空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

なかなか面白いゾ、サントリーの白角は!

 まさかこんな日が来るとは、筆者は夢にも思っていなかった。
 あのサントリーの、しかも廉価なウイスキーを「意外に悪くない」と評価せざるを得ない日が来てしまうとは。

 筆者はこれでも、サントリーの廉価なウイスキーはそれなりに飲んできたつもりである。
 あの角瓶はもちろんの事、ホワイトレッドも飲んでみた。
 その上で、筆者は「庶民が普通に飲む手頃な価格帯でもそれなりに旨いウイスキーを出しているニッカと違って、安い製品となると香りだけは一応それらしいものの、味わいに深みが乏しく熟成の足りぬ若いアルコールの刺激がツンツン来るものばかり出してくるサントリーはダメだ」と思い続けてきた。

 サントリーが以前出していた“無頼派”なるウイスキーも、本当に酷かった。

 安易な生き方は蹴っ飛ばす。──「無頼派」は、心に気魄をそそぐウイスキー。
 15年熟成させた秘蔵モルトを、ブレンドの仕上げに利かせた骨太な味わい、華やかな香り。
 その陶酔は、何者にも頼らない孤高の精神を鼓舞するために。
 純にして艶。柔にして剛。
 琥珀にそなわる複雑を味わいつくすならストレート。
 凛とした香り、甘やかなとろみを愉しむなら御・ザ・ロックス。


 ……という、日本語になっているのだかどうだわかわらぬような、自己陶酔に満ちたキャッチコピーと共に売り出された「無頼派」だが。
 実際には若いアルコールの刺激がピリピリ来る安酒に、香り付けに“15年熟成させた秘蔵モルト”をほんのちょっぴり垂らしただけの、悪い意味で「いかにもサントリーらしい」酷い代物だった。

 そう、サントリーの廉価なウイスキーの作り方というのは、たいていコレなのだ。
 香りだけはそれらしく仕上げているが、若いアルコールの刺激がキツく、味も薄っぺらで。
 何しろサントリーを大きくした角瓶が、そもそもモルト原酒をグレーン・ウイスキーならぬグレーン・アルコール(樽熟成は全くナシ)で希釈した上に、複数のリキュールで香り付けした“リキュール・ウイスキー”だったのだから
 今は違うが、昔の角瓶や復刻版のラベルを見てごらん。ラベルに堂々と“Liqueur Whisky”と書いてあるから。
 角瓶だけでなく、サントリーはホワイトオールドリザーブも、リキュールやら甘味果実酒やらで香り付けしていたんだよね、かつては。

 だから筆者は、そんなサントリーをウイスキー・メーカーとして信用していないのだ。
 今は製品にリキュールを混ぜ込んではいないようだが、一部に良質なモルト原酒を使ってはいるものの、それは香り付けの為で、実際に飲んでみると若いアルコールの刺激がキツいものが多く、「ああ、サントリーが一般庶民に飲ませる、普及品のウイスキーの作り方は変わっていないな」と痛感させられる。

 そしてサントリーの巧いところは、ウイスキーをハイボールや水で薄く割って飲む事を、洗脳に近い広告戦略で、大々的に勧めているところだ。
 何しろサントリーが勧めるように薄く割った上に氷で冷やし込めば、ウイスキーらしい香りはほのかに残りつつ、例のアルコールのツンと来る刺激はすっかり消えるからね。
 だがそのサントリーの“洗脳”のせいで今はウイスキー・ブームとは言われるものの、大多数の日本人は「ウイスキー=ハイボール」と単純に信じ込んでしまっている。そして千円程度の手頃なものならともかく、長期熟成したブレンデッド・ウイスキーやシングルモルト・ウイスキーまで炭酸で薄く割り大量の氷をブチ込み、その味と香りを台無しにしてビールのようにガブガブ飲もうとするのだから悲しい

 と言うと、必ず「長期熟成したブレンデッド・ウイスキーだろうがシングルモルト・ウイスキーだろうが、どう飲もうが本人の勝手だ!」と怒り出す人達が出てくるが。
 もし生食用の最上級の本マグロがあったとして。
 それを新鮮なうちに寿司や刺身で食べることなく、醤油と砂糖などで甘辛く煮つけて食べたとしたら、「ああ、勿体ない。本来の味を台無しにして」と呆れられて当然ではないだろうか。
 それ本来の持ち味を台無しにするような食べ方や飲み方をして、「自分で買ったものを、どう食べどう飲もうが自由だ!」と言い張るのは、自由と無知をはき違えた、非常識な行為でしかないと筆者は思う。

 ちなみに、「ウイスキー=ハイボール」という洗脳CMを盛んに流しているサントリーだが。
 シングルモルト山崎の年代モノのウイスキーについては、そのサントリー自身が「まずはストレートで」と勧めているあたりでも、少なくともシングルモルトのような良いウイスキーは、ハイボールなどにすべきでは無い事がおわかりいただけると思う。

 実際、ニッカがサントリーの作り出したハイボール・ブームとNHKの『マッサン』人気に便乗して、竹鶴ピュアモルトのハイボール缶を期間限定で売り出したが、アレは想像以上に不味かった。
 竹鶴ピュアモルトの良い点をすべて薄めて台無しにした……としか言いようのない味と香りだった。

 竹鶴ピュアモルトやシングルモルト山崎に限らず、よく熟成されて丸みがあり、複雑な香りと味わいを持つウイスキーにハイボールは向かないのだ。本当にその味と香りを台無しにしてしまう。
 ハイボールに合うのは、熟成年数が若く、味と香りはそれなりにあるがアルコールの刺激も強い、少々暴れん坊的な性格のお手頃価格のウイスキーなのだ。
 事実、ウイスキーに関しては日本で第一人者と言っても良い土屋守氏も、『ゼロから始めるウイスキー入門』という著書の中で、ハイボールに向くのは「熟成年数の若い、リーズナブルなウイスキー」で、モルトウイスキーや長期熟成のウイスキーにはストレートかトワイスアップが向いていると触れておられる。

 だからウイスキーと言えば躊躇いなく炭酸か水で薄く割った上に氷もブチ込むのを「当たり前」と思っている日本の風潮には、筆者は本当にウンザリさせられている。
 ウイスキーをハイボールにして飲んでも構わないが、それは「熟成年数の若い、リーズナブルなウイスキー」限定なのだという事を、どうか一人でも多くの方にご理解願いたいと切に思う。

 で、そういう意味で甘く華やかな香りは立つしウイスキーらしい味わいもあるものの、おそらくモルトでなくグレーンの方のせいだろう、若いアルコールのツンと来る刺激もキツいサントリーの角瓶は、ハイボールにするのに最適なのだ。
 だから筆者は、角瓶が大嫌いだ。
 ウイスキーは「冷やして炭酸で薄く割ってゴクゴクと飲む」のでなく、濃いめでじっくり味と香りを楽しみたい筆者にとっては、角瓶はただ不味いとしか思えなかった。
 これが「日本人の味覚に合う、日本のウイスキー」だと言い張るサントリーには、「では筆者は日本人の味覚を持っていないのだろうな」と皮肉の一つも言いたくなってくる。

 しかしネットで検索するうち、「白角はフルーティーで意外に美味い」という声を聞いて、白角にちょっとだけ興味を持った。
 ただ同時に「白角は、オリジナルの角瓶の良い所をすべて無くしたようなもの」という低評価も見て、実際に買って味を確かめてみる気には、なかなかなれなかった。

 何しろあの角瓶の仲間だからね。
 味に期待などできないし、お手頃価格とは言え千円ちょっとを出すくらいなら、他の無名のスコッチの味を見てみた方がまだマシと思って、ずっと手を出さずにきたのだ。
 ところが旅先で缶入りの白角水割が二百円を切る値段で出ていたものだから、怖々と買ってみた。

白角水割P1080624

 味デスカ。
 少し以前このブログでも触れたけれど、アルコール度9パーセントにまで薄められた缶入りの白角水割は、「殆ど味がしねぇ」と言いたくなるくらいに物足りなかった。
 筆者は同じアルコール度9パーセントの角ハイボール缶〈濃いめ〉も飲んだ事があるが、まだこちらの方がウイスキーらしい味わいがあった。

 缶入りの白角水割は、淡麗辛口と称してはいるものの、実際には「殆ど水のようで僅かに苦い」という感じで。
 ただ香りだけは、青リンゴのように爽やかで魅力的なのだ。
 筆者は基本的には甘くスモーキーで力強いウイスキーが好きだが、カティー・サークを始めとするライト系のウイスキーもそれなりに飲んでいる。しかしライト系でもこのようなフルーティーな香りのウイスキーは殆ど飲んだ事が無く、その香りだけはかなり印象に残った。

 で、「売り文句は“淡麗辛口”だけど、薄味でアルコールの刺激だけがあるのをそう言い繕っているのではないか」とか、いろいろ迷った挙げ句、ついに買ってしまったのだ、あの憎きサントリーの角瓶の一味の、白角を。

サントリー白角P1080659

 ……意外だった。
 案外悪くないんだよ、この白角が。
 封を切った当初は、やはり味も香りも薄めだったが、それでもフルーティーな香りはしたし、味もそう悪くなかった。
 そして中のウイスキーが空気と充分に触れ合った数日後には、爽やかな青リンゴの香りの中に、僅かにだがスモーキーな香りすら漂ってきた。
 味わいはやはりライトだが、ウイスキーらしい風味はちゃんと感じられる。それだけではない、ラベルでは淡麗辛口を謳っているが、実際には優しい甘味を感じる。
 ただ千円ちょっとの製品だから、やはり若いアルコールの刺激は価格相応分にある。そしてサントリーはそれを“辛口”と称しているのではないかと、筆者は意地悪の一つも言いたくなってくる。

 美味いとまでは言わないが、スタンダードの角瓶と違って本当に悪くないんだよ、この白角は。
 味わいがかなりライトだから、ヘビーなウイスキー好きにとってはあれこれ物足りないのは事実だ。しかしウイスキーらしい味わいもほのかな甘味もよく味わえばちゃんとある。そして不思議な事に、アルコールの刺激はあるものの、スタンダードの角瓶より抑えられている感じだ。
 と言うか、元々ライトな味わいなのだから、若いアルコールの刺激を普通の角瓶と同じにしたら、そのアルコールの刺激だけが突出して、とても飲めるものでは無くなってしまうよね。

 しかしこの白角は、飲むのが意外に難しい。
 まず、ストレートで飲むのは無茶だ。何しろアルコールの刺激が強いから。
 そしてこの白角の香りは繊細だから、ロックにするのも「どうかな、向かないのではないかな?」と思ってしまう。ウイスキーだけでなくブランデーでもそうだが、氷を入れて冷やし込むと、香りが引っ込んでしまうからね。
 で、常温で1:1のトワイスアップにすると、香りも良い具合に立ち、アルコールの刺激はまだ残るもののウイスキーらしい味わいと甘さも感じられて良い感じだ。飲んだ後にも、ほのかな果実香が心地良く残る。
 水で割る場合、筆者は1:2が限界だと思う。それ以上割り水を増やすと、例の缶入りの白角水割のように殆ど味が無くなってしまう。
 この1:2は本当にギリギリで、筆者はかなり水に近く感じてしまう。だがそれでも、ウイスキーらしい味わいは何とか残ってくれる。そしてアルコールの刺激も消えるので、日本酒や割った本格焼酎を飲むようにスイスイ飲めると思う。
 何しろ1:2で割れば、アルコール度数が日本酒や割った焼酎にも近くなるからね。
 不思議な事に、この1:2で割ると、ウイスキーの旨みと甘味の他に、僅かな苦みが出てくる。

 実は筆者は、白角を1に、水を1.5にして割ってもみたのだが。
 コレが何とも中途半端だった。
 トワイスアップに較べて味と香りが急に薄くなる上に、アルコールの刺激はまだ少し残る感じで、個人的に何か不満ばかりが残る結果になった。

 筆者としては、この白角、食後酒として飲むならトワイスアップ、メーカーが勧めたがるように食中酒として飲むなら1:2に割るのが良いと思う。
 薄く割りすぎても、氷などで冷やし込みすぎても駄目デスよ、このウイスキーは。
 何しろ味も香りも繊細なので、薄くしすぎたり冷やし込みすぎても、ただの「冷たいすっきりアルコール」になってしまう。

 ライト系のウイスキーは、国産だけでなくスコッチやカナディアンにもいろいろあるけれど。
 筆者が飲んできたライト系のウイスキーには、ただ薄味で物足りない感じだけが残るものが少なくなかった。
 しかし白角は違う。甘くスモーキーで力強いタイプのウイスキーが好きな筆者には、かなり物足りないのは事実だ。けれどウイスキーらしい味わいも甘味もちゃんと感じられ、そして何より爽やかな青リンゴの香りがある。これは他のライト系のウイスキーには無い個性だ。

 筆者はこの白角を、「毎日飲みたい」とは思わない。何しろ筆者には、味が物足りな過ぎて。
 白角を続けて飲んだ後で、同価格帯のスコッチのヘッジス&バトラーを飲んだ時、それまで少し不満もあったヘッジス&バトラーに「何と濃く深い味なんだ」と感動してしまったゼ。
 だがそれでも、自分好みの甘くスモーキーで力強いウイスキーを続けて飲んだ後で、週に一度くらい飲んでみたいな……という気持ちも残った。

サントリー角瓶シリーズP1080658

 販売戦略のせいか、白角は角瓶のラインナップの一つのように扱われているが。
 実際に飲んでみると、白角はスタンダードの角瓶とはまるで別物だとわかる。
 角瓶というブランドを信仰して、「あの角瓶の仲間だ」と思って手を出してみる人もいるだろう。しかしその種の人達は、スタンダードの角瓶と同じように炭酸で薄く割ってハイボールにしてみてガッカリ……という事になるのではないだろうか。
 そしてまた、筆者のように「あの角瓶の仲間かよwww」と思って、あえて手を出さずいた“飲まずギライ”の人もいるのではないだろうか。

 ライトだが青リンゴの爽やかな香りのあるこの白角は、筆者の好みとは対極にあるようなウイスキーだが、「こんなウイスキーがあっても良い」と思う。
 本格麦焼酎を飲んでいる方や、「これからウイスキーを飲んでみたい」という初心者の方にも勧められる製品だと思う。
 ただ味も香りも繊細なので、薄く割り過ぎてもハイボールにしても美味しくない(かと言ってストレートではアルコールの刺激がキツ過ぎる)ところが、飲み方として中々難しいところかも知れない。
 白角がハイボールに合わない事は、メーカー自身が水割りを推奨していて、この「ウイスキーは何でもかんでもハイボール」の時代に、あえてハイボールでなく水割りを缶入りで発売している事でもわかる

 それにしてもサントリーは何故、お手頃価格のウイスキーは水や炭酸で薄く割って食中酒として飲ませようとするのだろうか。
 まあ、スタンダードの角瓶や他のサントリーの安いウイスキーには、アルコールの刺激が強くて水や炭酸で薄く割らなければ飲みにくいものが多いのも事実だ。
 しかし白角のように濃いめでじっくり飲んでも面白く、逆に薄く割り過ぎると水のようになってしまう製品も中にはあるのだ。
 まあ、白角が薄く割り過ぎると水のようになってしのうのを、サントリーさんは淡麗辛口wwwと称しているのかも知れないが。

 スタンダードの角瓶からホワイトやレッド、それに無頼派のような妙なシロモノまで飲んでみて。
「ニッカに較べて、サントリーはお手頃価格帯に良いものが少ない」
 ずっとそう思っていた筆者だが、白角に出会えて良かったと思っている。
 その爽やかな香りと、割り水の量でがらりと変わる味わいには、なかなか興味深いものがあった。
「好き」とは言わないが、とても「面白い」ウイスキーだと思うし、これからも無くならないでもらいたいものだと思った。

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