方は、この無銘のアルコールの刺激が気にならないかも知れない。
 しかし少なくとも樽熟成したモルトとグレーンのみで造ったまともなウイスキーを飲んでいる人なら、この無銘のアルコール臭さと舌に残る刺激が気になる筈だ。

 筆者はこの無銘を、リニューアル以前のホワイトホースを1:2で水割りにしたものとも飲み比べてみた。
 結果はホワイトホースの水割りの方がずっと滑らかで、アルコールの刺激は全く無く、しかもアフターフレーバーもちゃんと残った。
 ただ意外な事に、ウイスキーらしい味(特に甘さ)は無銘の方がやや濃いように感じた。

 アルコールの刺激の強さは、無銘>>>>ブラックニッカ・クリア>ホワイトホースだが。
 しかしウイスキーらしい味の濃さという点では、無銘>ホワイトホース>>>ブラックニッカ・クリアという結果になる。
 一体これは、どういう事だろうか。
 無銘はまず最初に価格設定があり、ブレンドにグレーン・ウイスキーを使わず、スピリッツと称する安価なアルコールで希釈する事で原価を下げ、その分モルト原酒をしっかり使ったのだろうか。

 実は筆者は、この無銘をバーボン(ジム・ビーム)を1:2で水割りにしたものとも飲み比べてみた。
 そしたら無銘にかなり似ていたのだ、その濃い味わいと甘さが。
 それで筆者は、この無銘はバーボンを水割りにしたものかと思いかけた。
 だが無銘の原材料には、「モルト、スピリッツ」と表記してある。
 もし無銘の原酒がバーボンなら、原材料にグレーンも入っていなければおかしい。
 それで筆者は、「バーボン樽で貯蔵したモルト原酒を使用したのではないか」と推測したが、真実はどうであろうか。

 この無銘が、それなりにウイスキーらしい味を出している事は認める。
 そしていつもお手頃価格の焼酎を飲んでいる方は気にならないだろうが、樽熟成したウイスキーを飲んでいる者としては、度数12%でこのアルコールの臭いと舌に残る刺激は気に入らない。

 話は変わるが、ウイスキーの世界的な産地と言えば、イギリス(スコットランド)とアイルランドとアメリカとカナダだ。
 そして近年、日本は勝手にその中に日本も付け加え、「ウイスキーの世界五大産地」と自称しているが。
 確かに近年、日本のウイスキーの質が向上し、世界で認められている。
 ただ質が向上したのは日本の一部のウイスキーであって、日本のウイスキーすべての質が良くなったわけではない。

 皆さんは、世界で最も多くの“ウイスキー”を生産し、かつ消費しているのがどこの国か、ご存知だろうか。
 イギリス? アメリカ?
 いや、実はインドなのだ。
 そのインドが何故、ウイスキーの世界○大産地を名乗れないのか。
 それはズバリ、インドで作られて消費される“ウイスキー”の質が悪いからだ。
 10%程度の原酒をアルコール(スピリッツ)で希釈したものが、インドでは“ウイスキー”として多く出回っているのだ。
 だから生産量と消費量がいくら世界一でも、インドは他国からウイスキーの世界○大産地として認められないのだ。

 で、日本の場合はどうであろうか。
 確かにサントリーやニッカやイチローズ・モルト等、世界で高く評価されるウイスキーを造っているメーカーもある。
 しかし同時に、日本は今もなおスピリッツや樽熟成ナシの穀物アルコールで希釈した“まがいものウイスキー”も作り続けている。

 他のイギリスやアイルランドやアメリカやカナダではウイスキーの定義が法律でハッキリしていて、単純にしてわかりやすく言えば、「度数40%以上で穀物のみを使い、年単位で樽熟成したもの」しかどこの国でもウイスキーとして認めていない。
 それに比べて、「ウイスキーの世界五大産地の一角」を称する、我が日本はどうであろうか。
 日本の酒税法によれば、日本ではウイスキーは「アルコール(スピリッツ)や香料を加えたものもOK」で、しかも樽熟成の年数どころか、「樽熟成をしなさい」という規定すら無いのだ。

 このブログで、何回も繰り返し書いてきたが。
 日本の洋酒業組合の規定では、原材料のモルトは麦芽を、グレーンは穀物を意味するのだそうだ。
 だから原材料に「モルト、グレーン」と書いてあるからといって、間違いなく樽熟成してあるのだななどと信じたら大間違いなのである。
 事実サントリーは少なくとも1980年代まで、あの日本で大人気の角瓶に、樽熟成ナシのグレーン・アルコールと称するものとリキュールを混ぜていた。

 おわかりだろうか。
 廃糖蜜から作った最も安価なアルコールのみをスピリッツと称し、穀物から作ったアルコールなら樽熟成ナシでも「グレーン」で通用してしまうのだ、この日本という国では。
 そもそもウイスキーに樽熟成の規定が無いのだから、原材料に「モルト、グレーン」と書いてあってもちゃんと樽熟成を経た本物かどうか信用出来ないのが、この国のウイスキー業界の実状なのだ。

 なるほど、近年は日本のウイスキーが世界的な賞も取っている。
 しかしピンの方は良くても、キリの方はインド並に粗悪な製品が出回っている現状で「ウイスキー世界五大産地の一角」を自称するのはおこがましいと、筆者は考える。
 世界五大産地を称するなら、少なくともウイスキーの定義を他の四カ国と同一にして、「度数40%以上で穀物のみを使い、年単位で樽熟成したもの」のみをウイスキーと認めるよう、法改正すべきだ。
 法改正が無理なら、少なくとも日本洋酒業界内でそう自主規制すべきだ。
 樽熟成の規定すら無く、アルコールを混ぜてもOKという現状で「ウイスキーの世界五大産地」を自称するなど、日本人として他の四カ国に恥ずかしくないのだろうか。

 と言うと、「安いウイスキーの需要もある、それを認めないのは庶民イジメだ」と言う人も出て来るかも知れないが。
 他のウイスキーの世界四大産地、イギリスやアイルランドやアメリカやカナダの人達は、樽熟成ナシのアルコールを混ぜたまがいものの“ウイスキー”など無くとも、少なくとも何も困ってはいない。
 樽熟成ナシのアルコールを混ぜた安い偽ウイスキーが無くなって困るなら、甲類の焼酎を飲めば良い。それだけの話ではないか。

 ウイスキーには年単位の樽熟成が必要だし、樽熟成していないものはウイスキーと認めるべきではないと、福徳長酒類の水割りウイスキー無銘を飲んで改めて思った。
 廃糖蜜から作ったアルコールは、スピリッツと表示されるからまだ良いが。穀物を原料としたグレーン・アルコールは、我が日本国のウイスキーの原材料表示ではただ「グレーン」と表記されるのだから、本当にたちが悪い。
 そのただの穀物アルコールと、ちゃんと樽熟成したグレーン・ウイスキーを区別する為にも、日本のそのあたりの原材料表示は改めるべきだと思うが、サントリーやニッカなどの日本のウイスキーの大手メーカーはどう考えているのだろうか。

 日本でせっかく良いウイスキーを造っても。
 樽熟成の規定すら無く、樽熟成していないアルコールを混ぜても構わないなど粗悪な製法も許しているままでは、日本のウイスキーのイメージが落ちるばかりではないだろうか。
 筆者は別に、「お金持ちだけ飲める、高いウイスキーだけ造れ」と言っているのではない。
「安かろう、悪かろう」ではなく、安くてもそこそこ飲める製品を造る為、せめて他の世界のウイスキー四大生産国と同じレベルの製造基準が日本にも必要ではないかと、強く訴えたい。

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コメント


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最低基準じゃないっすか。(笑)

黒沢氏、法改正の意見を言い始めたんで
「厳しい提言が出るのかー?」と、
思いきや。

ウイスキー製造においての
最低基準じゃないっすか。(笑)

で・す・が。

「世界の最低基準」に照らしてさえ
「日本の法的基準」は達していない。

なんか、切ないですよね。

「世界を追いこせ!」ではなくて
「せめて最低基準くらいは……。」と
後ろ向きの提言から始めるしかない。

この日本のウイスキーに関する
法律と製品の現実は……。(涙)

ogotch | URL | 2017-01-22(Sun)13:52 [編集]


アメリカン・ウイスキー

アメリカでは樽熟成の規定すら無いウイスキーもあるはずですが?
コーンウイスキーの「ジョージア・ムーン」なんて、熟成云々を言ってる人だと卒倒しそうな代物ですよ。
なにせ長期熟成どころか、熟成30日以内を謳っているのだから。
ほとんどトウモロコシ焼酎みたいなもんです。
そんなのでも一応分類上は立派なウイスキーなわけで。
しかもアメリカはどうやらスピリッツを混ぜてもいいようです。
ウイスキーはスコッチが全てじゃありません。

774 | URL | 2017-01-22(Sun)18:02 [編集]


続き

勿論日本のウイスキーの多くががスコッチを手本にしている以上、スコッチの定義から外れているとまがい物だ!と思う気持ちもわかりますけどね。
ただ例に挙げた「ジョージア・ムーン」なんかだとほとんど樽熟成しておらず、貴方がたが忌み嫌っている「グレーンアルコール」同然ですが、それでも一応ウイスキーなわけです。

774 | URL | 2017-01-22(Sun)22:26 [編集]


自称世界の5大ウイスキーの一つですが、
日本のウイスキーが
本当に世界から認められるようになったのは
21世紀になってからです
それまでは(一部のマニアックな酒飲みを
除いて)まあインディアン・ウイスキーと
同様の目で欧米からは見られてました。

せっかく一部銘柄を外国へ輸出出来るように
までになったのですから
前世紀の法規格はそろそろ変えても良い頃合い
かと思います。

穀類以外を原料とするウイスキーも経営上の
理由から残したいというのなら
穀類のみを原料として3年以上の樽熟成必須
カラメルと水以外の添加を認めない
ジャパニーズ・ピュアウイスキーと、
それ以外のジャパニーズ・ウイスキー規格を
作ればいいと私は思います。

ジョージアムーンですが、アメリカン
ウイスキーの中でもコーンウイスキーは
熟成を必要としてないとする明確な法規格に
則ってウイスキーを名乗っています。
アメリカンウイスキー全般が熟成に関して
緩いわけではありません。

なお添加物について一番緩いのが
カナディアン・ウイスキー
カラメルどころかリキュール類の添加も
認められています。

KAZ | URL | 2017-01-24(Tue)09:43 [編集]


Re: 最低基準じゃないっすか。(笑)


> 「世界の最低基準」に照らしてさえ
> 「日本の法的基準」は達していない。
>
> なんか、切ないですよね。

 ウイスキーの定義を世界基準に合わせて、それで困る日本の大企業って、現状であるんですかね?
 まあ、最初から薄く割る事を前提にして作り、そしてハイボールを安く売る為には、樽所蔵の規定があっては困るし、安価なスピリッツも使いたいのでしょうが……。

 今のままでは、日本が言う「ウイスキーの世界五大産地のひとつ」は自称のままだと思います。

黒沢一樹 | URL | 2017-01-25(Wed)15:09 [編集]


Re: 続き

> 例に挙げた「ジョージア・ムーン」なんかだとほとんど樽熟成しておらず、貴方がたが忌み嫌っている「グレーンアルコール」同然ですが、それでも一応ウイスキーなわけです。

 ジョージア・ムーンですか。
 知りませんでした。
 勉強になりました!

 ただ、アメリカの場合、しっかり樽貯蔵したものは「ストレート・バーボン」と呼びますよね?
 ならば日本でも、樽貯蔵の最低基準を設けて、それに満たないものはただのウイスキー、しっかり樽貯蔵したものはストレート・ウイスキーとでも呼ぶようにしたらどうでしょうかね?

黒沢一樹 | URL | 2017-01-25(Wed)15:18 [編集]


Re: タイトルなし


> 穀類以外を原料とするウイスキーも経営上の
> 理由から残したいというのなら
> 穀類のみを原料として3年以上の樽熟成必須
> カラメルと水以外の添加を認めない
> ジャパニーズ・ピュアウイスキーと、
> それ以外のジャパニーズ・ウイスキー規格を
> 作ればいいと私は思います。

 全くその通りだと思います。
 樽貯蔵の規定を設けたり、スピリッツ等を混ぜるのを禁止するのが無理なら、せめて呼び名くらいは変えるべきですよね。
 4リットルのペットボトル等で安売りされている、スピリッツや樽熟成ナシの穀物アルコールなどを使われている怪しげなアレを、世界で賞を取るようなものを同じ「ウイスキー」と呼んだら、日本のウイスキーの恥になると思います。


> なお添加物について一番緩いのが
> カナディアン・ウイスキー
> カラメルどころかリキュール類の添加も
> 認められています。

 そうだったんですか、勉強になりました。
 以前、サントリーがウイスキーにリキュールを混ぜていた事から、ウイスキーにリキュールを転嫁する事に抵抗がありました。
 でもジムビーム・アップルのようなウイスキーもある事ですし、一概に「ウイスキーにリキュールを添加するのは、絶対ダメ!」とは言い切れませんね。

黒沢一樹 | URL | 2017-01-25(Wed)15:29 [編集]


この件については意見は出尽くしてると思いますが

外国メディアでも、法整備ちゃんとした方がいいんじゃない的記事が書かれたというので紹介します
あるじの小言っていう、海外のウイスキーについて
いい情報を提供してくれているBARマスターの
blogなんですがこの日の記事です
ジャパニーズウイスキーとは?
http://d.hatena.ne.jp/barvirgo/20170131

あるじの小言には明記されてませんが
元記事はこちらのようです

http://www.thespiritsbusiness.com/2017/01/japanese-whisky-needs-trade-body-and-gi/

KAZ | URL | 2017-02-09(Thu)14:31 [編集]


Re: タイトルなし

> この件については意見は出尽くしてると思いますが
> 外国メディアでも、法整備ちゃんとした方がいいんじゃない的記事が書かれたというので紹介します
> あるじの小言っていう、海外のウイスキーについて
> いい情報を提供してくれているBARマスターの
> blogなんですがこの日の記事です
> http://d.hatena.ne.jp/barvirgo/20170131

 情報、ありがとうございました。
 紹介していただいた“あるじ”さんのブログにある通り、日本が「ウイスキーの世界五大産地」を自称し、そして製品を海外にも輸出するつもりなら、やはりちゃんとしたウイスキーの定義を日本でも制定すべきですよね。
 今のままでは、国産ウイスキーは“自称ウイスキー”に過ぎないと思うのです。

黒沢一樹 | URL | 2017-02-16(Thu)14:52 [編集]