空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

本当にキレイな酒だった南部美人

 唐突だが、筆者の住んでいる所は雪など稀にしか降ることの無い、暖かい地方である。
 その地元の酒屋で、“南部美人”という酒を見つけた。
 南部と言っても「日本の南の方」という意味では無く、青森県東部と岩手県北部を合わせた一帯の南部地方の事を意味する。

南部美人P1090518

 瓶を手に取り蔵元の所在地を見てみると、岩手県二戸市福岡字上町13と書いてある。
 二戸と言えば岩手県でも北のはずれで、隣はもう青森県の三戸町だったりする。
 かつて八戸市や恐山や尻屋崎などを旅した時に通過した事があるが、本当にもう緑の山の中の、静かで自然いっぱいの市だった。
 関係ないけれど、二戸市には金田一温泉があったりするんだよね。

 で、そんな北東北の地酒が、遠く離れた筆者の住む県でも売られているのかと思うと何か感動してしまって、思わず買ってしまったよ。
 ただその南部美人は、酒屋の店頭でも冷蔵保存されていた生貯蔵酒だったけれど、残念ながら本醸造だった。普通酒ほど多くはないとは言え、醸造アルコールなるものを混ぜて薄めた酒であることは事実なんだよね。
 普段から「純米以外は、日本酒と認めない!」と公言していた筆者としては、それで少しためらいかけてしまったけれど、二戸の地酒を飲んでみたい気持ちの方が上回って、そのままレジに持って行ってしまったのだ。

 で、キャップを開けてグラスに注いだ瞬間、爽やかでフルーティーな香りが辺りに広がった。
 が、それはいわゆる吟醸香というやつではなく、ほのかな果実香という程度の、柔らかで優しい香りなのだ。だから吟醸酒にありがちな、「吟醸香が食事の邪魔になる」という事はまず無いと思われる。

 飲んでみると、この酒は間違いなく辛口だとすぐにわかる。瓶に日本酒度とかの表示は無かったが、かなりの辛口であろうと思われる。
 しかし気安く「辛口」や「鬼ころし」などを名乗る安いアル添酒にありがちな、添加した醸造アルコールの刺激による辛さでは無く、米本来の旨味のある辛さだ。
 今は日本酒と言えば淡麗辛口が良しとされがちだが、この南部美人は辛口で“麗”であっても決して“淡”ではなく、どっしりとした確かな味わいがある。

 と言っても、キレが良いから重くは感じない。
 しかし淡麗辛口と言われる酒より、間違いなく強い飲み応えがある。うかつにガブリと飲むと、辛さや力強い味わいがガツンと来るぞ。
 けれどチビチビ大事に飲めば、爽やかな香りと優しい口当たりが楽しめる。
 この酒はガブガブ飲むより、少しずつ味わって飲んだ方が絶対に美味しいし、飲み手にも優しい口当たりになる。

 筆者は日本酒も好きなのだが、実際には蒸留酒を飲む事が多い。
 と言うのは、日本酒も含めた醸造酒は、蒸留酒より酔いが醒めにくく感じるからだ。
 蒸留酒は酔いが回るのが早いけれど、醒めるのも早い。しかし日本酒やワインなどは、同程度に酔ってもそれがなかなか醒めてくれずに後まで残るような気がする。
 実際に各種の酒を摂取するアルコールの量が同じになるようにして飲んだ場合、ラムやジンやウイスキーなどの蒸留酒は比較的酔いが醒めやすく、それに対して日本酒などの醸造酒は酔いが抜けにくく、最も悪酔いしやすかったのは赤ワインだったという実験結果も発表されている。

 で、この南部美人だがガツンと来る飲み応えがあったので、「これは酔うかな」と覚悟した。
 ところがこの南部美人は、辛さや強さを感じるのは最初の一口か二口くらいまでで、すぐに抵抗無くスイスイ飲めるようになって来る。
 そして他の日本酒より、酔いの醒め方も心地良いように感じた。

 あと、グラスに注いでみるとこの南部美人は、けっこう黄色みを帯びているのがわかる。
 おそらくこの南部美人は、濾過する際に使う活性炭の量をかなり控えめにしているのだろう。
 日本酒の濾過に活性炭を多く使うと、酒の雑味が良く取れる。だが活性炭が取るのは酒の雑味だけてなく、旨味もまた取り去ってしまうのだ。
 ……そりゃあそうだよねぇ、「雑味だけ取って、旨味や香りは残す」なんて都合の良い活性炭があるワケ無いもの。

 だから酒の雑味を取りたければ、まず米を丁寧に磨いて精米歩合を高くするのが筋なのだ。コストをケチって精米歩合を抑え、その代わり濾過に活性炭を大量に使って雑味と一緒に旨味まで取り去ってしまうなんて、本末転倒だよ。
 その点、精米歩合を60%に上げ、活性炭の使用を抑えて米の旨味をしっかり残したこの南部美人は、良い酒造りの王道を行く、真面目に作られた酒だと自信を持って言える。
 惜しむらくは、造られた二戸から遠く離れた筆者の地元で売られていた南部美人が純米でなく、大量ではないにしろ醸造アルコールが使用されている本醸造だった事である。

 店頭でも冷蔵保存されていたせっかくの生貯蔵酒だが、筆者はこの南部美人に燗をつけて飲んでもみた。
 で、ぬる燗にすると口当たりは優しくなるが酸味が強まり、熱燗にすると代わりに苦味が前に出てくるようだ。
 どちらにしろ燗をつけると柔らかく飲みやすくなるが、フルーティーな香りは消えてしまう。
 当たりが柔らかくなるので、たくさん飲むなら燗酒も良いかも知れないが、個人的にはキリッと冷やしたものを少しずつ味わって飲むのがベストだと思う。

 女性向けと言うより、酒好きの男性に勧めたく思ったが、南部美人は間違いなく良い酒だ。
 HPを見てみると、南部美人は純米酒や吟醸酒なども積極的に出していて、中でも純米大吟醸酒はJALのファーストクラスで出されていたこともあったという。
 それを知って、筆者の地元の酒屋に南部美人が本醸造酒しか無かった事をひどく残念に思った。
 純米大吟醸とは言わないが、機会があったら南部美人の純米吟醸酒をぜひ飲んでみたいものだと心から思った。

 それにしても、店には本醸造しか置いて無かったにしろ、青森との県境の岩手県北の蔵元が醸した酒を遠く離れた県でも買って飲めるのだから、今は良い時代になったと思う。
 筆者が酒を飲める年になった頃など、日本酒と言えば日○盛とか黄○とか月○冠とかの大手メーカーの大量生産品(アル添で糖類や酸味料まで混ぜ込んだクソ不味い酒)ばかりで、真面目な酒造りをしている田舎の酒蔵の地酒などごく一部の通以外には見向きもされなかったし、だから今のように他県や海外でも売られるようになるなど、当時には全く考えられなかったよ。

スポンサーサイト

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する