空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

昭和の写真少年⑦・85mmは“神レンズ”デシタ

 ところでこう話してきた黒沢自身は、女の子にちゃんと脱いで撮らせて貰えたのか……って?
 高校時代についてだけ言えば、残念ながらNOなんだ。黒沢が仲の良かった子にヌードを撮らせて貰えるようになったのは、大学に進学して東京に出てからだったよ。

 結局それは黒沢自身の人格の問題と言うか、相手の女の子に「脱いで撮らせてあげてもいいナ」と思って貰えるだけの器になれてなかったせいだと思う。
 写真に一生懸命だったのは誰から見ても間違いなかったのだけど、とにかく「キレイな写真が撮りたいんだ!」って自分の気持ちだけで、もういっぱいいっぱいでさ。相手の気持ちまで考えて「急がば回れ」とか「押しても駄目なら引いてみろ」とかいう気持ちのゆとりみたいなものが、まるで無かったんだ。
 あの「鳴かぬなら……」のホトトギスで例えれば、「脱がぬなら、脱ぐまで待とう、女のコ」ではなく、ひたすら「脱がしてみしょう」と押しまくるばかりでね。
 ただ焦る余りに「脱がぬなら、ひん剥いちまえ」とかの犯罪行為にまでは至らなかったのは、まあ不幸中の幸いと言うか。

 で、「撮りたい!」って自分の気持ちよりまずその子と仲良くなることを優先させて、半年とか一年とか時をかけて長期戦で信頼度を高めるようにしてみたら、結果として脱いで貰えるようになったんだ。
 そう、だから身近な女の子の誰かに「モデルになってほしい!」って思ったら、その子を口説くのは暫く我慢して、まず友好度を上げるのに専念した方が良いかも。そうすれば、焦らなくとも結果は必ずついてくるからね。

 でもね。ヌードではないけれどヌードっぽい写真なら、実を言うと高校時代に撮ったことがあるんだ。
 相手は例のチハルさん。
 それとなく入れた探りに、「そのカメラマンが私の彼でなくても、信念を持って撮ってる人なら上半身ぐらいなら脱げるかも」って返事をされたら、カメラを持つ者としてはやはり期待しちゃうじゃん。
 で、さらに「じゃ、黒沢のモデルになって脱いでくれられる?」って聞いてみたんだよね。
 そしたらチハルさんは、かなり考え込んだその後で「全部は脱げないけど、ブラぐらいだったらとれるかも」って。
 メチャ嬉しかったの、今でもよく覚えてるっス。

 それはもちろん、できるものなら全部脱いでほしかったさ。けどヌードを撮った経験どころか、女の子の裸の胸さえナマではまだ拝んだことも無かった当時の黒沢としては、上だけでも脱いでくれるってだけでもう感動ものだったよ。
 ただ少し冷静になってみると、チハルさんのその「ブラぐらいだったらとれそう」って遠回しな言い方が、何か気になってさ。
 で、「それって、胸までなら見せてくれられる、ってことだよね?」って、改めて確かめてみたんだよ。
 対するチハルさんの答えは、やはり何か煮え切らなくてね。「うーん、胸を見せても……っていうより、ブラをとってもいいかな、って」とのコトで。

 胸を見せるの、絶対イヤってわけじゃないけれど、やっぱり恥ずかしい。チハルさんの気持ちは、要約するとまあそんな感じなのだろうね。
 男からするとさ、「見せてくれるのかどうか、ハッキリしてくれよ!」って言いたくなっちゃうところだけど。
 ただ女の子って、こーゆー「自分でもよくわからなくて迷ってて、結局その時の気分次第」ってコトがよくあるんだ。そしてそーゆー時に答えを迫って無理押しすると、まず間違いなく「やっぱりやめる」って話になっちゃう
 たとえ期待してたほど脱いで貰えなかったとしてもさ、焦って話をブチ壊しにしてまるで撮らせて貰えなくなっちゃうよりずっといいよね?
 で、「どこまで見せて貰えるかは、チハルさんの気分と黒沢の口説き次第」みたいな感じで、一対一で撮るところまで持って行ったんだ。

 その頃黒沢が住んでいた町には、そこそこ名の知られた海岸があってね。
 ただ「知られてる」とは言っても、全国レベルの知名度ではなかったから。観光客も土日にはそれなりに来ていたけれど、平日はもう殆ど人影もナシ……って感じ。
 しかも海岸と近くの人家の間には長い松林が続いているものだから、人の目にも触れにくいし、静かで寂しいくらいの場所なんだよ。だからアベックが来てエッチなことをする所としても、地元の一部の人達には知られていたりして。

 で、黒沢はチハルさんを、その海岸で撮ったのだけど。
 そこは学生だし、平日の授業の後に黒沢の自転車で二人乗りして海に向かってね。
 黒沢としてはもちろん、脱がしちゃう下心は満々だったさ。けどさすがに、撮影場所に着くなり「さ、脱いで!」とか言うほどアホじゃ無かったよ。
 最初はやはりね、服はそのまま、ポーズも殆どつけずにごく自然な表情とか撮ってさ。カメラは当時の黒沢が女の子を撮る時必ず使ってた、ワインダー付きのOM-1と85mmF2のセットだよ。

 写真がデジタル化された今でも、85mmって“ポートレート・レンズ”として知られてるよね。
 一眼レフで写真を撮り始めてまだ間もない頃、黒沢は「何で85mmなんてレンズが要るんだろ?」って不思議に思ってたよ。だって“望遠”なんだから、もっとバーンと大きく写るレンズじゃなきゃ意味ねーだろ、みたいな感じで。
 特にフィルムの一眼レフの標準レンズは50mmだったから、85mmなんてそれと殆ど変わらないように思えてさ。「こんな望遠の名にも値しないような半端なレンズ、必要ないじゃん」って、マジで思ってたよ。
 実際、標準レンズと付け替えてみても「写る範囲がちょっと狭くなったなー」って程度でさ。「遠くのモノが大きく見えるようになった!」みたいな実感、殆ど無いからね。
 しかもこの85mmって、ほんの少ししか大きく写らないくせに、値段はかなり張るんだよ(メーカーや明るさにもよるけれど、まあ4~10万くらい)。

 いろいろ勉強して経験も踏むうちにわかってきたけれど、このレンズ、望遠レンズと思っちゃダメなんだよね。そうじゃなくて、ズバリ“女の子撮り専用レンズ”なのだ。バックはボケやすいし、程良い距離でアップを撮りやすいしでね。
 実際、標準レンズで女のコを撮ると、アップの時に距離がやや近くなり過ぎちゃうんだよ。

 人間にはパーソナル・スペースってものがあって、平たく言えばまあ動物のテリトリーみたいなものかな。そしてその範囲内に近づかれると、不安になったりイヤな気持ちになったりするらしいよ。
 そしてそのパーソナル・スペースってのが、だいたい1.2mくらいなんだって。
 で、50mm相当のレンズで撮ると、バストショットでその1.2mくらい、そしてアップでは1mを切ることになっちゃうんだ。
 だから標準レンズで女のコを撮ると、ごく当たり前なバストショットですら、問題のパーソナル・スペース内に踏み込むことになりマス。

 キミもちょっと想像してみてごらん。スマホやコンデジならともかくさ、大きな一眼レフで顔の間近にまで迫られたらかなり圧迫感を受ける筈。
 ましてや相手は異性で、プロのモデルでもないフツーの女のコなんだ。それで距離1mくらいで、大きなカメラで激写……って、これ女のコは絶対ドン引きだよね?
 ただそのパーソナル・スペースってのは一般論だから、恋人とか家族とかなら、もっと近づいたって平気になるよ。だからそのモデルの子との“心の距離”がもっと近くなれば、いずれ50mmの出番も回って来るというものさ。
 でも恋人か家族か、でなければ親友と言えるくらい親しくなるまでは、ある程度長めのレンズでやや距離をとった上で撮る方が良いよ。

 とは言うものの、女のコを撮るにはレンズがあまり長過ぎるのも不向きなんだ。
 今はコンデジでもズームは最低5倍、そしてちょっとイイやつになると10倍や20倍が当たり前で、望遠側は300mm相当だの500mm相当だのだったりするよね。デジイチのエントリー機のダブルズームキットの望遠レンズだって、換算すれば400mmを越えてたりするし。
 けどね、そんな長すぎるレンズはスポーツの競技中か隠し撮り以外、女のコを撮るにはまず使えないよ。
 だってモデルとの距離が遠くなり過ぎて、怒鳴るような大声でなきゃポーズの指示も出来ないようじゃ、撮影のムードぶち壊しだもんね。

 その点、85mmって撮るキミとモデルの女のコの距離が絶妙なんだよ。
 ポートレートで最も多い、縦位置で上半身と言うかバストショットをこの85mmで撮る場合、相手の子との距離は2mくらい、そしてアップでも1.5mってとこかな。
 この距離感って、実際に撮ってみると何ともイイ感じでさ。相手に圧迫感や警戒心を抱かせるほど近くなく、けど声を張り上げることもなく、ごく自然に会話が出来て……って感じでね。

 85mmの利点ってのは、無論それだけじゃなくて。レンズのボケって50mmを越えると急激に大きく柔らかくなって、85mmのボケ味も50mmとは段違いだよ。
 確かに50mmだってそこそこキレイにボケる、けど85mmと較べてしまうと違いは明らかなんだよね。例えて言うなら、回転寿司の美味しいのと、回ってない高級な寿司くらいに違うから。

 85mmのボケ味を知らなければ、50mmのボケでもキレイと思って満足しちゃうけど。ただ85mmの味を一度知っちゃうと、「50mmがあれば充分」なんて、とても思えなくなっちゃうんだ。
 だから女の子のグラビア写真を撮るプロ達は、まず間違いなく85mmのレンズを持ってたよ。一眼レフも大半がAPS-Cサイズで、レンズもズームが当たり前な今はちょっと違うようだけれど、少なくとも「写真はフィルムで、レンズは単焦点」って時代にはそうだったんだ。
 で、黒沢も高校の休みに必死にバイトしてその85mmを買って、もう「気分はプロ!」って感じでチハルさんの撮影に臨んだわけデス。

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