
性犯罪の罰則を強化する刑法改正案が、この3月7日に閣議決定された。
その刑法改正案の骨子は、以下の通りである。
強姦罪と強姦致死傷罪の法廷刑の下限を引き上げる。
強姦罪の加害者と被害者の性差を無くす。
強姦罪や強制わいせつ罪などを非親告化。
強制わいせつ罪などで処罰される行為のうち、悪質性の高い一部の行為を強姦罪で罰する。
18歳未満の子供に、父母などが影響力に乗じて性交やわいせつ行為をした場合の罰則を新設(罪の成立に暴行や脅迫は不要)。
強姦罪の名称を「強制性交等罪」に変更。
男である筆者から見ても、どれも納得できる当然の改正である。
あまり知られていないことだが、強姦と強制わいせつはこれまで、被害者が告訴して初めて罪に問われることになっていた。
性犯罪に逢った被害者の中には、自分が事件に遭ったことを知られたくないあまりに、被害を受けても泣き寝入りする人もいた。
だから性犯罪に関しては、事件をたとえ警察官が目撃していても、被害者が「処罰して下さい」と言わなければ、加害者は逮捕もされなかったのだ。
それが非親告罪とされ、事件が起きれば被害者が申し出なくても処罰されるようになるのは、とても良いことだと筆者は考える。
また、現在は女性から男性に対するセクハラ等もあるし、同性間における性犯罪もあるだろう。
だから強姦罪や強制わいせつ罪は「男が女性にするもの」という固定観念から脱却し、性差なく性犯罪が成立するように変更したのもまた、至極当然のことである。
父母など、つまり保護者が18歳未満の子供に性行為を迫るのを罰則を新設して禁じたのもまた、親や義理の親による性的虐待が問題になっている今日、とても良いことだと思う。
それにそもそも、強姦いう言葉には、文字から見ても「男が女性にするもの」というニュアンスが込められている。
しかし現実には、男性がゲイの性犯罪者に襲われる場合も、男性が女性にわいせつ行為をされる場合もある。
だから強姦罪の名称を「強制性交等罪」に変えるのも、当然のことと言えよう。
筆者はこの性犯罪に対する刑法改正案を、実に良いことだと思ったが。
だが性犯罪に遭ったと訴える女性たちは、これでもまだ不満なのだそうだ。
その被害者によると、被害に遭った時に「体が動かず思考が停止するといった、凍りつく(フリーズする)身体的反応が出ること」が考慮されていないからだそうだ。
つまり一部の女性たちは、強姦罪の成立に暴行や脅迫の存在が必要とされ、被害者が抵抗しなければ罪に問われないことに異議を唱えているのである。
彼女らの希望は、「抵抗しなくても、心で嫌だと思っていれば強姦で相手は有罪」ということなのだそうだ。
筆者には年子の姉がいた為、少年マンガだけでなく少女マンガも読んでいた。
その姉が読んでいた少女マンガに、こんな場面がよくあった。
仲良くなった男女がいて、そして男の方が女の子にこう聞く。
「キス、してもいい?」
すると女の子は機嫌を損ねるのである。
「そーゆーことは、聞くんじゃなくてムードで察して黙ってやって!」
キスだけでなく、それ以上の行為も聞いて許可を取ってからするのは「ムードを台無しにする、ダサい行為」で、雰囲気を読みその場の流れでするのが、筆者が読んだ少女マンガやハーレクイン・ロマンスなどの恋愛小説の常道だった。
「なあ、キスしていい?」
「胸に触っていい?」
「セックスして、いい?」
少なくとも筆者が読んだ女性向きの恋愛マンガや恋愛小説には、いちいち確かめるイケメンは一人もいなかった。
ここで断っておくが、強姦や強制わいせつは「見ず知らずの相手に、いきなり」というのではなく、相手は同じ職場や学校などの顔見知りの知人によるものであることが多い。
で、二人はそれなりに仲も良く、少なくとも男の方は良いムードだと思っている。
そして「○○、しても良い?」といちいち相手の女性に聞いて確かめるのはムード台無しのダサい行為で、だから黙ってキスをし、相手の女性も黙ってされるがままになっていたから押し倒した。
そしたら後から「強姦された! あの時は抵抗しなかったけど、フリーズして体が動かず思考が停止してたのよ!」と警察に訴えられたのでは、男は怖くて女性を口説く事も出来なくなるだろう。
「○○、しても良い?」といちいち尋ねる男はダサいし、ムード台無し。
そう女性に言われるから黙って押し倒したら、抵抗されなかったのに強姦罪で告訴される。
これではホント、男は女性に手も出せなくなってしまう。
女性はすぐ「雰囲気で察して」と言うけれど、言わずにすべて察することが出来るくらいなら、言葉なんて要らないよね。
人間、それぞれ感じ方も考え方も違うし、言わなければわからない部分も間違いなくある筈だ。
暗い夜道で、一面識も無い女性に襲いかかって性交するのは、もちろん間違いなく強姦だ。
しかし顔見知りで、しかもそれなりに親しい仲で、それで「そろそろ、そういう仲になっても良いかな」と思って手を出して押し倒し、抵抗されなかったからコトに至ったら「襲われた、強姦だ!」と言われるのでは、男は本当に草食化するしか無いデスよ。
だから性犯罪の罰則を強化する一方で、「強制性交等罪」の成立に、暴行や脅迫の存在を必要とする規定が残されたのは尤もな事だと、筆者は考える。
筆者は決してモテるタイプではないけれど、姉の少女マンガや恋愛小説も読んでいたから、いちいち「○○、して良い?」と尋ねること無く、ムードを読んで黙って手を出していたけれど。
それでも相手の女性を傷つけてしまうのが怖くて、そっと大事に扱ったつもりだった。
そしたらある女性に、かなり後になってこう言われたよ。
「貴方の愛撫は優しすぎて、印象が薄いのよね」
……口に出して言われなければわからない事って、本当にいろいろあるのだ。
嫌だと拒否する相手に行為を迫るのは、もちろん犯罪だが。
しかし何をするにも、男がいちいち「○○、しても良いデスか?」と女性の許可を取らなければいけないような恋愛も、何か味気なくムードに欠けるように感じないだろうか。
親しくなった女性と行為に及ぶ場合、たいていの男は「拒否されなければ、次に進もう」と考えていると思う。
だから拒否も抵抗もされずに最後までして、その後で「ゴーカンされた!」と訴えられたら、男は本当に困ってしまう。
その、性犯罪の被害者女性や弁護士たちの言う「思考が停止して体が動かなくなる」というフリーズという状態まで考慮して女性に接しなければならないとすれば。
それこそいちいち「○○、しても良いデスか?」と確かめるダサ男になるか、自らリードするのを放棄して女性から誘われるのをひたすら待つ草食男になるしかなかろう。
拒否して抵抗する相手に性交を強いるのは、もちろん良くないし犯罪だ。
しかし暴力もふるっていないし脅しもしていないのに、何でもかんで「性犯罪だ!」と叫んだら男は萎縮するばかりだし、非婚化と少子化がますます進む結果になるのではないだろうか。


