空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

タイブレーク制度の導入に断固反対する!

 この夏の軟式野球の全国大会で、中京対崇徳戦で延長五十回という球史に残る熱戦が行われたことは、まだ記憶に新しいと思う。
 その四日間にもわたる試合自体は感動的だったが、感心出来ないのは、その後に日本高校野球連盟で検討されている「タイブレーク制度」の導入だ。

 タイブレーク制度とは、平たく言えば早く試合の決着をつける為に、延長戦時に最初から塁にランナーを出しておく制度である。
 ひらたく言えば点をすぐに取れるように、「ヒットを打ったわけでも、四死球によるものでもないランナーを出しておくこと」である。
 このタイブレーク制度は一部では既に導入されていて、例えば国体や神宮大会では「延長十回から一死満塁でスタートする」のだそうだ。

 ちなみにこのタイブレーク制度もいろいろあって、例の「一死満塁でスタート」という方法だけでなく、「無死一塁二塁でスタート」という方法などもあるそうである。
 またタイブレーク制度が適用されるのも「延長十回からすぐに」だけでなく、「延長十三回や十五回から開始」という案もあるそうである。

 だが、いずれにせよ考えれば考えるほど妙な話である。何しろ「早く点を取れるように」、ヒットも四死球も無しにランナーを出せるのだ。
 それは打つ側には都合は良いだろうが、初めからスコアリング・ポジションにランナーを置いた状態で、そのイニングを始めなければならないピッチャーとしては、たまったものではない。

 タイブレーク制度の目的は「選手の負担軽減の為」だそうだが、それこで言われる“選手”とは、主にピッチャーと考えて間違いあるまい。
 その延長戦時に最も負担のかかっているピッチャーに、強い精神的緊張とさらなる全力投球を強いるのが「タイブレーク制度」なのである。

 それだけではない。
 タイブレーク制度で塁に出されているランナーは、ヒットを打ったわけでも四死球を与えられたわけでもなく、投げているピッチャーには何の責任もないのだ。
 しかし仮に「一死満塁からスタート」のタイブレーク制度を導入した場合、ヒットどころか外野フライやバント(スクイズ)一つだけで“失点”が計上されてしまうのである。
 そしてヒットを打たれた場合には、たった一安打で2点も取られかねない。
 ピッチャーとしては、これではたまったものではあるまい。

 タイブレーク制度で出たランナーについては、失点につながっても投手の自責点には数えないと言う。
 しかしそれにしても、最初からスコアリング・ポジションにランナーを複数置かれ、セットポジションで投げなければならないピッチャーの負担は大きい。
 しかもランナーが出ている状態だから、内野手は自然に塁に張り付くことになり、一二塁間と三遊間が開いて打球がヒットとして抜けやすくなる
 外野手だって、バックホーム体勢を取り前進守備にシフトすれば、通常ならフライとして処理できる打球が、頭越えの長打になってしまいがちだ。
 だから断言できるが、どう理屈をつけようとタイブレーク制度は、ランナーの無い状態でそのイニングを始めるより間違いなく連打を浴びやすく、ピッチャーへの負担が大きい。そして連打を浴びれば、やはり自責点にも影響して来るだろう。

 タイブレーク制度で理に合わないおかしな話は、まだ他にもある。
 タイブレーク制度で出たランナーは、本塁に還っても打たれたピッチャーの自責点にはならないが、「バッターの打点にはなる」のだそうである。
 ホームランを除けば、ヒットを重ねるか、四死球に犠打を重ねるなどしてようやく得るのが打点である。だからこそ野球では、「チームプレイでつないでゆくことが大事」と教えられる。
 にもかかわらずタイブレーク制度では、“つなぐ”ことなくたった一本のヒットや犠打で打点が得られてしまうのだ。
 これを「おかしい」と感じない人の頭の方がおかしいと黒沢は思う。
 と言うか、ヒットを打ったわけでも四死球を得たわけでもないランナーが出て、それが得失点に記録される事自体がおかしいのだ

 おかしいと言えば、国体や神宮大会では既に採用されているという「延長十回から一死満塁でスタートする」タイブレーク制度の場合、1イニングが実質2アウトで終わることになる。
 野球というものは1イニングが3アウトであることは、野球に疎い者でもおそらく知っているであろう常識中の常識だ。
 無死で一塁二塁からスタートする方式ならともかく、一死満塁でスタートするタイブレーク制度は、野球の基本的なルールからねじ曲げているのである。

 ヒットを打ったわけでも四死球を得たわけでもない複数のランナーを、守備側のピッチャーに背負わせて。
 打点や得失点に、その妙なランナーによる得点も絡めて。
 そしてそのタイブレーク制度の為に、1イニングのアウト数も変えて。
 延長戦を早く終わらせる為に、野球の基礎をそこまでねじ曲げるかと、黒沢は呆れ果てている

 タイブレーク制度の導入の目的について、高野連は「選手の負担軽減の為」と説明している。
 そしてその“選手”というのは、主にピッチャーのことであろうと、誰にでもわかるだろう。
 そのピッチャーの負担を軽減させ、かつ延長戦も減らす方法は簡単だ
 ピッチャーの投球数を制限するか、投球イニング数を制限すれば良いだけのことだ。

 まず一番わかりやすいのは、一試合で一人のピッチャーが投げられる投球数を決め(百球なり百三十球なり)、それを越えたら問答無用で別のピッチャーに交代させるのだ。
 ただ、この投球数に制限をかけた場合には、連投の問題が出てくる。仮に延長戦まで投げなくても、連日登板することで肩を壊す高校生のピッチャーは後を絶たない
 だから黒沢は、投球数や投球イニングの制限に連投の規制も絡めたらどうかと思っている。
 例えば「百球または五イニングス以上投げたピッチャーは、翌日の試合に登板してはならない」という風に規制すれば、投球数だけでなく連投による負担も避けられる
 目的が「選手の負担軽減の為」ならば、タイブレーク制度などというワケのわからないシステムより、こちらの方が余程も合理的で効果的だと思うが。

 事実、高野連の技術・振興委員会でも、投球回数や投球数の制限も検討されたという。
 だが結局それは受け入れられず、タイブレーク制度の導入に結論は落ち着いたという。
 それは何故か。
 力のあるエースに頼り、その肩を壊す危険を犯してでも勝ちたい野球部の指導者たちのエゴのせいだ。

 黒沢の県の、公立のあるサッカーの名門校の話だが。その高校はサッカーで名を売っているだけに、予算からグランド使用から万事サッカー部優先で、他の運動部はあまり活躍していなかった。
 だがその高校の野球部が、一度だけ甲子園に出たことがあった。
 実は黒沢は、その時のその高校の校長だった方と顔見知りだった。
 その校長は、黒沢に直にこう言った。
野球なんてものは、すごく良いピッチャーが一人いれば甲子園に行けるんだよ
 ……確かにそういうものかも知れない。良いピッチャーが零点に抑えていれば、一点取るだけで勝てるわけだからね。

 何しろ高校野球では、「負けたらそれで終わり」だから。それで二番手の控え投手も育てて併用するより、そのすごく良いピッチャー一人に頼り切りたくなるワケだ。
 絶対に負けられない、だから控え投手に投げさせるより、エースに連投させたい。で、チームの勝利の為にエースには「肩が壊れるまで投げろ」と。
 こんな指導者が少なくないから、「投球回数や投球数の制限? 絶対反対だ!」ということになるのだろう。
 何しろエースなら「一死満塁や無死一塁二塁のタイブレークも抑えてくれる」だろうし、そして「また明日も投げてくれる」だろうってね。
 だが投球回数や投球数を制限されたら、必然、エースを交代させ控え投手を出さなければならないことになる。
 だから勝利最優先の指導者たちは、「投球回数や投球数の制限には絶対反対で、タイブレーク制度の方がまだマシ」って思うんだよね。
 選手の負担軽減とか言いつつ、結局エースの肩よりチームの勝利の方が大事なんだよ。それが本音さ。

 無論、野球部のエース達も監督に命じられて厭々投げているわけでなく、「大丈夫です、次も投げさせて下さい!」と自ら連投を志願する者も少なくないだろう。そして「連投して来たけど、俺は大丈夫だった」という者も、実際にいるのだろう。
 しかしピッチャーの肩は、壊れてからでは遅いのだ。
 連投や長いイニングの投球は明らかにピッチャーの肩に負担だし、一人のエースに頼り切るのではなく複数の投手の育成するのは、高校野球の指導者の責務と言っても過言ではないと黒沢は考える。
 事実、甲子園で勝ち上がれるような強豪校の多くは、エースに劣らぬような控え投手も擁して、調子や疲労度に応じてちゃんと使い分けている。

 前にも書いたが、黒沢の知るある高校の校長は「野球なんて、すごく良いピッチャーが一人いれば甲子園に行ける」と言った。
 だがそのような、エースの肩を犠牲にして勝ち上がるような高校野球のままでは駄目なのだ。
 ピッチャーは必ず複数育て、それが出来ない高校は予選で早々に負けてしまえば良いのである。

 高野連が、もしも本当に「選手の負担軽減の為」を考えるのならば。
 
野球の基礎的なルールをねじ曲げるようなタイブレーク制度ではなく、投球回数や投球数の制限を導入し複数のピッチャーの育成を義務づけるべきだと、野球ファンの一人として断固主張する。

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