空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

ニッカG&Gの終売を惜しむ

 テレビの影響力とは凄いものである。
マッサン』の効果は想像以上と言うより、ニッカの生産能力を越えてしまったようである。
 ただ余市の蒸留所を訪れる見学客が増えただけでなく、ニッカのウイスキー、特に余市のモルトを買い求める者が増えて、モルト原酒の在庫が品不足になってしまっているのだとか。

 何しろウイスキーは、原酒を熟成させるのに何年も必要とするものだから。
『マッサン』効果とウイスキーのブームでいくら売り上げが伸びたからと言って、数年前に計画して製造した分以上には売り出せないのだ。

 ……ま、サントリーの角瓶などは、予想以上に売れて品不足が新聞の経済面でも報道され、実際に店頭から商品が無くなっても、どんなマジックを使ったのか半月も経たぬうちに、前より多いくらいの角瓶が洋酒コーナーの棚を占拠する状態に戻ったが。
 以前、その事を「おかしい」とこのブログで書いたところ、「サントリーは6年も前からハイボールのブームを仕掛けて生産していたのだ。それも知らずに書くのは恥ずかしいですよ」と、厳しいお叱りのコメントをいただいた。
 で、その方によると筆者は「知ったかぶり」なのだそうで。

 だが何年も前からハイボールのブームを仕掛けて計画して生産していたにしろ、「予想以上に売れて品不足になったウイスキーが、半月も経たぬうちにまた店頭に大量に並ぶ」のは、どう考えてもおかしいではないか。
 近所の酒屋の宣伝によると、サントリー角瓶のモルト原酒の平均酒齢は8.5年なのだとか。
 とすると、サントリーはハイボールのブームを仕掛けた6年前よりもっと早くから、「予想以上に売れても困らないくらい、角瓶用の原酒を大量生産していた」という事になる。
 ……凄いね、サントリーって。
 予想以上に売れても困らないだけの、大量の原酒を生産しているというのだから。
 おそらくサントリーの倉庫には、想像も出来ないくらいの大量の原酒が眠っているのだろうな。

 サントリーは海外のウイスキーを大量に輸入するだけでなく、スコッチやバーボンの蒸留所を買収したりしているが。
 樽で輸入したスコッチのモルト原酒を、国内で大量生産したグレーンと混ぜてサントリー製のウイスキーとして売り出しているのではないかと疑うのは、筆者の邪推であろうか。
 事実、サントリーの元社員であった吉村喜彦氏の『ウイスキー・ボーイ』という、サントリーをモデルにしたと明らかに推察できる小説にも、その会社は「輸入原酒や原料料アルコールを混ぜた粗悪品を上手な宣伝で売ってきた」と書かれている。

 予測以上に売れて品不足になったウイスキーを、熟成に何年もかかり急な増産など出来る筈もないウイスキーを、僅か半月で大増産出来てしまうサントリーとは違って、少なくともニッカはそんなマジックは使えないようだ。
 ニッカのウイスキーでは、竹鶴ピュアモルト12年が「値段に比べてとても美味い」と、ウイスキー好きの間で大変に好評だったが。
 だから去年、竹鶴ピュアモルト12年は終売になり、ノンエイジの竹鶴ピュアモルトに切り替わった。
 何しろ12年モノのウイスキーは、12年前に計画して生産した以上には造れないものだから。予想して生産した量を売り切ってしまったら、後は欠品のままにするか、終売にせざるを得ないのだ。

 ニッカが売れ過ぎた竹鶴ピュアモルト12年を、ノンエイジの竹鶴ピュアモルトに切り替えたのは、12年のファンとしては残念だが賢い選択だと思う。
 商品名に“12年”と謳ったら、どうあってもそのウイスキーには12年以上貯蔵したモルト原酒を使わざるを得ない。
 しかしウイスキーというものは複雑かつ微妙なもので、同じ年数貯蔵したモルト原酒でも、気温や湿度などによって熟成具合が変わってくる。
 例えば同じ倉庫に貯蔵したモルト原酒でも、樽を上の方に積んだか、地面に近い下に積んだかだけでも、熟成具合に差が出るのだそうだ。
 だからウイスキーをノンエイジにすれば、仮に計画以上に売れて古い原酒が少なくなってしまったとしても、やや新しい原酒の中から熟成の進んだ樽のものを選んで使えば、貯蔵年数にこだわる事なくブレンド技術で同じ風味のウイスキーが造れる。

 その事に気付いたのだろう、ニッカはブラックニッカ8年もこの八月出荷分で終売にして、その替わりにノンエイジのブラックニッカ・ディープブレンドを新たに売り出した。
 一部の高級品を除いて、ニッカは比較的手に入り易い価格帯のウイスキーから、商品名に貯蔵年数を明記したものを廃して、ノンエイジの製品に切り替えようとしているように思える。
 それを悪い事とは一概に言えないが、筆者としては少し寂しい気もする。

 それはともかくとして、『マッサン』効果によるウイスキーの売れ過ぎは、サントリーのように国内で圧倒的なシェアを持つ大メーカーではないニッカにとっては、むしろ痛手だったかも知れない。
 このウイスキーのブームでニッカのモルト原酒、特に『マッサン』の舞台にもなった余市蒸留所の古いモルト原酒が底を尽きかけ、さらにニッカのボトリング能力の限界の問題もあって、ニッカはこれまで出していた製品の幾つかを整理して終売にせざるを得なくなった。

 で、八月出荷分で終売が決定された主な製品は、以下の通りである。
 ピュアモルト余市。
 ピュアモルト宮城峡。
 ピュアモルト・ホワイト。
 ニッカG&G。
 ブラックニッカ8年。
 モルトクラブ。

 あと、ブラックニッカSPハイニッカは終売こそ免れたものの、大きなサイズのボトルは廃止されて、720mlのもの一種に統一されるようだ。
 また、ピュアモルト余市宮城峡については、単なる終売ではなく、リニューアルしてまた発売されるという噂もある。
 ただピュアモルト・ホワイトニッカG&Gとブラックニッカ8年とモルトクラブが八月限りで終売になるのは間違いのない事のようだ。

 お好きな方がいたら申し訳ないが、モルトクラブは酒質がおとなし過ぎて筆者の好みに合わないので、終売になろうがどうでも良いが。
 しかしピュアモルト・ホワイトとニッカG&Gとブラックニッカ8年はどれも個性ある良い製品なので、こちらが終売になってしまうのはとても残念だ。

 例えばピュアモルト・ホワイトは、最初はアイラ島の輸入モルト原酒を主に使っていた。
 そして余市のモルト原酒はピュアモルト・ブラックに、宮城峡のモルト原酒はピュアモルト・レッドに使われていた。
 しかしその後、ピュアモルト・ホワイトには余市蒸留所の原酒の中からヘビーピートモルトを選んで造られるようになったそうだ。
 同じ余市のモルト原酒を、ピートの効き方で分けてピュアモルト・ホワイトとブラックの両方に使っていたのだから、昨今のウイスキー・ブームでの余市モルトの品不足は痛かったろう。

 また、ニッカG&Gは1968年に発売されて以来、ほぼ同じ造り方をされていると言うが。
 余市のモルト・ウイスキーと、宮城峡のカフェ式連続蒸留器で造られたグレーン・ウイスキーが主に使われているというだけに、これも余市のモルト原酒の品不足が終売を招いてしまったと考えても良いのかも知れない。

 ブラックニッカ8年は、筆者の家の近所の酒屋では税込み1378円で売られているが。
 古いモルト原酒が品不足になっている中で、その価格ですべて8年以上貯蔵したモルト原酒を使うのは、ニッカとしても流石に厳しくなってきたのだろう。

 事情はわかる。
 わかるがしかし、どれも個性ある好きだったウイスキーだけに、終売が決まったのが寂しくてならない。
 それでせめてもと、ニッカG&Gとブラックニッカ8年を、その近所の酒屋に置いてあったものすべてを買い占めておいた。
 で、今回はその終売が決まったニッカのウイスキーのうち、ニッカG&Gについて語りたい。

 ニッカG&Gについては、存在だけは知っていたが店頭で見る事は全くと言って良いほど無く、筆者も最近になるまで飲んだ事が無かった。
 それが『マッサン』が放送されてから、ハイニッカやブラックニッカSPなどのややマイナーなニッカ製品と共に、突然に近所の酒屋の店頭にも並ぶようになった。
 で、喜んで買ってみたのだが、『マッサン』効果が効き過ぎてニッカの原酒不足を招き、とうとうこの八月で終売が決定されてしまった。
 と言うわけで、筆者とニッカG&Gの付き合いは、商品が店頭に並ぶようになってから僅か数ヶ月で終わりを告げる事になりそうだ。

 そのニッカG&Gだが、はっきり言って美味い!
 トップノートはまず甘く華やかで、続いてスモーキー・フレーバーが追いかけて来る。
 口に含んでも甘みを中心とした複雑で力強い味が広がり、そして飲み込むと確かなスモーキーな香りが口の中に残る。
 アフターテイストも豊かで心地良く残るが、ものすごく長く残るというわけではない。

 このニッカG&Gを、筆者はジョニー・ウォーカーの黒と飲み比べてみた。
 近所の酒屋でニッカG&Gは税抜きで1750円、そしてジョニ黒の方は毎月、月末に数日ほど行われる恒例のセールで1880円(税抜き)で売られているから、ジョニ黒の方がやや高い程度という程度である。

 で、飲み比べてみた印象だが、G&Gは意外なほどジョニ黒に似ていた。
 甘さと華やかさを前面に押し出し、スコッチだけでなくバーボンの風味もあると言われるスーパーニッカと違って、G&Gの方は明らかにスコッチを意識した感じで、力強くスモーキーな香りと味わいが、自然にジョニ黒に似た印象になったのだろう。
 意識してジョニ黒に似せて造ったのではなく、結果的に上質なスコッチタイプのウイスキーになったのだろうと筆者は推察している。

 ただジョニ黒は12年モノだが、G&Gの方はノンエイジだ。
 そのせいか、比べてみれば僅かにだが使っている原酒が若いのか、ほんの少しだけG&Gにはアルコールの刺激を感じる。
 と言っても、千円ちょっとのスタンダード・スコッチよりG&Gの方が無論はるかにまろやかだし、味もずっと豊かだ。
 飲み比べると本当にほんの少しだけ、ジョニ黒の方がよりまろやかという事に過ぎない。
 あと、前にも触れたがアフターテイストも、ジョニ黒の方が長く残る。
 ただ味の厚みや力強さ、そしてスモーキー香はほぼ互角だと感じた。さらに甘みは、G&Gの方がより強いように思えた。

 じっくり飲み比べてみれば、G&Gはジョニ黒には僅かに及ばないが、その差は本当に微妙なものと言える。
 もしジョニ黒の空き瓶にG&Gの中身を詰めたものを飲まされたら、「なるほど、これがジョニ黒か」と納得してしまうと思う。
 それくらいG&Gは、良く出来たスコッチタイプのウイスキーと言える。

 筆者はスーパーニッカも美味いと思った。
 しかし竹鶴ピュアモルト12年が出て以来、スーパーニッカは全く飲んでいない。
 スーパーニッカも悪いウイスキーでは無いのだが、竹鶴ピュアモルト12年の味と香りと価格差を考えたら、あえてスーパーニッカを飲む意味が無いように思えたからだ。
 しかしニッカG&Gであったら、竹鶴ピュアモルトだけでなくG&Gを選ぶという選択もアリなのではないかと思えた。
 G&Gには、竹鶴ピュアモルトにはない力強い旨さが間違いなくある。

 ただジョニ黒にも迫る味と香りのG&Gだが、残念ながらこの八月の出荷分で終売になってしまうのだ。
 その事が、本当に残念でならない。
 筆者の気持ちとしては、「同価格帯のニッカのウイスキーで、もしどちらか終売にしなければならないのなら、スーパーニッカの方を終売にしてくれたほうがまだマシなのに」というのが正直なところだ。
 ただより残り少なくなっていると言われる余市のモルトを多く使っているだけに、一部のファンには熱烈に支持されても一般的には知名度も低く、味と香りにも強い個性のあるG&Gが終売にされてしまうのは、致し方のない事なのかも知れない。

 1968年から47年もの歴史を持つG&Gの終売を決めたニッカ(アサヒビール?)の意図は定かにはわからないが、決まってしまったものは一消費者の力ではどうにもならない。
 で、せめてもの対策として、迫る終売に備え、近くの酒屋のG&Gを数本まとめ買いをしておいた。
 ニッカG&Gに興味をお持ちの方や、以前からG&Gのファンだった方は、ぜひ急いで酒屋を回るかネットで捜すかして、残るG&Gを確保なさるようお勧めしたい。

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コメント


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全く同感です

こんにちは、初めまして。

G&Gについて検索していたら、偶然辿りつきました。
記事内で仰られている事、自分も全く同感ですね。

自分も数年以上色々なウイスキーを飲んでいますが、
ニッカG&Gの旨味と完成度の高さには驚かされている次第です。
今回の終売、実に残念至極といった所ですね。

この他にも、ハイニッカを愛飲していますが、
こちらは辛うじて・・・リニューアルで生き残るみたいです。

長文失礼しました。

KURO | URL | 2015-08-18(Tue)17:40 [編集]


Re: 全く同感です

> こんにちは、初めまして。
>
> G&Gについて検索していたら、偶然辿りつきました。
> 記事内で仰られている事、自分も全く同感ですね。
>
> 自分も数年以上色々なウイスキーを飲んでいますが、
> ニッカG&Gの旨味と完成度の高さには驚かされている次第です。
> 今回の終売、実に残念至極といった所ですね。
>
> この他にも、ハイニッカを愛飲していますが、
> こちらは辛うじて・・・リニューアルで生き残るみたいです。
>
> 長文失礼しました。

 ニッカG&G、絶対スーパーニッカより美味しいと思うんですがねえ……。
 でも酒屋の店頭に並ぶのは、スーパーニッカの方ばかりです。
 そしてとうとう終売が決定してしまい、本当に残念です。
 ただハイニッカが残ってくれるのは、唯一の救いでしょうか。
 ハイニッカ、私も良いウイスキーだと思います。

黒沢一樹 | URL | 2015-08-20(Thu)16:07 [編集]


素直に発売終了を嘆けばいいのにものの数行せぬ内に他者批判…
アル中になると性格も悪くなるんだねぇ ┐( ̄ヘ ̄)┌ ヤレヤレ

| URL | 2015-10-15(Thu)21:06 [編集]


はぁ…

貴方のように買い占めたりする輩がいるので、このような事態になっているのではないでしょうか?
ニッカは確かに良いメーカーだと思います、しかし、世界には沢山個性的なウィスキーがありますよ。

| URL | 2015-12-01(Tue)22:41 [編集]


Re: はぁ…

> 貴方のように買い占めたりする輩がいるので、このような事態になっているのではないでしょうか?
> ニッカは確かに良いメーカーだと思います、しかし、世界には沢山個性的なウィスキーがありますよ。
 その通りですね。
 終売と聞いて私のような者が慌てて買い占めてしまうから、ますます品薄になってしまうのですよね。
 あと、世界にはもっと良いウイスキーもありますよね。
 私自身、ニッカよりもっと好きなスコッチがたくさんあります。
 だから日本の一メーカーの製品の終売くらいで、いちいち大げさに騒ぎ立てる事も無かったのかも知れません。

黒沢一樹 | URL | 2015-12-03(Thu)13:57 [編集]


初めてのウイスキー

学生時代の秋祭りに初めて飲んだウイスキーがG&Gでした。
あれから40年以上過ぎましたが僕にとってG&Gは青春の味でした。
終売…残念に思います。

高津川 | URL | 2017-05-03(Wed)21:03 [編集]


Re: 初めてのウイスキー

> G&Gは青春の味でした。
> 終売…残念に思います。

 ニッカG&Gの終売は、今も本当に残念でなりません。
 つい先日も、大切に取っておいてあるG&Gを、スーパーニッカやジョニ黒などとも飲み比べてみましたが。
 G&Gは、ストレートで飲んでみて間違いなくスーパニッカより美味しかったです。
 そしてジョニ黒にも負けないような気がしました。
 終売にする理由がわかりませんでした、本当に。

 竹鶴政孝氏が亡くなった時、確かお孫さんがG&Gを棺にかけたと聞いたことがありますが、竹鶴氏もさぞ満足だったことと思います。
 それだけの銘酒だけに、終売が本当に惜しいです。

黒沢一樹 | URL | 2017-05-11(Thu)00:41 [編集]