空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

お受験(15)・“決められない政治”より怖いもの

 時代をちょっと、今から七十年ほど前に遡ってみようか。
 我がテイコクがせっかく手に入れた権益と植民地にケチをつけられて、ABCD包囲陣とか作られて。そして「言うこと聞かなければ、もう石油を売らねーゾ」と脅されて。
 そこで冷静に(イギリスやオランダはともかく)アメリカとの国力の差とか考えたら、「ここは悔しくとも外交交渉で、譲れるものはギリギリまで譲り、ある程度の権益を守ろう」って思うのが理性と常識だよ。ほら、臥薪嘗胆って言葉だってあるじゃん。

 当然、国内の右派とアメリカとの板挟みになって、落とし所を決める交渉はかなり厳しいものになると思う。理屈の通じない、聞く耳を持たないバカは、いつの時代にも大勢いるからね。
 国力の差を冷静に比較すれば、どう考えてもアメリカと戦って勝てる筈がない。だからある程度の譲歩はやむを得ないのだけど、譲れば国内世論が許さない。黒沢も「戦争は無理、交渉で解決しなきゃ」とは思うのけれど、その交渉をする外務大臣にはなりたくないね。

 だから正解の見えにくい事をいろいろ考えて悩むより、「精神力さえあれば勝てる!」と信じちゃう方がずっと楽なんだよ。
 日本は神の国だ、負けるなんてあり得ない!
 統計だの戦力差だの一切無視して、頭からそう信じさえすれば、「やっちゃえOK!」で真珠湾も奇襲できちゃう。
 そしてどんなに戦況が不利になり、各都市が焼け野原になって原爆まで落とされても、大和魂と必勝の信念で「空襲はバケツリレー、敵戦車には竹槍で突っ込めばOK」と。

 うん、キミが何を信じようが、それはもちろん個人の自由だよ。
 でも“信じる”ってさ、一つ間違えると自分だけでなく多くの他人の命を奪い、挙げ句に国まで滅ぼしかねないくらいコワいことなのだよ。何しろこの国は議会制民主主義で誰にも平等に一人一票で、その結果、近年では国政選挙の度に日本が大きく右に左に振れてるでしょ?

 例えば自爆テロをした人も魔女狩りをした人達も、みんな信じるものの為に良い事をしているつもりだったんだよね人を殺すのを楽しんでいるサイコパスなどでは全然なくて、悪と戦う正義の味方のつもりだったんだよ。少なくとも“自分の中”ではね。
 かの十字軍が、見事“聖地”エルサレムを攻め落とした時のこと。キリスト教徒の兵士らは、そこに住んでいたイスラム教徒を女も子供も関係なく殺しまくって、イスラム教徒の血に踝まで浸りながら、歓喜の涙に震えていた」そうだよ。
 そう、これが自分の頭でもの考えるのをやめて、神やら何やらを信じたことの結果なのだよ。

 日本人って欧米と白人が大好きだからさ、よくいるよね、カッコイイつもりで気安く『○○十字軍』とか名乗っちゃう人達。ほら、草刈り十字軍とか、お掃除十字軍とか。十字軍の意味も、彼らが“聖地”でした事も全然知らないで。
 そういう無知と言うか無邪気な人達を見る度にね、黒沢は心の底から「……バカ」って思うね。
 って言うと、すぐムッとして「だって、そんなの知らなかったんだモン!、何よ人をバカにして!!」って逆ギレする人が多いよね。あるいは、「いーじゃん、そんなの雰囲気やイメージなんだから。そんな難しい理屈をこねて空気を悪くすんなよって」とかね。

「それにさあ、十字軍とかって大昔のことじゃん。今の日本でそんなこと、絶対あり得ないよ」って?
 いや、黒沢が見るところ、それがそうとも言い切れないんだよ。
 たまたま見ていたテレビの街頭インタビューで、いかにも威勢の良さそうな大阪の兄ちゃんが、こんなことを言っていてさ。「橋下さんの改革にガタガタ言うヤツは、オレが行ってブン殴ってやる」って。

 うん、もちろんそれはその場のノリと言うか、ただ口先だけのことだろうけどね。事実その後、「反橋下派の政治家が、橋下氏批判に怒った市民に殴られました」なんてニュースを聞いたこともないし。
 けどこの種の「○○さんに反対するヤツは、問答無用でブッ潰す!」ってノリの、昔の青年将校みたいな兄ちゃんが、十人、百人、そして千人と増えて、さらに彼らがある意図を持って組織的に集められたら、さあどうなると思う? それこそヒトラーとナチの、かの突撃隊の再来だよ。

 日本の例の二・二六事件だって、多くの国民が殺された政治家たちよりテロリストの青年将校たちの方に同情的だったしね。
 子供の頃から歴史が好きで大学も史学科を出た者として、「何かを強く信じて理屈の通じない人」って、心から怖いと思よ。十字軍の兵士であれ、日本の昔の青年将校であれ、今のイスラム原理主義者であれ、狂信者たちってマジで大勢の人を死なせて国を滅ぼすから。
汚職は国を滅ぼさないが、正義は国を滅ぼします。五・一五と二・二六事件の青年将校は正義のかたまりでした
 こう言ったのは、高名なコラムニストの山本夏彦さんだけれど、黒沢もホントにそう思うよ。

 なぜ正義が国を滅ぼすか、って?
 それは『アカイイト』ってプレステ2のゲームの主人公、羽藤桂ちゃんの言葉で説明しようか。

「人の道に基づくのは大いに結構ですけどね、人道や正義なんていうものは、生まれや教育や宗教観で違ってくるわけで、それをグローバルに押し通そうとすると齟齬が生じるものなのです。
 ストップ、独善


アカイイトアカイイト
(2004/10/21)
PlayStation2

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 この『アカイイト』は評判以上に良いゲームだったんで、いつかこの場でも紹介したいと思ってマス。
 それはソレとして、例えばアメリカとアルカイダだって、お互い“正義”の為に命を懸けて“悪”と戦っているつもり、なんだよね?
「信じるものの為に全力で突っ走る」って、一見カッコイイようだけど。傍から見れば「独善」でしかないんだよ、マジで。
 自分の言い分を一つ聞いて貰うには、相手の言い分だって一つ聞いてあげなきゃならない。それが現実だし、この世の中を生きて行く知恵ってやつさ。
 そこで「オレが絶対正しい!」って信じて自分の言い分を押し通したら、後はもう喧嘩か戦争しか道は残らないワケで。
 だから黒沢は小泉元総理や橋下氏や石原閣下wや安倍総理のような政治家は、ただキライと言うより国の災いのもとと見ているし彼らに一票を投じる国民をもっと怖いと思う。

 よくさ、近年「決められない政治」の弊害が云々されているけれど。そしてその結果、前回の参院選で安倍自民党が大勝したんだけどね。
 けど「決められない政治」って、そんなに悪い事かなあ? そりゃあ良い事じゃないけれど、世の中には「決められない政治」よりもっと悪い事があるんだよ。
 それは何かって?
 ズバリ、「悪いコトをどんどん決めて行く政治」だよ。

 あの小泉政権時代に、日本がどれだけ悪くなったと思う? 日本の幾多の優良企業が外資に喰い荒らされ、正社員はどんどん切られて派遣さんばかりになって、福祉も医療も切り捨てられてさ。あの“改革”は国民の大多数にとってはマイナスでしかなく、良い目を見たのは一部の投機家と利権屋だけでしょ。

 確かに民主党政権は無能で何も出来なかったよ、けど少なくとも、国民にとって小泉時代ほどのマイナスは無かった筈。
 でも日本人ってMの気質でもあるのか、何も出来ず停滞をもたらしたゼロの民主党政権より、国民に痛みをもたらすコトをいろいろ決めてマイナス方向に世の中を動かした小泉さんを、ずっと高く評価するんだよね。
 戦時中には「欲シガリマセン、勝ツマデハ」って言って、小泉時代には「痛みに耐えて……」って言ってさ。ホント、日本人ってよっぽどマゾ体質なんだろうね。

 あの小泉時代に、真に痛みに耐えていたのは一般の国民だけでさ。議員サンや公務員や大企業が「痛みに耐えていた」ようには、黒沢には見えなかったんだけどね。これが外国だったら暴動の一つも起きて当然だろうに、国民自身が「痛みに耐えて」を合い言葉みたいにしちゃうんだもの。
 日本人の気質って、ホントにもう……。

 そしてその国民が選んで、今も高い支持率を保っている安倍さんだけど。
 安倍さんはよく「日本を取り戻す」って言ってるけどさ、アレは言葉が少々足りなくてね。正確には「大日本帝国を取り戻す」って言いたいんだよ。戦前の天皇中心の国家主義の、あの日本をね。
 安倍さんの言動やら、自民党の憲法改正草案をよく見てみてごらん。その事があからさまに透けて見えてくる筈だから。
 もう一度繰り返させてほしいよ、「決められない政治より、悪い事をどんどん決めて行く政治を選びたいの?」って。

 これは自民党の元議員だった加藤紘一さんが、新聞のインタビューで話していたことなのだけれど。
 加藤さんが山崎拓氏と小泉氏の三人でYKKと呼ばれていた頃、加藤さんと山崎氏の二人は政策について盛んに議論するのに、小泉氏は殆どそれに加わらない。
 で、加藤さんが何故話に加わらないかを尋ねてみたところ、まだ総理になるずっと前の小泉氏はこう答えたそうだよ、「議論するとブレるから」って。

 そりゃ絶対ブレたりしないよね、相手の意見を聞かず、話し合いもしないでただ我が道を突っ走っていれば。そう、これがあの人気の「ブレない政治」の本質なんだよ。
 でも民主主義のキホンって、話し合いではないのかな? 相手の意見も聞かずに自分のセイギだけ押し通すのは、独善って言うのではないのかな?
 ハシズムの橋下氏は自ら「独裁も必要」って公言しているようだけれど、橋下氏だけでなく小泉元総理も石原閣下wも、間違いなくみなファシストだね。
 そして国民にも、「誰か偉大な指導者サマについて行きたい」って人が怖いくらい多いし。

 そーゆー人達って、北朝鮮でもきっと幸せに暮らして行けるのではないかな。偉大な指導者サマを信じて讃えてさ。あの戦争中の日本人の姿を考えれば、まーそこんトコはたやすく想像できるけれどね。
 けど黒沢は「○○サマを信じて、どこまでもついて行きマス」みたいなドレイ根性は欠片も持ち合わせてないからさ、「カリスマ指導者なんてイラネ」って心から思うよ。
 そうそう、大日本帝国憲法では国民は国民でなく、現人神である陛下の“臣民”だったんだよね。でも黒沢は、相手が神であれ何であれ、自分が誰かのケライになるなどと思うだけで、正直に言って吐き気がしてくるよ。

 ね、「伝説のエデンの園は、実は北朝鮮にあったらしい」って説を、キミは知っているかな?
「ふざけんな、エデンの園が何であんな国にあるんだよ!」って?
 でも北朝鮮の人達って、「人々は裸で暮らし住む家も食べるモノもなく、でも自分達は“地上の楽園”に住んでいると信じている」じゃん。
 ま、これは黒沢のお気に入りの小咄の一つなんだけどさ。
 でも北朝鮮って、マジで自分達の国を地上の楽園と言ってるんだよ。そして黒沢が子供の頃の日本のサヨクの知識人達も、ガチでそう信じてたんだよね。
 ……信じるって、ホント怖すぎるでしょ?

 懐疑主義って言うのかな、黒沢は何も信じてないし誰にもついて行きたくないし、何でも一つ一つ自分で考えて判断しているよ。
 一万円ちょっとのコンデジ一台買うのにもさ、ただ店頭で触ってみるだけでなく、カタログでスペックを調べ専門誌の記事も読み、ネットのレビューもできる限り目を通して、いろんな見方を頭に入れた上で「あーでもない、こーでもない」と迷いに迷ってからやっと決めているよ。
 こんな面倒くさくて回りくどいやり方、かの小泉サンやその信奉者たちには、「ブレ過ぎててダメだ」って叱られちゃうだろうね。
 けど黒沢は、それでも一つ一つ考えて考え抜くのをやめたくないんだよ。

 源義経ってホントに英雄で、義経を殺させた源頼朝は悪人なの?
 吉良上野介は強欲な悪人で、浅野内匠頭はホントにその犠牲者で家来たちは立派だったの?
 こういう世間の皆が「そんなの常識ダロ」って信じてることでも、黒沢はちゃんと調べて自分で確かめてみないと納得できないんだよ。
 そうして何でも疑って調べてみると、「世間のジョーシキ」ってのがいかに間違ってるかが、ホントによくわかってくるよ。
 機会があればいつか詳しく書くけれど、今は手短に結論だけ話すね。吉良も頼朝も、欠点はあるけれど実は信じられてるほど悪い人ではないよ。むしろ義経は汚い手ばかり使う野心家で内匠頭はバカ殿、そして浅野の家臣は悪者ではないけれどズバリ無能だね。

 浅野の家臣は無能って、大石内蔵助についてはかなり異論があると思う。でも大石が活躍したのは、大切な御家が取り潰されちゃってからで、それまでは昼行灯と呼ばれていたような人でしょ。
『暴れん坊将軍』などに見るように、徳川吉宗は名君として今も庶民に人気だけれど、実は吉宗に失脚させられた尾張藩主徳川宗治の方がずっと進んだ考えの持ち主で魅力的だよ。田沼も同じく先進的な政治家で、松平定信は江戸時代最悪の改革者だし。
 という具合に、自分でよく調べてみると教科書のジョーシキって、ホントに事実と違うことばかりだよ。だから黒沢は人の言う事や常識もすぐ信じたりしないし、どれだけ悩んで迷ってその結果ブレることになっても、自分のアタマで考えるのを死ぬまで止めたくないんだよ。

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