空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

ウイスキーの本当の香りと味は、栓を開けた直後にはわからないものです。

 ビールはグラスに注いだらすぐ飲むのが普通だし、ワインや日本酒だって飲む前に香りも楽しむものの、瓶の栓を開けたらなるべく早めに、出来れば数日中に飲み切るのが望ましいと言われる。
 ただウイスキーは違う。
 ネット上に幾つかあるウイスキーのブログを覗いてみても、キャップ(栓)を開けてすぐその味と香りを評価している方が少なくないが、実はそれではウイスキーの本当の味と香りはわからないのだ。

 もう何年も前の事になるが、筆者はブラックニッカ8年を初めて飲んでみた時、愕然とした。
 その味と香りのヒドさに、だ。
 妙に甘ったるい香りと、強いアルコールの刺激が何とも言えない不協和音を醸し出していて、これで8年モノのウイスキーとはとても信じられないほど不味かった。

 が、樽熟成ナシのグレーンアルコールなる代物でモルト原酒を希釈したものをリキュールで香り付けして売っていた国産某社のウイスキーwwwならともかく、あのニッカの、しかも8年モノの製品が不味いわけが無かろうと思って、翌日再びまたブラックニッカ8年を飲んでみた。
 しかし結果は前日と同じで、変な甘さと強いアルコールの刺激が混ざり合ってとても不味かった。
 それでブラックニッカ8年を飲むのがほとほとイヤになって、捨てるか梅酒造りに使うか、そのどちらかにしようと思ったほどだった。

 が、そうする前にもう一度だけと思って、開封してから一週間後に期待しないでまた飲んでみた。
 メチャ旨かったんだよ、そうしたら。
 甘さは心地良いものに変わり、舌を刺すアルコールの刺激も引っ込んで、代わりにスモーキー香やら樽の香りやら、複雑な香りと旨味が合わさった、まるで別物の美味しいウイスキーになっていた。

 これほど極端に印象の変わるウイスキーはそう多くはないが。
 しかし封を切った直後とその数日後で、多かれ少なかれウイスキーの味と香りは間違いなく変わる。

 例えばジョニ黒も、封を切った直後は決して不味くはないし、複雑な味わいもよくわかるものの、香りは「こんなものか?」とやや物足りなく思う程度でしかなく、12年モノである筈なのに僅かながらアルコールのツンとした刺激も感じた。
 ところがこれも一週間後に改めて飲んでみると、香りはものすごく豊かだし、口当たりもよりまろやかになりアルコールの刺激はまるで感じなくなった。

 グランツ・ファミリー・リザーブも、最初から旨いなとは思ったが、その旨さは日が経つごとに増して、複雑で旨味がある上に心地良いスモーキー香も感じるようになった。

 ハイニッカのような旧二級酒でさえ、数日経つだけで香りと味が変わる。
 ハイニッカについては、ネット上では「ブラックニッカ・クリアと同じでアルコール臭く、甲種焼酎と大して変わらない」という声をよく目にする。
 しかしそれは、開封して香りが充分に立たないうちに飲んでしまったからだ。
 あるいは、飲む際に薄く割り過ぎてしまったからか。ハイニッカは悪いウイスキーではないが、薄く割ると味と香りも薄く物足りなくなりがちなのだ。
 ハイニッカも開封してから一週間以上経つと、甘くスモーキーでまろやかな、ブラックニッカ・クリアより明らかに上質なウイスキーになる。

 結局、樽の中で何年も眠っていたモルト原酒は香りも縮こまっていて、瓶の栓を開けただけでは充分にその香りがわからないままなのだ。
 で、栓を開け何日か空気に触れることで、本来の香りが広がってくるんだよね。
 新しくウイスキーを味わう時、よくテイスティング・グラスを回して空気に触れさせるけれど。
 筆者の経験では、それだけではまだ足りない。もっと時間をかけ、開封して一度味を見たらまた栓をして何日か置いておくくらいでなければ、本来の香りは広がって来ない。
 だから筆者は、ウイスキーは開封して一度味をみた後、また栓をして何日か置いておく。それから毎日少しずつ楽しみながら飲み、味と香りの評価を下すのは少なくとも瓶の半分くらい空けてからにしている。

 開封して間もないうちは香りも充分に広がらず、さらに何日か経ち味と香りが安定してきた後も、飲む者の体調によって、その日によって味と香りの感じ方は変わってくる。
 筆者は今月の初めに、夏風邪をひいて熱を出した。と言っても37.5℃程度の微熱だったが、寝酒に飲んだウイスキーはひどく不味く感じた。
 好きなウイスキーなのに、たったそれだけの微熱でも味と香りの印象がガラリと変わった。
 その程度の微熱でもそうなのだから、同じ好きなウイスキーでも味と香りの感じ方は日々微妙に変わる。同じモノを飲んでいながら、「うーん、今一つだな」と思う晩も、「いやこれ、なかなか旨いよ!」と思う晩もある。
 だからウイスキーの評価は、何日もかけて瓶の半分くらいは飲んでからでないと下せないものだと筆者は考えている。

 まだ飲んだ事のないウイスキーの封を切る時はとても楽しみだ。それは筆者にもよくわかる。
 だがウイスキーの香りは、栓を開けた直後には充分に広がらないものなのだ。ウイスキーを注いだグラスを振ったただけではまだ不十分で、本来の味と香りになるまでには何日か待たねばならない。
 だから新しいウイスキーの瓶の栓を開けてすぐに味と香りの評価を下してしまう人には、「ちょっと待って、もっと時間をかけて判断して!」と声を大にして言いたい。

 筆者などは体質的にアルコールに弱い方だから、一本のウイスキーを飲み切るのに一週間以上かかってしまうのが普通だ。だから空気と充分に触れ合って本来の香りを放つようになったウイスキーを、いろんな体調で、幾晩もかけて味わって飲んでいる。
 しかし世の中にはアルコールに強くて、「たくさん飲まなきゃ、飲んだ気がしない」という人もいるからねえ。

 例えばニッカの創業者の竹鶴政孝氏など、元気な頃にはウイスキーを毎日一瓶空けていたという。
 そこまでの酒豪は、さすがにそう多くはいないだろうが。しかし一本のウイスキーを三日か四日くらいで飲んでしまう人は、そう珍しくはないのではないだろうか。
 で、そうした酒豪の方々は、結果的にそのウイスキーが充分に空気と触れ合って本来の香りを放つ前に、その一本を飲み切ってしまうことになる。

 そうしたたくさん飲む方には、筆者は複数本のウイスキーを並行して飲むことをお勧めしたい。
 お気に入りのウイスキーを数本開封しておいて、昨日はサントリー、今日はニッカ、明日はスコッチで明後日はバーボン……という風に交互に飲んでいけば、少なくともそれぞれの瓶は一週間以上もつのではないだろうか。
 実は筆者も、平日はお手頃価格のウイスキー、週末と祝祭日はちょっと良いウイスキーと、常に二本のウイスキーを開封しておいて飲み分けている。

 ウイスキーの飲み方や楽しみ方は、もちろん人それぞれ自由だけれど。
 ただ「開封直後は香りがまだ縮こまっていて、本来の味と香りにはなっていない」という事だけは知っておいてほしいよ。
 味と香りの感じ方は、その日の体調によっても微妙に変わってくるし、そのウイスキーの本当の味と香りを判断するには、それなりの日にちをかける事をお勧めしたいデス。

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