空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

隠れた名作ゲーム『おかえりっ!』

 黒沢は自他ともに認めるゲーム好きだけど。
 ギャルゲー以外にも、普段はできないことを疑似体験できるシミュレーター系のゲームも、好きでかなりやってるよ。
 有名どころでは『電車でGO!』とか『エースコンバット』とか、一時期はかなりハマってやりこんじゃったなー。
 あと、黒沢はミリオタの傾向もありマスから。FPSの名作『ゴーストリコン』のシリーズはすべて揃えたし、知る人ぞ知る『パンツァー・フロント』にも深くハマって、第二次世界大戦中の有名な戦車に乗って、戦史に残る戦場に“出て”みたりしてね。

PANZER FRONT bis.PANZER FRONT bis.
(2001/02/08)
PlayStation

商品詳細を見る

 でもね。そんな黒沢でも自動車系のゲームにだけは、どうしてもハマれなかったな。ほら、実在する車に乗って、首都高とか有名な峠道やサーキットでタイムアタックする……みたいな。
 例えば『グランツーリスモ』のシリーズなんか、ゲームとしては確かにすごく良く出来てるとは思ったよ。
 けど実際に免許を持っていて、首都高もいろんな峠道も走ったコトのある黒沢としては、どうしても「違うな」って感じてしまう面があってさ。

 白状シマス、黒沢はただ免許があるだけでなく車を運転するのも大好きでさ。で、飛ばせる道があるとつい血が騒いでしまって、特に峠道では「いかに減速せずにキレイにカーブを曲がるか」ってコトに熱中してしまうのデス。
 ハイ、おかげさまでスピード違反で切符を切られたコト、一発免停も含めて複数回あったりシマス。
 こんなバカ野郎だけに、車関係のゲームはどれだけ上手に作ってあっても、車の動きやら操作やらいろいろな点で、「実際と違う」って違和感を拭えなくて楽しめないんだよね。
 だから黒沢は、「車関係のゲームは、まだ免許のない運転未経験者が楽しむもの」って思ってる。
 同じようにプロの電車運転士は『電車でGO!』の電車の動きに違和感を抱くだろうし、実戦経験のある兵士でFPSゲームを楽しめる人はまず居ないだろうと思う。

 黒沢が『パンツァー・フロント』で憧れのドイツ軍の戦車に乗って、仇敵ロシア軍と戦うのにハマれたのも、実際に戦車に乗ったことも本当の戦場に出たことも無いからだと思う。
 戦闘機での空戦や、特殊部隊の兵士として最前線で戦うゲームをリアルに感じて楽しめたのも、それは黒沢がそのセカイを現実には未体験だったからでさ。
 ……うん、だからね、知らないからこそ楽しめて、詳しく知っているほど醒めてしまう」ってコト、残念ながらけっこうあるんだよね。

 それはゲームだけじゃなくて、小説やドラマなどでも同じだよ。
 例えば「日本中を旅しながら事件を解決して回る刑事」のミステリーとか、実際の警察官から見たら噴飯モノだろうしね。
 って言うか、刑事モノのドラマって、ホント現実とは違うものばかりだし。
 あと、教師を描いたモノもヒドいのが多いね。あの『金八先生』でさえ、現場の教師達は「あれだけ特定の問題児にだけ関わり合っていて、いつフツーの仕事をしているんだろう?」と呆れていたし。ぶっちゃけ「教師の仕事はこんなヒマじゃねーよ」と
 時代劇も似たようなもので、歴史に詳しくなればなるほど、ツッコミたい部分が増えてしまうのが現実でさ。「こんなのあり得ない、コレは絶対違うから!」って。

 結局さ、ゲームも小説もドラマもマンガも、創作モノってのは想像による産物なワケじゃん。で、現実を知らないからこそ、その想像力が自由に働くんだよね。
「現実をよく知ってる」って、創作者にはある意味すごく辛いことでね。刑事や教師の仕事の中身や、史実を詳しく正確に知れば知るほど、創作する上で「そんなコトあり得ない」って事実が頭の中に増えて行っちゃうんだよね。
 知らないからこそ好きに書けて、逆に詳しいから自由に書けなくなっちゃう……ってのが、ゲームや小説やドラマやマンガも含めたお話作りの現実なんだ。

 だからさ、ギャルゲーでも同級生たちはともかくとして、教師には特にリアル感の無いキャラが多いように思う。何かいかにもステレオタイプな、パターン化された漫画的なキャラが多くてさ。
 それでもゲームに出てくる教師が、脇役レベルならまだ良いんだけどさ。攻略対象のヒロインの一人だったりすると、頼りなさ過ぎる上に女度が妙に高い、教師として絶対あり得ないヒトばっかりで。
 またさー、「主人公(♂)が教師」ってギャルゲーもあるけれど、まー制作者が教師の仕事や実態を知らな過ぎと言うか、明らかに「あり得ねー!」ってわかるメチャクチャな“先生”ばかりなんだよね。
 って言うか、ギャルゲーで主人公が教師の場合、攻略対象は当然教え子の女生徒、ってコトになっちゃうからね。そもそも設定自体がモラルに反しているわけ(犯罪?)だから、破天荒で無茶な教師でなきゃゲームにならないんだろうけどさ。

 実は黒沢の親戚には教師が複数おりまして、まず母方の祖父が教師で、伯父伯母や従姉妹にも教師がいてさ。
 って言うかそもそも黒沢の家系には、教師や公務員がかなり多くてさ。それだけに写真家志望で堅気の仕事に背を向けてきた黒沢は、一族の中では昔から鬼っ子みたいな存在だったよ。
 でもだからこそ、教師の仕事や実態については、黒沢は一般のヒトよりかなり詳しいと思う。
 それだけにねー、ドラマでも小説でもゲームでも、その中に描かれる教師について「ありえねー!」って呆れたりシラケてしまう場合が少なくないんだ。例の「自分が車の運転が好きで、実際に峠道を攻めて走ったコトがあるだけに、アラが目について車(レース)関係のゲームが楽しめない」ってのと、全く同じ理屈でね。

 そんな黒沢を夢中にさせてしまった、とっても素晴らしい出来の「主人公が教師」ってゲームが二つほどありまして。
 ズバリ『おかえりっ!』と『はるのあしおと』デス。
 このうち『はるのあしおと』については、新海誠氏が手掛けた素晴らしいオープニングのアニメについても含めて、章を改めて詳しく語りたいと思ってマス。で、今回はまず『おかえりっ! ~夕凪色の恋物語~』について紹介するね。

SIMPLE1500シリーズ Vol.81 THE 恋愛アドベンチャー~おかえりっ!~SIMPLE1500シリーズ Vol.81 THE 恋愛アドベンチャー~おかえりっ!~
(2001/12/20)
PlayStation

商品詳細を見る

 この『おかえりっ!』は、もういろんな意味で不遇なゲームでね。
 まずゲーム機は既にプレステ2の時代になっていた2001年に、旧規格のプレステのゲームとして出された事。
 それも“SIMPLE1500シリーズ”っていう、とにかく低価格がウリみたいなお手軽企画のゲームでね。
 どれだけ安かったかって、ハイ、シリーズのどの商品もズバリ1500円だよ。
 で、ジャケ絵もショボくて安っぽい上に、タイトルもすごく投げやりだったんだよね。シリーズを通して、『THE シミュレーション』とか『THE シューティング』みたいな感じでさ。
 だからこの『おかえりっ!』も実は下に小さくわかりにくく書いてある副題で、ホントのタイトルは『THE 恋愛アドベンチャー』なんだ。

 ……購入意欲がそそられると思いマスか? こんなんで。
 例のニトリのキャッチフレーズは「お値段以上!」だけどさ、この“SIMPLE1500シリーズ”はどう見ても「お値段通りかそれ以下」という印象しか持てなかったよ。
 だからこの『おかえりっ!』も話題にされることすら無く、存在すら殆ど知られてなかったのではないかな。
 実際、黒沢もこのゲームはかなり長いことスルーし続けていてさ。で、発売されてから数年が経ち、未開封の新品が在庫処分のような形で、僅か五百円で叩き売られてるのを見て、「コミックスを一冊買うのと同じと思えば安いものだ」と思って、つい衝動買いしてしまったのでアリマス。

 とぉころが!
 冷やかし半分の試しのつもりでプレイしてみたら、ホント止められないの。話の続きが気になって、面白すぎて。
 何しろまず、ヒロインの“中の人達”がスゴくてさ。主な人たちだけでも、坂本真綾さんに川澄綾子さん、そして池澤春菜さんといった具合でさ。
 さらにキャラデザと原画は只野和子さんだし。
 でさ、プレステ2に慣れた者からすると、旧プレステの画質って明らかに荒かったりするじゃん。けどこの『おかえりっ!』は、絵もかなりキレイだよ。

 まっ、ウルサイ事を言えば多少紙芝居っぽい部分もあると言うか、本物のプレステ2のゲームに較べれば僅かに劣る部分もあるんだけどさ、他の旧プレステ規格のギャルゲーより段違いに良いよ。
 ジャケットの裏面に「高画質モードでの表示を実現!」と書いてあるけれど、確かにその看板に偽りナシだったね。
「プレステ2と全く同じ!」とは言わないけれど、殆ど同じような感覚でプレイできると思う。
 そうそう、旧プレステのギャルゲーには操作性に難があるモノも少なくないけれど、コレはものすごく快適だよ。オートプレイはもちろんあるし、早送りやバックログ等も使い易くて、その点でも「プレステ2レベル」って言えるかな。

 モチロンね、いくら中のヒトが良くて絵がキレイで操作性も快適でも、肝心のストーリーがつまらなかったら“クソゲー”と言わざるを得ないよ。
 でもこの『おかえりっ!』は、そのストーリーもかなりよく練り込まれていて面白いし、各ヒロインも魅力的でさ。
 もうね、こんな良いゲームが安売り用のショボいシリーズにあったなんて、大勢に見向きもされずに踏みつけられている道端の砂利の中に宝石を見つけたような感じだったよ。

 で、ストーリーの概要をざっくり言えば、「主人公は教員志望の大学生で、教育実習の為に故郷に帰り、いろんな女のコたちと出逢って……」って感じなんだけど。
 と言うと、きっと「母校の高校に帰って、教え子の可愛いJK達や、憧れていた美人女教師とイチャイチャ、ウハウハ」みたいな感じを想像しちゃうんじゃないかな。
 でも違うんだ、主人公が教育実習に行くのは、小さな離島の小さな小学校でさ。
「えっ、じゃあヒロインはJSかよ!」って?
 いや、イヤイヤイヤ、そんなロリペド方面の犯罪な展開はもっとナイから! 主人公はその小さな島の小さな小学校で、ホントに真面目に教育実習を頑張るんだってば。

 まず主人公は、教育実習の為に故郷の島へ帰る船のデッキで、ナゼか不機嫌&ワケあり風のJKと出逢って。コレがヒロイン①の藤崎晶サン。
 で、島に着いた主人公を出迎えて、赴任先の小学校に連れて行ってくれるのが、ヒロイン②で養護の先生の高倉波美サン。
 主人公の生まれ故郷はその島なんだけれど、実は中学に上がる前に引っ越してしまっているんだ。それで実習の間は、かつて家族同然に親しくしていた近所の一家(民宿経営)にお世話になることに決めていて。で、そこの娘さんで主人公とも幼なじみなのが、ヒロイン③の篠原渚さん。

 ところでその島は本土と離れた小島だけに、昔ながらの風習や因習もかなり残っていて。そしてその島をずっと支配している一族の一人娘なのが、ヒロイン④の姫神澪サン。
 ちなみに島には姫神家の支配に不満を持って、「古い因習はヨクナイ! 島を改革すべきだ!!」と叫んでる“抵抗勢力”がいて、そのリーダーが主人公の幼なじみの篠原渚嬢のお父上だったりシマス。
 当然、その篠原家に世話になっている主人公は、本人の意思に全く関係なく改革派の仲間のように思われて、姫神家とその配下からは「シノハラの手先」と敵視されるコトに……。

 で、島は姫神家と改革派(抵抗勢力?)の間でモメているのだけれど、そんな情勢に全く関係なく遺跡の発掘に熱中している浮き世離れした変人の考古学者がいて、その娘さんがヒロイン⑤の板東光サンでアリマス。
 ……というコトで、主人公はホントに生徒には手を出したりしてナイから。まっ、結果的にJKとも恋愛したりするけれど、教え子ってワケじゃないから(未成年者に対する淫行に当たるかどうかは知らないけれど)道義的には一応セーフだよね?

 このゲーム、最初はド田舎の離島で教育実習に奮闘するみたいな、のどかな雰囲気で始まるのだけれど。ストーリーが進むに従って姫神家と改革派の対立が深まって、けっこうドロドロした部分が出て来てさ。
 姫神家ってのも「江戸時代か!」って感じの因習に満ちた古くさい面もあるんだけど、一方“改革派”の篠原家のお父さんも、本土の黒い勢力と結んで島の利権を狙っていたりして一筋縄では行かないんだよ。
 また、あるヒロインを好きになると、実は異父兄妹だった」なんて衝撃の事実が発覚する……みたいなドロ沼展開も待っていたりするし。
 だからこの『おかえりっ!』って、ある意味キレイ事やハートウォーミング系の話では済まさない、「修羅場もアリの、大人のプレイにも十分耐えるゲーム」と言えると思う。

 ただね、他のヒロイン達はみなフツーの女の子だけれど、姫神澪サンだけはちょっと違っていて。
 孤島を支配する家の一人娘として深窓で大事に育てられたせいで、浮き世離れしていて世事に疎いというだけでなくて。手で触れて念を送るだけで病や怪我を治せるとか、未来に起きる事が読めるとかの、不思議な力の持ち主でもあるのデス。
 まっ、巫女的な存在とでも言いましょーか。
 だからこの澪サンのルートには、他のヒロイン達のルートと違ってファンタジー色がけっこう混ざってマス。それも子供騙しのような甘いファンタジーではなく、けっこう泣ける系の悲しいお話だったりするんだ。

 澪サンは島の奥で純粋培養で育てられた子だけに、ホントに素直な良い子でさ。ただこの澪サンの“不思議な力”ってのは、澪サンの体にすごく負担をかけるんだよね。そして澪サンは元々体が弱いだけに、その力を連続して使うとそれこそ命にかかわる……みたいな。
 けど主人公にかかわったせいで、澪サンはその力を度々使わざるを得なくなって……。
 実際、黒沢もこの澪サンルートを初めてやって、いろいろ頑張ったにもかかわらずバッド・エンドを出してしまった時には、流石に泣きはしなかったけれど、ただ呆然とエンドロールを虚ろな目で眺め続けて、ホントに暫くその場を動けないほどだったよ。
 実際にプレイしてみればわかりマス。澪サンのルートのバッド・エンドは、マジで心にズシッと来るから。

 この澪サンのエンディングは、何と四通りもあるのだ。ハッピー・エンドと、かすかな希望を残したバッド・エンド(ノーマル・エンド?)、そして悲しくて救いのないバッド・エンドが二通り……と。
 でもね、不思議なことに黒沢の心に最も強く残って感動させられたのは、その悲しすぎる最悪のバッド・エンドだったよ。ゲームが終わっても暫く椅子から立ち上がれなかったくらいショックだったんだけど、ホントに心を揺さぶられてさ。
 澪サン自身は戻って来ないのだけど未来に希望も残したバッド・エンドもまた、悲しいけれどキレイなエンディングで心に残ったよ。
 そのバッド・エンドの衝撃を心に受けた後では、本来のハッピー・エンドは何か物足りなく思えてさ。

 実はメインヒロイン篠原渚サンのエンディングも、グッド・エンドよりバッド・エンドの方が「深い!」と思ったし心に強く残ったよ。
 ……なんて言うと、「オマエは修羅場ゲームが好きだから、元々バッド・エンドが好きなんだろ」と思われてしまいそうだけど。
 でもきっとそうではないと思う。だって藤崎晶サンのルートでは、真っ直ぐグッド・エンドに行けて大満足だったから。で、その後に確かめてみるつもりであえてバッド・エンドを出してみたのだけれど、胸が悪くなったと言うか、ホント心を揺さぶられるコト無くただ痛かったよ。

 これは黒沢が感じたことだけれど、シナリオライターの志茂文彦氏は、姫神澪ルートと篠原渚に関しては間違いなくバッド・エンドの方に力を入れて書いたと思う。だって実際、グッド・エンドの方は「あー、メデタシメデタシで良かったね」という程度で、特にどうと言うコトもない平凡なハッピー・エンドだったもの。
「ありがちなエンディング」なんて言ったら、シナリオライターに失礼かも知れないけれど。ただ少なくともバッド・エンドの時のように心にズシッと来る、魂を揺さぶられるようなものは、グッド・エンドでは何も感じなかったね。
 藤崎晶ルートのグッド・エンドは、「いかにも彼女らしいなぁ」って微笑ましい終わり方だったし。板東光ルートのグッド・エンドだって、日頃ワイルドな彼女の変身ぶりが見られて良かったよ。
 それに較べて姫神澪と篠原渚のグッド・エンドは、ホント平凡だったなー。
 と言うワケで姫神澪ルートと篠原渚ルートに関しては、是非バッド・エンドにご期待下されwww。

 でも大丈夫、姫神澪ルートと篠原渚ルートの攻略は案外厄介と言うか、普通にやったらまずバッド・エンドで終わると思うから。
 特に姫神澪ルートに関しては、ギャルゲーに慣れた黒沢でも攻略にかなり苦労したよ。澪サンに関する選択肢をどう変えても、希望は残るけれど澪サン自身は帰って来ないノーマル・エンドが精一杯でさ。
 ネタバレっぽくなっちゃうから、自力でグッド・エンドを見たいキミは次の一文は読まずに飛ばして欲しいけど。因習に満ちた家から澪サンを助け出してグッド・エンドに辿り着くには、見落としがちなある誰かの力を借りなきゃダメなんだ。

 それに較べれば、篠原渚ルートのクリアはずっと楽だけれど。ただある選択肢で「そんな状況だったら、普通こうするだろ」って方を取ると、バッド・エンド一直線なんだ。
「あり得ねーよ、理不尽だ!」って思ったけど。
 でも黒沢は篠原渚ルートでもバッド・エンドの方がずっと好きだったから、「最初にコッチのエンディングを見られて、より感動出来て良かった」なんて思っちゃったよ。

 上記の二人に較べて、藤崎晶ルートはかなり楽勝と言うか、素直に行動していれば普通にグッド・エンドになるハズだから。ただ晶サン(気の強い小生意気なコギャル)とある誰かをケンカさせないコトには、最初の大事なイベントが始まらないんで、最初の一週間に晶サンばかり追いかけ続けずに、他の誰かとも知り合いになっておくことも必要だけどね。

 この『おかえりっ!』は、ヒロインは一応五人というコトになってるけど。でも実際には、ホントのヒロインは篠原渚と姫神澪と藤崎晶の三人のJKで、中でもメインヒロインは渚サンだけど、テキストの量とかエンディングの数の多さから見ても、真のヒロインは澪サン……って気がしたな。
 で、板東光サン(19歳)と高倉波美サン(27歳)のルートについては、どちらかと言うと付け足しと言うか、島の謎と秘密を解明する為に作ったストーリーって感じがしたよ。

 けど元気な野生児(?)の板東光サン、黒沢はけっこう好きだったし、ストーリーも爽やかで好感が持てて充分に楽しめマシタ。
 ただ高倉波美サンに関しては、黒沢に年上趣味が皆無と言うか、お姉さんレーダーの感度が悪すぎるんで、完全クリアの為にただ耐えながらプレイした……って感じデシタ。
 だって五歳も年上の女性との恋愛なんて、黒沢的にはとても考えられないんだもの。世の年上好きの男性の方々、マジでゴメンナサイ。

 でもね、その黒沢には苦痛だった高倉波美ルートでさえ、プレイする意味はちゃんとあったんだ。って言うのは、「波美ルートをクリアすることで初めて明かされる、島の重要な秘密」みたいなものがあったんで。
 この『おかえりっ!』って、そういう意味でも巧いと言うか、全体のストーリー構成が良く練り込まれているんだよね。ヒロイン達のうちの気に入った誰かとグッド・エンドを迎えても、必ず何かしらの謎が残されたままでさ。
 で、別のヒロインをクリアする毎に、ジグソー・パズルのピースが一つずつはまって行くように、島の謎と秘密が明らかになっていって、五人全部クリアして初めてすべてがわかるんだ。だからルートが好みでないヒロインでも、謎の解明に引っ張られて、ついつい最後までやり通しちゃうんだよね。

 この『おかえりっ!』を含む“SIMPLE1500シリーズ”を出したディースリー・パブッシャー社は、プレステ2用に“SIMPLE2000シリーズ”を出していてさ。ハイ、ご想像通りこちらはどれも希望小売り価格2000円、ってやつデス。
 で、その中に『THE 恋と涙と、追憶と…』というギャルゲーがありまして。副題というか、本来のタイトルは『スレッドカラーズ』なんだけどね。
 この『スレッドカラーズ』、ネットでの評判は案外良いようだけれど、黒沢はどうも好きになれなかったなー。ま、大人でリアル指向の強い黒沢(修羅場ゲーもドンと来い!)には、ストーリーや世界観にファンタジー色が強すぎた……ってのもあるけれど。

SIMPLE2000シリーズ Vol.45 THE 恋と涙と、追憶と・・・。 ~スレッドカラーズさよならの向こう側~SIMPLE2000シリーズ Vol.45 THE 恋と涙と、追憶と・・・。 ~スレッドカラーズさよならの向こう側~
(2004/03/18)
PlayStation2

商品詳細を見る

 でもそれ以上に気になったのは、この『スレッドカラーズ』、ストーリーが各ヒロインに分岐すると、それぞれ全然別の話になっちゃう……ってとこ。事故に遭って入院中の主人公を、各ヒロイン達が見舞いにやって来る所から話が始まるんだけれど、それぞれのヒロインのルートで、その前提の事故の意味や内容まで全然違って来ちゃうんだよ。
 まず最初に気に入ったコをクリアした時に、「なるほど、そうだったのか」と納得した事が、また別のヒロインのルートに入るとあっさりひっくり返されて、「え? え? 話が違うじゃん」って感じになっちゃうワケ。
 だからヒロインを何人もクリアすればするほど、よくわからない、全体像がボヤけて割り切れない思いになっちゃう。

 この『スレッドカラーズ』ほど極端ではないにしても、ヒロイン毎にどんどん違う話になっていって、クリアした人数が増えると逆に全体として統一した印象を持てなくなってしまうゲーム、案外少なくないんだよね。
 けど『おかえりっ!』は違う! 選ぶヒロインによって、姫神家と改革派の争いの結末も微妙に変わって来るんだけれど、「教育実習生の主人公が、謎と因習の残る離島で、姫神家と改革派の勢力&利権争いに巻き込まれる」という前提や基本的な世界観には揺るぎがないからね。だから別の誰かをクリアしても、「あれ? 前と話が違うんじゃ……」と戸惑ってしまうコトも無いよ。
 この『おかえりっ!』のシナリオを一人で書き上げた志茂文彦氏は、かなり力のある書き手だと黒沢は推察しまシタ。

 ただね、その『おかえりっ!』のストーリーにも、一つだけ難点があって。それも大事なクライマックスのシーンに「これはアリエナイ」って断言できる箇所があるんだ。
 姫神島の隣には神来島という小島があって、そこに保護すべき新種の珍しい花の群生地があるんだよね。で、そんなモノがあっては開発の邪魔と、改革派の黒幕がその群生地にガソリンを撒いて焼き払っちゃうんだよね。
 ところがその神来島に、たまたま主人公とあるヒロインが来ていて、その火に巻かれて命を落としかけるのだけど……。
 コレ、不可能と言うか絶対無理だから。

 1945年4月30日の、ロシア軍に包囲されて陥落寸前のベルリンの、総統防空壕で。
 この日ヒトラーは愛人エヴァ・ブラウンと結婚した後に自決するのだけれど、その際「ロシア軍の手に落ちないよう、死体は完全に焼け」と側近たちに命じるんだ。で、公式には「護衛のギュンシェSS少佐や運転手のケムカSS中佐が、180リットルのガソリンを用意して、中庭の砲弾の穴に遺体を入れて焼いた」というコトになっているのだけれど。
 実はこれは建前で、実際にはヒトラーとエヴァの遺体はロシア軍の手に渡ってるんだよね。ほんのちょっとだけ焦げた程度で、ヒトラーとはっきり解る写真も残ってマス。

 と言うのは、まず側近達はヒトラーの遺体を砲弾の穴に横たえたんだよね。棺にでも入れてガソリンの中に浸したのではなく、土の上に直に置いたわけ。だからかけたガソリンは、殆ど流れて地面に吸い込まれてしまっていたのだ。
 あと、ガソリンって非常に気化しやすくて、危険極まりないものなんだよね。大量のガソリンを撒いたら、空気中に蒸発したガソリンの成分が充満して、マッチ一本擦るどころか、ちょっとした火花だけでも爆発しちゃうんだよ。
 で、ドイツ側の記録では「ギュンシェSS少佐が火をつけた紙を、ヒトラーの遺体を横たえた砲弾の穴に放った」ってコトになっていてさ。けどもし180リットルものガソリンを撒いたとしたら、火を付けた紙を放るどころか、まず「紙に火を付けた」段階でそのSS少佐ごと爆発しちゃいかねないワケ。

 それにその時はロシア軍の砲撃が激しくて、とても外で作業などしていられる状況じゃなかったんだ。だから実際には、「土の上に大急ぎで遺体を横たえて適当にガソリンを撒き、怖々火をつけすぐ逃げた」ってとこだと思う。
 けど側近達は、ヒトラーには遺体の処置を厳命されているワケだからね。自分たちの立場もあるし、生き残ってる他のナチたちへの言い訳も立たないから「命令通り、ちゃんと焼きました」みたいな風に言ってるんだと思う。
 でも実際には、殆ど焼け残ってるヒトラーの遺体の写真が、ロシア軍のもとに残ってるワケで……。

 おわかりでしょーか。「ガソリンで焼き払う」って、それくらい大変なコトなんだ。
 だってヒトラーとエヴァの遺体どころか、『おかえりっ!』では植物の群生地全部を焼き払うんだよ? そして主人公とヒロインは、その「野を焼き尽くす火」に追われて危うく死にかけるんだよ? それだけの火事を起こすには、いったいどれだけ大量のガソリンが要るか、ちょっと想像もつかないよ。

 撒いたガソリンの大部分は、そのまま地面の中に染み込んでしまうだけでなく。
 当然、辺りの空気中にも気化したガソリンが満ちているだろうし、火を付けた瞬間、大爆発が起きて放火の犯人ごと吹っ飛んでいるハズ
 あと、ガソリンにしても灯油にしても、どちらにしろかなり臭いよ? その野を焼き尽くすだけの大量のガソリンを撒かれた所に居て、火の手が上がるまでその異臭に全く気付かない主人公とヒロイン(痴話喧嘩の最中)も異様過ぎるし。

 それにそもそも、黒幕たちの目的は「開発に邪魔な貴重な植物の群生地を無くすこと」でしょ? 「ガソリンで焼き払う」なんて危険で手の掛かる上に目立つようなバカな事をしなくても、コメリにでも行ってラウンド○ップを買って来て、ただ撒けばいいだけじゃん。
 で、結局その放火犯人たちは、その火を見て駆けつけてきた島の人達に捕まっちゃうし。全く、どんだけお間抜けなんだよwww。

 シナリオライターの頭の中にはさ、野焼きのイメージがあったのかも知れないね。でも、アレは空気の乾いた冬に、枯れ草を焼くものでさ。
 まだ夏に近い9月に、まだ枯れてない元気な野草の群落を焼き払うなんてまず無理デス。

 まっ、「火に巻かれて逃げ惑う主人公とヒロインって、絵になるしドラマチック!」と思って、想像だけでつい書いちゃったんだろうけどね。
 わかるけど、現実には絶対ムリな「ガソリンで野を焼き払う」ってシーンを、それもクライマックスのシーンに持ってきてしまったコトが、この『おかえりっ!』の唯一にして最大のミスだと思いマス。

 そうそう、この『おかえりっ!』で黒沢が感心させられたのが、「教育実習や学校の仕事をよくわかってる」ってこと。
 主人公でもヒロイン役でも、創作モノの作品に出てくる“先生”って、殆ど型破りで破天荒なタイプばっかりだよね。「校則無視でやりたい放題」とか、「だらしなくて頼りないけど色っぽい」とか。
 脇役や敵役として出てくる先生だってみなマンガ的で、ゲームやコミックスどころか、ドラマや映画に描かれる先生たちだって「実際にいるワケねーだろ、こんな教師」って感じでさ。
 けどこの『おかえりっ!』は、学校がいかにも本物の学校らしいの。そして主人公も、一生懸命に教育実習をしようと頑張ってるし。
 黒沢の印象では、シナリオライターは実際に教育実習の経験があるか、あるいはその経験者や教師にちゃんと話を聞いた上で書いてるな……って感じだよ。
 ただシナリオライターが教育実習の事をわかっていて、主人公に教師らしくさせようとしているだけに、「主人公が真面目すぎて物足りない」と感じるヒトもいるかも知れないけどね。
 でも黒沢としては、主人公が「いかにも」なマンガ的なセンセイでなく、教育実習がリアルに描かれている点もすごく評価したいデス。
 身内にも親戚にも本物の教師が居る黒沢はむしろ、現実には絶対いるワケない破天荒なセンセイや、いかにもマンガ的なセンセイが出て来ると、途端に醒めてドン引きしちゃうんだ。

 そうそう、「教師がリアルに描かれている」という点では、私屋カヲルさんの『こどものじかん』もナカナカGOODだよ。
 この“こじか”こと『こどものじかん』は『コミックハイ!』に連載されていたコミックスで、過激な描写で良い意味でも悪い意味でも話題を呼んだ作品デス。

 何しろテーマは「小学生女子と担任教師の恋愛」だからね。それも「ヨコシマな気持ちを抱く教師×純真無垢な幼女」ではなく、「いろいろ不器用な新任教師(童貞)が、コワいくらいマセた女子にセマりまくられる」って話だから、そりゃあロリ好きのお兄さんたちは大歓喜っスよ。
 で、ヒロイン(?)の九重りんがあまりに過激にセマるんで、一部のうるさ型たちに敵視されて「こんな小学生の女の子を描くなんてケシカラン!」って問題にもされて。
 例の東京都の青少年健全育成条例の改悪で、一時はかの非実在青少年関連の不健全図書に指定されるのではと危惧されたりもしてね。

こどものじかん 1 (アクションコミックス)こどものじかん 1 (アクションコミックス)
(2005/12/12)
私屋 カヲル

商品詳細を見る

 けどそうした「サービス、サービスぅ~」のエロい部分をスルーして読むと、この『こじか』って意外なくらい真面目でまともなんだよ。
 まず取材がしっかりしていると言うか、教師の仕事の描写がとてもリアルなんだ。そして現場の実態やら教師の悩みや本音やらも、すごく「わかってる!」って感じ
 マンガに教師はよく出て来るし、教師が主人公のマンガも幾つもあるけれど、教師の仕事や実態についてここまでリアルに描いてるマンガは少ないっスよ。
 そしてまた主人公の青木先生も、新任で不器用だし悩みは多いながらも真面目でさ。ヒロインの九重りんにいろいろエロ攻撃されながら、流されてデレデレしたりするわけでなく、「教師らしくしよう、九重りんを少しでも良い方向に導こう!」と一生懸命で。
 また、職員室での先輩教師の小矢島先生や白井先生などとのやりとりも、教師を知る者としていろいろ頷いてしまう所もあったし。
 さらにやたらにベタベタしてくる九重りんの心の闇や、青木先生にいつも突っかかって来る鏡黒(かがみ・くろ)の寂しさなどについても丁寧に描いていて、ちゃんと読めば「単なるエロじゃない!」ってすぐわかるよ。

 ただ「小学生女子と担任教師の恋愛」という設定が設定だし、九重りんのセマり方が過激なだけに、アブないエッチなマンガみたいに思われているけれど。問題にされているその過激な描写の部分をスルーして読むと、意外にシリアスで深い良作とわかる筈だよ。
 だから黒沢はこの『こどものじかん』、全巻新刊で買い揃えて持ってマス。
 実は黒沢は、私屋カヲルさんには少女マンガ誌で『少年三白眼』を描いていた頃から注目していてさ。その少女マンガらしからぬギャグを描いていた私屋カヲルさんが、こんな女子小学生と教師のラブを描くようになるとは思ってなかったなー。
 でも黒沢はずっと変わらず私屋カヲルさんのファンで、少女誌に連載されていた『少年三白眼』から青年誌に転じた後の『青春ビンタ!』、さらに猫マンガの『ちびとぼく』など、私屋カヲルさんの作品はほぼ読み続けてマス。

 さて、話は戻って『おかえりっ!』だけど、ディースリー・パブリッシャー社の“SIMPLE1500シリーズ”のオリジナルではなく、元は『夕凪色の恋物語』っていうPCゲームだったんだ。
 と言っても、18禁のエロゲからHシーンを削ってコンシューマー用に仕立て直したのではなく、数少ない非エロのPC恋愛アドベンチャー・ゲームだったんだ。だから設定にも無理がなく、安易なエロ路線のとはまるで違う良質な仕上がりだったんだよね。

 もしこれが旧規格のプレステでなく、プレステ2の恋愛ADVとして出されていたら。
 それもまず安さがウリの“SIMPLEシリーズ”などではなく、それなりの価格でジャケ絵も綺麗なのを使って、元の『夕凪色の恋物語』のタイトルで出していたら。
 そしたらもっと話題になって多くのファンを掴んだだろうと思うと、黒沢は残念でならないよ。

 それでもわかる人は少数ながら確かにいるようで、ネットを検索してみると『おかえりっ!』の“聖地”を訪れた人の記録があったりシマス。
 参考までに、ゲームの舞台の姫神島のモデルは、瀬戸内海の真鍋島なのだとか。ゲームの中では、藤崎晶ルートのエンディングで、姫神小学校は都の教育委員会の管轄内みたいな会話が出て来るけどね。
 でも実際には伊豆諸島のどれかではなく、真鍋島の地図を逆にしてみると、姫神島にピタリと一致するそーです。

 あともう一つ、この『おかえりっ!』のヒロインは建前は五人だけれど、実は攻略可なキャラは八人なのだ。と言っても隠しキャラの三人は、殆どおまけのサービスと言うか、お遊びみたいなルートなんだけどね。
 だからメインの五人と違って、攻略してもしなくても大筋には全然関係ないし、「正規のヒロインが攻略できて、島の秘密が全部わかればOK」って人は、残りの三人の隠しヒロインについては無視しても構わないんだけどね。
 でも「えっ、このキャラが攻略できちゃうんだ!」って驚きは、黒沢的にはかなりあったなー。
 それと、この隠し要素のヒロインまで含めて八人全員クリアして初めて、CGが全部埋まりマス。

 そうそう、主要なヒロインでも姫神澪ルートにはエンディングが四通りもありマスんで、この点にも要注意デス。
 エンディングにグッド・エンドと僅かに希望が残るバッド・エンド(ノーマル・エンド?)、それに悲しみしか残らないバッド・エンドの三通りがあることはすぐわかると思う。けど実は悲しいバッド・エンドには二つのパターンあることには、案外気付きにくいと思う。
 で、そこに気付いて澪サンのエンディングを四通り出さないと、CGは全部埋まってくれないんで、完全クリアを目指す方は覚えていて下され。

 殆ど知られていないけれど、やってみた人の大半がハマってしまうこのゲームの存在を、一人でも知って興味を持ってくれたら嬉しいデス。
 この“SIMPLE1500シリーズ”『おかえりっ!』、運が良ければ中古ゲーム店で三百円くらいで手に入ると思う。オリジナルのPC版の方になると、ちょい高くて千数百円程度で、さらに修正パッチもダウンロードする必要があるみたい。
 初代のプレステのゲームは、プレステ2だけでなくプレステ3でもプレイできるんで、「古いハードはみんな処分しちまって、プレステ3しか持ってねーよ」って方も、宜しければ是非お試し下サイ。

スポンサーサイト

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する