空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

チッソ社員が作り積水化成品工業を産んだ“ウイスキー”

 チッソ、かつては日本窒素肥料と言った会社の系列に積水化成品工業という会社がある。
 積水化成品工業は、あの積水ハウスや積水化学工業などの積水グループの一員であり、我が国の発泡スチロール製造の最大手でもある。
 その積水化成品工業と日本窒素肥料(チッソ)が、何と戦後の一時期に“ウイスキー”の製造と販売に手を染めていた事実を、ウイスキーがお好きの皆さんはご存知だろうか。

 終戦後、まだ日本窒素肥料と名乗っていたチッソは、プラスチック部門にも進出する事を考えた。そしてその為に、積水互助会という組織を作った。
 ちなみに日本窒素肥料ことチッソは、積水系列の企業や旭化成の母胎企業である。
 で、その積水互助会の資金調達に取り組んだのが、日本窒素肥料の社員であった福本正雄氏であった。
 その福本氏が何をしたかと言うと、ズバリ闇屋である。
 その時の事を、福本氏自身が月刊ビッグ・トゥモローのインタビューでこう語っている。

 何をしたかというと、米軍のキャンプから、ジョニ黒とかベル、ホワイトホースの空ビンを拾ってきてそれをきれいに洗う。続いて、紅茶の出がらしに湯をかけて、色がついた“原液”をまず造る。それにメチルでエチルでもとにかくアルコールを混ぜて“ウイスキー”を造って、それをビンにつめる。これがぎょうさん売れた売れた。このカネをもとにして工場をつくったもんだよ。ただ、毒になったらアカンから、一応調べなければいかん。そこで、ネコにこれをなめさせて調べた。ネコが死なんのなら、人間も大丈夫と思ってね。そうでもせんとアンタ、皆、死んどったよ。


 ……おわかりだろうか。
 積水化成品工業は誰もが名を知る積水グループの一員で、今や日本で最大手の発泡スチロールのメーカーだが。
 もとを正せば、アルコールに出がらしの紅茶で色を付けた、甲類焼酎とも呼べないものを拾って来たスコッチの空き瓶に詰めて“ウイスキー”として売って儲けた金で設立されたのである。
 しかもその使用するアルコールがエチルかメチルかを確かめるのに、生きた猫を使っていたのである。

 確かに終戦直後のあの時代には多くの日本人がアルコールに飢えていて、飲めるものならカストリでも何でも飲んだ。だから中には、「福本氏がそういう商売をしたのも仕方ないよ」と言う人もいるだろう。
 だがそれならば出がらしの紅茶で色を付けたりせず、正々堂々と『アルコール飲料』として売れば良いのである。ただのアルコールであろうと、喜んで飲む人は(当時は)少なからず居たのだから。
 百歩、いやウイスキーを愛する者として百万歩譲ってその色付きアルコールを“ウイスキー”として売るならば、『積水ウイスキー』あるいは『チッソ・ウイスキー』として売るべきであった。
 そうではなく、ジョニ黒やベルやホワイトホースの瓶に詰めて売ったところに、詐欺と言われても弁解の出来ない福本氏と積水互助会の悪意を感じる。

 その拾って来たジョニ黒やベルやホワイトホースの空き瓶に詰めた色付きのアルコールが、何故福本氏の言うように「ぎょうさん売れた売れた」のか。
 それはスコッチ・ウイスキーなど飲んだ事の無い当時の日本人達が、ソレを本物のウイスキーと誤認したからに違いあるまい。
 断言するが、これは詐欺以外の何物でもない。
 そして今の積水化成品工業は、その詐欺商法から誕生したのである。

 経済の成長が鈍化し、中国や韓国にも追い抜かれつつある日本では、その反動か中国や韓国を叩く風潮が強まっている。
 そして「日本製こそ信頼できる良い物で、中国や韓国の企業は真似ばかりして粗悪な製品を作っている」と思っている者も多い。
 しかし数十年前の日本は、今の中国や韓国以上のコピー天国でニセモノ大国だったのである。
「日本の技術ばかり盗む狡い国」と中国や韓国を蔑む前に、数十年前の我が国の実態も省みて反省すべきであろう。
 何しろチッソ様のような大企業が、拾って来たスコッチの空き瓶に出がらしの紅茶で色を付けたアルコールを詰めて“ウイスキー”として売って大儲けし、それで積水を名乗る会社を育てたのだから。

 で、その詐欺商法を先導して工場設立の資金を稼いだ福本正雄氏は、積水化成品工業の初代社長に就任している。
 その福本氏は詐欺かつ動物虐待と言われても己の所行を恥じるどころか、月刊ビッグ・トゥモローのインタビューにこう述べている。

 攻める経営とはこんなもの。きれいごといってる人は、誰ひとり今日まで歴史をつなげることができとらん。


 本当にそうだろうか。
 終戦後の混乱を生き延びて今日まで生き残っている企業はすべて、詐欺同然の後ろ暗い事をしているのだろうか
 だとしたら、筆者は日本の企業と、日本の資本主義を軽蔑する。

 まあ、例の福本氏が勤めていた企業というのが、あの日本窒素肥料ことチッソだからね。
 メチル水銀を含んだ工場排水を海に垂れ流して水俣病を引き起こし、一万を越す被害者を出しても頑として責任を認めようとしなかった、あのチッソだ。
 そのチッソの社員である福本氏が、紅茶で色付けしたアルコールをスコッチの空き瓶に詰めて“ウイスキー”として売り、そして「攻める経営とはこんなもの。きれいごといってる人は、誰ひとり今日まで歴史をつなげることができとらん」と居直って恥じないのも、あの会社の人間ならではの感性かも知れない。
 チッソがあれだけの公害を引き起こし人を殺しても恥じずに、今もまだ積水グループや旭化成などを傘下におく大企業として存在しているのもまた、福本氏やチッソに言わせれば「攻める経営とはこんなもの」という感覚なのであろう。

 筆者ならば、飲める程度に薄めたアルコールならただ“甲類焼酎”として売る。それに出がらしの紅茶で色を付けて“ウイスキー”と称して人様に売るような詐欺行為など、死んでもしたくない。
 ましてやそれをジョニ黒やベルやホワイトホースの空き瓶に詰めスコッチと誤認させようと企むなど、悪魔の所行としか思えぬ。
 そして使ったアルコールがエチルか猛毒なメチルか確かめるのに生きた猫を使い、「そうでもせんとアンタ、皆、死んどったよ」と居直るなど、さすがはメチル水銀を海に流して酷い公害を出したチッソの元社員だと皮肉の一つも言いたくなって来る。

 この福本正雄氏は、既に故人となっているが。
 日本では「死んだ者を悪く言ってはならない」というのが常識になっていて、たとえ人殺しの極悪人であっても死んだ後に悪く言うのは良くないという空気がある。
 しかし筆者はあえて言おう。
 福本さん、あなた今は地獄に堕ちているよね?
 もし天国や地獄が本当にあるとして、福本氏が成仏して天国に行けているとしたら、筆者は神も仏も信じるのを止めたい。
 だが経済界では福本正雄氏は名経営者と言われ、今の世にも通じる名言を幾つも残していると高く評価されているのだから、日本の経済界には倫理も職業人としての誇りも何も無く、一般の人とどこか感覚がズレているように思える。

 今、世界で最もウイスキーを消費している国はインドである。
 ただインドで“ウイスキー”と呼ばれているのは、廃糖蜜から作られた安価なアルコールに10~15%ほどのモルトウイスキーを混ぜただけの、スコッチやバーボンなどの定義から言えばとてもウイスキーとは呼べないまがい物である。
 しかし日本でも、かつてはそのような“ウイスキー”を当たり前に作っていた。サントリーやニッカのようなメーカーでもそうだったのだから、他は推して知るべしである。

 原材料に「モルト、グレーン」と表示してあっても、それが本物のウイスキーであるとは限らぬのが日本の洋酒業界の実状だ。何故なら日本のウイスキーの規定では、モルトは麦芽を、グレーンは穀物を意味すると定められているからである。
 原材料に「モルト、グレーン」と書かれていても、それは決してモルトウイスキーとグレーンウイスキーを意味するわけではないから、ご注意を。
 あのサントリーですら、自社のウイスキーに原料は穀物だが樽熟成はまるでしていない“グレーン・アルコール”なる怪しげなものを使用していた

 福本正雄氏が作った、出がらしの紅茶で色を付けたアルコールをスコッチの空き瓶に詰めたような恥知らずで酷いものこそ、今は存在しないが。
「日本は立派なウイスキーの世界五大産地だ!」と威張る前に、数十年前には福本氏が作ったようなまがい物が“ウイスキー”として出回り、そして今もなおモルトを樽貯蔵すらしていないアルコールで希釈しただけのものが“ウイスキー”として売られている現状を恥じるべきだと恥じるべきだと考える。

 それにしても、福本氏がいかがわしい商法で稼いだ資金で作った積水化成品工業は、今や日本一の発泡スチロールを生産する企業で、その福本氏の出身会社で水俣病を引き起こしたチッソも、今もまだ日本で屈指の大企業であり続けている。
 まさに福本氏の言う通り「攻める経営とはこんなもの。きれいごといってる人は、誰ひとり今日まで歴史をつなげることができとらん」で、日本では企業はあくどいほどより栄えるものなのかも知れない。現に今でも、日本では欧米では考えられないようなブラック企業が多数存在して栄えている。
 中国や韓国を「ニセモノばかりのパクリ大国!」とか「公害たれ流し!」と叩く前に、我が国もかつてはそうであった現実を省みるべきと考える筆者は、媚中的で自虐的な非国民なのだろうか。

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コメント


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そもそも。

そもそも。「国家」が一番汚いですよ。やってること見ると。(笑)

そうすると そこにぶら下がる政治絡みの会社は必然的に汚くなるし、そこにぶら下がる会社と横につながる会社も必然的に汚くなる。

元々、国益というのは「自国利益」ですから分かりやすく言えば「自分さえ良ければいい」という思想です。

そこにぶら下がる会社(いわゆる政商)が「自分さえ良ければいい」となるのは理の当然ではありませんか?

ただ救いはありますよ。

過去のニッカのように日本には「職人文化」がありますから「職人企業」もあるのです。数は少ないですけどね。

ゆえに私は「職人」の方しか最近は向かなくなりました。

ねえ、黒澤氏。限られた人生の中でワザワザ腹の立つ相手に時間を割くのは最低限にした方が良いとは思いませんか?

相手にするなら狂人より、低能の方がまだマシですよ。

ogotch | URL | 2016-03-27(Sun)10:36 [編集]


Re: そもそも。


> ねえ、黒澤氏。限られた人生の中でワザワザ腹の立つ相手に時間を割くのは最低限にした方が良いとは思いませんか?
>
> 相手にするなら狂人より、低能の方がまだマシですよ。

 おっしゃる通り、私などが何を言おうと、巨大な悪徳企業にとっては痛くも痒くもない蟷螂の斧(いや、それ以下)とわかってはいるのですが。
 腹を立てても自分が損するばかり、というのもわかってはいるんです。

 ただ、チッソや積水化成品工業や福本正雄と誰かがネットで検索した時に、この事もついでに引っ掛かって出て来て、誰か一人でも「この企業や社長って、こんな酷い事もしてたのか」と思ってくれれば良いかな……と思いまして。

 そういう意味で、私のような者でも巨大企業の旧悪を「忘れていないぞ!」と書き残しておけるネットは便利ですね。
 本当に広い広い電脳世界の中の片隅の、塵程度にもならないレベルのささやか過ぎる抵抗ではありますが。

黒沢一樹 | URL | 2016-04-01(Fri)00:16 [編集]