空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

ウイスキー入門者に薦めたいジム・ビーム

 筆者はウイスキーをよく飲むが、「ウイスキーが好きだ」とは言い切れない。
 と言うのは、スコッチは間違いなく好きなのだが、それ以外のウイスキー類は「好き」とは言いかねるからだ。

 まずアイリッシュは、ブッシュミルズは間違いなく大好きだが、世界的に評価の高いジェイムソンは、個人的に全く好きになれなかった。

 筆者は元々スモーキー・フレーバーが好きなので、それが無いウイスキーはどうも物足りなく感じてしまう。
 甘くスモーキーで力強い、複雑で重厚な味わいのウイスキーが好きなのだ。
 例えばアイラ島のラガヴーリンアードベッグとか、スカイ島のタリスカーとか。

 何しろ好きな筈のスコッチでも、カティーサークJ&Bバランタイン・ファイネストBAT69などのライト系のものは、最初に買った一瓶こそは何とか飲み切ったものの、以来もう二度と飲まずにいる。
 ハンドレット・パイパーズなどは「コレは色付きの甲類焼酎か!」という感じで、最初の一瓶さえ飲み切る事が出来ず、その大部分を梅酒を作るのに使ってしまった。

 だからカナディアン・クラブとかのカナディアン系のウイスキーも、「ライト過ぎて物足りない」としか言いようが無かった。
 無論、これは全くの筆者の個人的な好みであるので、上に名を挙げたウイスキーがお好きな方がもし気を悪くされたなら、大変申し訳ないと思っている。

 で、バーボンも好きかどうかと問われると、とにかくただ「微妙」としか言いようがないのだ。
 あの強い甘みと口当たりの良さは、確かにバーボンにしかない魅力だと思う。
 とは言うものの、キャラメルコーンのような独特の匂いは、個人的にちょっと苦手だったりする。そして味わいも強い甘さとアルコールの刺激が正面に出て来過ぎてしまって、上質なスコッチやジャパニーズ・ウイスキーのような繊細で複雑なものは感じにくくなっているところも残念だ。
 だから「口当たりが良く飲みやすいのはわかっている、だが進んで手は出さない」というのが、筆者のバーボンに対する立ち位置だ。

 で、たまたま立ち寄ったコンビニで、ジム・ビームのポケット瓶を見つけてしまった。
 値段も税込みで四百円ちょっとで、サントリー角瓶のポケット瓶より少し安いくらいだった。
 それでつい、味見のつもりでそのジム・ビームのポケット瓶を買ってしまった。

ジム・ビームP1080744

 わかっている、ポケット瓶は割高だ。
 筆者が買ったジム・ビームのポケット瓶は200mlで税込み409円だったが、普通の700mlの瓶なら千円ちょっとで買える。
 しかしもし千円札を出し700mlも買って、それで不味くて飲む気になれなかったら残念ではないか。不味いと思うウイスキーを700mlも飲み切るのはかなり辛いし、だからと言って一気に下水に流すのも躊躇われる。
 だが200mlで五百円以下なら、もしガッカリな味でも諦めが容易につこうというものだ。そしてそのくらいの量なら、「あー不味い」とか言いつつ、炭酸で薄く割るなどしてすぐ飲み切れる。
 だから美味いかどうか不安のあるウイスキーに手を出す際に、200ml程度のポケット瓶や350mlのハーフボトルは案外便利だ。
 無論、美味いだろうと飲む前から予想がつくウイスキーなら、700mlの通常の瓶を迷わず買うが。

 さて、前置きが長くなったがサントリーに買収されてしまったこのジム・ビーム、案外悪くない。
 ジム・ビームもそうだが、注意して見るとラベルに“STRAIGHT BOURBON”と書いてあるバーボンは、総じてスコッチより口当たりが良く飲みやすい。
 アルコールの刺激もあるものの、バーボンにはそれを上回る強い甘さがある。
 ただその甘さも、バーボンによっては少しねっとりしたしつこい感じのものもあり、キャラメルコーンのような独特の匂いも、好きでない者にとっては抵抗を感じる部分があると思う。
 だから日本ではバーボンよりもスコッチの方がより売れていて、ジャパニーズ・ウイスキーもスコッチを意識した物が多いのだろう。

 その点、このジム・ビームはバーボンに馴染みの無い者でも飲みやすい、良いウイスキーだと思う。
 良い意味で癖が無く、とても飲みやすいのだ。
 バーボンらしいキャラメルコーンのような甘い匂いこそはっきりあるものの、決して鼻につくような厭な感じではない。そして樽を焦がしたチャーの匂いと混じって、むしろ心地良く感じるくらいだ。
 そして味も、甘みは強いが決してしつこい感じは無く、アルコールの刺激をうまい具合に打ち消している。

 強い甘さがあるからストレートでも飲めない事はないが、しかしアルコールの刺激も強く感じる。
 で、加水して1:1のトワイスアップにしてみると、アルコールの刺激も和らぎ強い甘みの中に隠れてちょうど良い感じになる。
 しかしそれ以上に水を増やすと、飲みやすくはなるが水っぽくなり過ぎ、味も香りも薄く物足りないものになってしまう。

 また、ロックにすると良くも悪くもバーボンらしいキャラメルコーンのような強く甘い匂いがスッと引き、心地良いフルーツのような香りに変わる。ただ、味の面でも強い甘みが引いて、ほのかな甘みに変わってしまい、そのためアルコールの刺激が前面に出て来る感じがある。
 しかし常温で飲むよりスッキリした感じになるので、常温で飲むよりロックを好む人も少なからず居ると思う。

 とにかくこのジム・ビームは、常温とロックで香りも味わいもかなり変わる。だからどちらが好みに合うか、御自分で試してみていただきたい。

 出来の良いスコッチのような奥深い複雑な味わいこそ無いが、この嫌み無く甘く飲みやすいジム・ビーム、この価格にしては「良いバーボンだ」と自信を持って言える。
 癖や個性は余り強くない優しい酒質なので、本格的なバーボン好きの方は、やや物足りなく感じてしまうかも知れないが。
 しかしウイスキー初心者や、バーボンにあまり馴染みの無かった方には、ぜひ勧められるウイスキーだと思う。

 このジム・ビームを造っているジム・ビーム社は、日本のサントリーに買収されたばかりだが。
 サントリーは良い買い物をした、とジム・ビームを飲んでみて思った。

 とは言え、筆者の一番好きなウイスキーは、やはりスコッチに変わりはない。
 だからこのジム・ビームも、「毎日飲みたい」とまでは思えなかった。
 しかし一週間か十日に一度くらい、気分を変える為にたまに飲んでみたいと思った。

 それにしても、サントリーは商売上手だと改めて思わされた。
 ジム・ビームは、これまでは酒屋の洋酒コーナーの片隅に置かれている程度だった。
 無論、200mlのポケット瓶など見た事も無かった。
 しかし今では酒屋だけでなくスーパーの洋酒コーナーにもジム・ビームの700ml瓶が置かれ、地方のコンビニにもポケット瓶が置かれている。

 それはいい。
 ジム・ビームの味の良さが知られ、売り上げが伸びて行くのは良い事だ。
 それより筆者が心配しているのは、ジム・ビーム社と一緒にサントリーに買収された、メーカーズマークの事である。

 メーカーズマークとはアメリカで最小のバーボンメーカーで、その蒸留所はアメリカ国定史跡にも指定されている。
 メーカーズマークのモットーは、「品質重視、限りなく少量、手作り生産」である。
 だからメーカーズマークは原料にこだわり抜くだけでなく、瓶のキャップは熟練した職人により、手作業で一本一本大切に、蝋で封をされている
 手作業だから、当然その封の蝋の垂れ方が同じ物は一本も無い。
 当然、日本では酒の専門店にしか無く、その存在すら知らなかった人も居るのではないだろうか。
 このメーカーズマーク社を、サントリーが買収するまでは。

 その「品質重視、限りなく少量、手作り生産」をモットーとするメーカーズマーク社がサントリーの物になってから、メーカーズマークが酒の専門店だけでなく、スーパーの洋酒コーナーやコンビニでも見かけるようになった。
 繰り返すが、「品質重視、限りなく少量、手作り生産をモットーとするメーカーズマークが」である。

 面白いのは、酒の専門店にあるメーカーズマークはこれまでと同じ750mlのものだが、スーパーやコンビニに置かれているものは、一回り小さくて可愛らしいハーフボトルが殆どなのである。
 これは筆者の勝手な想像だが、メーカーズマーク社を買収したサントリーは、「品質重視、限りなく少量、手作り生産」をモットーにするメーカーズーマークに増産を求めたのではないだろうか。
 しかし現地のメーカーズマーク社は、自社のモットーに基づき大幅な増産は拒んだのであろう。
 と言うより、アメリカで最も小さなバーボンの蒸留所に、いきなり増産を求めても現実問題として出来る筈もないのだが。
 で、サントリーはハーフボトルを出す事で、商品の数を増やしてスーパーやコンビニにまで売り込んだのだろう。

 その小さく可愛らしいハーフボトルも、通常サイズのものと同様に一本一本蝋で封をされている。
 繰り返すが、その封蝋は熟練職人の手作業で一本ずつ行われているのだ。
 サントリーの要請で新たにハーフボトルの製品を生産し、出荷数を増やしたとしたら、そのアメリカ最小のバーボン蒸留所の作業員がどれだけ苦労したか、想像しただけで気の毒になってくる。
 繰り返すが、メーカーズマークのモットーは「品質重視、限りなく少量、手作り生産」なのだ。
「いーじゃねーか、残業代をたっぷり貰えて従業員もウハウハだろwww」とは、筆者は考えない。

 世の中の企業すべてが、「より売り上げを伸ばし、会社を大きくしたい」と考えているのだろうか。
 筆者は「それは違う」と考える。
 もちろん、大半の企業は効率化を進め、売り上げを伸ばし会社の規模を拡大して行きたいだろう。しかし逆に、小さいままでお得意様を大事にし、手作りでわかる人だけを相手により良い物を作って行きたいという会社だってある筈だ。

 想像してみてほしい。
 顔見知りの地元の人たちを相手に、手作りの料理を売りに営業してきたレストランが、多くの人を雇ってチェーン店化したとしたら。
 その店はお客に、元の手作りの味を提供できるだろうか。
 その拡大路線は、果たして成功するだろうか。

 元々規模の大きいジム・ビームを、増産させ日本を含めた世界で売り上げを伸ばして、さらに大きくするのは良い。
 しかしアメリカで最小のバーボン蒸留所で「品質重視、限りなく少量、手作り生産」をモットーにしてきたメーカーズマークにもそれを強いるのは、絶対に間違っていると筆者は考える。
 最小の蒸留所で、品質にこだわり少量を手作り生産してきたところにこそ、メーカーズーマークの価値があるのだ。規模を拡大しオートメ化し手作りを捨てたメーカーズマークになど、存在価値は無い。

 買収したからと言って、アメリカ国定史跡にも指定されている最小のバーボン蒸留所に安易に拡大路線をとらせるのは、「サントリーの勝手」ではなく「アメリカの酒文化に対する破壊と冒涜」だと筆者は考える。
 ジム・ビームはともかくメーカーズーマークの方は、あくまでも最小のバーボン蒸留所のまま、「品質重視、限りなく少量、手作り生産」のモットーを貫かせる事こそ企業の社会的義務であると、サントリーに理解していただきたく思う。

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コメント


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メーカーズマークの生産量について

まず誤解があるのがメーカーズマークが少量生産のメーカーであるという事です。
ジムビームに比べれば1/5の程度の生産量であり、確かに少量生産ではあるのですが、エバン・ウィリアムズ等と同程度の生産量で、ワイルドターキーよりも少し多いぐらいです。(Drinks Internationalが毎年発表してるThe Millionaires' Clubによる)サントリーの角瓶全体出荷量の半分ぐらいといえば分かり易いでしょうか?
また、サントリーがメーカーズマークの日本輸入代理店になったのが2013年、ジムビームを含めて買収したのが2014年ですが、メーカーズマークの出荷量は、2007 0.79, 2008 9.85, 2009 0.89, 2010 1.03, 2011 1.18, 2012 1.4, 2013 1.4(単位100ケース)とサントリーが関与する前から出荷を貪欲に増やしていて、むしろ近年の方が伸び悩んでいるようです。
なので、ご危惧されているような、サントリーが弱小メーカーに無理に生産増を押しつけたような事態は、おそらくなかったものと思われます。

KAZ | URL | 2015-12-14(Mon)10:33 [編集]


Re: メーカーズマークの生産量について

> まず誤解があるのがメーカーズマークが少量生産のメーカーであるという事です。
> ジムビームに比べれば1/5の程度の生産量であり、確かに少量生産ではあるのですが、エバン・ウィリアムズ等と同程度の生産量で、ワイルドターキーよりも少し多いぐらいです。(Drinks Internationalが毎年発表してるThe Millionaires' Clubによる)サントリーの角瓶全体出荷量の半分ぐらいといえば分かり易いでしょうか?
> また、サントリーがメーカーズマークの日本輸入代理店になったのが2013年、ジムビームを含めて買収したのが2014年ですが、メーカーズマークの出荷量は、2007 0.79, 2008 9.85, 2009 0.89, 2010 1.03, 2011 1.18, 2012 1.4, 2013 1.4(単位100ケース)とサントリーが関与する前から出荷を貪欲に増やしていて、むしろ近年の方が伸び悩んでいるようです。
> なので、ご危惧されているような、サントリーが弱小メーカーに無理に生産増を押しつけたような事態は、おそらくなかったものと思われます。

 コメントありがとうございます。
 メーカーズマークが最小のバーボン蒸留所で極少量生産というのは、橋口孝司氏の『ウイスキー銘酒事典』という本の記事を盲信してそのまま書いてしまったもので、後で改めて確かめてみたところ、メーカーズマークの生産量はKAZ様のおっしゃる通り意外に多い事を知りました。
 一冊の本の記事だけをうのみにして、裏も取らずにただサントリーを批判してしまった事を、今は恥じています。
 その私の無知を叱らず、いろいろなデータと共に事実を丁寧にご教示下さった事を感謝いたします。

黒沢一樹 | URL | 2015-12-17(Thu)16:50 [編集]


タリスカー?

あら、黒澤氏。お好みはタリスカー?

黒澤氏とは本気で機会あればウイスキーを
呑んでみたいですね。

タリスカー、ラフロイグ、などなど。

おそらく「一緒に呑んで気持ちいい」と
思うのですよ。貴兄の様な好漢は。

私、埼玉在住で新橋のバーに良く行くので
関東にお越しの際はお声掛けください。

いつか男同士。

楽しい盃を交わしましょう!(笑)

ogotch | URL | 2016-05-12(Thu)21:16 [編集]


Re: タリスカー?

> 黒澤氏とは本気で機会あればウイスキーを
> 呑んでみたいですね。
> タリスカー、ラフロイグ、などなど。
> いつか男同士
> 楽しい盃を交わしましょう!(笑)

 タリスカーもかなり好きですが、ラフロイグやラガヴーリンやアードベッグも大好きです。
 それだけに、ラフロイグがサントリーのものになってしまった時には、思わず「チッ」と舌打ちしてしまいました。
 実は好きだったんですよ、ボウモアも。

 それにしても、ogotchさんとは美味しい酒が飲めそうですね。
 実は私は、女性と酒を飲むのはあまり好まないのです。
 変に気を使わなければならない上に、本音の会話も出来ないので、あまり楽しいと思えないんです。
 むろん、それも相手にもよりますが……。

 私は静岡県に住んでおります。
 首都圏から遠く離れているわけでもありませんので、上京する機会があれば、是非お話をお伺いしたいものです。

黒沢一樹 | URL | 2016-05-19(Thu)15:21 [編集]