空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

罪と罰と、償いと許しについて考えてみた

 罪を犯した者は、どれだけの反省と贖罪をすれば更生が認められて許されるのだろうか。
 それとも犯した罪は、生涯許される事は無いのだろうか。

 未熟児だったわけではないが、筆者は生まれた時から小柄だった。
 おまけに病弱で、幼い頃から病院通いを続けていた。
 しかも家の都合で東京から地方に引っ越さざるを得なかった。
 小柄で体力も無く、言葉も習慣も違う子供が地方に引っ越して行ったら、その土地でどんな扱いを受けるか、容易に想像がつくだろう。
 ハイ、当然イジメられましたとも。

 幸い、筆者は体は弱くでも気だけは強かったから、その度にブチ切れて文字通り「狂ったように」暴れ、イジメは何とかはねのけて来たが。
 それでも苦しい子供時代を過ごした事に違いはない。
 実際、今思い返してみても、筆者の子供時代の思い出に楽しい記憶はかなり少ない。
 そのせいか、かつて“ヤンチャしていた時代”の事を武勇伝のように語る元ワルに対しての反感はかなり強いものがある。

 不良少年や悪の道に進んだ者たち(そしてその種の人間に同情的な人達)の中には、家庭環境の悪さを理由に挙げる人が少なくない。
「だから悪いのは本人ではなく、親や社会なんだよ」とね。

 しかし言わせて貰えば、筆者が育った家庭環境だって、決して良好とは言えなかった。
 筆者には一つ年上の姉がいて、それがまた人の顔色や空気を読むのがとても上手で、外では猫を被るのが巧みな優等生だった。
 おかげで筆者は、学校の教師たちにも同級生たちにも親戚たちにも、周囲の人間すべてに「出来損ないの弟」と扱われ続けて育った。

 それだけではない。
 身内の恥を曝すのは筆者としても辛いのだが、筆者の父は酒乱だった。それも酔うと怒鳴っては暴れる種類の酒乱だった。
 辛いものだよ、物心ついた幼い頃から、酒を飲んでは荒れる親の顔色を見て怯えながら育つのは。

 さらに父は賭事が好きで、職も転々としていた。
 で、我が家の暮らしは主に母の稼ぎで成り立っていたのだが、父はその母の稼ぎすら取り上げて賭事に使ってしまう事がよくあった。
 今でこそ筆者は(築三十数年のボロ屋だが)一戸建ての自宅と言える家に住んでいる。しかし子供の頃には、マジで裏長屋に住んでいたのだ。
 部屋は二間で壁はトタンの、本当に絵に描いたような棟割り長屋だよ。
 で、父が有無を言わせず母の稼ぎを取り上げて賭事に出かける度に、「これから先、生きて行くお金はあるのか」と、本気で心配したものだよ、小学生の子供がね。

 学校ではイジメられて助けてくれる味方もおらず、教師や親戚たちにも「出来損ないの弟」と言われ、そして酒乱の父に怯えて家計の不安も常に感じながら育って。
 グレて非行や犯罪に走っても仕方ないよね、「非行が家庭環境や生育歴のせい」だとしたら。
 だが筆者は、グレる事なくともかく大学も出て、たまに交通違反で切符を切られる以外は警察のお世話になる事もなく、犯罪とは全く無縁に生きている。
 そしてそれは「周囲の良い人たちが支えてくれたから」ではなく、すべて自分の意志の力によってだ。

 そのせいで、筆者は犯罪を犯す者に対してひどく冷淡だ。
 無論、グレたり犯罪を犯したりした者は「すべて本人が悪い」と言うつもりは無い。中には本当に劣悪な環境で育ち(母親のネグレクトと継父の虐待に遭い祖父母を殺してしまった少年とか)、本当に止むに止まれぬ事情があって罪を犯してしまった者がいる事もわかってはいる。
 が、犯罪の前歴のある者、特に“ヤンチャだった若い頃”を恥じるどころか武勇伝のように語る者に対しては、どうしても冷淡になってしまうのだ。
 そして「犯した罪の為に刑務所や少年院に収監された者が出所後に苦労するのは、自業自得」という意識から、罪を犯した者の更生という事にはどうも頭が回らないでいた。

 そんな筆者は、去年の八月にある新聞記事を読んでひどく憤慨した。
 その記事によると、法務省は平成27年度から、刑務所や少年院の出所者を雇用した事業主に、一人につき年間で最大72万円の奨励金を出す方針で、法務省はその為の十数億円の予算を、国に要求するつもりだという事だった。
 正確には、出所者を雇った企業に半年間毎月8万円ずつ、そしてその後は3ヶ月毎に12万円ずつ出すのだという。
 つまり新入社員の給料を仮に20万円とすれば、出所した前歴者を雇えば、半年間は実質12万円(残りの半年は16万円)で済むことになるというけだ。

 その記事を見て、筆者は「そんな不公平な話があってたまるか!」と腹を立てた。
 企業が人件費の切り詰めに走り、真っ当な人でさえブラックでない職を見つけにくい時代に、法務省が一人につき年間72万円も出して刑務所や少年院からの出所者の雇用を優遇させようとするなど、どう考えてもおかしい……と。

 法務省は「そうして刑務所や少年院の出所者がどんどん雇用されれば再犯率も減り、犯罪を抑止効果を期待できる」と言う。
 だから元犯罪者の雇用を促進させる為に、法務省は一人につき年間72万円もの金を「国に出させよう」という。
 しかしその72万円のカネの出所は、元は国民の税金である。筆者はそれが、どうにも納得が行かなかった。

 それは過去に犯罪を犯した者を見る世間の目は厳しかろうし、職を見つけることも難しかろう。
 だが出所したからといって罪そのものが消えるわけではなく、犯した罪は生涯背負って行かねばならぬものだと筆者は考えていた。
 だから出所後に過去の罪のせいで白い目で見られ、職探しに苦労したとしても、それは「当然の報いとして受け入れるべきだ」と。

 そう書いたところ、今月になって実際に出所者を今までに四百人以上も雇ってきた(現在も七名いる)という、北洋建設さまとう会社から、実状を説明する大変丁寧なコメントをいただいた。

 それによると、北洋建設さまはこの四月まで、公的なお金を貰った事は一切無く、刑務所や少年院に行く時も実費で行き、その交通費などの経費のみで、今までに2億円以上出しておられるそうだ。
 また、出所者は着替えすら無いような状態で、北洋建設さまは筆者が問題にした奨励金で、出所者の身の回りの品や工具を購入しているという事だが、その法務省が出すようになった金額でも全然足りないのが実状なのだそうだ。
 また、奨励金が出るのも雇った時のみゆえ、不採用の場合にはかかった経費は北洋建設さまの自腹になってしまうそうだ。

 こうした活動がテレビで報道された時は、近所の方から「犯罪者がいる会社は出ていけ!」と言われたそうだ。
 それでも北洋建設さまは冬には毎朝無償で近隣の除雪をして、しかも雪捨て場がない為、とても費用のかかる融雪をその場でしておられるそうだ。
 そしてその作業をする者は全員、筆者が問題にした罪を犯した出所者なのだそうだ。
 その彼らは、こう言っているそうだ。「私たちにはこのような事しか貢献できないのでやります」と。
 さらにもう後がない為、出所者は通常のものより頑張り、普通は嫌がることも率先してやるそうだ。
 それを知って、今では近所の方がお酒などを持って来るようになっているという。

 無限に広がる電脳の世界の中の、吹けば飛ぶようなチンケなブログとは言え。
 このような受け入れ企業と出所者たちの実状も知らずに、犯罪者憎しの感情論だけで法務省が始めた奨励金の制度を悪し様に罵った自分を恥じると共に、身銭を切って出所者の雇用に努めて来られた北洋建設さまなどの企業と、更生に努めている出所者の皆様に、この場を借りてお詫びを申し上げたい。
 筆者の無知を怒るのではなく、丁寧に実状を教えて下さった北洋建設さまには、心から感謝します。

 それにしても、罪とそれを許すかどうかという事は大変難しい問題だと、改めて考えさせられた。
 ある殺人事件が起きた時、世論の非難がその犯人に集中した時、かつて犯罪を犯して刑務所に服役した経験のある作家がこう言った。
犯人を非難できるのは、被害者の身内だけだ。何の関係もない第三者に、犯人を死刑にしろとか言う資格はない
 ……それはいささか極論に過ぎると思う。
 しかしその作家の言う事にも、確かに一理はあると思う。

 筆者はこれまで生きてきた間に何度も人に裏切られたり、暴力を受けたりして酷い目に遭った事がある。そしてその相手の事は、忘れず今もしっかり憎んでいる。
 筆者は泣き言を言うのも、人に弱い所を見せるのも嫌いなので、そうした辛い体験は身内にも言わずに黙っているが。
 それでももし話したとしたら、身内の者や親しい友人は筆者の為に怒って、その酷い事をした相手を一緒に憎んでくれるだろうと思う。
 しかしだ、筆者の身内でも親友でもない第三者にもその話をして、「さあ一緒にアイツを憎んでくれ!」と求めるのは無理な話だとわかっている。

 犯罪の場合も、それと同じ事が言えるかも知れない。
 自分が被害者かその身内なら、加害者を恨んで罵倒し、最大限に重い罰を司法に求める権利も当然あると思う。
 ただ被害者とはまるで関係のない第三者が、「アイツは絶対に許せない!」と怒り、皆で一緒に加害者に制裁を加えようとしたら、それはリンチになってしまうだろう。
 そういう意味で、被害者とは何の関係もない第三者が、罪を犯した者を出所後も差別して憎み続けるのは、リンチと同じなのかも知れない。
 もちろん、被害者とその身内は、加害者が刑期を終えて出所した後も、生涯恨み続けても当然だが。

 とは言うものの、世間を騒がせた余りにも酷い犯罪を犯した者まで、「刑期を終えて出所したのだからと許して隣人(あるいは職場の同僚)として迎え入れられるか?」と言われると、正直に言って全く自信がない。
 かつて、綾瀬市で女子高生コンクリート詰め殺人事件という凶悪な犯罪があったが。
 その内容は余りにも陰惨で酷いので、ここではあえて触れないでおく。ご存じ無い若い方は、詳細についてはググってみてほしい。
 犯人たちは、普通だったら死刑なり無期なりの重い刑を受けているところだが。しかし残念ながら、犯人らはすべて少年だった。
 そして少年法のおかげで、犯人の少年たちは匿名のまま、現在すべて出所している。そして中には結婚もし、家庭を持っている者もいるという。

 何の罪もない女子高生を拉致して一ヶ月以上監禁し、酷い暴行を加え続けた末に惨殺した者が今は既に社会に出ていて、家庭を持ち貴方の隣に住んでいるかも知れないのだ。
 この現実に、貴方は耐えられるだろうか。
 筆者には無理だ。
 筆者はあの事件の被害者とは何の関係も無いし、犯人の少年らが法の裁きを受けて出所して来たのだという事もわかっている。
 だがそれでも、あの事件の犯人が今は家庭を持ち一般市民として幸せに暮らしているという現実に耐えられないし、「許せない」と理性を越えた感情の部分で思ってしまう。

 あの神戸で事件を起こしたサカキバラこと元少年Aも、司法に許されて世間に出た後、更生して贖罪するどころか遺族の心を踏みにじる『絶歌』なる本を出版して四千万円もの印税を手にし、さらに週刊誌の編集部に長文の手記を送りつけ、不気味なHPまで開設する始末だ。
 筆者は元少年Aの被害者とは何の関係もないが、それでも元少年Aを隣人として同じ社会に迎え入れる事はやはり耐えられない。

 しかし同時に、母親と継父に虐待され小学校にすらろくに通えず、金を持って来るよう母親に強要されて祖父母を殺してしまったような少年については、まさに「親と生育環境のせい」と思うし、彼が刑期を務め上げて出所して来たならば、社会の中で更生することを願いたいと思う。

 結局、世間の人達が罪を犯した人を許して社会に迎え入れる気になれるかどうかは、「その人による」としか言いようがないように思う。
 同じ罪を犯した者であっても、「反省して罪を償ったなら許しても良い者」と「刑期を終え司法が許しても絶対に許したくない者」がいるような気がする。
 また、筆者は例の母親と継父に虐待された末に祖父母を殺してしまった少年については「許しても良い」と思うが、「どんな理由があれ、人を殺した罪は決して許されない」と思う者もいるだろう。
 逆に綾瀬の女子高生コンクリート詰め殺人事件を犯した元少年たちについても、筆者は「刑期も勤め上げどれだけ反省しようが許されない」と思うが、「裁判を受け刑期も終えて釈放された以上、社会に出て結婚し家庭を持って幸せになるのも自由」と思う人もいるだろう。

 罪と罰と償いと許しに関して、考えれば考えるほどよりわからなくなって行く一方だ。
 それに関して皆が納得するような正解など、おそらく無いのではないかと思う。
 ただ罪を犯した“元ワル”憎しの一念で凝り固まっていた筆者に、北洋建設さまが下さった丁寧なコメントは、罪と罰と償いと許しの問題について深く考える切っ掛けを与えてくれたと、とても感謝している。
 そしてもしよろしければ貴方も、罪を犯した者を許すべきか、許すとすればどういう場合ならば良いと思うか、少しでも考えてみてほしいと思う。

 一年前、十数億円もの予算をかけ、出所者を雇用した事業主に、一人につき年間で最大72万円の奨励金を出すと決めた法務省に、「国民の血税を元犯罪者に使うなんて!」と腹を立てた筆者であったが。
 税金を使ってまで悪い事をしたヤツの更生に社会が手を貸す必要など無い、再犯を犯すような悪いヤツはずっと刑務所に放り込んでおけば良いのだ……などとも考えていた。

 しかしよく考えてみれば、刑務所を維持するにも税金が必要なのである。
 施設の維持や刑務官の人件費などにも、多額の税金が費やされているのである。

 素人の筆者は、「刑務作業で生産したものもメイド・イン・ジャパンなのだ。その安心で高品質な国産品を安く売って、黒字経営にしたら良いじゃないか」などと考えたりもした。
 何しろ刑務所では受刑者に支払う作業報奨金が激安だから、国産品で最も問題になる人件費の問題が完全にクリアでき、価格の面でもかなり強力な競争力がある筈だ。

 しかしそれは駄目なのだ。
 まず国が受刑者を最低賃金より遙かに安い作業報奨金で働かせた安価な商品でシェアを奪うのは、民業の圧迫になる。
 さらにその低い報酬で作らせた製品の売り上げで刑務所の維持費等を黒字にし、国が利潤を得るとしたら、「受刑者の人権を無視した強制労働」として国際的に非難を受けてしまう。
 だから刑務所の維持費は、嫌でも我らの税金で賄わねばならないのだ。

 で、筆者も一度は思った「悪いヤツはどんどん刑務所に入れ、再犯するようなヤツは刑務所から長く出さなければ良い」という案を実行すると、刑務所に収容される受刑者の数が増大し、すると刑務所の維持費や刑務官の人件費も膨れ上がり、結局より多くの血税が犯罪者の為に使われる事になるのである。
 それを考えると、雇用した事業主に国が奨励金を出してでも、更生の見込みのある元受刑者は職を持たせて社会の中で立ち直らせた方が、税金の面でも結局は安上がりなのかも知れない
 しかも北洋建設さまのような事業者は、国から支払われた奨励金より遙かに多くのお金を、元受刑者の雇用と更生の為に自腹で出しているという。

 刑期を務めあげれば許しても良いと思える、社会の中で更生が認められる元受刑者と。
 刑期を満了しても許し難い、隣人として社会に迎え入れたくない元受刑者と。
 その区別が非常に難しいところではあるが。
過去に罪を犯した者も、社会に受け入れて更生させて再犯を防いだ方が良いのかも知れない
 そう考えさせられた北洋建設さまの丁寧なコメントには深く感謝すると共に、その出所者の更生に尽くす努力には頭が下がる思いだ。

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