空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

マッサン流の水割りを楽しむ

 あの連続テレビ小説『マッサン』も、いよいよ残すところあと一週というところになった。
 ウイスキー好きの黒沢も、楽しくかつ興味深く見てきたが。
 内容には不満は無いし、『マッサン』が終わってしまったら寂しくなるだろうなぁ……と、今から思っている。

 ただ一つだけ、ドラマを見ていてずっと気になり続けてきた事がある。
 ボトルからショットグラスに注いだウイスキーを、マッサンやその仲間がクイッと一息に飲み干しているシーンが時々出て来るが、ストレートのウイスキーというものはあのように一気に飲めるものではないし、飲むものでもない
 シッピングとも言われるが、ウイスキーとは少しずつ、ちびちび飲むものなのである。
 あのドラマの中での、「ショットグラスのストレートのウイスキーを、一息にクイッ」というのは、どう見てもウイスキー好きが味わって飲んでいるようには思えないし、あのような飲み方をしたらむせてしまうのが普通である。

 にもかかわらず竹鶴政孝氏がモデルであるマッサンがウイスキーを一息にあおるように飲むのは、どう見てもおかしいし、納得できるものではない。
 収録中に本当に酒を飲んで酔ってしまっては困るから、ドラマで飲むシーンでは酒に似たアルコールの含まれていないものを使うという。例えば日本酒や焼酎なら水を、そしてウイスキーを飲むシーンでは紅茶を使うと聞いたことがあるが。
 テイスティングの時の慎重で丁寧な味わい方は正しいが、普段の飲み方の再現は何度見ても雑である。
 代用の紅茶だからとは言え、ストレートのウイスキーを「一気にクイッ」というのは、やはりいただけないし納得しづらい。

 ウイスキーをストレートやトワイスアップで飲む時は少量を口に含み、そしてすぐには飲み込まずに舌の上で転がし、さらに噛むようにしてゆっくり味わうものである。
 ハイボールや日本流の薄~い水割りならゴクゴク飲んでも良いが、瓶から注いだストレートのウイスキーを一息でクイッと飲むのはもったいなさ過ぎるし、第一アルコールがキツくてむせてしまう。
 ドラマの中でマッサンがまだ鴨居商店にいた頃、ウイスキーを飲み慣れない日本人達は、マッサンが勧めるウイスキーをまるで日本酒のようにゴクッとやってはむせて、「マズい、とても飲めたものではない」といった反応をしていたが。
 いくら少量とは言え、ストレートのウイスキーをクイッと飲んだらキツ過ぎるし、むせてしまって当たり前なのである。
 ストレートのまま一気に飲むべきなのは、ロシアのウオッカくらいのものだ。

 では本物のマッサンは、普段どのようにウイスキーを飲んでいたか。
 実に意外な事だが、孫の竹鶴孝太郎氏によると、竹鶴政孝氏はストレートでもトワイスアップでもなく、ウイスキーと水1:2の水割りで飲んでいたという。
 それを知って、黒沢は「竹鶴氏ともあろうものが、水割りなんて何故そんな素人のような飲み方を……」と、ちょっと落胆したものである。
 しかし、だ。あの竹鶴政孝氏があえてそのような飲み方をしたという事は、それなりの理由があるに違いないと思い、実際に黒沢も1:2の水割りに挑戦してみた。
 結果デスか。
 うん、かなりイケる!
 やはり竹鶴政孝氏は偉大だと、改めて思わされる結果になりマシタ。

 具体的に言うと、ウイスキーを水で1:2で割ると、トワイスアップではまだ残っていたアルコールのキツさがすっかり消えて無くなるのだ。
 それでいて日本人がよく作る水をジャブジャブ入れた薄~い水割りと違い、このウイスキー1に水2の水割りでは、ウイスキーの味や風味はまだしっかり残っているのだ。
 黒沢はコレを例の江井ヶ嶋酒造のホワイトオークレッド、モルトに何とグレーンでなくスピリッツを“ブレンド”したという、恐るべき安ウイスキーで試してみたが、ストレートではもちろんトワイスアップでもキツかったアルコールの強い刺激が、1:2の水割りではすっかり消えていた。
 さらにそれでいてウイスキーの味わいも程々に残っていて、「旨いじゃないか、このウイスキー」と思わされてしまったよ。

 つまりこのウイスキー1に水2という比率は、「アルコールのキツさを無くし、それでいてウイスキーの風味もしっかり残す」という、実に絶妙な割合だったのだ。
 これより濃いとアルコールの刺激が強くてスイスイとは飲めず、しかしこれより薄くすると水っぽくなり過ぎてウイスキーの風味が損なわれてしまう。竹鶴政孝氏はその事を、ちゃんとわかっておられたのだろう。
 黒沢はウイスキーと言えばストレートかトワイスアップで飲むのが常だったが、「1:2の、マッサン流の水割りもウマいじゃないか!」と感心させられた。
 今は竹鶴政孝氏に、ウイスキーの新たな味わい方を教えられた思いである。

 ただ黒沢は、モルトウイスキーや長期熟成した良いウイスキーを、この1:2の水割りで飲もうとは思わない。
 例の口に少しだけ含み、舌の上で転がし噛みしめるようにするやり方で飲むと、やはり薄く水っぽく感じてしまうのだ。
 だからこの1:2の水割りにしたウイスキーは、どうしてもやや多めに口に含んでクイッと飲むことになる。ハイボールのようにグイグイとは飲まないが、日本酒や割った本格焼酎のようにクイッと飲むとちょうど良いように感じる。
 実際、この1:2の水割りウイスキーのアルコール度数は、日本酒や割った本格焼酎とほぼ同等になっている。
 竹鶴政孝氏は広島の造り酒屋に生まれたと言うが、この1:2の割り方は、ウイスキーを日本酒のように味わえる、日本人向きの飲み方かも知れない。

 ただ、長期熟成した良いウイスキーに関しては、この竹鶴政孝氏流の1:2の水割りにするのは、やはり勿体ないと思う。
 と言うのは、10年モノ以上のウイスキーはよく熟成していて香り高い上に味も丸く、若いアルコールによる荒々しい刺激はまるで無い。そのストレートでも問題なく飲めるウイスキーを、あえて2倍もの水で薄める必要がそもそも無いのだ。

 長期熟成のウイスキーの味と香りは、やはり少しずつ口に含み、舌の上で転がし歯で噛みしめるようにして飲んでこそ充分に堪能できるものだ。ウイスキーを1:1の水で割るトワイスアップなら元の酒の味と香りを損なわないが、2倍もの水で割ってしまうと、ちびちび少しずつ舐めるように楽しむには、やや薄く物足りないように感じる。
 手頃な価格の熟成年数の短いウイスキーの場合は、1:2の水割りは「ウイスキーの味わいをギリギリで残しつつ、若いアルコールの刺激を消して飲みやすくする」というメリットがある。しかし元々よく熟成されているウイスキーの場合には、そのメリットが無く逆に水っぽさを感じさせてしまうのだ。
 1:2の水割りは「やや水っぽい」というだけでなく、ウイスキーの香りもやや薄まるように感じる。

 不思議なもので、ウイスキーはストレートより1:1の水割りにした方がさらに良く香りが立つのだ。だからウイスキー好きには、このトワイスアップという割り方を好む者が少なくない。
 しかしそれ以上に割る水を多くすると、一旦ほぐれて華やかに立った香りがまた少し薄れてしまうのだ。
 それだけに長期熟成されている良いウイスキーを1:2で割ってしまうのは、「香りを減じ、やや水っぽくするだけで、何のメリットも無い」と言えよう。
 では竹鶴政孝氏は、なぜこの1:2の水割りを好んで飲んでいたのか。それを解く鍵には、竹鶴政孝氏が普段飲んでいたウイスキーにある。
 これは有名な話だし、このブログでも以前にも触れた事だが。
 ニッカの創業者である竹鶴政孝氏は、自身も大のウイスキー好きだったが、普段飲んでいたのは輸入モノの高級ウイスキーでもスーパーニッカでもなく、自社で最も安いハイニッカだったのだ。
 かつて酒に等級による区別があった時代の級別で言えば、最低の二級酒である。
 これぞ「自分が飲めないような酒は、お客様には売らない」という、竹鶴政孝氏のモノ造りに賭ける誇りと自信であろう。

 とは言え、ハイニッカはやはり普及品の“二級酒”であり、ストレートやトワイスアップで舐めるように飲むには、若いアルコールの刺激がやはり残っていたのだろうと思う。
 だからこそ“マッサン”は、この1:2の水割りを好んだのではないか。
 この竹鶴政孝氏流の1:2の水割りは、手頃な価格のウイスキーの熟成年数の短さによるアルコールの刺激を見事に消し、それでいてウイスキーの風味もギリギリで残して美味しく飲みやすくしてくれる
 安いウイスキーのアルコールの刺激の強さに辟易していて、しかし薄く水っぽ過ぎる日本の“水割り”にもウンザリしている貴方、是非このマッサン流の1:2の水割りを試してみてほしい。「意外にイケるじゃないか」と驚くに違いない。

 ただこの1:2の水割りは、アルコール度数が日本酒と同じくらいになるから。
 ストレートやトワイスアップは舐めるようにチビチビ飲むから、時間をかけて飲んでもあまり量は飲まないし、ひどく酔っぱらう事にもならないが。
 しかしこの1:2の水割りはひどく口当たり良く飲みやすく、ついクイッと飲んでは「もう一杯、おかわり!」となりがちだ。
 あの竹鶴政孝氏はかなりの酒豪で、元気な頃には毎晩ウイスキーをボトル一本空けていたと聞くが、例の1:2の水割りを試してみて、「ああ、なるほど。ボトル一本とは言わないまでも、ボトル半分くらいはつい飲んでしまいそうだな」と実感したよ。
 手頃な価格のウイスキーを美味しく、日本酒のようにスイスイ飲ませてくれるこの1:2の水割り、飲み過ぎにくれぐれも気をつけて試してみて下サイ!

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コメント


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水割りというのは意外とおくが深いものだと思います。
ウイスキーによって割って美味しい比率は違います。より水割りを楽しみたいと考えているなら、トアイスアップや1:2に縛られず様々な比率で試してみると面白いですよ。

まあ、そもそも売られているウイスキーの大半が水割りなので、通ぶって水割りはヤダと言うのも可笑しな話しだと思いますが。

真久 | URL | 2015-03-26(Thu)01:07 [編集]