空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

日本人のビールの飲み方に異議あり!(東京ブラック)

 ビールは元は乾燥・焙煎した麦芽を糖化してホップを加え、これに酵母を加えて常温で発酵させて造るものであった。
 しかし冷蔵技術が進んでから、低温で発酵させる下面発酵ビールが主流になった。
 これが現在の日本人が多く飲んでいる、喉越しすっきりタイプのビールである。

 だがこの喉越しを楽しむ下面発酵のピルスナータイプのビールではなく、昔ながらの常温で発酵させる上面発酵のビールのみを造っているメーカーも日本にはあるのだ。
 それが長野県軽井沢町の、株式会社ヤッホーブルーイングである。
 で、今回はそのヤッホーブルーイングの上面発酵のビールの中から、東京ブラックという黒ビールを飲んでみた。

東京ブラックP1090514

 まず缶の裏側の説明を読んでみると、こう書いてある。

本場イギリスでは、
エールビールの特徴を活かした
濃厚な黒ビールが人気です。
ロースト麦芽と薫り高いホップが醸し出す
香ばしい味わいは世界中で愛され、
遠く日本にも輸出されています。
新鮮な濃厚エールビールを
味わうために、
ヤッホーブルーイングは
日本で「Tokyo Black」を
製造しています。


 さて、缶のプルトップを開けてグラスに注いでみると、以前飲んでみたキリン一番搾りスタウトと同様にかなり黒く、泡も茶色である。
 薫りはただ香ばしいだけでなく、その中にフルーティーさも感じられる。
 色自体はかなり濃くて、日本の普通の淡い色の下面発酵のビールしか飲んでいない人は、「これはさぞ苦くて飲みにくいのではないか」と思うかも知れないが、さにあらず。
 苦味と言ってもホップの苦味よりも麦芽をローストした香ばしさの方が主で、さらに上面発酵のエールビールらしいフルーティーな甘さや酸味が苦味の中に僅かに感じられる為、爽やかさがあって意外に飲みやすい。
 普段ギネスのビールを飲み慣れている筆者からすれば、苦味もほど良い程度で全く抵抗がない。

 苦味と香ばしさは、むしろキリン一番搾りスタウトの方が強く感じるくらいだ。
 と言うより一番搾りスタウトはシンプルに苦く香ばしい感じで、東京ブラックの方が濃く力強く複雑な味わいだ。
 この東京ブラックは濃厚だが口当たりは良く、香ばしい苦味が苦手でない人ならグイグイ飲めてしまうだろう。しかし調子に乗ってたくさん飲むと、胃にズシリと飲みごたえと酔いを感じるから気を付けた方が良い。
 飲み易くてもそこはやはり濃厚エールビールであって、喉越しで飲む日本の普通のビールとは違う。

 また、このビールも含めて上面発酵のエールビールは、キンキンに冷やしてグイグイ飲んでは勿体ない酒なのだ。
 事実この東京ブラックも、冷蔵庫から出してグラスに注いだすぐ後よりも、少しぬるく感じるくらいになった時の方が味も香りもずっと深くなる。

 ビールの本場と言われる国々では、日本のようにキンキンに冷やして「喉越しが勝負!」と言わぬばかりにグビグビ飲んだりしないものなのだ。大きなジョッキにたっぷりと注ぎ、それをゆっくり、じっくり味わいながら飲むのが普通だ。
 この東京ブラックも、10~13℃くらいにややぬるくしてゆっくり味わいながら飲むと、心から「美味いなあ」と思う。キンキンに冷やした時より、香りも味わいもずっと豊かに感じられる。

 この東京ブラックも含めて、上面発酵のエールやスタウトなどのビールは、くれぐれも冷蔵庫でキンキンに冷やして喉越しでゴクゴク飲んだりしてはいけない
 そうして飲んでも決して不味くはないのだが、本当の旨さの半分も感じられない。
 白状するが、筆者もヤッホーブルーイングの主力商品であるよなよなエールを他のビールと同じように、冷蔵庫から出してすぐゴクゴクと飲んで、「案外フツーのビールだな」などと見当外れな感想を持ってしまった事がある。
 夏の暑い時期などには、下面発酵の軽いビールをキンキンに冷やして「ゴクゴク、プハーッ」とやっても構わないが、エールビールでソレをやるのは、ドンペリを味わうことなく一気飲みをするように勿体ない事なのだ。

 自由で平等と思われる西欧は実は意外に階級社会で、労働者階級と上流階級の区別がはっきりしているものだ。しかし日本は小泉政権以降に格差社会になりつつあるとは言え、社会的階層による価値観や生活スタイルの差は西欧ほどはっきりしていない。
 イギリスに現に存在するような、お城に住み暮らしている先祖代々からの貴族さまが、この日本にどれだけいるだろうか。上流と言っても、日本の場合は一代で財を築いたような、ただお金があるというだけの人達が少なくない。
 そのせいか日本人には、物や飲食物についても「金を出して買えば、どう使おう(飲み食いしよう)と自由だ」という考えの人が少なからず存在するように筆者には思える。
 ある種の飲み屋で店員や他の客らの掛け声と共にドンペリをイッキ飲みする行為は決して違法ではないが、心と良識のある者にはそれが下品に見えるということが理解できない日本人が案外多いのだから困る。
 なるほど、その人が金を出して買ったものを、どう使いどう飲食しようが自由かも知れない。しかしものにはやはり「正しい使い方や飲食の仕方」が確かにあって、それに外れたことをすれば、傍の良識ある人に「下品だ」と思われても仕方ないと覚悟すべきでああろう。

 筆者は日本人の酒の飲み方について、二つ大きな不満を持っている。
 ウイスキーというと、何故すぐハイボールにしてしまうのか
 ビールというと、何故キンキンに冷やして喉越しでゴクゴク飲んでしまうのか

 日本人は、日本酒なら冷やにしたり燗をつけたり、焼酎ならロックや水割りやお湯割りなどにして、様々な飲み方を楽しんでいるのに。
 なぜビールとウイスキーは、条件反射的に同じ飲み方しかしないのだろうか。
 それが筆者には不思議だし、ひどく不満でならない。

 米やコーンやスターチなど副原料の入っている、欧州のビールの本場の国々ではあり得ない“自称ビール”や、発泡酒や新ジャンル酒なら、キンキンに冷やして喉越しでグビグビ飲むのが良いだろう。
 しかし良いビール、特に上面発酵のエールビールは、キンキンに冷やして喉越しで飲んでは勿体なさ過ぎるのだ。
 そしてそのエールビールを楽しむには、まだ寒い今のうちがちょうど合っている。
 冷蔵庫から出し、少しぬるくなるまでしばらく待ってから飲むのも良いが。
 今の時期ならば、暖房が無く日当たりも良くない部屋に常温で放置しておけば、エールビールの適温と言われる13℃くらいに、自然になると思う。

 日本の夏は蒸し暑いし、だから薫り高く味わい深いビールをゆっくり飲むのではなく、喉越し勝負の軽めのビールをキンキンに冷やして「グビグビ、プハーッ」とやるのが当たり前になってしまったのだろうが。
 だからこそ、日本がまだ蒸し暑くなる前の今のうちに、まず香りを楽しみ、じっくり、ゆっくり味わって飲むべきエールビールの美味しさを知ってほしいものだと切に願う。

スポンサーサイト

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する
 

前記事でも似たようなのがありましたが、
のどごしの飲み方を否定する前に、
主のこだわりの飲み方やビールの飲み方を西欧文化の歴史と交えた投稿されては如何でしょうか。
そもそもなぜビールは生まれたのか、
どのようにして日本に伝わったのか、とか答えられますか?

自身の飲み方をもっと具体的に説明できない、
そこまで興味はないから調べない、というのであれば、
主のビールに対するこだわりは、
のどごしを愛する方々のこだわりと同程度ということになります。

消去法的な説明で賛同を得るのはそれだけ難しいのですよ。

とおりすがる | URL | 2016-04-12(Tue)12:44 [編集]


Re: タイトルなし

> 前記事でも似たようなのがありましたが、
> のどごしの飲み方を否定する前に、
> 主のこだわりの飲み方やビールの飲み方を西欧文化の歴史と交えた投稿されては如何でしょうか。
> そもそもなぜビールは生まれたのか、
> どのようにして日本に伝わったのか、とか答えられますか?
>
> 自身の飲み方をもっと具体的に説明できない、
> そこまで興味はないから調べない、というのであれば、
> 主のビールに対するこだわりは、
> のどごしを愛する方々のこだわりと同程度ということになります。
>
> 消去法的な説明で賛同を得るのはそれだけ難しいのですよ。

 東京ブラックに続いてよなよなエールを飲み、その際にビールの発祥とその古代メソポタミアでどう飲まれていたかについても、簡単にですが触れておきました。
 今、日本で主に飲まれている上面発酵タイプのビールが造られるようになったのは冷蔵設備が開発されてからで、冷蔵設備が無い時代にはビールも常温で飲むのが当たり前でした。
 そして夏でも長袖の服で過ごせる西欧のビール造りが盛んな国々では、キンキンに冷やして飲む必要も無かったでしょうしね。
 一方、日本では暑いから、どうしてもビールは冷やして飲むことになる。
 そうした事も、わかってはいるのですがね。
 そしてその事についても、他のビール評のところで触れてきたつもりです。
 ただ私は日本人の殆どが「ビールはキンキンに冷やして喉越しで飲むもの」と固く信じ込んでいて、店で出されだビールがキンキンに冷えていなかったというだけで怒り出す人(漫画家の柳沢きみお氏など)も少なからず存在している現実が腹立たしいのです。
 ややぬるめの温度でゆっくりじっくり飲んだ方が美味しいビールも存在する事を知っている人が、今のこの日本にどれだけいるでしょうか。その事に対する憤懣のあまり、説得力が無く説明不足で一方的と受け取られても仕方のない文章になってしまいました。
 その事を反省させていただき、ありがとうございます。

黒沢一樹 | URL | 2016-04-14(Thu)15:38 [編集]