空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

ボストンクラブ豊醇原酒の終売が迫る

 この春にキリンがウイスキーのラインナップを変え、富士山麓をリニューアルした他、オークマスター樽薫るを新製品として出した代わりにボストンクラブの終売を決めた。

 そのボストンクラブには淡麗原酒豊醇原酒の二種類があり、初めから食中酒として造られたらしい淡麗原酒の方には、筆者は全く興味が持てなかった。
 そもそもアルコール度数37%って、それだけでもこのボストンクラブ淡麗原酒が「本格的ではない、安売り用のウイスキー」とわかるではないか。
 が、ラガヴーリンタリスカーなど、ピート香の利いたウイスキーが好きな筆者としては、「ヘビーピートモルト由来の豊かなスモーキーフレーバーとしっかりとした飲みごたえ」を謳っている豊醇原酒の方には、以前から興味を持っていた。
 ついでに言えば、こちらの豊醇原酒の方はアルコール度数もちゃんと40%ある。

 で、このボストンクラブ豊醇原酒は、発売されて間もないうちに飲んでみたのだが、その感想は何とも微妙だった。
 最初に飲んだ一本は、「千円未満の安いウイスキーにしては美味い」と思った。キリン独特の、どこかバーボンの風味を感じる部分には違和感はあったものの、しっかりとしたスモーキーフレーバーには充分満足できた。
 それでこのボストンクラブ豊醇原酒を八百円台で売っていた店で、二本ほど追加して買ってしまった。

 ところが、その追加で買った方のボストンクラブ豊醇原酒は、どうしても美味いとは思えなかった。スモーキーフレーバーよりも、何故か熟成不足によるアルコールの刺激がツンツン感じられてしまったのだ。
 それで二本買った追加のボストンクラブ豊醇原酒の残り一本は、手を付けずに今も放置してある。
 しかしそのボストンクラブがこの6月に終売になると聞き、千円未満で買える唯一のヘビーピートモルト使用のウイスキーであるこのボストンクラブ豊醇原酒に、再び興味が湧いてきてしまった。
 一本目で感じたように、値段の割に美味いウイスキーなのか。
 それとも二本目の時に感じたように、お値段なりのアルコールの刺激がキツい安酒なのか。
 そのあたりを、このボストンクラブ豊醇原酒が店頭から無くなってしまう前にじっくり見極めてみようと思った。

ボストンクラブLUMIX FX9 109

 で、例の飲まずに家の貯蔵庫に放置したままにしてあるボストンクラブ豊醇原酒の封を切って飲んでみても良かったのだが。
 店頭でボストンクラブ豊醇原酒を見てみると、家に保存してあるものと色合いがかなり違うのだ。
 同じボストンクラブ豊醇原酒でも、現在の製品は以前の製品より色合いが間違いなく薄い。
 それで今の物と昔の物の違いも確かめてみたくなって、あえて新しい物を買って飲んでみることにした。
 同じボストンクラブ豊醇原酒なのに色合いがどれだけ違うかは、写真でご覧の通りである。

 さて、新しい方のボストンクラブ豊醇原酒の封を切ってみると、まず甘い香りが漂う。売りである筈のヘビーピートモルト由来のスモーキーフレーバーよりも甘さの方が際立っている。
 飲んでみても甘い。ストレートで飲んでもまず甘さを感じる。しかしただ甘いだけでなく、甘さの中にビターさもある。
 スモーキーフレーバーを売りにしているものの、スコッチというよりバーボンに近い風味を感じる。だからピート香の利いたスコッチの好きな方は、あまり味に期待しない方が良い。
 とは言うものの、バーボンそっくりというわけでもなく、バーボンの甘さにスコッチのビターさとピート香を合わせたような、不思議な風味を感じた。
 豊醇原酒と名乗っているが、その名の通りに甘さやビターさやスモーキーさなどのいろいろな味と香りが混ざり合っていて、千円未満のウイスキーにしては豊かな味と香りがある。

 封を切って数日経つと、甘さだけでなくスモーキーフレーバーがそれなりに立ってくる。
 以前の濃い色だった豊醇原酒に比べ、今の豊醇原酒はスモーキーさやバーボンに似た味やアルコールの刺激など、あらゆる面でマイルドになって飲みやすくなった印象がある。
 しかし反面、ボストンクラブ豊醇原酒の売りであったヘビーピートモルト由来のスモーキーフレーバーは間違いなく薄くなった。
 筆者としては、スモーキーさが薄れた事を残念に思う。しかしマッサンこと竹鶴政孝氏が苦労したように、日本人にはスモーキーフレーバーを好まない人も多く、それを考えればボストンクラブ豊醇原酒の「ピート香も抑えて飲みやすくマイルドに」というブレンドの変更は、正しい判断だったのであろう。
 それにピート香を以前より抑えたとは言うものの、飲んだ後のアフターフレーバーにはスモーキーさが確実に残っている。

 筆者はウイスキーはワンショット(30ml)を20~30分くらいかけ、ゆっくり、じっくり飲むのが好きだ。グラスに注いだらまず色と香りを楽しみ、そしてほんの少量舌に乗せて味を楽しみ、飲み込まずにそのまま呼吸して香りも楽しむ。それから飲み込んで、またアフターテイストを堪能する。
 そうした飲み方を愛しているから、近頃の日本でやけに流行しているハイポールという飲み方は、どうしても好きになれないのだ。

 まずいとまでは言わない。
 しかしウイスキーを炭酸で薄く薄く割ってゴクゴク飲むハイボールは、ウイスキーの折角の味と香りの大半を損なってしまっているように感じられるのだ。
 特に豊かな味と香りを持つ良いウイスキーほど、ハイボールにするとその良さが台無しになってしまうように思える。
 逆に、ストレートや濃いめではとても飲む気になれないような安いウイスキーは、ハイボールにすると抵抗無くスイスイ飲めてしまったりする。
 だから筆者は、ハイボールは安いウイスキー限定の飲み方と思っている。まあ、タリスカーのハイボールに挽いた胡椒を振って飲むと美味しい、という話はよく聞くのだが……。
 日本のウイスキーの第一人者である土屋守氏も、その著書の中で「シングルモルトや長期熟成のウイスキーはストレートやトワイスアップに、リーズナブルなウイスキーや熟成年数の短いウイスキーはハイボールに向いている」と書いておられる。例外はあるものの、ハイボールにするにはやはり千円程度のウイスキーが向いているのではないだろうか。

 で、キリンはハイボールを飲む人達の為に、ボストンクラブの終売を決めオークマスター樽薫るを発売したが。
 筆者はボストンクラブ豊醇原酒でハイボールも作ってみたが、意外に悪くないと思った。炭酸で薄く割っても、持ち味の甘さとスモーキーさがちゃんと残っているからだ。
 だから筆者は、「このハイボールで何故ダメなのだ、どうして終売にする必要があるのだろう?」と疑問に思ってしまった。

 だがキリンのHPによると、日本のハイボール飲用者の求めるウイスキーとは、「すっきりしていて、飲みやすい」ものなのだそうだ。
 実際、プロのバーテンダーさんの中にも、スモーキーフレーバーの残るハイボールを嫌う人がいる。

 筆者はハイボールが元々嫌いだから、元のウイスキーの個性がしっかり残る、おそらく「すっきりしていない」ハイボールが好きなのだろう。
 実際、サントリーが売り出している角ハイボール缶も、角瓶をただ炭酸で割っただけの『濃いめ』は「まあ飲める」と思ったが、レモンも入れている通常の角ハイボール缶は一口飲んだだけで「ゲロまずっ!」と思ってしまった。
 ハイボールにレモンを搾って入れる人が少なからずいるが、筆者はウイスキーに酸味は違和感しか抱けない。
 しかしレモンの絞り汁を入れたハイボールを、「サッパリしてより美味しい!」と評価する人が多いのもまた事実である。

 だから思うのだが、少量のウイスキーをちびちび時間をかけて飲む者と、ハイボールにしてゴクゴク飲む者とでは、ウイスキーの好みが真逆なのではないだろうか。
 筆者はハイボールも1:2.5かせいぜい1:3までにして、氷も入れずに元のウイスキーの味を残して濃いめで飲む。しかし日本ではそれは少数派で、1:4くらいに割り氷もたくさん入れレモンも搾って「薄くサッパリ」させて飲むのが普通なのだろう。
 だから筆者が「案外イケる」と感じたボストンクラブ豊醇原酒も、日本のハイボール飲用者には不評だったのだろう。それでキリンも、ハイボールに割って飲む用に新たにオークマスター樽薫るを作らざるを得なかったのだろう。

 そのオークマスター樽薫るの発売で、ボストンクラブは豊醇原酒も淡麗原酒もこの6月に終売と決まったが。
 日本では珍しい千円未満のヘビーピートモルトを使用したウイスキーに興味のある方は、是非今のうちに味見してみてほしい。
 裏のラベルには「ヘビーピートモルト由来の豊かなスモーキーフレーバー」とか書いてあるけれど、実際にはブレンドを変えられて「ほどほどのスモーキーフレーバー」になっているので、ピート香が苦手な方でなければそれほど抵抗なく飲めると思いマス。
 これを終売にして、新たに「ハイボールとしておいしく飲めるブレンド」のオークマスター樽薫るを出さなければならないほど、ボストンクラブ豊醇原酒のハイボールが不味いとは、筆者には思えなかったのだがなぁ……。

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コメント


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キリンのウイスキーは伝統的にバーボン風ですね。それが特徴でもあり、いまひとつウイスキーブームに乗れなかった理由でもあると思います。もう少し軽井沢蒸留所を残してればなあ、残念。でも、富士山麓のリニューアル版は評判が良いので、これからに期待したいと思います。

KAZ | URL | 2016-04-26(Tue)08:04 [編集]


ワタシは両方OKです。(笑)

ストレート。ハイボール。
ワタシは両方OKです。

ただ味わう順番はストレートが先ですね。

それはウイスキーというものはストレートが作り手の考えている味だと私個人は思っているから、です。

ワタシがキリンのウイスキーの企画側なら
「ヨソと同じハイボール想定の味を作ってもヨソは抜けない。商品として空き家の2,000円本格12年物を作ってしまえ。」と言いますよ。ええ。

……ジャパニーズウイスキー、頑張って欲しいンですよねー。(笑)

ogotch | URL | 2016-04-26(Tue)23:27 [編集]


Re: タイトルなし

>富士山麓のリニューアル版は評判が良いので、これからに期待したいと思います。

 リニューアルした富士山麓がノンチルフィルタードと聞いて、私も興味を持ちました。国産で、しかもこの価格帯でノンチルフィルタードを名乗るものは希なので期待しています。

 私は基本的にスコッチ党でして、それでキリンのウイスキーのバーボン風味にやや抵抗を持ってしまいます。
 ただキリンのバーボン風味はキツくないので、「飲みにくい」とまでは思いませんが。
 それにしても、軽井沢蒸留所の閉鎖は惜しまれますね。
 閉鎖するなら、キリンは何故わざわざ買収したのだろうと言いたくなってしまいます。
 残しておいて、御殿場蒸留所とはまた違う風味の原酒を造っていれば、キリンのウイスキーのラインナップが豊かになったでしょうにね。

黒沢一樹 | URL | 2016-04-28(Thu)15:55 [編集]


Re: ワタシは両方OKです。(笑)

> ストレート。ハイボール。
> ワタシは両方OKです。
> ただ味わう順番はストレートが先ですね。
> それはウイスキーというものはストレートが作り手の考えている味だと私個人は思っているから、です。

 濃縮タイプのダシの素ではあるまいし、最初から何倍かに薄めて飲む為に造ってるわけじゃないですよねー、ウイスキーは。
 でも私も、ハイボールにすると意外に悪くないウイスキーがある事もわかってはいるんです。
 それでもウイスキーは、濃いめでじっくり、ゆっくり味わいたいんです。


> ワタシがキリンのウイスキーの企画側なら
> 「ヨソと同じハイボール想定の味を作ってもヨソは抜けない。商品として空き家の2,000円本格12年物を作ってしまえ。」と言いますよ。

 ジョニー・ウォーカーやバランタインやシーバス・リーガルなど、2千円前後で買える12年モノのスコッチが複数あるのに、なぜ国産品には同等のものが無いでしょうかね?
 スコッチに出来るなら、国産のウイスキーにも出来る筈だと思うのですが……。
 かつてはあった、竹鶴12年のようなものが、また出てくれる事を心から願っています。

黒沢一樹 | URL | 2016-04-28(Thu)16:15 [編集]


現状、厳しいですよ。

黒澤氏、やはり現状、厳しいですよ。
日本ウイスキー業界に頑張って欲しいのは
分かります。それは私にも伝わります。

ただ客観的な日本ウイスキー業界の現実を見た場合には散々たる状況でしょう。

庶民の手が届く3,000円未満の商品には
ジャパニーズウイスキーは候補として
他国商品に全く、及ばないです。

その上に相次ぐ値上げに品質低下。

どこかのウイスキーブログで、値上げを
訳知り顏で肯定していましたけども。

大半のサラリーマンは収入は下がっても
上がらないのに物価も税率も上がる。

……「ウイスキー」を求めている私が
今の日本のウイスキーに怒りとあきらめを
抱くのは愛が足りない、ですか?

ogotch | URL | 2016-04-28(Thu)22:40 [編集]


Re: 現状、厳しいですよ。


> ……「ウイスキー」を求めている私が
> 今の日本のウイスキーに怒りとあきらめを
> 抱くのは愛が足りない、ですか?

 いえ、ogotchさんに国産品に対する愛が足りないのではなく、本場のスコッチやバーボンに及ぶものが出せない日本のメーカーが悪いのです。
「10年くらい前は日本のウイスキー消費は低迷していて、だから今の原酒不足と値上げは仕方が無いのだ」などとメーカーを擁護する人もいますが、ウイスキーがすぐには造れないもので、売れ過ぎても困るものだという事ぐらい、メーカーならわかっていなければならなかった筈です。
 なのにハイボールとかで妙なブームを作り出した結果、古い原酒の不足を招き、それを消費者に責任転嫁して値上げを正当化する国産メーカーはタチが悪いです。

 比べる対象が人件費の安いインド製のウイスキーとかなら、ともかくとして。
 アメリカやイギリス(スコットランド)のウイスキーより国産品の方が高いというのは、絶対に国産メーカーに責任があるのだと思います。

 私の住む町のある酒屋では、ジョニ赤が税込で1004円で売られています。
 なのにあえて1274円の角瓶を買うのが“愛国者”なのでしょうか?
 私はそうは思いません。ジョニ赤より高くて不味い製品しか出せない国産メーカーが悪いのです。
「買ってほしけりゃ、スコッチやバーボンより安くて美味い国産ウイスキーを出してみろ」といったところです。
 少なくとも船で長距離を輸送する費用はかかって無いのだから、「スコッチやバーボンより安くて美味い国産ウイスキー」は、やれば造れるはずだと私は思うのですが。

黒沢一樹 | URL | 2016-05-05(Thu)14:57 [編集]