空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

柱焼酎と“アル添”は別モノです(まがい物の偽酒が横行する日本)

 黒沢は少し前に、「日本酒は純米しか認めないし、工業アルコールを添加した酒は、日本酒と呼ぶに値しない“偽酒”と言い切りたい」と語った。
 だから本醸造酒も「アル添で嵩増しした偽酒が“本醸造”だなどと、図々しいにも程がある」と嘲いたくなるし、いくら吟醸酒や大吟醸酒でもアルコールを添加されたモノなど飲みたくでもない

 だがこの日本酒のアルコール添加、通称アル添を擁護する人達が少なからずいるのだ。そしてその中には、あの名高きソムリエ、田崎真也氏までいるのだから呆れてしまう。
 これらアル添を擁護する人達は、「日本酒に焼酎を入れるのは江戸時代からの技法で、アル添もそれと同じだ」と言う。
 嘘だ
 江戸時代の柱焼酎と現在のアル添は、性質も意味もまるで違う別物なのだ。

 酒の腐敗防止の為にアルコール度の高い焼酎を混ぜる“柱焼酎”という技法は、江戸時代から確かにあった。
 だがちょっと待ってほしい。その技法に使われていた焼酎は、米焼酎もしくは粕取焼酎といった本格焼酎なのだ。手作りの単式蒸留だから味も香りもちゃんとあって、そのまま単独でも充分に美味しく飲めるものを加えていたのである。

 では現在の日本酒に加えられている“醸造用アルコール”とは、一体何であるか。
 ずばり、サトウキビの絞り滓から連続蒸留で作り上げた工業アルコールで、味も香りも無い、ただアルコールの辛い刺激があるだけのシロモノである。
 コレを水で薄めてアルコール度数を人が飲める程度(20~25%くらい)にしたものが、よくペットボトル入りで大安売りされている甲種焼酎である。4リットル千数百円くらいで売られていて、「アル中の廃人への入り口」とも呼ばれているアレだ。
 江戸時代の柱焼酎に使われていた単式蒸留の本格焼酎と、この現在使われている工業アルコールの添加を一緒にされては困るし、本格焼酎に対して失礼だ。

 そして連続蒸留で作られている例の工業アルコールは、アルコール度数は100%に近い。
 そんなアルコールを混ぜるわけだから、アルコール度数はとても高くなる。で、そこに大量の水を加えて嵩増しして、一般的な日本酒のアルコール度数の15~16%に戻すわけだ。
 当然、アル添酒は(アルコール度数こそ同じだが)純米酒より水っぽく、旨みも薄くなる。さらに加えたアルコールの刺激で味が辛口に傾きがちだから、メーカーはそれを“淡麗辛口”と称して売り捌いているのだ。

 問題のアルコール添加で、酒をどけだけ嵩増しできるか。
 以前の日本酒は工業アルコールの他に糖類と酸味料まで加えた“三増酒”が主流で、その名の通り元の酒を三倍にまで嵩増ししていた。しかしこの三増酒はあまりに不味いので日本酒離れを起こしてしまい、今は糖類や酸味料は加えず、アルコールの添加量を抑えたものが大半になっている。
 が、それでもアル添のおかげで本醸造酒は純米酒の1.5倍、普通酒では二倍の酒が出来るという。

 工業アルコールと水でそれだけ嵩増しされていて、酒本来の旨みに違いが出ないわけがない。
 本醸造酒だけでなく吟醸酒や大吟醸酒も含めたアル添酒に比べ、純米酒は明らかに味が濃い。淡麗辛口を謳うただサラリとして辛さだけが突出しているアル添酒と違って味に奥行きがあり、甘みや酸味など微妙な味が複雑に絡み合っている。

 ワインは葡萄から、そしてビールは麦芽とホップから造るように、日本酒も米と米麹だけで造るものである。その日本酒に工業アルコールを混ぜ込んで加水し嵩増しする意味が、黒沢にはわからない。
 ビールの本場のドイツではビール純粋令があり、麦芽とポップ以外のものをビールに加えることをドイツ人達は認めていない。
 もしフランスでワインに“アル添”をして、ワインに工業アルコールを混ぜ水で薄めて売りでもしたら、フランス人は「酒文化への冒涜だ!」と暴動を起こしかねないだろう。

 しかし日本では「柱焼酎の伝統が……」などと屁理屈をこねて、アルコールと水で嵩増ししたアル添酒を恥じることなく堂々と売り続けられているのである。そして消費者も消費者で、そのアル添ゆえに味が薄まり辛口になった酒を「さすが淡麗辛口、サッパリしていて美味しい!」と喜んで飲んでいる人達が居るのである。

 アル添を擁護する人達は、こうも言う。
「アルコールを添加すると、吟醸香がより引き出せるのだ」と。
 いや、それも違う。
 ある程度のアルコールを添加すると吟醸香を引き出しやすくなるという事実は、確かにあるのかも知れない。だが「純米吟醸酒より、アル添の吟醸酒の方が香りが高くて美味しい」という話は全く聞いたことも無いぞ。
 実際、香りの良さでは純米吟醸酒もアル添吟醸酒も変わらない。そしてアルコールを添加して加水量も増やした分だけ、アル添吟醸酒は純米吟醸酒より酒としての旨みが薄くなっているのも事実だ。
 吟醸香を引き出す為と言うが、それと引き替えに酒の旨みを水で薄めてしまったのでは本末転倒ではないか。

 アル添を「香りを引き出す為」と言い張る人達に問いたい。アル添で吟醸香が引き出せると言うなら、アル添の吟醸酒や大吟醸酒の方が、純米吟醸酒や純米大吟醸酒より評価が上にならなければおかしい筈だ。
 だが現実には、アル添の吟醸酒や大吟醸酒より純米の吟醸酒や大吟醸酒の方が評価が高く、市場でもより高価であるのは何故であるか。
 吟醸香は、杜氏とその酒蔵にちゃんと技術があればアルコールを添加しなくとも充分に出せるのだ。そしてアル添でないだけ味も濃く奥深く、辛口に偏り過ぎることもない。

 だから黒沢は「柱焼酎の技法とアル添は全く別物」と言い切れるし、「アルコールなど加えずとも、米と酵母の力だけで吟醸香は充分に引き出せる」と言い切れる。
 と言うよりアルコールを加えた分だけ余計に加水しなければならなくなるし、味も辛口に傾くから、アル添は吟醸酒の味を引き下げる結果にしかならないと言える。
 もしアル添を、あくまでも「江戸時代からの技法」と言い張るならば。サトウキビの絞り滓を連続蒸留した、度数ほぼ100%の工業アルコールを加えて大量に加水するのではなく、単式蒸留の本格米焼酎を加えて造るべきだ。そうでなければ、「江戸時代からの柱焼酎と同じ」などと絶対に言えない筈だ。

 そもそも何故、アル添などということが始まったのか。
 それも我が国が元々資源の乏しい小国なのに誇大妄想状態に陥って大日本帝国を自称し、世界を相手に無謀な侵略戦争をおっ始めたからだ。
 そしてその太平洋戦争のおかげで、日本酒まで恐ろしくマズくなった
 戦争を始めると我が国はすぐに物資が不足し、国民の日々の食料まで不足するようになった。当然米も大いに不足したが、日本酒もまた米から作られている。それで「酒に使う米を何とか節約できないか」と軍の要請で考え出されたのが、例の大量の工業アルコールと水で三倍に嵩増しし、糖類と酸味料などで薄まった味を補った“三増酒”である。

 何しろ安価な工業アルコールと水などを加えれば、出来る酒を驚くほど増やせるのだ。メーカーとしてはこれほどウマい話はない。
 だから戦争が終わっても、日本酒業界はこの工業アルコールで酒の量を嵩増しする“アル添”を止めなかった。
 だが戦後70年近くも経ち、米は余るほどあると言うのに未だにアル添を堂々と続けて日本酒を不味くしているのは、酒文化への冒涜と言うだけでなく、もはや日本の恥と言っても過言ではあるまい。
 このアル添の日本酒が、日本では堂々と“本醸造”を名乗っているのだから呆れかえる本当に醸造したと言える日本酒は純米酒のみで、アル添の日本酒は正しくは“混成酒”と呼ぶべきなのだ

 ドイツでビール純粋令があるように、黒沢は日本でも“日本酒純粋令”を制定し、「日本酒は米と米麹のみで造るべき」と定め、アルコールや糖類や酸味料などの添加を一切禁止してほしいと思う。
 日本酒は純米のみであるべき、というのが黒沢の願いだ。

 と言うと、「酒が高いものになって、貧乏人が飲めなくなる」と反対する人が必ず出て来るだろう。
 心配ない、その為に4リットルで僅か千数百円で買える、甲種焼酎というものがある。

 黒沢はアル添酒だけでなく、「副原料入りのビールも発泡酒も第三のビールも無くなってしまえ!」と願ってるし、ウイスキーも「モルトウイスキーとグレンウイスキーを三年以上樽貯蔵したもの」しか認めていない。
 本格焼酎も常圧蒸留して甕貯蔵するべきで、減圧蒸留でしかもイオン樹脂交換で精製したものは“本格”と認めたくない。


 黒沢は酒を愛しているから、まがい物のヘンな酒の存在が許せないのだ。
 酒を愛しているから、酒は質の良い本物の酒だけであって欲しいと心から願っている。
 そして酒の質にこだわりが無く、「ただ楽しく酔えれば良い」という人達は、甲種焼酎を飲めば良いと思う。

 甲種焼酎は良いゾ、元々味も香りも無いから、好きなもので好きな濃さに割って飲むことができる。それで値段もとても安いのだから、不味いアル添酒やサントリーの角や発泡酒などを飲んでいるより、ずっとお得ではないか。
 甲種焼酎はサトウキビの絞り滓を連続蒸留した工業アルコールを水で薄めた安物だが、少なくともまがい物の酒ではない。
 日本酒もビールもウイスキーも本格焼酎も、どうせ造るなら良質な本物の酒だけにしてほしい。そしてあとは甲種焼酎があれば良いと黒沢は思うのだが、どうだろうか。

 アル添の日本酒やら、副原料入りのビール類やら、若い輸入モルトに出来たてのアルコールをブレンドwwwしたらしい国産ウイスキーやら、減圧蒸留した上にイオン樹脂交換で精製した“本格”焼酎やら。
 まがい物の偽酒がこの国には本当に多過ぎる現状が、酒を愛する一人としてひどく情けなく、かつ腹立たしくてならない

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コメント


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純米酒を純米酒で仕込んだ貴醸酒は何故か純米表示出来ない不思議。
米と米麹と水のみが原料なのに仲間外れにされてるどぶろく。
色々おかしい。
ビールに関しては麦とホップと水とは限らないと思います。
ドイツがビール発祥というわけではないし元々はホップではなく別の色々なハーブを使用していたそうです。そのホップ以外を使用していたビールの流れを継承してるのがベルギービールです。
ちなみに僕はビールは苦くて不味いので飲みません。

| URL | 2017-05-31(Wed)16:41 [編集]


Re: タイトルなし

> ビールに関しては麦とホップと水とは限らないと思います。
> ドイツがビール発祥というわけではないし元々はホップではなく別の色々なハーブを使用していたそうです。そのホップ以外を使用していたビールの流れを継承してるのがベルギービールです。
> ちなみに僕はビールは苦くて不味いので飲みません。

 恥ずかしながら、私はドイツの“ビール純粋令”を妄信していました。
 しかしハーブを使ったベルギーのビールを飲んで、その考えを改めました。
 確かにビールはメソポタミアあたりで生まれたらしいですね。
 ドイツのビールにこだわり過ぎてはいけなかったなと、反省しています。

 ビールは、特に日本の大手メーカーのビールには苦いものが多いですが。
 地ビールや欧州のビールには、苦みが少なくてフルーティーな、喉越しで一気に飲むのではなくゆっくりじっくり飲んで美味しいものもありますので、機会があったらお試しください。
 ヴァイツェン・ビールやベルギーのホワイト・エール・ビールなど、飲み会でよく出される日本の大手メーカーのビールとはかなり違うと思うのですが…。

黒沢一樹 | URL | 2017-06-08(Thu)00:48 [編集]


米だけで作るのが日本酒という固定観念に縛られすぎに思えます。
実際アルテン酒の方が純米酒より遥かに旨い酒は多々あるのですが、
先入観で不味いと決め込んでいてはまともな判断もできないのかなあと。
本物の日本酒の主張ですが、純粋な日本人は純血、混血児は国籍にかかわらず日本人ではないと主張するに等しいと感じます。
多神教の日本はなんでも取り込む、優れた技術はすぐに吸い込んでしまう。
漢字もひらがなもアルファベットの利便性を取り入れて日常で使用する日本人の感性の柔らかさこそ尊重したいと思います。
アル添も人によっては卑怯な手法かも知れません。
スポーツで言えばドーピングみたいなもんでしょうか・・・?
ドーピング使用許可した文句なしに世界最高の技術を競う種目があってもいいんじゃないかと思います。
というか医学がさらに進歩すれば今のドーピングでは考えられない安全で公平な薬が誕生するでしょう。
アル添の優位性が科学的なデータで次々に裏付けられている事実に背を向けるのは如何なものでしょう。
人の嗜好性に文句はつけるべきではないですが、日本酒メーカーが変なポピュリズムで純米変更を強めすぎることには大いに疑問を感じます。

和酒とは | URL | 2017-09-17(Sun)17:01 [編集]


Re: タイトルなし

> 米だけで作るのが日本酒という固定観念に縛られすぎに思えます。
> 実際アルテン酒の方が純米酒より遥かに旨い酒は多々あるのですが、
> 先入観で不味いと決め込んでいてはまともな判断もできないのかなあと。

> 人の嗜好性に文句はつけるべきではないですが、日本酒メーカーが変なポピュリズムで純米変更を強めすぎることには大いに疑問を感じます。

 正直に言いますと、以前の純米酒には決して美味しいと言えないものが多かったです。
 香りも良くないし、重いし、変に苦いしと、悪い言い方をすれば田舎くさい、重ったるい酒が少なくありませんでした。
 だから私が地酒に興味を持ち始めた頃、ある酒店の店主は純米でなく本醸造酒を私に勧めました。

 確かに昔の純米酒と比べれば、アル添の本醸造酒の方がスッキリ、サッパリして美味しかったですよ。
 ですが近年、純米酒の質もかなり上がっています。
 女性が飲むようになったからでしょうか、純米吟醸酒などかなりフルーティーでふくらみのある良い味で、けっこう好きになれるものが多いです。
 私は吟醸香が好きな人間なので、どうも本醸造酒より吟醸香のある純米酒に惹かれてしまいます。
 今は、吟醸でないただの純米酒でも、ほのかにフルーティーな吟醸香がするものが少なくありません。
 で、アル添の吟醸酒や大吟醸酒を、純米の吟醸酒や大吟醸酒と比べると、どこか味が薄く感じてしまうのです。
 それを「スッキリ、淡麗辛口」と受け取る方もいるのでしょうが、私は“今の”純米系のお酒が、やはり好きです。

黒沢一樹 | URL | 2017-09-20(Wed)01:21 [編集]