空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

残念ながら、人は事実に基づく正しい論理でなく感情によって動かされる。

 筆者は先週、「答えよりも、その結論に至るまでの思考の過程が大切」と書いた。
 しかし世の中には、思考の過程や理由より答えのみを重んじる人が多くいるのが現実だ。
 実際には、理屈や根拠抜きに答えのみを求める人の方が多いのではないかと思われる。

 筆者は父と母、それに姉の四人家族で育った。
 その中で筆者は孤独だった。
 四人の中で、筆者のみ問題に対する答えの出し方が違っていたからだ。

 例えば父と母と姉は、何事についても答えをポンと出す。
 筆者から見れば「理屈も思考も抜きかい!」と思えるほど素早く、感覚的かつ直感的に答えを出す。
 そして筆者は、それがとても苦手だった。
 答えや結論は、幾つもの根拠に基づき、それらを比較検討してよく考えた上で出したいのだ。
 そんな筆者から見れば、父や母や姉は、まるで考える前に答えが出ているかのようだった。
 そしてその父や母や姉から見れば、よく考えてからでないと答えを出さない筆者は「のろま」のように思え、さらに出した答えについて理由を説明したい筆者は「くどい」人間のように感じられたようだ。

 筆者にとって「わからない事」は、世の中に幾つもある。
 結論を出す理由や根拠が乏しいうちは、筆者にとって答えは「わからない」なのだ。
 だが父や母や姉のようにまず答えを求める人達は、その「まだわからない」という状態をひどく嫌う。
 その種の、根拠に基づく理論でなく直感と感覚に頼って結論を素早く出す人達は、「わからないという事が、わからない」のだ。
 そして直感に頼らず理論で考える筆者には、「よく考えずになぜわかるのかが、わからない」のだ。
 この「よく考え抜いて答えを出す人」と「考える前に直感と感覚で答えが出てしまう人」の間には深い溝があり、両者の議論は噛み合わず、理解し合える事は決して無い。
 その現実を、直感で素早い答えを出す父や母や姉と家族として暮らす間に、筆者は嫌と言うほど思い知らされた。

 アメリカのトランプ新大統領は、大統領に就任した直後にまたマスコミに噛みつき、そして恫喝した。
 大統領就任式に参加した人数をメディアが25万人と報じた事を「嘘だ」と言い切り、メディアに対し「代償を支払うことになるだろう」と脅した。
 トランプ大統領の就任式に参加した人数について、メディアは180万人が参加したオバマ前大統領の就任式の写真と比較するなどして証拠も示した。
 それに対する、トランプ大統領の発言は凄い。自分の就任演説に参加した者が「150万人いたように見えた」と言い、演説をした特設会場だけでも25万人いたと言った。
 ただ見ただけで「何万人いた」と具体的な数字まで断言できるのだから、トランプ大統領の“眼力”には恐れ入る。
 確かな証拠も無く、ただ己の目だけで観衆の人数を確信を持って言い切るなど、筆者にはとても出来ない。
 このトランプ大統領も筆者の父や母や姉などと同じ種類の、証拠や理論に基づいて考える前に直感と感覚で答えが出てしまう人なのだろう。
 そしてトランプ大統領は、証拠の比較写真を突きつけられても「悪質な捏造だ、デマだ!」と、黒を白だとあくまでも言い張る。

 それにしても、とにかく感情的なスローガンを繰り返すばかりで、確かな根拠や証拠に基づいた話をしないトランプ大統領の話には嘘が多い。
 例えばトランプ大統領は、選挙運動中から盛んに「アメリカは自国を犠牲に外国を潤わせた」と言ってきた。
 確かにグローバリゼーションで、アメリカの労働者は苦しんだ。
 しかし同時に、アメリカの大企業は巨額の利益を得ている。
 大統領就任式の演説で、トランプ氏は現在の治安状況を「殺戮」という言葉で表現した。
 しかし長期的なデータで見れば犯罪は減っており、この何世代かの中で今は最も安全なのだと言う。
 さらにトランプ大統領は、自国の産業界の為にか、地球温暖化についても嘘だと言っている。
 このように感覚と直感、それに自分の利益でものを言うトランプ大統領の発言には、事実かどうかのファクト・チェック(真実確認)が欠かせない。

 ただ残念な事に、トランプ大統領のような政治家の発言にはファクト・チェックが必要だと考えるのは、筆者のように「感覚や感情より、根拠や理論的な正しさが大切」と思う人だけだ。
 トランプ大統領や、彼のような煽動政治家を熱狂的に支持する人達は、いくら根拠を示し理屈で話しても「デマだ!」と頭から否定し、黒を白と言い張って聞かない。そしてその国全体が酷い状態に陥ってから、「我々は騙されたのだ」と言い逃れをする。
 かつてヒトラーとナチスを支持したドイツ人や、天皇を神と信じ「鬼畜米英をやっつけろ!」と叫んだ日本人のように。

 話を聞いてみると、トランプ大統領の発言に共感する人は、日本にも意外なほど多くいる。
 端的に言えば、自国第一主義はどこの国でも当然で、そして中国に強硬な姿勢を示しているのがまた良いのだそうだ。

 冷静になってほしい。
 同じ自国第一主義でも、どの国がそれを言うかで意味が全く違ってくる。
 例えば『ドラえもん』で、のび太やスネ夫が「ボクが第一だい!」と言い出したところで他に迷惑はかからず、やり過ぎればジャイアンにガツンと痛い目に遭わされるだけで何も問題は無い。
 だがジャイアンが「オレ様が第一だ!」と言い出したら、のび太やスネ夫ら皆が酷い目に遭い、そしてその無茶を制止できる者は誰も居ないのだ。

 同じ暴言で有名なドゥテルテ大統領の言動が大目に見られているのは、フィリピンが小国で、いくらドゥテルテ大統領が空威張りしようとも困る国は少ないからだ。
 だがアメリカは、フィリピンとは違う。
 トランプ大統領の一言で、あの世界のトヨタですらメキシコに新工場を作る計画に横槍を入れられて困っているではないか。
 トランプ氏が大統領に就任する以前から、世界が彼のツイッターでの一言に一喜一憂している。
 これでも、「自国第一主義は、どこの国でも当然」と言えるだろうか。
 どこぞの小国ならいざ知らず、世界に強い影響力を持つ大国が自国第一に振る舞ったら、それこそ“世界のジャイアン”と言うしかない状態になるだろう。

 考えてもみてほしい。
 今、中国がジャイアン的な振る舞いをしているから、日本を含めたアジア諸国が困っているのではないか。
 そこにアメリカもまたジャイアン化したら、日本はもっと困る事になる。

 確かにトランプ大統領は、中国に強硬な態度に出ている。少なくとも、今のところは。
 しかし同時に、トランプ大統領はアメリカの貿易赤字の問題で日本をも名指しして批判している。
 今、トランプ大統領が中国に強硬な態度に出ているのは、あくまでも自国アメリカの為である。それを「日本に味方して、日本を中国の脅威から守ってくれる」などと誤解して、トランプ大統領に好感を持ちその政権を支持する日本人がいるとしたら、思想信条の自由は認めるが、その人は間違いなく馬鹿である。
 自国第一主義を振りかざして中国にも強硬な態度に出ているトランプ大統領だが、だからと言って決して日本の味方でもない。ここを誤解してはならない。
 トランプ大統領は「アメリカ人を雇い、アメリカ製品を買え!」と主張しており、そして日本は対米輸出にも大きく頼っている。

 少なくとも筆者には熟慮より感情と直感に従って行動しているように見えるトランプ大統領だが、実際に大統領として職務を執行するようになれば、嫌でも現実と向き合わざるを得ない。
 メキシコ国境に塀を作るなど、トランプ大統領が選挙演説中にした公約を実現する事はまず無理だ。で、副大統領などの政治家がうまく補佐すれば、トランプ政権は案外まともな政治をするかも知れない。
 しかしそうなれば、トランプ氏を大統領に押し上げた支持者との約束を裏切ることになる。
 だから今後のアメリカは、自国第一主義を貫いて各国と摩擦を起こし世界情勢を不安定にするか、公約を曲げて支持者の怒りを買い国内が混乱するか、どちらにしろ良い方向には向かわないだろう。

 感情に訴えるわかりやすいスローガンより確かな根拠に基づく理論を重んじる筆者は、政治家の善し悪しも「これまで何をしてきて、これから何をしてくれるのか」で判断する。
 しかし多くの人はよく考えるより直感と感情に重きを置いて、実績や実際の言動より、「何かやってくれそう」という(特にちゃぶ台返し的な)期待感で一票を投じる。
 その「何かやってくれそう」という根拠の無い期待が民主的な選挙でヒトラーを生み、そしてトランプ大統領を選んだ。
 何をしてくれるのか具体的にわからないのに、公約の実現性には疑問も多いのに、ただ「何かやってくれそう」という漠然とした期待感で一票を投じ、そして国の将来を左右してしまう民衆が、筆者はとても恐ろしい。

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コメント


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感情で動く。

感情で動く。

おっしゃる通り、感情で動く人は居ます。
そして理性で動く人も居ます。

残念ながら感情で動く人の方が
圧倒的に多いです。(苦笑)

人間なんですから感情は有って
いいんですよ。有って当然。

その後「考えてみる」という
ワンステップをするか否か。

そこが、分かれ目なんですよね。

感情ばかりでもダメ。
理性ばかりでもダメ。

何ごともバランスが大事ですよ。(笑)

ogotch | URL | 2017-01-28(Sat)10:48 [編集]


人間の脳はアナログ回路

お邪魔します。
 元々人間の脳はアナログ回路で、「デジタル的に厳密解を出すのではなく、アナログ的に近似解を出す仕組み」なのではないかと思われます。例えば文字や音声の認識といった「デジタル的な厳密解が難しい」ものがありますし、近似解でも拙速を尊ぶというか必要な状況もありますが、それではまずい状況もあります。例えば「危険を感じたら早急にその場を去る・逃れる」のはある意味"本能"ですが、「車で人を轢いた場合に、轢いた相手を放置して逃げる」「振り込め詐欺でお金を払ってしまう」という事にも繋がるわけで。トランプ大統領もアナログ的思考回路で大当たりも大外しもしてきました。不動産屋の頃はそれは全て自分で負ってきたのですが、今後はアメリカ国民にもそれを負わせる事になるのでしょう。

ブロガー(志望) | URL | 2017-01-28(Sat)22:55 [編集]


Re: 感情で動く。


> 感情ばかりでもダメ。
> 理性ばかりでもダメ。
>
> 何ごともバランスが大事ですよ。(笑)

 おっしゃる通りです。
 私の場合、理にこだわり過ぎて感情を抑えすぎている傾向があるようです。

 人の気持ちが、わからないわけではないのです。
 でもつい、感情より「正しいかどうか?」という事にこだわってしまうんです。

 理性と感情のバランス、取るように気をつけます。
 

黒沢一樹 | URL | 2017-02-02(Thu)15:51 [編集]


Re: 人間の脳はアナログ回路


>  元々人間の脳はアナログ回路で、「デジタル的に厳密解を出すのではなく、アナログ的に近似解を出す仕組み」なのではないかと思われます。

 その通りですね。芸術等で素晴らしいものを作り出しているのも、理性でなく感情ですが。
 しかし本能的な感情に左右されてしまうと、人間は動物と変わらなくなってしまいます。


> トランプ大統領もアナログ的思考回路で大当たりも大外しもしてきました。不動産屋の頃はそれは全て自分で負ってきたのですが、今後はアメリカ国民にもそれを負わせる事になるのでしょう。

 トランプ政権の“大外れ”な面を、アメリカ国民だけが背負うのならまだ良いのですが。
 トランプ政権の悪い影響が日本にも及ばないよう、ただ祈るしか出来ないのがもどかしいです。

黒沢一樹 | URL | 2017-02-02(Thu)16:13 [編集]


僕も実は感情で動いてました。

実は僕もこの間まで感情論ほぼ一択で動いてました。

けど日本だとこれに加え、空気を読むだとか人柄がいいとか他人からの評価が加わる。空気が読めない僕は何度も組織で村八分にされ続けました。

そういう経験から感情論で動く事の馬鹿馬鹿しさと他人の印象だけで人間を測るこの国の風潮に厭きれました。

僕は一樹さんのようにロジカル思考を凝らした文章は書けませんが、それでも自分の頭で考える事の正しさを知りました。

自分の頭で考えようとしない人間との溝が深くやきもきさせられる人間で溢れてますが、それでも自分らしく生きたいです。

独立不羈 | URL | 2017-10-05(Thu)17:46 [編集]


Re: 僕も実は感情で動いてました。

> 日本だと、空気を読むだとか人柄がいいとか他人からの評価が加わる。
> 感情論で動く事の馬鹿馬鹿しさと他人の印象だけで人間を測るこの国の風潮に厭きれました。
> 自分の頭で考えようとしない人間との溝が深くやきもきさせられる人間で溢れてますが、それでも自分らしく生きたいです。

 私、空気とやらを読めないわけではないんです。
 幼い頃に引っ越したとか、父親が商売が好きで景気の良い時と悪い時(破産)とで収入の不安定な家庭に育ったとか、まあいろいろありまして、周囲の空気には敏感にならざるを得ませんでした。
 けれど、小さい頃から偏屈者だった私の頭の中の価値観は、常に「正しい事>空気や皆の意見」だったんです。
 だから読めた空気を、あえて無視して自分を押し通そうとしてきました。
 で、良くて変わり者扱い、悪ければボコられるという人生を送ってきました。
 そして正しい事を言って“皆の空気”に圧し潰されるという事を繰り返せば繰り返すほど、「空気を読んで周りに合わせるなど馬鹿らしい」という思いが強まる一方で、偏屈を通して生きています。
 辛くないとは言いませんが。
 でも私にとっては、空気を読み皆に合わせて自分を殺して生きる方が、ずっと辛いんです。
 偏屈者扱いされても自分らしく生きること、大変ですけれどそれなりに楽しいです。

黒沢一樹 | URL | 2017-10-11(Wed)01:54 [編集]