空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

何とも言いようのない味の、ニッカのゴールデンパイナップルハイボール

 ニッカから、10月末までの期間限定でゴールデンパイナップルのハイボールが発売された。
 近所のスーパーで税抜き138円と、価格的にも手頃だったので、早速買ってその夜のうちに味をみてみた。

ニッカ・ハイボールP1080842

 ……感想デスカ。
「ウイスキーとパイナップルって、そもそも合うのかな?」という疑問を飲む前に持った人は、恐らく筆者だけではないだろうと思う。
 で、飲んでみた実感は、「合わないと言えない事もない」というところだった。

 ウイスキーには元々、甘みと苦みがあるからね。
 そしてパイナップルにも、強い甘みと共に僅かだが刺激的な苦みに近いものもある。
 だからニッカの試みたウイスキーにパイナップルという組み合わせは、「合わない」と言えない事も無かった。

 なぜ「合う」と、ストレートに言い切れなかったのか。
 飲んでいるうちに、パイナップルの強い甘さと酸っぱさがウイスキーの味と混ざり合って、次第に気持ち悪く感じられてきたからだ。

 果汁入りとは言え、ニッカのこのゴールデンパイナップルのハイボールに含まれている果汁は、何と僅か0.1%だ。
 繰り返し言うが、0.1%だよ?
 350mlの缶で言えば、たったの0.35ccだ。35ccや3.5ccの間違いでもなく、ね。
 その350mlにスポイトで一滴だけ垂らすような量の果汁で、「パイナップルの味を感じろ」と言う方がおかしい。

 だから例のゴールデンパイナップルのハイボールの原材料表示を見てみると、「ウイスキー、果汁、糖類、酸味料、香料、カラメル」と書いてある。
 つまり飲んだ者がパイナップルらしく感じた味と香りの実態は、殆どが香料と糖類と酸味料なのだ。
 そして「パイナップルもちゃんと入れてま~す」というイメージ作りの為に、0.1%の果汁も垂らしておいた……というわけだ。

ニッカ・ハイボールP1080843

 ニッカのこのゴールデンパイナップルのハイボールの缶の裏側には、竹鶴政孝氏とリタ夫人の写真も載せられているが。
 筆者の記憶では、竹鶴政孝氏はニッカがまだ大日本果汁として林檎ジュースを作っていた際にも、高価になる事を承知の上で100%果汁にこだわっていた。そしてウイスキー造りも含めて、添加香料などの研究は一切禁じていた筈だ。
 果汁は0.1%で殆ど香料等で味と香りを付けられたハイボールの缶に自分と夫人の写真を載せられて、竹鶴氏はあの世でどんな気持ちでいるだろうかと思うと、筆者は気の毒になってくる。

 よく「品質のニッカ、宣伝のサントリー」と言われるが。
 サントリーは近頃買収したビーム社のバーボンのジム・ビームを使って、早速シトラスハイボール缶を売り出した。
 こちらも糖類や酸味料を使ってはいるものの、少なくとも果汁は8%も使い、香料やカラメルは使用していない

 あの「品質のニッカ」のハイボール缶のゴールデンパイナップルは、ほぼ香料の味と香りで。
 そして「宣伝のサントリー」のジムビームハイボール缶のシトラス(グレープフルーツ)の方は、ほぼ本物の果汁の味と香りだとは。

 ニッカのハイボールゴールデンパイナップル缶は、販売店によって違いはあるものの、ジムビームシトラスハイボール缶より40円くらい安価だ。
 だがだからと言って、「果汁ちょっぴり、香料しっかり」というのは、企業の姿勢としていかがなものかと思う。

 1980年代まではウイスキーにリキュールや甘味果実酒を混ぜ、それを広告の力で売っていたサントリーが、今では無香料のハイボールを売っているのに。
 逆にニッカは創業者の竹鶴政孝氏が禁じた香料を使ったハイボールを、それも竹鶴政孝氏の写真付きで売っているのだから、「ニッカや親会社のアサヒビールの経営陣は酷い」としか言いようがない。

 商売第一で時代にも迎合してきたサントリーと違って、ニッカは頑固に本物のウイスキー造りを追求してきた筈だ。
 だからサントリーが煽ったハイボール・ブームになど目もくれずに、自社の伝統的なウイスキー造りを続けていれば良かったのだと筆者は思う。

ウイスキーは宣伝より品質が肝心である
 そう語り、香料等の研究すら禁じてきたのは、竹鶴政孝氏であるが。
 果汁0.1%で香料入りのハイボール缶は、竹鶴氏のその精神と真逆の存在であると筆者は考える。

 まあ、だからこそ竹鶴氏のニッカの経営は常に綱渡りで、アサヒビールの傘下に入らざるを得なかったのだが。
 そして竹鶴政孝氏の没後、ニッカはアサヒビールの完全子会社になった。
 だからニッカのウイスキーをよく見ると、「製造者ニッカウヰスキー株式会社、販売者アサヒビール株式会社」と書いてある。
 ニッカは今ではただウイスキーを造るだけで、販売戦略はアサヒビールが決めているのであろう。

 それにしても、アサヒビールとニッカは「ハイボールをナメているのではないか」と思いたくなる。
 時代はハイボールだからと言って、安易に香料入りで果汁は形だけのものを売ったり。
 或いは知名度が高いからと言って、あの竹鶴ピュアモルトをハイボール缶にするようなもったいない事をしてみたり。
 どんなウイスキーをハイボールにすべきかもよくわからずに、「ハイボール缶作りに迷走している」としか言いようがない。

 ハイボール・ブームの本家本元のサントリーを見るがいい。殆ど洗脳のように「ウイスキー=角瓶=ハイボール」と大衆にイメージ付ける一方、山崎や白州や響などはストレートや濃いめで飲ませている。
 ハイボールにはそれに適したウイスキーというものがあって、「良いウイスキーを使うほどハイボールも美味しくなる」というわけでは無いのだ。
 だからハイボールのブームを作ったサントリー自身が、山崎については「まずはストレートで」と勧めている。

 それに関しては、異論のある方々が存在する事もわかっている。
「いや、良いウイスキーを使えば、ハイボールもより美味しくなるんだ」と言う人達がいる事もわかっている。
 実際、良いウイスキーで作ったハイボールは、決して不味くはない。
 しかし決して美味くもなく、ストレートや濃いめで飲んでその本来の旨さを知っている者からすれば、「変に薄めて良い所を台無しにしているだけ」と文句の一つも言いたくなってくる。

 ニッカの出した竹鶴ハイボール缶がまさにそれで、決して不味くはないのだが、竹鶴ピュアモルトが大好きだった筆者にとっては、竹鶴本来の旨さがひどく薄まって台無しな味と香りになっているようにしか思えなかった。
 例えて言えば、せっかく深い味に淹れた上質なエスプレッソ・コーヒーを「濃くて飲みにくいから」と、お湯でジャブジャブ薄めて「飲みやすくして」ガブガブ飲まれてしまうような感じだ。

 ハイボールに向いているのは、まだ若く味と香りに角があるリーズナブルな価格帯のウイスキーだ。炭酸で割ると、アルコールの刺激が和らいで飲みやすくなると同時に、モルトの香りも立ってより華やかになる。
 例えばサントリーの場合、ちょうどそれが角瓶(スタンダードの黄角)だったというわけだ。

 ニッカでも、ブラックニッカ・クリアは普通に飲むにはまるで物足りないが、濃いめのハイボールにすると案外悪くない。
 ブラックニッカ・クリアでは物足りないと言うのなら、ブラックニッカ・リッチブレンドハイニッカでも悪くないと思う。

 だからニッカも、ハイボール缶を出すならブラックニッカだけで充分だったんだよ。
 なのに竹鶴ピュアモルトを使ってみたり、果汁0.1%で香料入りのものを出してみたりと、その迷走ぶりには呆れるばかりだ。

 それに比べて、サントリーは巧い。
 使うウイスキーは黄角とトリスに絞って、バリエーションとしてはウイスキーの味になじみの無い人向けにレモンなどの柑橘の風味を加えたものと、ウイスキーの味に慣れている人向けにアルコール度数がほんのちょっと高い〈濃いめ〉に分けて。

 本気でハイボール缶を売りたいなら、ニッカはサントリーのそのあたりを見習った方が良いと思う。対抗して変に差をつけようとして、高いピュアモルトをハイボールにしてみたり、安い代わりに果汁は0.1%で香料入りのものを出してみたりとか、ニッカというよりアサヒビールは「ウイスキーがわかってない」と思えてならない。
 アサヒビールはもしかしたら、果物風味の缶チューハイを作るような感覚でハイボールを作らせているのではないかという気さえしてくる。
 そうでなければ、パイナップル味のウイスキーを売りだそうとか、ちょっと考えられないもの。

 で、ニッカのハイボールゴールデンパイナップルだけれど、筆者としては「何か変わった味」としか言いようが無かったデス。
 一応、一缶全部飲み切れたけれど、残りの半分くらいは「嫌々、我慢しながら飲んだ」という感じだったな。
 こんなモノ飲むくらいなら、ビールを飲んだ方がずっとスッキリ、サッパリするのに……と思いながら。

 そうそう、食事をしながらハイボールを飲む人が少なくないようだけれど、コレは「糖類、酸味料、香料入り」でパイナップル味の甘味が強く出ているので、食中酒には向かないと思う。
 ビールの苦みが苦手だからと、冷たい炭酸のすっきりアルコールとしてハイボールを飲む人がいる事も知っているけれど、コレは「すっきり」ではなく人工的なしつこい甘さがあるよ。
 まあ、甘いジュースを飲みながら食事ができる人ならば問題ないと思うけれど、「甘いものはおかずにならないし、ジュースを飲みながら御飯を食べるなんて考えられない」という方は要注意デス。

 また、果物風味の缶チューハイと違って、やはりベースにはウイスキーの味と香りがあるので、元々ウイスキーが好きでない人は、その味と香りに抵抗を感じると思う。
 では「ウイスキーが好きな人なら大丈夫か?」と言うと、今度は逆にパイナップルの味と濃い甘さがウイスキーの味と香りを台無しにしているようにしか感じられないんだよね。

 と言う事で、ニッカのこのハイボールゴールデンパイナップル缶は、ウイスキー本来の味と香りが好きな人だけでなく、「ウイスキーは苦手だけれど、ハイボールは好き!」という人にも、どちらにも受け入れられなそうな味に思えた。
 筆者は元々、「ウイスキーを炭酸で薄く割るなどもったいない、どうしてもハイボールを飲みたければチューハイで充分だろ」と思っているもので。
 こんな変なモノを大々的に売り続けようとは思わずに、期間限定生産品にしておいて、ニッカは本当に良かったと思ってしまった。

 けれどもし「ウイスキーのパイナップル・ジュース割り」という珍妙な飲み物の味をみてみたいという方がいらっしゃるなら、10月末までの期間限定商品ですので、近くの酒屋かスーパーのお酒コーナーにお急ぎを。
 本当に何とも言えない、微妙な味を楽しめ(?)マスよ。
 個人的にお勧めはしないけれど、税込みで150円くらいで買えるので、一缶だけ話のネタに買って飲んでみるのも良いかも。

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