空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

コメントにお答えする。「筆者はなぜサントリーが嫌いなのか?」

 世の中の片隅で細々と書き続けてきた当ブログだが、幸いな事に少しずつ閲覧数が増えてきているようだ。そしてそれに従って、コメントも時々いただけるようになりマシタ。
 ただ残念ながら多忙ゆえ、私用のPCは数日に一度しか見られない状況で、このブログも休日の限られた時間を利用して一週間分をまとめて投稿しているのが現実なのデス。
 実態をバラしてしまうと、ほぼ毎日投稿しているように見えるこのブログだが、実は投稿する日時を指定する機能を使っての事だったのだ。
 で、コメントして下さった方に直接返信するより、新しい記事を書く事に専念し、貴重なご意見を記事の中身に反映させる事で、そのコメントへのご返事と代えさせていただこうと勝手に考えてきたのでアリマス。

 と言う訳で、コメントは(黒沢に否定的なものも含めて)ありがたく拝読しつつ、あえて返信もせずにいた事を大変心苦しく思っていた次第だったのだ、が──。
 最近寄せられたコメントに、どうしてもハッキリお答えせざるを得ないものがあり、そしてそれは当ブログにお立ち寄りになられた皆様にも是非ご一考してしていただきたい事でもあったので、コメントを寄せて下さった方に“返信”という形で個人的に答えるのではなく、一つの記事にして当ブログの姿勢および見解として公表させていただきたいと考えた。

 で、まずその投稿者の名前の記載の無い、寄せられたコメントを掲載してみようと思う。
 これは筆者が投稿した、『マッサンが暴いた、サントリーの恥ずべきイミテーション体質』という記事に対する、2015年3月25日に寄せられたコメントの、全く手を加えぬままの全文だ。


このマンガは私も拝見しました。その上で言わせてもらうと美味しんぼの件に関してはよくサントリーが訴えなかったなと思いました。
私はニッカの方が好きですが、あなたの意見は偏見混じりの独り善がりなものだと感じます(そもそもこのマンガが偏見混じりですが)。
何故なら、低価格のウイスキーを例に出してそのメーカーのことを語るのはあまりにもナンセンスだと考えます。
あなたは角瓶を日本で一番売れているウイスキーだと言って審査員に飲ませたら笑われると確信していると書いていますが、それだけではメーカー全体の評価をするには不十分です。
当たり前のことですが、低価格帯は高価格帯にはかないません(ニッカみたいに頑張っているところもありますが)、なのに低価格帯のウイスキーだけを見てそれを評価することは、木を見て森を見ないことと同じです。
サントリーだって『山崎』、『白州』、『響』など素晴らしい銘柄があります。
記事にも書いてありますが、山崎シェリーカスクは有名なウイスキーバイブルでベストウイスキーに選ばれたこともあります。
それなのにあなたの記事はサントリーを貶すだけで、良い点(中身)を全く見ようとしていない。
失礼ですが、あなたは本当にウイスキーについてわかった上で記事を書きましたか、もっと言えばちゃんとウイスキーを飲んだことがあるんですか?
私は極端な話、角瓶やトリスが世界で一番旨いと言っても良いと思ってます。結局好みは人それぞれ、自分に合った銘柄を楽しめば良いと思います。

 実は他の方からも、「底の知れたアンチ・サントリー」とのコメントを寄せられている筆者だが、確かに筆者はサントリーが嫌いである。
 それもただあの『角瓶』が嫌いでサントリーを“貶して”いるのではなく、サントリーという会社が発展してきた歴史や企業体質そのものが嫌いなのだ。
 その理由については、当ブログのあちこちで書いてきたのだが。例の無名のコメントを寄せてくれた方はその部分を読み取って下さっていないようなので、繰り返しになるが改めて述べさせていただきたい。

 問題は「サントリーのウイスキーを、筆者がなぜここまで“偏見混じりの独り善がり”で貶すのか?」だが、直接その事を語る前に、実に対照的な二つの日本酒の酒蔵について、以前にもこのブログで触れた事を再び語らせていただきたい。

 南アルプスの伏流水が豊富に湧き出す山梨県の県北の北杜市に、山梨銘醸という酒蔵があり、『七賢』という名の酒を造っている。
 黒沢は何年か前に、この『七賢』の山梨銘醸の酒蔵を見学に行ったことがある。この酒蔵の自社製品に関する誇りとこだわりはすごい。山梨酩醸は純米酒や純米大吟醸酒などの高級酒もいろいろ造っているが、驚くのは酒蔵を見学した者に出す酒である。
 その見学コースの最後で、山梨酩醸は『七賢』の出来たての酒も試飲させてくれるのだが、何とその酒は最も安い普通酒なのだ。
 しかもその普通酒が、なかなかに旨いのである。

 と言うのは、山梨酩醸は純米大吟醸酒などの高級酒だけ上等に造るのではなく、最も安い普通酒にも心血を注いで良い酒を造っているからだ。
 普通酒と言えば、他のメーカーでは“醸造用アルコール”と称する工業アルコールの他に糖類(水飴)や酸味料などの怪しげなモノをたくさんブチ込んでいた時代から、山梨酩醸は糖類も酸味料も無添加で、しかも精米歩合も比較的高いものを使った高品質な普通酒を出していた。
 だから山梨酩醸は酒蔵の見学者の試飲に、自信を持って自社で最も安い普通酒を出せたのだ。

 一方、黒沢が現在住んでいる県にも早くから純米酒造りを始め、マスコミにも「高品質な酒造りに意欲的に取り組む酒蔵」のように繰り返し紹介されてきた、H酒造という会社がある。
 だから県内ではこのH酒造の知名度は比較的高く、県内の酒屋のみならず、スーパーの日本酒コーナーにもH酒造の酒がよく並んでいる。
 だがこのH酒造の酒だが、試し飲みのつもりで普通に売られている安い酒に手を出すと、本当にヒドい目に遭う。
 不味い。
 このH酒造の普通酒は、高品質酒造りで知られた酒蔵の製品とはとても信じられないほど不味いのだ。

 H酒造のやり方は、実にタチが悪かった。
 このH酒造は例の「県内で先駆けて始めた純米酒造り」を前面に押し出してマスコミに大アピールする傍ら、普通酒ではかなり長いこと醸造用アルコールの他に糖類や酸味料も加えた粗悪酒、いわゆる三増酒を売り続けていたのだ。
 例の山梨銘醸だけでなく、県内でも良心的な酒蔵は安い普通酒もみな糖類や酸味料は無添加に切り替えた後も、H酒造は糖類や酸味料等を加えた粗悪酒をH酒造のブランドのもとに売り続けた。
 つまりH酒造にとって純米酒などの高品質酒は、「マスコミにアピールして社のイメージを上げ、粗悪酒を売り抜く為の広告塔に過ぎなかった」ということである。

 純米大吟醸酒などの高級酒も多々造りつつ、最も安い酒も自信を持って客に勧められるものを造る山梨酩醸と。
 高級酒は自社の広告塔として、そのブランド・イメージで粗悪な安酒を売り捌いてきたH酒造と。
 そのどちらにメーカーとしての良心があるかは、言わずもがなであろう。
 自社の最も安い酒でも、お客に自信を持って出せるものを造る。これぞ、酒蔵としての誇りと良心と言えよう

 さて、英国の著名なウイスキーのガイドブック『ウイスキー・バイブル』で『山崎シェリーカスク2013』が最高点を取り、「世界最高のウイスキー」に選出されたサントリーであるが。
 サントリーのメーカーとしての体質は、最も安い酒でも原料やコストなどの制約の中で精一杯美味しく造る山梨銘醸と、普通の人が普通に飲む安い酒は高品質酒とまるで別物の不味い酒を平気で造るH酒造の、どちらに近いだろうか。

ウイスキー・ボーイ (PHP文芸文庫)ウイスキー・ボーイ (PHP文芸文庫)
(2014/05/10)
吉村 喜彦

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 かつてサントリーの宣伝部に勤めていた吉村嘉彦氏が、明らかにサントリーをモデルにしたと推察できる『ウイスキー・ボーイ』という小説を書いている。
 その作品の中で、吉村氏は登場人物にこう語らせている。


 極めつきのプレミアム・ウイスキーを少量でいいから出せ。世界で評価されるようになれ。量を売るためのスタンダード品はそのDNAをもつウイスキーだと証明しろ。山頂をきわめ、かつ山裾を広げろ。それらはみな同じ山脈に属すことが大事だ。


 サントリーは上記のうち、「極めつきのプレミアム・ウイスキーを少量でいいから出す」ことと、「世界で評価される」ことは成し遂げた。
 だが後者の「量を売るためのスタンダード品はそのDNAをもつウイスキーだと証明し」、「山頂をきわめ、かつ山裾を広げる」という点ではどうであろうか。
 サントリーは山頂こそきわめたが、山裾の方はどこに広がっているのだろうか。
 酒の量販店やスーパーの洋酒コーナーに行けばイヤになるほどズラリと並んでいるあの『角瓶』が、世界のウイスキー・コンテストで賞を取った『山崎』や、あるいは『白州』や『響』と同じDNAを持ち、同じ山脈に属するウイスキーだと、コメントを寄せて下さった方は思えるだろうか。

 筆者が『角瓶』を取り上げてサントリーを批判した事に対して、「低価格のウイスキーを例に出してそのメーカーのことを語るのはあまりにもナンセンスだ」と、コメントを寄せて下さった無名の方はおっしゃる。
 そして「角瓶」だけで「メーカー全体の評価をするには不十分」で、それは「木を見て森を見ないことと同じ」であると。
 しかしコメントを寄せて下さった方ご自身、「低価格帯は高価格帯にはかないません」とおっしゃいつつも、「ニッカみたいに頑張っているところもあります」とも認めておらでるではないか。

 コメントを寄せて下さった無名の方も、そして今この記事を目にして下さっている皆さまも、少し考えてみていただきたい。
「高くて良い製品を造る」のと、「安くて良い製品を造る」のと、果たしてどちらがより難しい事であろうか?
 高くて良い製品を造るのも、それはそれなりに難しいだろうし、苦労もあるだろう。ただ高い値を付けられる高級品は、予算も多く付けられ良い原材料をふんだんに使って造れる。
 しかし安く売らねばならぬ普及品は、コストカットの圧力もきつく、原材料や予算の制約もきつい。だから「カネのない者が買う安いやつは、この程度でいいや」と、高価格帯のものと完全に造り分けるのではなく、いろいろな制約の中で「少しでも良いものを造ろう」と頑張るのは、とても難しい事なのだ。
 だから筆者は「高価格帯の製品で世界的な賞を取るよりも、普通の人が普通に買える低価格帯の製品で少しでも良いものを造る方が難しい」と断言するし、ゆえに「そのメーカーの技術力と企業としての良心を見るには、普通の人が普通に買える普及品を見ればわかる」と思うのだ。

 コメントを寄せて下さった方は、筆者が『山崎シェリーカスク』や『白州』や『響』などのサントリーの良い点をまるで見ようとせずに貶してばかりだとおっしゃる。
 いやいや、筆者はわかっておりマス。サントリーがウイスキーで世界的な賞を複数取っている事も、高価格帯のウイスキーは良質な事も充分に知った上で、あえてサントリーを叩いているのだ。
 と言うより、だからこそそうした高価格帯の製品と低価格帯の製品を「割り切って」造り分けて、普通の人が普通に飲む低価格帯の製品に心血を注いでいるように見えないサントリーに腹を立てているのだ。

 とは言え黒沢も、「コチコチのアンチ・サントリーでニッカびいき」と言うわけではない。アサヒビールの完全子会社化した後のニッカは、販売力こそ強化されたものの製品については幾つか疑問点もあるし、特に『ブラックニッカ・クリア』については、このブログでも何度か批判してきた。
 それでもニッカには、『ブラックニッカSP』やノンエイジの『ピュアモルト宮城峡』や『竹鶴』など、千円台から二千円程度で買える価格帯に、ウイスキー好きに高く評価される製品が幾つもある。
 サントリーにその価格帯に、同じようにウイスキー好きに高く評価される製品があるかと黒沢は問いたいのだ。
 そしてその事が、サントリーの大問題点だと黒沢は思っている。

 少し話は逸れるが、何故自動車メーカーに、大金を投じてF1のレースやラリーに参加する会社があるのだろうか。
 それはもちろん、まずは宣伝とイメージアップの為だろう。
 だがその他にも、「過酷なレースで培った技術を、一般車の製造にも活用する」という目的もある。
 で、サントリーだが。
 世界的なコンテストで賞を取ると、サントリーはすぐに新聞などに大々的な広告を出してその事を宣伝している。
 世界的なコンテストで賞を取った事を、サントリーは間違いなく自社製品の宣伝とイメージアップに活用しているが、ではそれで培った技術を、一般の酒造りにも活用しているだろうか。

 サントリーの宣伝部の社員であった吉村嘉彦氏の、サントリーをモデルにした『ウイスキー・ボーイ』という小説の中の台詞を、再度引用しよう。
「極めつきのプレミアム・ウイスキーを少量でいいから出せ。世界で評価されるようになれ。量を売るためのスタンダード品はそのDNAをもつウイスキーだと証明しろ。山頂をきわめ、かつ山裾を広げろ。それらはみな同じ山脈に属すことが大事だ」
 サントリーの「量を売るためのスタンダード品」であるあの『角瓶』は、果たして世界で評価された『山崎』や『白州』や『響』と同じDNAを持つウイスキーだと証明できるだろうか。
 ニッカの『ブラックニッカSP』やノンエイジの『シングルモルト宮城峡』などは、高価格帯の製品にはもちろん及ばないが、それでも「ああ、さすがニッカの製品だ」と感じさせるものがあるが、サントリーの低価格帯の製品にそれがあるだろうか。
 少なくとも良心的な会社なら、「高くて良いもの」だけでなく「安いがお値段以上のもの」を造る筈だと黒沢は思うのだ。
「低価格帯の製品なのだから、高価格帯の製品と比べようもないものでも仕方ない」とは、黒沢は思わない。

 例えばトヨタ車が『レクサス』や『クラウン』などの高級車だけ素晴らしい造りで、大衆車の『カローラ』がまるでそれとは別の、いかにも安物らしいいい加減な造りだったとしたら。
 トヨタ車はそれでも、世界中で評価されただろうか。
 いや、そうではなかろう。『レクサス』が素晴らしいからではなく、大衆車でもトヨタらしい良い車を造っているからこそ、世界で評価されているのだ。

『ワールド・ウイスキー・バイブル2015年版』でサントリーの“山崎シェリーカスク2013”が最高点を取っただけでなく、本場スコットランド産のウイスキーがベスト5にも入らなかったことについて、英国のメディアは「屈辱」と報じ、『ワールド・ウイスキー・バイブル』の著者ジム・マーリー氏は「スコッチメーカーへの警鐘とすべき」と語ったという。
 だがこの事態に対して、スコッチメーカーはそう悲観する必要はないと黒沢は考えている。
 何故ならサントリーとスコッチメーカーでは、製品に対する姿勢がまるで違っているからだ。

 例えばウイスキー好きなら誰でもその名を知っているジョニー・ウオーカーだが、有名な黒ラベルや、更に高価なブルーラベルやゴールドラベルなどもある。しかし最も安く、量販店では千円前後でも手に入る赤ラベルでさえ充分に旨く、「同じジョニー・ウオーカーのDNAを持ち、同じ山脈に属するウイスキーだ」と感じさせてくれる。
 ジョニ赤だけではない、ホワイト&マッカイでもベルでも、ちゃんとしたスコッチは最も安いものでも高い製品と同じDNAを感じさせる旨さがあるのだ。

 ではサントリーは、どうだろうか。
 サントリーの普通の人が飲む低価格帯のウイスキーに、『山崎』や『白州』や『響』と同じDNAを感じさせる旨さがあるだろうか。
 4リットル入りのペットボトルで売られているあの『トリス・ブラック』に、『ワールド・ウイスキー・バイブル2015年版』で最高点を取ったという『山崎シェリーカスク2013』と「同じ山脈に属するウイスキーだ」と思わせるものがあるだろうか。
 その答えは、間違いなく“否”だ。
 こうした比較を、コメントを寄せて下さった方は「低価格のウイスキーを例に出してそのメーカーのことを語るのはあまりにもナンセンスだ」とおっしゃるが、黒沢はそうは思わない。
 何故なら黒沢は、「普通の人が飲む普通の酒をどう造るかにこそ、そのメーカーの体質が現れる」と考えるからである。

 ニッカの竹鶴政孝氏は、酒に特級・一級・二級の区別があった旧酒税法の時代に、自社で最も安い二級の『ハイニッカ』を自ら飲み続けた。
 そして山梨銘醸は、酒蔵の見学者に『七賢』で最も安い普通酒を試飲させていた。
 これぞ、酒造りにすべてを賭けている者たちの意地と、自社製品に対するプライドであろう。
 自信を持って客に出せ、そして自らも愛飲できるものでなければ製品として世に出さない。
 モノ造りとはこうでなければならない、と黒沢は強く思う。

 だから筆者は酒蔵や酒類メーカーの善し悪しを、賞を取るための広告塔としての高価な酒ではなく、そこが売る普及品の安い酒で判断している。
 普通の人が普通に飲むスタンダード品でも製品に対むするポリシーを貫くか、それとも「安かろう、悪かろう」で儲かれば良しとするか。一般の人が最も多く手にする安い普及品にこそ、その会社の企業体質がハッキリと現れているのだ。
 筆者はこのブログで何度も繰り返し述べているが、「いくら高級酒で評判を取ろうと、世界的に有名なスピリッツやウイスキーの賞を取ろうと、その会社が出す安い酒が不味ければダメだ」と確信している。
 経営者自らが自社の最も安い酒を愛飲し、酒蔵の見学者にもそれを勧める。それでこそ真に一流の酒の造り手と言えよう。

 酒だけでなくどんな製品であろうと、安い普及品でも「安かろう、悪かろう」ではなく、品質に良心を感じさせるのが、もの造りをするメーカーとしての意地と誇りだろう。
 値段の張る高級品が、高品質なのは当たり前のことである。高価でありながら品質が満足出来ないレベルだとしたら、それはボッタクリの悪徳商法と言うしかない。
 コストや原材料に厳しい制約のある普及品で良いものを造るのは、高価格帯の商品を造るよりも難しい。だからこそ安い普及品の出来を見れば、そのメーカーの本質がわかるのである。
 断言するが、安価な製品は「安かろう、悪かろう」で良しとしているメーカーは、儲けが最優先で消費者を見下しているクズ企業だ。

 コメントを寄せて下さった方は、筆者は『山崎』や『白州』や『響』などサントリーの良い所を見ようとせずに貶すだけだとおっしゃり、続けて「本当にウイスキーについてわかった上で記事を書きましたか、もっと言えばちゃんとウイスキーを飲んだことがあるんですか?」ともおっしゃられたが。
 筆者は『山崎』や『白州』や『響』などの存在も充分に知った上で、あえてサントリーを批判しているのだ。と言うより、『山崎』や『白州』や『響』などのような良いウイスキーを造れる力がありながら、普通の人が普通に飲む低価格帯の製品では明らかに力を抜いて、まるで別物の味と香りのウイスキーを造っている事に腹を立てているのだ。

 筆者は繰り返し、純米大吟醸などの高品質酒も造りつつ、それ以上に普通の人が飲む普通の酒も少しでも良いものを造ろう努力し、酒蔵の見学者には最も安い普通酒を試飲させる山梨酩醸と、純米酒造りを宣伝塔にして、普通酒はまるで別物の糖類や酸味料を添加した粗悪なものを造って売り捌いてきたH酒造の話をしてきた。
 最も安い酒でも高級品と同じDNAを持つ充分に旨いものを生産しているスコッチは、間違いなく山梨酩醸と同じスタイルだが。
 ではサントリーはどうか。
 山梨酩醸とH酒造と、サントリーがどちらの種類に属するメーカーかは、同社の『トリス』や『レッド』や『角瓶』を少しでも飲んでみれば、言うまでもなくわかるだろう。

 例の吉村嘉彦氏の小説『ウイスキー・ボーイ』の言葉を借りて言えば、サントリーは「極めつきのプレミアム・ウイスキーを少量出し、世界で評価されるようにはなったが、そのDNAは量を売るためのスタンダード品には受け継がれていない。山頂こそきわめたものの、その山裾は広げず、安いウイスキーは安物と割り切って、高いものとはまるで違うものを造っている」といったところだ。
 賞を取る為に造られた特別なウイスキーが、世界でどれだけ評価されようと。普及品のウイスキーが今のレベルである限り、黒沢はサントリーを一流企業とは決して認めない。

 もし「サントリーは国際的なウイスキーメーカーです」と胸を張りたいのなら。普通の人が普通に飲む一番安いウイスキーも、ジョニ赤と同じレベルの品質にしてみろと言いたい。
 いくら世界的な賞を取って「山頂をきわめ」ようと、その山裾を広げDNAを量を売るためのスタンダード品に伝える気がなく、高品質の酒と普通の人が普通に飲む酒をまるで別に造っているのでは意味がないのだ。
 しかしサントリーはまるでそうは思わないようで、「量を売る為のスタンダード品はお値段以下のものを造り、宣伝の力で大量に売り捌いて儲ければよい」という姿勢があからさまに見えているのが、ウイスキーを愛する者の一人として何とも腹立たしくてならない。

 明らかに安酒しか造らないと世間にも認知されている企業が、混ぜ物アリの粗悪で安い酒を造っている分には、愉快ではないがまあ別に構わない。消費者がそのメーカーに過大なイメージを抱いて、「良い酒を造っているのだろう」などと誤解したりする事は無いからね。
 しかしサントリーは違う。『山崎』や『白州』や『響』のような高価で高品質な製品を造って世界的な賞を取り、そしてそれを大々的に宣伝して「世界一のウイスキーを造っている」と消費者にイメージづけておきながら、実際に普通の人に普通に売っている製品は、炭酸で薄く割りでもしなければまともに飲めないような代物なのだから、やっている事は詐欺に近いよ。

 実際には糖類や酸味料等の混ぜ物アリの粗悪な普通酒を売りながら、高品質な純米酒造りを自社の広告塔に利用しているH酒造と同じで、コメントして下さった方が指摘された『山崎』や『白州』や『響』の存在も、サントリーにとっては『角瓶』などの普通の人が普通に飲むウイスキーのイメージを上げる為の広告塔に過ぎないのだ。
 だからこそ! 黒沢は「普通の人が普通に飲む価格帯のウイスキー造りを、高価格帯の製品とハッキリ分けているサントリーのイメージを上げている分だけ、『山崎』や『白州』や『響』の存在はタチが悪い」と考えている。

 コメントを寄せて下さった方が「サントリーの良い所」として認めるべきとして名前を挙げた『山崎』や『白州』や『響』だが、「これらは、サントリーにとってやはり賞を取って宣伝に使うだけの広告塔に過ぎないのだ」と、より強く実感させる事実がある。
 サントリーはこの4月1日より、39製品のウイスキーの価格を二割前後も引き上げた。
 値上げしたのは『響』の17年と12年、『山崎』と『白州』の12年、それにノンエイジの『山崎』と『白州』など。
 つまりコメントを寄せて下さった方が「サントリーの良い所として認めろ」とおっしゃられた製品が、すべて大幅値上げされたのだ。
 さらにサントリーが扱う輸入ウイスキーも、ザ・マッカランとラフロイグとバルヴェニーなども同様に値上げした。

 具体的には『響17年』が1万円から1万2千円に、同12年が5千円から6千円に、『山崎』と『白州』の12年は7千円から8千5百円に、ノンエイジの『山崎』と『白州』は3千5百円から4千2百円になった。
 そして『ザ・マッカラン12年』も5千円から6千円に、『バルヴェニー12年』は4千6百円から5千5百円に引き上げられた。

 で、この突然の大幅値上げの理由を、サントリーはこう説明している。
 ①トウモロコシや麦芽などの輸入価格が高騰しているため。
 ②ウイスキーの生産量は世界で増加傾向にあり、樽の調達価格も上昇している。
 サントリーのこの説明に素直に納得できる者がいるとすれば、はっきり申し上げてバカである。

 サントリーによると、「トウモロコシや麦芽の輸入価格は2009年比で60~70%上昇した」ということだが。
 考えてもみてほしい。
 例えば値上げの対象になっている、『響』や『山崎』や『白州』の12年の原酒を仕込んだのは、いつだろうか?
 サントリーが称している“12年”という貯蔵年数に嘘が無いとすれば、サントリーが原材料価格の比較の対象としている2009年よりずっと前の、2002年か2003年のことである筈だ。
『響17年』ともなれば、原酒を仕込んだのは何とまだ20世紀のうちのことになる。
 ノンエイジの『山崎』や『白州』でも少なくとも7~8年は樽熟成しているだろう。

 だからサントリーが値上げの対象にしている『山崎』も『白州』も『響』も、サントリーが言う「原材料や樽の価格の高騰」とはまるで関係がない筈だが、どこか間違っているだろうか。
 それともサントリーのウイスキーは、「貯蔵している間に、その麦芽やトウモロコシや樽の価格が上がる」とでもいうのだろうか。

 サントリーの言う原材料と樽の価格高騰は、確かに事実なのであろう。
 しかしバカでもわかることと思うが、原材料と樽の価格が高騰した分を価格に上乗せして売らなければならないのは、『山崎12年』なら今から12年後、『響17年』なら17年後の筈だ。
「今、樽と原材料費が高騰しているから」と、それより何年も前に既に仕込みが終わったウイスキーの価格を上げるのは、どう考えても「不当値上げ」と言わざるを得まい。

 しかもサントリーは『山崎』や『白州』や『響』や輸入ウイスキーを大幅値上げする一方、『角瓶』や『トリス』などは従来のまま、価格を据え置くのだそうだ。
 これはおかしい、話がまるで逆ではないか。
 もし輸入原料や樽の価格高騰のせいで値上げせざるをえないとしたら、その影響を受けているのは、より若い原酒を使っている『角瓶』や『トリス』などの筈だ。
 であるから、値上げするとしたらまず『角瓶』や『トリス』などである筈なのだ。
 にもかかわらず原材料や樽も、すべて価格が高騰する以前に仕込んだ『山崎』や『白州』や『響』などの価格を二割前後も上げようというのは、どう考えても筋が通らない。
 結局、サントリーはコストが上昇している『角瓶』や『トリス』などの価格は抑え、『山崎』や『白州』や『響』にその分を転嫁しようというのだろう。

 定評ある高級なウイスキーを造っているのはサントリーだけでなく、ニッカにも『竹鶴17年』や『鶴』などがあるし、近年では『イチローズ・モルト』の評判も急上昇中だ。それに、サントリーが輸入していないシングルモルト・スコッチだって多々ある。
「どれだけ値上げされても、俺はサントリーの『山崎』や『白州』や『響』を飲み続ける!」という、おカネもある熱心なファンもいるだろうが、「これだけ値上げするなら、他社製品を飲んでみよう」と思う者も少なくあるまい。
 それをあえて承知の上で、理屈に合わない大幅値上げに踏み切るという事は、だ。サントリーとして『山崎』や『白州』や『響』は、「売り上げが落ちようが、賞を取った製品としてラインナップにありさえすれば構わない」と考えている証拠であろう。
 だから黒沢は、コメントを寄せて下さった方が「サントリーの良い所としてよく見ろ」とおっしゃる『山崎』や『白州』や『響』は、「サントリーのウイスキー全体のイメージを上げる為の、悪い意味での広告塔」と考えている。

 このサントリーの姿勢を「良し」とする者も、おそらく中にはいるだろう。「金持ちが買う高い酒を値上げして、庶民が普通に飲む『角瓶』や『トリス』の値段を据え置くのは大賛成だし大歓迎」と。
 だがそれも肝心の『角瓶』や『トリス』に、「ああ、流石はあの『山崎』を造ったメーカーのスタンダード品だ」と唸らせるだけの旨さがあればの話である。
 コメントを寄せて下さった方は「低価格のウイスキーを例に出してそのメーカーのことを語るのはあまりにもナンセンスだと考えます」とおっしゃり、それは「木を見て森を見ないことと同じ」ともおっしゃられたが。
 黒沢は全くそうは思わない。
 例えばジョニー・ウオーカーやホワイト&マッカイは、千円ちょっとで買える最も安いものでも「さすがはジョニー・ウオーカー(ホワイト&マッカイ)だ」と感じさせる旨さがある。
 サントリーの宣伝部の社員であった吉村嘉彦氏の小説の中の言葉通り、名の通ったスコッチのメーカーは「極めつきのプレミアム・ウイスキーで世界から評価されつつ、量を売るためのスタンダード品もそのDNAをもつウイスキーだと証明している」のだ。「山頂をきわめつつ山裾を広げ、最も安い製品もみな同じ山脈に属している」のだ。
 その前半の、「極めつきのプレミアム・ウイスキーを少量出して世界から評価される」ことは、『山崎』や『白州』や『響』で成し遂げたサントリーだが。さて、『角瓶』や『トリス』などの“スタンダード品”に、『山崎』や『白州』や『響』と同じ山脈に属するDNAを感じるだろうか。
 少なくとも黒沢には、全くそうは思えない。

 例えばニッカでは、『ブラックニッカSP』はまさに「お値段以上!」の味だし、『ブラックニッカ8年』もなかなか旨い。また、ノンエイジの『シングルモルト宮城峡』の出来の良さは、ウイスキーの味がわかる人達の間で評判になっている。
 千五百円以下で買える低価格帯のものでさえそうなのだから、『ニッカG&G』や『竹鶴ピュアモルト』となれば、その味と香りはさらにそれ以上となる。

 それに比べて、サントリーのウイスキーはどうか。千五百円以下や二千円以下の、普通の人が気軽に買って飲めるもので「この値段でこれだけの味と香りの製品を造っているのか!」とウイスキー通を唸らせるものがあるだろうか。
 はっきり言って、サントリーで「これは旨い!」と自信を持って言えるウイスキーと言ったら、今回大幅値上げが発表された『山崎』や『白州』や『響』くらいしか無いだろう。
 サントリーのスタンダード品と言うか低価格帯のウイスキーと言えば、それこそCMの通りに氷で冷やし込み大量のソーダや水で薄く割でもしなければ美味しく飲めないような製品ばかりだ。

 庶民の手が届くスタンダード品のウイスキーは、いかにも低価格帯の商品らしいアルコールの刺激の強いものをCMの威力で売り続け、まともな製品はただ賞を取る為の広告塔に使って不当な値上げをする。
 このサントリーのウイスキーに対する姿勢に、どうしたら好意を持てると言うのだろうか。
 コメントを寄せて下さった方のような、「低価格帯のものは不味くても仕方ないのであって、それより『山崎』や『白州』や『響』の出来の良さに目を向けろ」というような考えには、黒沢は全く同意できない。

 サントリーの『角瓶』を例に出してサントリーを批判した筆者を、コメントを寄せて下さった方は「木を見て森を見ないことと同じ」であり、「独り善がりの偏見」で「サントリーを貶してばかり」とおっしゃる。
 しかしサントリーの『角瓶』は、サントリーという森の中の一本の木に過ぎないのだろうか。
 どの店に行っても嫌になるほど大量に並び、CMも盛んに流され続けている『角瓶』は、一本の木どころか「森の大部分を占める木々」のように筆者には見えるのだが。

 この2月21日に、サントリーは毎日新聞に『角瓶』の全面広告を出した。
 その広告の下段に、発売当時と現代の二本の『角瓶』の写真に挟む形で、大きな字でこう書かれている。


「日本人の味覚に合う
 日本のウイスキーをつくりたい」

 そしてその下には、さらにこうも書いてある。


「愛されて77年、国内ウイスキーNo.1」

 実際、後にニッカを創業する竹鶴政孝が造り、サントリー(壽屋)が発売した日本初のウイスキーの『白札』も、その次の『赤札』も思うようには売れず、竹鶴の退社後の1937年に発売された『角瓶』が大いに売れて、今のサントリーのウイスキーの基が築かれたのだ。
 例の2月21日の、サントリーの全面広告にもこう書かれている。
1937年に発売された『角瓶』の大ヒット。山崎蒸留所の着工から14年を経て、最初の成功だった。ここから、西洋の模倣でない日本ならではのウイスキーが発展していく

 この「愛されて77年」で「国内ウイスキーNo.1」でもある、サントリーのウイスキーの原点とも言える『角瓶』を、まさか「森の中の一本の木」とは言えますまい?
 筆者に言わせれば『山崎』でも『白州』でも『響』でもなく、この『角瓶』こそがサントリーのウイスキーの本質であろう。

サントリー角瓶1937年P1030861

 サントリー角瓶P1030859

 では、そのサントリー自身が「ここから、西洋の模倣でない日本ならではのウイスキーが発展して」いったのだと言う『角瓶』とは、いったい何物であろうか。
 はっきり言えば、サントリーが「日本人の味覚に合う、日本のウイスキー」だと考える『角瓶』は、最初から香り付けにリキュールを入れた、英国など他の世界のウイスキー産地の基準で言えば“まがい物ウイスキー”だったのだ。
 その証拠に、1937年に発売された当初から、ボトルのラベルに“Liqueur Whisky”と堂々と書かれている。
リキュール・ウイスキーって、何だ?」と不思議に思いませんかね、皆さん。

ほんものの酒を! (三一新書 921)ほんものの酒を! (三一新書 921)
(1982/02/01)
日本消費者連盟

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 事実、日本消費者連盟が著作編集した『ほんものの酒を!』でも、『角瓶』には二種類のリキュールとカラメルが使われているとハッキリ書いてある。
 それだけではない。『角瓶』に使われていた“グレーン”は樽熟成を経た“グレーンウイスキー”ではなく、穀物をただ連続蒸留しただけの“グレーンアルコール”なるシロモノだったのだ。

 ブレンデッド・ウイスキーと言えば、幾種類かのモルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンドして造るのが常識だ。
 しかしサントリーの『角瓶』は、グレーンウイスキーならぬただ蒸留しただけの穀物アルコールで原酒を“希釈”した、ウイスキーの規格から外れた“アル添”の模造ウイスキーだったのだ。

 この原酒をアルコールで希釈し、リキュールで香り付けした模造ウイスキーが、鳥井信治郎氏の思う「日本人の味覚に合う、日本のウイスキー」だと言うのだから、怒りを通り越して笑わせてくれる。
 本当なら、愛国者の一人として「日本人の味覚をバカにするな!」と怒りたいところだが、このまがい物の“リキュール・ウイスキー”は、何と我ら日本人に「愛されて77年」で、昨年には遂に「国内ウイスキーNo.1」になってしまったのだから、全く情けない。
 サントリーはこの『角瓶』を「西洋の模倣でない日本ならではのウイスキー」と誇るが、原酒をアルコールで希釈してリキュールで香り付けするなど、西洋の誰もやったりしねーよ……と毒づきたくなってしまう筆者は、皆が『角瓶』をハイボールにして喜んで飲んでいるこの日本の中では、惨めに負け犬の遠吠えをしているようなものなのだろうな。

 しかしこのまがい物の“リキュール・ウイスキー”こと『角瓶』のヒットから「西洋の模倣でない日本ならではのウイスキーが発展していく」と、当のサントリーが公言している以上、「サントリーのウイスキーは、混ぜモノ入りの模造ウイスキーで発展してきたもの」と言い切って間違い無かろう。
 事実、日本消費者連盟の『ほんものの酒を!』によれば、サントリーのウイスキーには『角瓶』だけでなく、『ホワイト』にも『リザーブ』にも『オールド』にも複数のリキュールや甘味果実酒が混ぜ込まれていた
 サントリーとは、そういう会社なのだ。
『角瓶』という木だけでなく、サントリーという“森”の木々は、アルコールやリキュールや甘味果実酒など、他の国では考えられないようなモノを混ぜられた、妙な“木”だらけなのだ。

 前にも引用したサントリーの元社員の吉村喜彦氏が書いた小説『ウイスキー・ボーイ』の中に、こんな一節がある。


 ウイスキーがあんなに売れるはずがない。売れすぎるウイスキーなんてまともなはずがない。
(中略)
 だいたいウイスキーは樽の中でゆっくりゆっくり育っていくもんだろ。それを……売れるのを良いことに、どんどん生産すること自体がおかしい。


 NHKの『マッサン』でも、利益を上げる為に早く出荷するように迫る社長に、マッサンが「原酒は少なくとも五年は寝かせなければ!」と抵抗する。その通り、本物のウイスキーとは、出荷できるまでに何年もかかるものなのである。
 だからもしあるウイスキーの人気が出て大量に売れるようなことがあれば、やがて在庫が尽き終売にならなければおかしいのだ。例えばニッカの『竹鶴12年』も、惜しまれつつ終売になった。
 にもかかわらず大々的なCMでブームを起こしてガンガン売りまくられ、全国どこの店頭にもズラリと並ぶような“ウイスキー”があるとすれば、作り方のどこかに「原酒の熟成を省くゴマカシ」があるのだ。
 
 例のサントリーの元社員の吉村嘉彦氏は、明らかにサントリーをモデルにした小説『ウイスキー・ボーイ』の中で、その会社で爆発的に売れたウイスキーは、輸入モルトに原料用アルコールを混ぜた粗悪品だったとハッキリ書いている。

 サントリーと言えば。
だいたい日本人というのはそれほど香りに強い民族じゃないんですね。だから、日本のウイスキーで香りに重点を置いたウイスキーというのは少ないでしょう
『ウイスキー読本』でこう語ったのは、誰あろうサントリーの二代目社長の佐治敬三氏である。
 佐治敬三氏は、『財界』という雑誌でこうも言っている。
日本のウイスキーは、味わうウイスキーであって、外国のウイスキーは、香りのウイスキーだといっているんです
 ……このような認識の社長が、マスター・ブレンダーも兼任してウイスキーを造っていたのだから、サントリーが「ウイスキーの香りなど、後でリキュールを混ぜればいい」と思っても仕方ないデスよね。

 一方、竹鶴政孝氏はこう語っている。
「何と言っても、ウイスキーは宣伝より品質が肝心である。それと、経営者が貪欲であってはダメだ。儲けようと思うと、よい酒はできない。十年、二十年と時間をかけて熟成させたモルトをたっぷり使ってこそよいウイスキーができる。また私は、ウイスキーというものは、絶対に量産化できないと考える。(中略)だから、私どもでは、十年かかるものには十年をかける。その代わり、立派な原酒をつくるべく努力する。原酒の熟成期間を人為的に短縮する方法とか、添加香料の研究などは、一切禁じている
 それに対し、鳥井信治郎氏の三男でサントリーの副社長だった鳥井道夫氏は『和洋胸算用』という本でこう語っている。
マーケティングのなかで大きな位置を占めている広告というものを十分に理解している人でなければ、今後の経営者にはなりえないのではないかと私は思っている

 巷では、「広告のサントリー、品質のニッカ」とも言われるが。
 ……広告と品質と、どちらが勝ったかはサントリーの一強と言っても差し支えない日本のウイスキー業界の状況を見れば、答えは明らか過ぎるほどハッキリしている。
 竹鶴政孝氏がいくら品質を重んじ、添加香料等を禁じて長く寝かせた原酒を使った製品を出しても。
 肝心の日本の消費者たちは、アルコールで希釈しリキュールを混ぜた方のサントリーのウイスキーを、その大々的で巧みな広告に乗せられて選んだのだ


ほんものの酒を! 続 (三一新書 956)ほんものの酒を! 続 (三一新書 956)
(1984/10)
日本消費者連盟

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 そしてまたサントリーは、小売店や飲み屋に対する営業攻勢も猛烈だった。
 これも日本消費者連盟の『続・ほんものの酒を!』によると、ある人が赤坂でスナックを出したところ、サントリーからボトル二百本も無料で提供されたのだそうだ。もちろん、「ウイスキーはサントリーのものしか置かない」という条件付きで。
 コレを受ければ、その二百本分の売り上げは丸々店のものになるわけだから、その人もその条件を受けたそうだ。

 また、これも『続・ほんものの酒を!』によるが、サントリーの商品を扱う問屋や小売店の店主が加盟している“サントリー会”という組織があって、会員はサントリーが無料で宴会や旅行に招待してくれるという。
 そして以下に紹介するのは、そのサントリー主催のベトナム旅行に参加したある小売店主の思い出話である。
夜の接待になってサントリーは一人一人に女を世話してくれたんだけど、あてがわれたのが、まだ十四歳くらいの少女でね。何もしないで、そっと帰したけど……サントリーのやり方も、ちょっとネ……」

 わかっている。ビジネスは綺麗事では無いし、販売攻勢も夜の接待も、現実には「あり」なのだろう。
 ある意味では、品質のニッカがサントリーに負けたのは「宣伝の力を軽視し営業を怠ったから」とも言えるかも知れない。
 しかしそのサントリーの宣伝&営業攻勢のせいで、最も不利益を被っているのは、我々消費者なのだ。

 酒屋やスーパーの洋酒コーナーの売場は限られているから、置かれるのは当然営業力の強いサントリーのものが大半を占めるようになる。
 皆さんに尋ねるが、近所の酒屋やスーパーを数軒回っても手に入らないサントリーのウイスキーが、どれだけあるだろうか。『ローヤル』、『スペシャルリザーブ』、『オールド』、『ホワイト』、『レッド』、『トリス・エクストラ』、『トリス・ブラック』、どれも必ずどこかに置いてある筈だ。あの『角瓶』に至っては、三種類すべて揃えて置いてある店も少なくない。
 しかしニッカはどうだろう。『ブラックニッカ・クリア』や『ブラックニッカ・リッチブレンド』、それに『ブラックニッカ8年』と『スーパーニッカ』はまあ手に入る。しかし『ブラックニッカSP』や『G&G』や『ハイニッカ』となると置いてある店は殆ど無く、熱心なファンはネット通販で手に入れている者が多い。
 先月までの『マッサン』のブームで、筆者の家の近所の酒屋に『ブラックニッカSP』と『G&G』と『ハイニッカ』がひょっこり出て来たが。しかしその割を食ってか、キリンのウイスキーが店頭から姿を消していた。

 筆者の利用しているJRの駅近くにも酒屋があるのだが、その店では『マッサン』の人気にもかかわらずウイスキーはサントリーの製品だけ置き続け、他社の製品は店内のどこにも見当たらない。
 また筆者がよく利用しているスーパーでも、酒のコーナーに置いてあるウイスキーは『角瓶』と『スペシャル・リザーブ』だけだ。
 そして外に飲みに行けば、ウイスキーと言えば当たり前のようにサントリーを出され、テレビをつけても『角瓶』のCMが流れている。
 ウイスキーにこだわりのある者は、それでも他のメーカーのウイスキーもいろいろ飲んでみるが。
 そうではない圧倒的多数の消費者は、ウイスキーと言えばCMで頻繁に見て、店頭でも最も多く並んでいるサントリーのウイスキーを飲むだろう。
 そしてその結果が、今のサントリーの一人勝ちとも言える状況を作っているのだ。
 この多数の人が「ウイスキー=サントリー」と思っている状況を、筆者はとても憂いているのだ。

 良い物を造って、その結果として一人勝ちしているなら良いのだ。
 そうではなくて、永いこと原酒をアルコールで希釈しリキュール等で香り付けしたまがい物のウイスキーを造り続け、それを宣伝攻勢と営業力で売り抜いてきたサントリーの商法が筆者は許せないのだ。
 もちろんサントリーは別に法律に反する事をしたわけではなく、筆者がただ「道義的に許せぬ」と感じるだけの事だが。

 コメントを下さった方に申し上げたいのは、筆者はただ「木を見て森を見ずに」サントリーを貶しているのではなく、サントリーという“森”がどう生まれてどう育ってきたか、その成り立ちや営業方法や経営者の姿勢も見た上で批判しているのだ。
 それでも「偏見混じりで独り善がりなアンチ・サントリー」とお呼びになりたければ、「どうぞご自由に」と申し上げるしかない。

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2016年4月、サントリー再値上げ。

2016年4月、サントリー再値上げ。

マッカランの価格を見て、笑いました。
3年前の価格から3倍になりましたね。

サントリー擁護の方が居るのは、それはそれで仕方のないことです。

私はサントリー擁護派が何を抜かそうがウイスキーに関しては予算内で混ぜ物なしの「本物」を買うだけです。

なのでサントリーが販売元の海外ウイスキーに関しては最初から無視して「並行輸入品」しか眼中にありません。

混ぜ物ウイスキーの角瓶呑んで満足な人間と、本物ウイスキーのジョニーウォーカーを基本とする人間。

そもそも意見が交わるワケがないです。

放っておきましょう。

我々は日本以外の安価な「本物」ウイスキーを発信していきましょう。

その方が日本のウイスキー文化にとってもウイスキーファン(サントリーファンではない)にとってもプラスですよ。

そうは、思いませんか?

ogotch | URL | 2016-01-04(Mon)02:47 [編集]


Re: 2016年4月、サントリー再値上げ。

> 2016年4月、サントリー再値上げ。
>
> マッカランの価格を見て、笑いました。
> 3年前の価格から3倍になりましたね。
>
> サントリー擁護の方が居るのは、それはそれで仕方のないことです。
>
> 私はサントリー擁護派が何を抜かそうがウイスキーに関しては予算内で混ぜ物なしの「本物」を買うだけです。
>
> なのでサントリーが販売元の海外ウイスキーに関しては最初から無視して「並行輸入品」しか眼中にありません。
>
> 混ぜ物ウイスキーの角瓶呑んで満足な人間と、本物ウイスキーのジョニーウォーカーを基本とする人間。
>
> そもそも意見が交わるワケがないです。
>
> 放っておきましょう。
>
> 我々は日本以外の安価な「本物」ウイスキーを発信していきましょう。
>
> その方が日本のウイスキー文化にとってもウイスキーファン(サントリーファンではない)にとってもプラスですよ。
>
> そうは、思いませんか?

 全くその通りです。
 ですが日本には、どうしてこう「ウイスキー=サントリー=角瓶」という人が多いんでしょうね。
 他社製品(特に本物の輸入品)を飲んでみた上で「角瓶がウマい」というのなら良いのですが、大々的に流されるCMに洗脳されるようにサントリーのウイスキーをハイボールにして飲んでいる人が多い現状が情けないです。

 そう言えば、サントリーが値上げするのは売れ行きを調整(少なく)するのが目的の一つではないかと、あるジャーナリストが推測していました。
 かつてニッカが言っていたように「ウイスキーは量産できるものではない」ので、販売攻勢をかけ過ぎて予想より売れ過ぎてしまうとメーカー自身が困る事になってしまうのは自明の理なのに、サントリーはそれがわかっていたのでしょうか。
 それはともかく、この4月の値上げで、日本人が少しでもサントリーから離れて本物のスコッチやバーボンを飲む人が増えてくれれば嬉しいです。

 そうそう、私もサントリーが扱っている輸入品のウイスキーは、できるだけ他社の並行輸入品を買うようにしています。

黒沢一樹 | URL | 2016-01-07(Thu)16:24 [編集]