空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

国内で殆ど名の知られていない、安く売られているスコッチについて

 西友で扱っている、ASDAスコッチなどがその代表格だが。
 スコットランドで蒸留から瓶詰めまで行われた本物のスコッチが、今では千円を切る値段で日本国内で手に入れる事が出来る。
 千円を切る値段と言えば、日本で一番売れていると言われるあのサントリーの角瓶より安い事になる。

 ウイスキーと言えば、殆どの人が麦芽や穀物を蒸留した原酒を、何年も樽で寝かせたものを思い浮かべる筈だ。
 しかし日本の酒税法(酒造法に非ず)ではこう定義されている。


 イ、発芽させた穀類及び水を原料として糖化させて発酵させたアルコール含有物を蒸留したもの。
 ロ、発芽させた穀類及び水によって穀類を糖化させて発酵させたアルコール含有物を蒸留したもの。


 おわかりだろうか。
 イはモルト・ウイスキーを、そしてロの方はグレーン・ウイスキーを(一応)想定したものだが。
 しかしどちらにしろ、原酒をどれだけ寝かせるかの規定が無いどころか、日本の法律にはウイスキーの原酒を「樽で貯蔵しろ」とすら書いて無いのである。
 そしてさらに、酒税法のウイスキーについての項目ではこうも書いてある。

 ハ、イまたはロに掲げる酒類にアルコール・スピリッツ・香味料・色素または水を加えたもの


 つまり我が国の法律では、原酒を樽で貯蔵する義務も、貯蔵期間の規定も無いどころか、その「穀類を糖化させて蒸留した酒類」をアルコールやスピリッツで薄め、香味料と色素で香りと色を付けたまがい物まで“ウイスキー”と認めているのである。
 これで「ウイスキーの世界五大産地」の一角を自称しているのだから、本当に笑わせてくれる。

 事実、この日本で一番売れている、「日本人の味覚に合う、日本のウイスキー」と自称するサントリーの角瓶は、以前はただ穀物を蒸留しただけの、樽貯蔵ナシの“グレーン・アルコール”なるもの(グレーン・ウイスキーに非ず)でモルト原酒を希釈し、さらに複数のリキュールで香り付けをし、カラメルで色も付けていた。
 いや、角瓶だけでなくリザーブもオールドもホワイトも、以前のサントリーのウイスキーはリキュールや甘味果実酒で香り付けされたものばかりだった。

 ちなみに、スコッチの場合は「大麦麦芽の酵素によって糖化させた穀類の糖化液を、スコットランド内で蒸留し、樽で最低3年間保税倉庫に寝かせて熟成させたもの」と、英国の法律で規定されている
 日本の例の酒税法の規定に比べて、実に簡潔で明瞭である。

 スコットランドとアイルランドとアメリカとカナダの「ウイスキーの世界四大産地」の内に無理押しに割り込んで“世界五大産地”の一角と自称している我が国であるが。
 確かに近年では、ウイスキーの世界的なコンテストで日本のウイスキーが高い評価を受けているのも認める。
 が、ウイスキーを樽で最低何年保存するという規定が無いどころか、アルコールやスピリッツや香料などを混ぜたまがい物までウイスキーと認めている国は、他の“世界四大産地”にはどこにも無いのだ。
 イギリスだけでなくアイルランドもアメリカもカナダもも、穀物を使用し樽で最低何年貯蔵するべしと法律で定めている。
 一方、「世界的なコンテストに出品するような製品は高品質だが、庶民が普通に飲む安い普及品はどれだけ樽貯蔵されたかもわからない上に、アルコールや香料等も混ぜられた怪しげなものかも知れない」というのが、我が国のウイスキー業界の実体なのだ。

 日本のウイスキー業界が、胸を張って世界五大産地の一角と名乗りたいのであれば。
 まずモルト原酒にアルコールやスピリッツや香料等を混ぜる事は即刻禁止し、そして原酒そのものも樽で最低何年以上寝かせると消費者に約束すべき
だと筆者は思う。

 日本の法律では、「ウイスキーは最低何年以上樽で熟成させる」という規定が無い上に、アルコールやスピリッツや香料等を入れるのも自由なのだから。
 国産の安いウイスキーを買って飲んでみる時には、どうしても「恐る恐る」という感じになってしまう。
 仮に原材料表示に「モルト、グレーン」とだけしか書いてなくても、それを簡単に信用してはならないのだ。

 何しろ日本の洋酒業界の規定では、「モルトは麦芽を、グレーンは穀物を意味する」のであって、ウイスキーに少しでも知識のある者たちの間では当然そうだと信じられている、「グレーン=グレーン・ウイスキー」という常識が、意図的に無視あるいは曲解されているからだ。
 おそらくは全く樽貯蔵もしていないただの穀物アルコールを、年単位でちゃんと樽貯蔵したグレーン・ウイスキーだと消費者に誤解させる為に。

 実際、サントリーがかつて大量に作っていた、穀物をただ蒸留しただけで樽貯蔵は全くしていない“グレーン・アルコール”なるシロモノも、例の日本洋酒業界の原材料表示の上では“グレーン”で通用してしまうのだ。
 我が国のウイスキーの原材料表示で、ブレンド用アルコールやスピリッツと表示されるのは、原料に穀物ではない廃糖蜜を使ったアルコールを混ぜた場合だけなのである。

 だから某巨大掲示板のウイスキー関係のスレッドで「ブレンド用アルコールやスピリッツを混ぜた“アル添ウイスキー”は論外だ」と主張する人々は、よく気をつけなければならない。
 原材料表示に「モルト、グレーン」としか書いてない国産ウイスキーの中にも、原料が穀物のグレーン・アルコールを使った“アル添ウイスキー”が存在するのである。
 事実あのサントリーの角瓶も、以前使っていたグレーンは例の穀物製のグレーン・アルコールで、さらにリキュールも混ぜた“アル添ウイスキー”であった。かつて存在した級別では“特級ウイスキー”だったにもかかわらず。

 その点、スコッチ・ウイスキーは安心である。
 何しろ原料は麦芽と穀類だけで、糖化して蒸留した原酒も「樽で最低3年間保税倉庫に寝かせて熟成させる」と、法律でちゃんと決められているのだから。
 どんなに安くて無名のものでも、若過ぎる原酒や樽熟成すらしていないアルコール、ましてや香り付けにリキュールが混ぜられているような事は間違っても無い。

 断っておくが、筆者はスコッチの信者で「スコッチなら何でも国産ウイスキーより美味い」と信じ込んでいるわけではない。
 わかっている。安いスコッチの中には、国産品に及ばないようなまるで物足りない味のものが幾つもある。
 ただ少なくとも、日本のように樽熟成ナシのアルコールや香料(リキュール)等を混ぜた“まがい物ウイスキー”を飲まされる心配だけは無い。
 だからそういう意味で、西友のASDAスコッチは別に「美味い」とは思わないが、品質については安心して飲めるのである。

 日本では「ウイスキーは最低何年以上樽で熟成させる」という規定どころか、そもそも蒸留した原酒を樽で貯蔵する義務すら無いのだから。
 おかげさまで日本の千円前後の普及価格の自称“ウイスキー”には、とりあえずそれらしい香りはあるものの、飲んでみると安い焼酎に似たアルコールのピリッとする強い刺激を感じるものが少なくない
 おそらくそうした日本のお手頃価格のウイスキーは、モルト原酒にはそれなりのものを使いつつ、それ以外の部分で大幅にコストカットして、ろくに樽貯蔵もしていない若過ぎる“グレーン”や、あるいは樽貯蔵すらしていないアルコールを使用していると思われる。

 それに比べて他の世界四大産地のウイスキーは、モルト原酒だけでなくグレーンもきちんと決まった年数以上樽熟成しているから。
 だからスコッチなども、日本では殆ど名の知られていない安いものでも、日本の安ウイスキーのように「ピリッとする若い焼酎のようなアルコールの刺激」を感じることは無い

 ただ難しいのは、そうした無名の安いスコッチには舌を刺すような若過ぎるアルコールの不快な刺激こそ無いものの、香りや旨味も弱いものが少なくないのもまた事実であるという事だ。
 モルト・ウイスキーだけでなく、グレーンの方もしっり樽熟成した“ウイスキー”を使っている分だけ、良いモルト原酒を仕入れるコストの方にしわ寄せが行ってしまったのかも知れない。

 筆者は近所の行きつけの酒屋で、かつて“ロイヤル・ライオン”と“リバー・クイーン”という二種類のスコッチを買ってみた事がある。
 どちらも税抜きで880円の特価品だった。
 ……不味くはなかったデスよ、どちらも。
 しかし両方とも、濃いめで味わってしっかり飲むには、どうにも物足りない味と香りだった。
 むしろ香りだけなら、日本の一部の安いウイスキーの方が良い、というくらいで……。

ロイヤル・ライオンCOOLPIX 5200 431

 ロイヤル・ライオンの方は、良く言えばライトでハニーでスモーキー香などはまるでなく、「本格麦焼酎を飲み慣れた人には飲みやすいかな」という感じだった。
 リバー・クイーンの方は、本当にごく僅かにスモーキーさも感じるものの、基本的にはやはりライトで甘く、ウイスキーを飲み始めたばかりの人にも飲みやすそうなタイプだった。

 筆者は別に「ただスモーキーであれば良い」と思っているわけではなく、インバー・ハウスのようなライト系のウイスキーも好きだ。
 インバー・ハウスは優しい味わいの中に繊細かつ複雑な旨味を感じるのだが、例のロイヤル・ライオンとリバー・クイーンにはそれも無く、ただただライトなのだ。
 両方ともはっきり言って濃いめでじっくり飲むには味も香りももの足りず、「炭酸か水で薄く割って、ビール代わりにガブガブ飲むしかないか」という感じだった。

 実際、千円程度のスコッチには案外こうした“ハズレ”が少なくない。
 安いスコッチはもう本当にあれこれ飲んできた筆者だが、千円前後(千五百円以下)で濃いめでじっくり味わって飲むに足るスタンダード・スコッチは、ジョニ赤ベルティーチャーズホワイトホースホワイト&マッカイフェイマス・グラウスグランツ・ファミリー・リザーブデュワーズ・ホワイトなどのような、名の知れた定番スコッチに多いと本当に実感する。
 そのスコッチが日本でまだ名が知られていないのは、やはりそれだけの理由があるのだ。全部が全部そうだとは言わないが、安く売られている有名でないスコッチには、不味いわけではないが物足りない味と香りのものが多い。

 ただビール代わりあるいは食中酒として薄めに割って飲む方には、こうした割安なあまり有名でないスコッチはお買い得かも知れない。
 ライト系のものが多いからスイスイ飲めるし、そして何よりスコッチならどんな物でも間違いなく三年以上樽で熟成させているから、日本の安いウイスキーよりアルコールの刺激も少ないしね。

 と言うわけで、じっくり味わって飲みたい方にはあまりお勧めしないけれど、ウイスキーは炭酸や水で薄めに割って飲む方には、名のあまり知られていない安く売られているスコッチもお買い得で良いかも知れないと思う。

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