空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

“水曜日のネコ”と“よなよなエール”

 先週はヤッホーブルーイングの黒ビール、東京ブラックを紹介したが、続けて今週も同社の水曜日のネコよなよなエールについて語りたい。
 先週も触れたが、ヤッホーブルーイングは日本ではかなり少数派の上面発酵のエールビールのみ造り続けているメーカーで、今回紹介するビールも、もちろん両方とも上面発酵のビールである。

水曜日のネコP1090516

 まず“水曜日のネコ”という変わった名のビールであるが、これはベルギー風の白ビールなのだそうである。
 で、缶の裏面にはこう書かれている。

 今夜は気ままに。
 心をゆるめるホワイトエール。
 グラスに注げば立ちのぼる、
 青リンゴを思わせる香りとオレンジの皮の爽やかな香り。
 口に含めば、ほのかなハーブ感がフルーティーさを引き立て、すっきりとした飲み口がやさしくノドを潤してくれる。
「水曜日のネコ」は、心と身体をふっとゆるめてくれるような、ベルジャンホワイトエールです。

 確かにプルトップを開けると、途端にフルーティーで柔らかな香りが辺りにフワッと広がる。
 白ビールと言われる通り、グラスに注ぐと澄んだ明るい黄金色をしている。
 飲んでみると、口当たりがとにかく柔らかだ。甘くなめらかで、苦味はごく僅かである。
 口に含むと、メーカーの言うハーブ感というのもわかるが、抵抗感は全くなくこのビールの爽やかさを引き立てている。
 とにかく甘く柔らかくなめらかで、嫌味というものが全く無いビールだ。
 最近では「ビールは苦いから」と言って嫌う人が少なくないそうだが、「ビール=苦い」と思って敬遠している人達に、せび飲んでみてほしい逸品だ。

 ただビールに飲み応えを求めている人や、特に「ビールはキンキンに冷やして、喉越し勝負でゴクゴク飲むもの」と信じ込んでいる人達には、あっさりスッキリ飲め過ぎて物足りなく感じてしまうかも知れない。
 しかしこの“水曜日のネコ”もまた、あまり冷やさず13℃程度のややぬるめにして、ゆっくり味わって飲む上面発酵のエールビールである。
 そしてそのようにしてゆっくり味わって飲めば、飲み口は軽いが深い味わいと豊かな香りがあり、副原料がいっぱいのスーパードライなどのビールと称するまがい物や、スピリッツで薄めた新ジャンル酒などとはまるで別物であることがわかる筈だ。
 新ジャンル酒も、暑くて喉が乾いている時や風呂上がりなどに飲めば、それなりに飲めてしまうものだが。しかし新ジャンル酒にはスピリッツによるアルコールのトゲトゲしい刺激が確かにあるし、まともなビールのような豊かな香りも無い上に味も薄っぺらなことは明らかだ。

 だが“水曜日のネコ”は、ただ軽やかで飲み易いだけでなく、副原料入りのビール類や新ジャンル酒にありがちな嫌味や欠点が全く無いのだ。
 軽やかで甘くなめらかで、苦味は弱くフルーティーで薫り高い上に味わい深く、とにかく素晴らしいとしか言いようのないビールだ。
 欠点と言えば、あまりに上品過ぎてビールらしくない、といったところだろうか。
 それだけに、ビールのホップの苦味に抵抗が無く、ヱビスのようなビールを愛して飲んでいるビール好きの人達よりも、「ビールは苦いからちょっと……」と敬遠している女性たちに勧めたく思った。

 この“水曜日のネコ”は、間違いなく良いビールだ。
 だが「ビールらしいビール」と言うより、何か種類の違う異次元の飲み物という印象を筆者は抱いてしまった。
 だからビール好きの人よりも、むしろビールは苦手という人にこそ勧めたいと思った。

 近年では「ビールは苦いからイヤ、でも酎ハイも甘ったるいからイヤ」という理由で、ハイボールを飲む人が増えているようだが。
 とにかく商売上手で「まずはCMで、品質は二の次」のS社の広告攻勢によるイメージ作りに流されてハイボールなどを飲む前に、まずこの“水曜日のネコ”を飲んでみて、ビールが本当に苦くて不味いものなのか、ビールが苦手な方にぜひ一度味見をしてみてもらいたいと心から思った。

よなよなエールP1090567

 さて、その“水曜日のネコ”を飲んでみたついでに、ヤッホーブルーイング社の主力商品である“よなよなエール”も改めて味見してみた。
 以前はエールビールの味わい方も知らず、冷蔵庫から出してすぐ普通に飲んでしまって、「良いビールだが、まあこんなものか」という程度の感想しか持てなかった。
 それで今度は「あまり冷やし込まず、ややぬるめの13℃程度にして、ゆっくり味わって飲む」という基本を守って飲んでみた。

 間違いなく旨い。
 と言うより、缶のプルタブを開けた瞬間に広がる芳香の華やかさから、以前とはまるで違った。
 冷蔵庫から出した後、ややぬるめになるまでしばらく待つだけで、香りから全然違って来るのだ。
 無論、違うのは香りだけではない。
 缶から注ぐと、紅茶に似た色の液体がグラスに満ちてゆく。そして口に含むと、ホップの程良い苦味と、麦の甘みが良いバランスで広がってくる。
 この“よなよなエール”は甘みに加えて苦味や力強さもそれなりにある為、“水曜日のネコ”と違ってビールが苦手な人ではなく、ビールが好きな人により喜ばれそうな気がする。
 しかしこのなめらかで澄んだ味わいは魅力的だ。“水曜日のネコ”ほどではないものの、僅かにフルーティーさも感じる。
 スイスイ飲めるが、飲み応えはしっかりあるから、慌てずにゆっくり飲んだ方が良い。

 と言うより、この“よなよなエール”というビール、よりぬるくなるほど、味わいもより深く旨くなる感じなのだ。
 それも炭酸が完全に抜け切り、常温になったものを日本酒でも飲むようにチビチビ味わいながら飲んでも「旨い!」と心から感じた。
 嘘ではないよ、エールビールを、出来れば“よなよなエール”を常温でチビチビ飲んでみてほしい。酒として間違いなく「旨い!」から。

 想像してみてほしい、スーパードライなどの日本の副原料入りの自称ビールや新ジャンル酒を、炭酸が抜け切り常温になってからチビチビ飲む事を。
 ゾッとするし、事実とてもマズい。
 しかし本物のエールビールは、冷やし込まずに時間をかけてゆっくり味わって飲んでこそ旨いのだ。事実ビールの本場である欧州では、ビールをキンキンに冷やして出す所の方がずっと少ない。
 断言するが、「ビールはキンキンに冷やして、喉越しで飲むべき」と思っている人は、飲むなら副原料入りのビールもどきか新ジャンル酒で充分だ。

 ビールを世界で初めて造ったのは、今から五千年ほど前のメソポタミアの、シュメール人だが。
 当然、当時には冷蔵庫などある筈もなく、造られたのは麦芽を常温で発酵させる、上面発酵のエールビールで、もちろん飲むのも常温だ。
 缶ビールも瓶ビールも無く、ビールは甕に入れられていたという。当然、炭酸も抜け切っていたであろう。
 さらに当時のビールは濾過されていない濁り酒で、上の方に麦が浮いていたので、ストローで飲んでいたという。

古代のビールP1090591

 想像してみてほしい。世界で初めてビールを造った五千年前のシュメール人たちは、炭酸の抜けきった常温のビールを、ストローで飲んでいたのだ。
 そしてそれを御神酒として神に捧げるだけでなく、自分たちも美味しく飲んでいたのだ。
 当時のシュメール人たちはビールを「肝臓を幸福にし、心を喜びで満たす」と言い、諺に「楽しくなること、それはビールである。いやなこと、それは軍事遠征である」と言っていた。

 彼らには他に飲む酒が無かったから、そんなものでも美味いと思ったのだと言う人もいるかも知れない。
 だが筆者は炭酸の抜け切って常温になった“よなよなエール”をチビチビ嘗めるように飲んで心から旨いと思ったし、「五千年前のシュメール人たちも、ビールをこんな風に楽しんで飲んだのだろうな」と思った。

 日本などの蒸し暑い国では、ビールはどうしてもキンキンに冷やし込んで、炭酸の効いているうちに喉越しでゴクゴク飲みたくなるものなのだろう。
 事実スーパードライなどの副原料入りの偽ビールや新ジャンル酒などは、冷やし込んで喉越しで一気に流し込まなければ、とても飲めたものではない。
 しかし本物のビールはそんな冷やして喉越しで飲むべきものばかりではないのだという事を、この“よなよなエール”を飲みながら、どうか一人でも多くの日本人にわかってもらいたいものだと思った。

 日本は湿度こそ高いが、熱帯ではないのだ。夏場はともかくとして、秋から春にかけての時期には「冷やし込みすぎないビールを、喉越しに流し込むのでなくじっくり味わう」ことを、ぜひ試してみてほしい。

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