空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

日毎に味と香りが変化するブラックニッカ8年

 市場でのシェアに較べ、ニッカは手頃な価格帯のウイスキーが豊富にあると以前から感心していた。

 まず八百円前後でブラックニッカ・クリアがあり、千円前後でハイニッカブラックニッカ・リッチブレンドモルトクラブがあって。
 続いて千二百円前後でブラックニッカ・スペシャルがあり、もう少し上の価格でブラックニッカ8年オールモルト
 千五百円ちょっとで、500mlのシングルモルト余市宮城峡
 二千円を少し切る価格帯でニッカG&Gスーパーニッカ、それに500mlのフロム・ザ・バレルピュアモルト・ホワイトレッドブラック
 そして最後は、二千円を少し越える値段で竹鶴ピュアモルト12年……と。
 そしてその殆どの値段と味が見事なくらいに比例していて、「これは値段に較べ、他のものより旨い!」と言い切れる製品を見つけるのに苦労するくらいであった。

 手頃な価格帯にこれほど多彩な商品が出されているのは、消費者にとってはありがたい事だ。
 しかし似たような価格帯で製品の種類が余りにも多すぎ、メーカーもただ製造だけでなく、瓶詰めや出荷にさぞ手間がかかっていただろうと容易に想像ができる。

 そんな中で、ウイスキー好きの間で「価格に較べて非常に旨い」と定評のあった竹鶴ピュアモルト12年が、売れすぎて古いモルト原酒が足りなくなったのか去年終売になり、ノンエイジの竹鶴ピュアモルトに変わった。
 そしてサントリーが仕掛けたハイボールのブームに『マッサン』の人気が重なり、ウイスキーの売り上げが急増してモルト原酒の不足にさらに拍車がかけられた。
 それでニッカも、とうとう製品のラインナップの整理を余儀なくされたようだ。

 で、この八月出荷分でブラックニッカ8年とモルトクラブとニッカG&Gとピュアモルト・ホワイト、それにシングルモルト余市と宮城峡の終売が決定された。
 そしてハイニッカとオールモルトとフロム・ザ・バレルとスーパーニッカと竹鶴ピュアモルトが、この九月出荷分から値上げされることになった。

 その結果、似たような価格帯でひしめき合っていた製品のラインナップが少しスッキリしたのは事実だが。
 筆者が気に入っていたブラックニッカ・スペシャルとハイニッカを残してもらえた事は嬉しい。しかしニッカG&Gやピュアモルト・ホワイトが終売になってしまった事は大変に残念だ。
 また、その味に定評のあったフロム・ザ・バレルが1900円から一気に2500円に値上げされてしまった事も残念に思う。

 何しろ筆者は、竹鶴ピュアモルト12年が、店頭では二千円ちょっとで売られ続けていた時代を知っているからね。
 それより格下のノンエイジの竹鶴ピュアモルトが、10年や12年モノのシングルモルト・スコッチも買えてしまう3000円になってしまうとは、ちょっと納得できないし、購買意欲も萎えてしまうというものだ。
 で、筆者は値上がりしてしまう前に、ノンエイジの竹鶴ピュアモルトを二本ほど買っておいた。

 余談と前置きが長くなったが、今回取り上げたいのは、八月出荷分で終売になったばかりのブラックニッカ8年である。
 以前にもこのブログで触れた事があるが、ブラックニッカ8年は筆者に強い印象を残したウイスキーである。

ブラックニッカ8年LUMIX FX9 403

 何年も前、ブラックニッカ8年が製品化されてまだ間もない頃に、筆者はブラックニッカ8年を早速買って飲んでみた。
 その当初の感想は、正直なところ「大ハズレの酷いモノを買ってしまった」というところだった。
 甘い香りも強く漂うものの、アルコールのツンと来る刺激もかなり強くて、しかもその両方が溶け合わずバラバラに鼻と舌を襲って来る感じで、最初の一杯だけしか、とても飲む気にはなれなかった。

 しかし千五百円近く出して買った酒がそんなにマズいわけ無かろうと思い直して、翌日また飲んでみたのだが、やはりマズかった。
 溶け合わない甘い香りとアルコールの刺激が強烈で、「これなら千円前後の手頃なスコッチの方がずっとマシだった」と、大変がっかりしたものだった。

 そしてそれから何日も、キッチンの隅に放置しておいたのだが。
 しかしそれでは余りにも勿体ないと思い直して、一週間後くらいにまた飲んでみたら……今度は本当に美味かったのである、まるで別物に変わったかのように。
 甘くスモーキーな香りと豊かな味が溶け合い、あれほど刺激的だったアルコールのツンツンする感じも殆ど消えていたのである。

 ウイスキーを試飲する時に、よくテイスティング・グラスをくるくる回して空気と触れ合わせるが。
 実際には、ただそれだけでは足りないのである。
 樽の中で何年も縮こまっていた香りが充分に広がりきる迄には、何日かの時間が必要なのである。
 その事を、筆者はこのブラックニッカ8年で実感させられた。

 まだ飲んだ事のない、新しい酒の栓を開ける時はとても楽しみである。
 どんな味と香りを楽しませてくれるのだろうかと、本当にワクワクする。
 しかしウイスキーだけは、その味と香りを封を切った時点だけで判断してはならない。何日もかけて慎重に味わえば、ウイスキーが空気に触れるにつれ日毎に香りが立ち、味も深く豊かになって行くのがわかるはずである。
 ただハイボールなどにして薄く割りゴクゴク飲んでしまうような方には、そのあたりの微妙な変化などわかりもしないし、わかっても意味も無いだろうが。

 さて、初めて飲んだブラックニッカ8年に「これは美味い!」と驚いた筆者ではあるが、その最初の一本を空けた後も続けて飲む事は無かった。
 と言うのは、前にも書いた通り、ニッカは手頃な価格帯のウイスキーが数多くあり過ぎるからである。

 ブラックニッカ8年は、今では筆者の近所の酒屋でブラックニッカ・スペシャルとほぼ同じ千三百円を切る値段で売られている。しかし発売されてまだ間もない頃には、千五百円近くしていた。
 そしてスーパーニッカは実売価格で千八百円ちょっとだった。
 さらに竹鶴ピュアモルト12年が、以前は二千円ちょっとで買えたのである。
「だったらもう少しお手頃なブラックニッカ・スペシャルを買うか、もう少し頑張ってスーパーニッカや竹鶴ピュアモルト12年を買おう」と思って、あえてブラックニッカ8年に手を出す事は無くなってしまったのだ。

 しかしこの八月出荷分で終売が決まってしまったと知り、名残惜しさからまた買って飲んでみる事にしてみた。

 ウイスキーはだいたいそうだが、ブラックニッカ8年が空気に触れる事による味と香りの変化が特に大きい事は既にわかっていたから、開封して毎日一杯ずつ飲んでは、グラスだけでなく瓶の方も揺らして、残った中のウイスキーを空気に触れさせる事を繰り返してみた。
 で、封を切ってみた直後は、「やはり」という感じだった。甘い香りとアルコールの刺激臭の両方が、強く鼻を突いてきた。
 しかしあらかじめ予想していたからなのか、それともブレンドが変わったのか、アルコールの刺激は以前ほど強烈には感じず、味もまずまずというように感じた。

 だが開栓した直後のブラックニッカ8年が、まろやかとは言い難く、8年ものと言うには荒々しい印象なのは確かである。
 翌日も、翌々日もその印象は殆ど変わらなかった。
 しかし日が経つにつれて、徐々に香りがより華やかになり、スモーキー香もはっきり感じられるようになってきた。
 同時に味も深みを増し、当初強く感じていたアルコールの刺激も樽熟成による甘みにより薄らぐようになっていった。
 で、封を切ってから一週間ほど経った頃、記憶にある甘く華やかで豊かな味と香りの美味いウイスキーになった。

 繰り返すが、ブラックニッカ8年は封を切ってからある程度時間をおく事で、味と香りが本当に変わる。このウイスキー本来の味と香りを楽しむには、封を切ってから少なくとも五日、出来れば一週間ほどの時間が必要だ。
 だからお酒に強くて一日か二日で飲み切ったり、皆で一度に飲み切ったりしてしまった場合には、「甘い香りはするがアルコール臭がキツいし、味も期待したほどではないな」という印象しか持てないのではないかと思う。
 このブラックニッカ8年は、千五百円以下で買える比較的手頃なウイスキーだが、短期間で飲み切ってしまうのではなく、ぜひ少しずつじっくりと味わって飲んで貰いたい。

 アルコールの刺激はあるものの、華やかな香りとスモーキーさを持つ深みのある味のこのウイスキー、筆者はなかなか悪くないと思う。
 ただ味も香りも強いので、ライトなウイスキーがお好きな方にはお勧めできない。

 そしてこのブラックニッカ8年は、飲み方もなかなか難しいのだ。
 常温でストレートで飲むと、開封して一週間以上経ち空気とも充分に触れ合わせた今でも、強いアルコールの刺激を感じる。
 グラスに注いで揺らしただけでも、ツンと来るアルコール臭を感じるくらいだ。
 さらに実際に飲んでみると、アルコールの刺激で舌がビリビリと痺れる。
 筆者は度数46度のタリスカー10年なら抵抗なくストレートで飲めるが、40度のブラックニッカ8年をストレートで飲むのはつらいと感じる。

 で、水と1:1のトワイスアップにすると、アルコール臭はかなり引っ込んで香りが華やかに立ち、飲んでも深みと甘みを感じてとても旨くなる。
 しかし1:2で水を多くすると、アルコールの刺激が完全に消えて飲みやすくなる代わりに、味と香りも途端に薄らいで「水のよう」になってしまう。
 だから筆者は、炭酸や水でこのウイスキーを薄く割る事はお勧めしない。
 ま、好みは人それぞれだから、どうしてもハイボールが好きなら炭酸と氷で割って薄くして飲んでも構わないが。しかしその場合には、ただの「冷たいすっきりアルコール」になってしまい、本来の味わいなど感じられなくなってしまう事をご承知おき願いたい。
 個人的にはこのウイスキー、トワイスアップかロックでゆっくり飲む事をお勧めしたい。

 このブラックニッカ8年はとてもウイスキーらしいウイスキーだし、筆者も悪くないと思う。
 しかしニッカG&Gなどの二千円前後のウイスキーと飲み比べてしまうと、まだ熟成不足と言うか、アルコールの刺激を感じて「明らかに格が違うな」と思わされてしまう。
 それでもブラックニッカ8年が千円前後の国産ウイスキーより間違いなく上で、香りも良いし味も深いのは事実だし、そこは「値段なりの味と香り」という事だろう。

 で、今回改めて飲み直してみて、筆者が「悪くない」と思いつつも、続けてこのブラックニッカ8年を飲まなかった理由が何となくわかった。
 結局、どこか中途半端なのだ。
 千円前後の普及品のウイスキーより明らかに旨いが、アルコールの刺激はまだ残っていて、二千円前後のウイスキーの方がずっとまろやかだ。
 だからいざ選ぶとなると、千円前後で定評のあるもの(ジョニ赤やホワイトホースやベルやティーチャーズなど)か、二千円前後の間違いなく美味しいものか、そのどちらかにしてしまう。

 また、このブラックニッカ8年は味にも香りにも甘みが強くあり、スモーキー香も確かにあるものの、純粋なスコッチ風というのではなく、どこかバーボンの風味も感じる。
 だからバーボンをお好きな方は、きっとこのブラックニッカ8年も嫌いではないと思う。
 しかしスコッチがお好きな方にはブラックニッカ8年より、殆ど同価格帯のブラックニッカ・スペシャルの方をお勧めしたい。
 実は筆者も、ブラックニッカ8年よりブラックニッカ・スペシャルの方が好きだ。

 何となくけなすような感じになってしまったが、このブラックニッカ8年は決して悪くない。
 だからもしこの記事で興味を持った方がおられたら、ぜひまだ店頭に残っているうちにブラックニッカ8年を手に入れ、開封後、日毎に華やかかつ深くなって行く味と香りを実感して欲しい。

 ブラックニッカ8年はただ終売になったわけではないようで、代わりのようにブラックニッカ・ディープブレンドが新たに発売された。
 ライトなウイスキーの中にも好きなものもあるが、基本的には甘くスモーキーで力強い筆者としては、その味と香りが今から気になっている。
 ただ、そのブラックニッカ・ディープブレンドの瓶の形がブラックニッカ・スペシャルによく似ていて、価格帯も近いので、「気に入っているブラックニッカ・スペシャルも終売にされてしまうのではないか」と、それも心配になっている昨今だ。

スポンサーサイト

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

ブレンダーズスピリット。

ブラックニッカの限定ボトル、
「ブレンダーズスピリット」。

タイトルに「ブラックニッカ」と
ありますが「ブラックニッカ」と
味の方向性は別物です。
※味のコンセプトは同一。

ブレンダーズスピリットに感じた
他ウイスキーと重なるイメージは
オールドパー12年とジェムソン。

なのでクリア&スウィートが
基本でそこにブレンデッドの
技術で複雑さを加味した、と。

明らかにピートとスモークは
控える方向と認識しています。

一口含むとショコラの甘味。

そこから ゆっくりと辛味に
移行してピート感が穏やかに
口の中に広がっていきます。

ニッカ ブレンダーズバーにある
「ブレンダーズウイスキー」。

ブレンダーが自分の嗜好重視で
作ったウイスキーがありますが。

そのブレンダーズウイスキーを
リーズナブルにした印象です。

個人的に「家呑み最高峰」と感じた
日本製ブレンデッドウイスキーです。
注:「店呑み」ではありません。

ジョニーウォーカー ブラックラベル。
シーバスリーガル12年。
バランタイン12年。

これらと並ぶクオリティです。

ニッカ、久しぶりのニッカらしい
「ウイスキー」だと思います。

旧 余市ノンエイジの白ボトル以来の
「買ってもいい」と思わせる。

良心的な日本製ウイスキーです。

コストパフォーマンスが高いので
竹鶴12年に近い作品ではないかと
個人的には認識しております。
(竹鶴12年を100としたら75〜80。)

価格は2,000円台半ば、なのですが
品質は4,000円台半ばのウイスキーに
匹敵するのではないでしょうか。
(買うとしたら3,000円未満。つまり、
3,000円は出せない、というレベル。)

それが私の評価です。

もしもストレートで食べ物と併せるなら
天然塩、ピスタチオ、かんぴょう巻きが
(サビ抜き)オススメ。

呑み方はハイボール、水割りにしても
ブレンダーズは かなり美味しいとは、
私は思うのですが。

カクテルベースとしては弱いです。

ウイスキーのパワーが弱い。

実際にカクテルを作ってもらい
テイスティングをしましたが、
明らかにパワーが足りません。

通常カクテルに使うウイスキーの量が
3だとしたら4にしてようやく味の力が
同等になる感じです。

……と、いうことで。

以上が本気でブレンダーズスピリットを
テイスティングした場合、このような
レポートになります。

あくまで個人レベルの分析ですので
ご参考程度にして頂ければ幸いです。

今後ともよろしくお願い申し上げます。

ogotch | URL | 2016-11-08(Tue)22:34 [編集]


Re: ブレンダーズスピリット。

> ブラックニッカの限定ボトル、
> 「ブレンダーズスピリット」。
>
> 個人的に「家呑み最高峰」と感じた
> 日本製ブレンデッドウイスキーです。
>
> ニッカ、久しぶりのニッカらしい
> 「ウイスキー」だと思います。

 そうなのですか。
 最近のニッカにはあまり期待していなかったので、発売されたとニュースを聞きながらまだ購入には至っていませんでした。
 早速、酒屋に行って来ます!

 教えていただいて、本当にありがとうございます!

 関係ないですが、先日バランタイン・ファイネストを飲んでみて、まず栓の造りの丁寧さから感心しました。
 一番安いものでさえそうなのだから、バランタイン12年が美味しいわけですね。

黒沢一樹 | URL | 2016-11-09(Wed)23:28 [編集]