空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

何とも恐ろしいアルコールの刺激の、角瓶

 初めに断っておくが、筆者は「この日本で最も売れているウイスキー」であるところのサントリーの角瓶が大嫌いである。

 筆者が生まれて初めて飲んだウイスキーはジョニー・ウォーカーで、その芳香と味わいに一瞬に魅惑され、「ウイスキーとは、何と素晴らしいものか!」と心から感動したものだ。
 そして次に飲んだウイスキーがかの角瓶で、ジョニー・ウォーカーとはまるで別物の、その痩せて貧しい香りや味わいと、何よりも刺々しく舌に突き刺さるアルコールの刺激に、「これがあの素敵な飲み物と、同じウイスキーであるものか!」と憤慨したものだ。

 サントリーは角瓶を「まろやか」と言い、酒屋のPOP広告にも時々そう書かれているが、アレを正気で「まろやか」と思って飲む人は、はっきり言うが舌がおかしい。
 他のまともなウイスキーを飲んだ事が無いか、ウイスキーは薄く割ってハイボールなどにして飲むものと信じ込んでいる人だけだろう。
 角瓶を濃いめでじっくり味わって飲んだら、甘い香りこそするものの「まろやか」とは程遠いアルコールの刺激で舌がビリビリするぞ。

 ジョニー・ウォーカーを飲んでウイスキーに魅了され、その時ウイスキーに抱いた感動をブチ壊しにしてくれたサントリーの角瓶を、筆者は今でも心から恨んでいる。
 同時に、アレを喜んで買って日本で一番売れているウイスキーに押し上げ、美味いと思って飲んでいる日本人の味覚も「どうかしている」と思わざるを得ない。

 無論、味覚は人それぞれだから、筆者が不味いと思うものを「美味い!」と感じる人がいても当然だ。
 何しろ世の中には、ゴキブリの素揚げを美味いと思って食う人さえいるのだから、角瓶を飲む人がいても何の不思議でもない。
 しかしあの味と香りと舌に突き刺さるアルコールの刺激を考えると、アレが「日本で一番売れているウイスキー」という現実が、どうにも納得が行かないのだ。

 断言するが、アレはまともにじっくり味わって飲める“ウイスキー”ではない。
 サントリーのチーフ・ブレンダーであった輿水精一氏ですら、その著書で「角瓶はハイボールにして飲む」と認めているが、氷を入れ炭酸で薄く割り冷やし込んでゴクゴク飲み干すしか無いようなシロモノなのだ。
 だからか、あの角瓶が一番売れているウイスキーであるこの国では、ウイスキーと言えばハイボールという世界の非常識が常識になりつつある。
 そもそも欧州では蒸留酒を割って飲む習慣は無いし、スコッチの本場であるスコットランドではハイボールなど飲む者は殆どいないというのに。

 間違えないでもらいたい。
 筆者は「お手頃価格のウイスキーを、ハイボールにして飲む人がいても良い」と思っている。
 だか皆が皆「ウイスキーはハイボール」と思いこんでいるような、今の日本の風潮が嫌でたまらないのだ。

 今の日本は、原酒が足りなくなるほどの空前のウイスキー・ブームだと言う。しかし現実に飲まれているのは、あのハイボールばかりだ。
 まあ、炭酸で薄く割りでもしなければ飲みようが無い角瓶をハイボールにする分には、何の文句も無いが。
 例の「ウイスキー=ハイボール」という思い込みから、角瓶だけでなく他の製品まで、長期熟成のウイスキーやシングルモルトも何でもかんでもハイボールにしてしまっている日本の“ウイスキー・ブーム”の現状が悲しい。

 その日本のウイスキー(と言うよりハイボール)のブームを作り出したサントリーと角瓶に対する恨みは尽きないが、気まぐれを起こして角瓶の仲間の白角を飲んでみたところ、これが意外に悪くなかった。
 メーカーはこれを“淡麗辛口”と売り込んでいるが、辛口などとはとんでもない間違いだ。ほのかに甘くフルーティーで、僅かながらスモーキーさもあり、ライト系ながら実に色々な味と香りが混ざり合っている。
 この白角は、オリジナルの角瓶(黄角)と瓶の形も値段も同じだが、中身はまるで別物だ。
 確かにまだアルコールの刺激は残るものの、角瓶(黄角)ほどでは無く、値段を考えれば「まあこんなものかな」というところだ。
 美味いとまでは言わない。しかし「なかなか悪くないし、こんなウイスキーがあってもいい」と思った。

サントリー角瓶チラシP1090259

 白角に対するただ一つの不満は、サントリーの白角の売り方だ。
 白角も含めた角瓶のシリーズを、サントリーは「食中酒として飲む、お手軽なウイスキー」と位置づけているらしく、白角は水割りにして和食と合わせるように宣伝している。
 だから日本酒を意識して“淡麗辛口”などと銘打っているのだろうが、白角はほのかな甘さこそあれ決して辛口などではないし、食前や食後に濃いめでじっくり飲むのにも適している。
 販売戦略かも知れないが、白角の良さを生かし切れていないように思う。

 角瓶(黄角)はいつ飲んでも不味いと思うし大嫌いだが、白角はまるで別物で存外に悪くなかった。
 で、角瓶のもう一つの兄弟である〈黒43°〉にも興味が出てしまった。
 しかもメーカーのキャッチコピーによると、「濃く、モルティでクリーミーな味わい」とある。
 白角は悪くないと思ったし、スコッチでもインバー・ハウスなども好きだが、筆者は基本的に濃い味のウイスキーが好きである。
 だから〈黒43°〉も「もしかしたら白角以上に悪くないのでは?」という期待を持ちつつ、しかし同時に強い不安も感じていた。
 何故なら〈黒43°〉はその名の通り度数43%で、それでありながら他の度数40%の角瓶や白角と同じ値段であったからである。

 ブレンデッド・ウイスキーは、単式蒸留器で二~三回蒸留して度数60%程度にしたモルト・ウイスキーと、連続蒸留器で100%近くまでにしたグレーン・ウイスキーをブレンドし、それに加水し度数40~46%程度にして出荷している。
 と言うことはだ、それはとりもなおさず「角瓶(黄角)や白角より、〈黒43°〉はより多くのモルトまたはグレーンを使用している」という事である。
 他の角瓶や白角と値段が同じにもかかわらず、である。

 また日本の酒税では、ウイスキーの税率は度数37%が最安で、それから度数が1%上がる毎に払わなければならない税金も上がっているのである。
 つまり〈黒43°〉は、角瓶や白角より多くの酒税を国に支払っているのである。
 他の角瓶や白角と値段が同じにもかかわらず、である。

 原酒もより多く使い酒税も多く払って、市場には角瓶シリーズとして同じ値段で出す。
 どうしたらそんな事が出来るのか。
 企業努力と言えば聞こえは良いが、〈黒43°〉は角瓶や白角より、原材料(モルトかグレーン)のどちらかを削っているに違いないのだ。
 まさか〈黒43°〉だけ、消費者の為にサントリーが利益を削って出血サービスをしているわけではあるまい。

 だから〈黒43°〉を買うには、本当に「怖々と」という感じだった。
 ネットで見る限り、〈黒43°〉に対する評価は「角瓶より美味しい」という声も少数あったものの、「ただアルコールが強いだけ」という否定的な声の方が多かったし、コストの面からも筆者もおそらく後者が正しいのではないかと思っていた。
 が、「飲まずに批判してはいけないだろう」という思いから、甲類焼酎でも買うような勇気を出して買ってみた。

サントリー黒角P1090257

 さて、問題の〈黒43°〉だが、他の角瓶や白角と比べて明らかに色が濃い。店頭で比べてみたが、〈黒43°〉、角瓶(黄角)、白角の順に色が濃かった。
 で、キャップを開けてみると、すぐに濃く甘い香りが漂ってきた。その香りは、角瓶(黄角)よりも強いくらいだ。しかし同時に、やはりアルコール臭も強く感じる。
 口に含むと、ただ甘みが濃いだけでなく味に厚みも感じる。しかしストレートでは、本当にどうしようもないほどアルコールの刺激がキツい。
 トワイスアップにしてもまだアルコールがかなりキツく、口の中がアルコールでピリピリする。
 それどころか、グラスを鼻に近づけて軽く揺すってみると、鼻にツンと来るだけでなく目までヒリヒリ痛くなってきたくらいだ。
 それは筆者だけでなく、知人にも試してみてもらったが、その人もやはり「目が痛い!」と言った。
 まるで『天空の城ラピュタ』のラスト近くのムスカ大佐のような感じだったよ、「目が、目がぁー!」って、ホントにね。

サントリー黒角&白角P1090254

 繰り返し言うが、この〈黒43°〉のアルコール度数は43%だ。
 筆者は度数45%のブラックニッカ・ディープブレンドも飲んだが、これよりずっとなめらかでマイルドだった。
 度数50%の富士山麓も飲んだが、間違いなくこれより飲みやすかった。
 度数46%のタリスカー10年など、これとは比較するのが失礼なほどなめらかで美味しい。
 はっきり断言するが、筆者は度数50%以下のウイスキーで、この〈黒43°〉ほど荒々しくアルコールの刺激がキツいウイスキーを飲んだ事が無い。

 メーカーは、この〈黒43°〉をロックで飲むことを推奨しているようだが。
 なるほど、大きな塊のような氷を使うか、氷を多めにしてよく冷やし込めば、アルコールの強烈な刺激も少しは感じにくくなる。同時に香りや味も薄れてしまうが、〈黒43°〉は味も香りも元々濃いめだから、冷やし込んでもそれなりに残る。

 で、キャップを開けてから日が経つにつれより香りが立つようになり、次第にチョコレートに似た香りになってくる。
 しかし不思議なことに、日が経ち空気に触れても、アルコールの刺激が落ち着く感じは少しもない。それどころか、最初に感じた甘さより、アルコールの刺激によりより辛く不味く感じるのは何故だろうか。
 本当にこの〈黒43°〉のアルコールの刺激は暴力的なほどで、コレを飲んだ後に続けて白角を飲んでみたところ、「白角って、何て甘やかでフルーティーでなめらかなんだろう!」と思わず感動してしまったくらいだ。
 ライト系のスタンダード・スコッチの名品インバー・ハウスと飲み比べてみたが、〈黒43°〉のアルコールの刺激の荒々しさは「これが同じウイスキーか」と嘆きたくなるほどの酷さで、インバー・ハウスの繊細さを粉々にぶち壊してしまった。
 度数42%のブラックニッカ・スペシャルとも飲み比べてみたが、度数の違いは僅か1%なのにもかかわらず、アルコールの刺激が驚くほど違った。もちろん、ブラックニッカ・スペシャルの方が遙かになめらかでクリーミーだ。

 メーカーではこの〈黒43°〉をロックで飲むよう推奨しているようだが、筆者はハイボールも試してみた。
 すると意外に悪くないのだ、この〈黒43°〉のハイボールが。何倍にも割ればアルコールの刺激もさすがに消えるし、元々味も香りも濃いから、角瓶(黄角)よりもウイスキーの味と香りがしっかり残る。
 ただウイスキーの味と香りが強く残るから、レモンピールも入れスッキリ、サッパリしたハイボールを好む人には向かないかも知れない。
 あと、湯で割ってホット・ウイスキーにするとより香りが立ち、アルコールの刺激が少しは和らいで案外飲みやすかった。

 こう言うと悪いところのばかりの〈黒43°〉だが、ただ一言で「最低だ!」と切り捨てるには惜しいところもある。
 メーカーはこの〈黒43°〉を「濃く、モルティでクリーミーな味わい」と言うが、後半の「クリーミーな味わい」というのは嘘だ。もしこれが“クリーミー”ならば、甲類焼酎も「クリーミーな味わい」と言えるだろう。
 だが少なくとも、前半の「濃く、モルティ」という部分は間違いが無い。
 この〈黒43°〉を味わって飲むと、「ヒドい、アルコールの刺激がキツい」と嘆きたくなるのと同時に、角瓶には無い深い複雑な味わいも感じる。

 思うにこの〈黒43°〉は、度数43%にしつつ他の角瓶や白角と同じ値段にするのに、かなり無理をしたのではないか。
 前にも書いたが、〈黒43°〉には原酒と酒税が他の角瓶や白角より多く必要だ。
 そして〈黒43°〉は、香りと味わいを保つためにモルト・ウイスキーは減らさずちゃんと使っている。
 その代わり、おそらくグレーン・ウイスキーの質を落としてコストの帳尻を合わせたのだろう。
 例えば白角はモルトに8年ものを、グレーンに4年ものを使っていると言うが。
〈黒43°〉はグレーン・ウイスキーに、もっと酒齢の若いものを使っているのであろうと思う。あるいはもしかしたらサントリーお得意の、グレーン・アルコール(樽熟成すらしていない、ただの穀物アルコール)を使っているのかもと疑いたくなってしまう。

 この〈黒43°〉を飲んでみて、心から惜しいと思った。
 無理に度数43%などにせず、他の角瓶や白角と同じ40%にして、その代わりグレーンの質を上げるべきであった。そうすれば角瓶や白角とはまた違う、メーカーが言う通りに「濃く、モルティでクリーミーな味わい」の黒角になったかも知れない。
 モルト原酒は悪くないのだが希釈するもの(グレーンと称するモノ)でコストカットして、おかげでウイスキーらしさはあるもののアルコールの刺激で飲むと舌がピリピリするシロモノになってしまったこの〈黒43°〉、以前にこのブログで紹介した江井ヶ嶋酒造のホワイトオーク・レッドにもどこか似ている気がした。

 度数43%の飲み応えを求める消費者も、確かにいるのだろうが。
 しかし使う原酒の率も酒税も高くなる以上、品質を落とさず価格も据え置いたまま度数を上げるのは不可能なのだ。他の角瓶や白角と価格を同じにする事にこだわるあまり、酒の質を落としては本末転倒で意味がないのではないかと思うが、どうであろうか。
 ちなみにブラックニッカは37%から45%まで度数も様々だが、値段もクリアとリッチブレンドとスペシャルとディープブレンドで、それぞれかなり違う。
 キリンのボストンクラブも、豊醇原酒と淡麗原酒で瓶の形は同じでも値段を変えている。
 角瓶シリーズだからと同じ値段にこだわる事に、筆者は大きな疑問を感じる。

 今のままの〈黒43°〉では、筆者としては「もう二度と買いたくない、酷いウイスキーだ」と言うしか無いが。
 同じ値段にこだわるならば度数を40%に下げてグレーンの質を上げるか、43%という度数にこだわるならば多くかかった原酒と酒税のコストを価格に上乗せするべきだ。
 そのどちらかの道を選んでリニューアルすれば、角瓶の黒はきっと今より良くなると筆者は考える。

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コメント


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参考になる記事でした

角瓶の白が結構良いというのは、あちこちで聞きますが、黄角と違って180mlのミニボトルが無いので700mlを買って飲めなかったらどうしようと躊躇していましたので、とても参考になる記事でした。ありがとうございます。買ってみて、もし白角が飲める味だったら、白角よりさらに一歩白州に近いというリザーブも試してみたいと思ってます。

KAZ | URL | 2016-02-22(Mon)16:31 [編集]


お疲れ様でした。

お疲れ様でした。

もう呑む前から こうなることを薄々お感じになりながらの、テイスティング。

やはり黒沢氏。

「ウイスキー飲料」の限界ですよ、コレ。

我々は貴重な人生の中で味わうものは、
ウイスキーも「本物」にシフトするのが
よろしいかと存じます。

ジョニーウォーカー・ブラックラベル。
シーバスリーガル12年。
バランタイン12年。
グレンリベット12年。

さらに安くとも。

バランタイン・ファイネスト。
ジョニーウォーカー・レッドラベル。

手頃な「ウイスキー」は日本以外に
キチンと存在しているのですから。(笑)

ogotch | URL | 2016-02-22(Mon)23:04 [編集]


Re: 参考になる記事でした

> 角瓶の白が結構良いというのは、あちこちで聞きますが、黄角と違って180mlのミニボトルが無いので700mlを買って飲めなかったらどうしようと躊躇していましたので、とても参考になる記事でした。ありがとうございます。買ってみて、もし白角が飲める味だったら、白角よりさらに一歩白州に近いというリザーブも試してみたいと思ってます。

 こんなささやかで勝手な事ばかり書き連ねているブログに目を留めて下さり、ありがとうございます。
 白角や黒角にはちょっと味見のできるミニボトルが無いのが、私も残念に思いました。
 700mlを買ってしまって不味いとなると、後が困ってしまいますからね。
 リザーブですが、白角よりもかなり良いですよ。繊細さと、余韻の長さが段違いです。
 ただリザーブは最近値上がりしてしまって、お店によってはジョニ黒やシーバスリーガル12年などより高かったりするので、買うのに少し迷ってしまったりします。

黒沢一樹 | URL | 2016-02-25(Thu)15:10 [編集]


Re: お疲れ様でした。


> 我々は貴重な人生の中で味わうものは、
> ウイスキーも「本物」にシフトするのが
> よろしいかと存じます。
>
> ジョニーウォーカー・ブラックラベル。
> シーバスリーガル12年。
> バランタイン12年。
> グレンリベット12年。
>
> さらに安くとも。
>
> バランタイン・ファイネスト。
> ジョニーウォーカー・レッドラベル。
>
> 手頃な「ウイスキー」は日本以外に
> キチンと存在しているのですから。(笑)

 おっしゃる通りだと思います。
 まあ、「怖いもの見たさ」の味見のようなものでしょうか。
 それと、「多分ヒドイものだろう」と見当はついていたのですが、飲まずに批判は出来ませんしね。
 それにしても黒角には黄角と違ってミニボトルが無くて、予想以上にヒドイ味だったものを700ml飲み切るのはかなり苦痛でしたよ。
 でもその黒角を飲んでみたおかげで、サントリーの商売最優先の体質が、よりはっきりわかったような気がします。

黒沢一樹 | URL | 2016-02-25(Thu)15:19 [編集]


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| | 2017-09-10(Sun)23:08 [編集]