空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

いいちこに、砂糖は混ぜられているか?

 先週は本格芋焼酎のさつま無双・古式づくりを紹介したが、乙類の本格焼酎には味も香りも個性の強いものが少なくない。
 しかし現実に売れている“本格焼酎”には、その対極にあるような、味も香りも穏やかで、悪く言えば甲類の焼酎をただマイルドに飲みやすくした印象のものが少なくない。

 その飲みやすいが甲類に近い“本格”焼酎の代表格が、「下町のナポレオン」を自称する、あのいいちこであろう。
 筆者は焼酎は常圧蒸留の、そして出来れば甕貯蔵した個性のはっきりしたものが好きである。
 それに対しいいちこはただ減圧蒸留しただけでなく、イオン交換樹脂濾過までしている。

 常圧蒸留の本格焼酎には、確かに匂いのキツいものもある。
 で、減圧蒸留すれば、その気になる匂いも殆ど取れる。
 しかし「気になるキツい匂いだけ取り去る」などという都合の良い事が出来るわけも無く、減圧蒸留は原料本来の香りや旨味も同時に消し去ってしまうのである。
 そして(長文になるから詳しい説明は省くが)イオン交換樹脂濾過も、実態は“濾過”と言うより“精製”に近い。
 そのようにして作り上げたいいちこは、本格焼酎の気になる匂いやキツさは殆ど無いが、同時に本来の味や香りも殆ど消し去ってしまった、昔ながらの本格焼酎とはまるで別物である。

 そのいいちこのキャップを開けてみると、僅かなアルコール臭の他は匂いを殆ど感じない。本格焼酎の臭みだけでなく、原料に由来する良い匂いも感じないのである。
 そして味も、砂糖に似た甘味の他は殆ど感じない。麦由来の旨味も殆ど感じられないのだ。
 ……これがあの減圧蒸留とイオン交換樹脂濾過による、Wアタックの効果であろうか。
 常圧蒸留の本格焼酎ばかり飲んでいる者からすれば、味も香りも全く物足りない残念なものとしか言いようが無い。

 ところがこのいいちこは、常圧蒸留で昔ながらの製法にこだわって造っている本格焼酎を愛飲している者には物足りないが、決して不味くはないのである。
 安いウイスキーの中には、一口飲んだだけでもその不味さに呆れてしまい、もうそれ以上飲む気になれなくなってしまうものが少なくないが、いいちこは美味くないのに、不思議に飲みやすいのである。

 匂いと言えば僅かなアルコール臭だけだし、味は砂糖に似た甘さの他は殆ど無い。
 しかし純や寶焼酎などの甲類の焼酎とは、まろやかさがまるで違う。甲類の焼酎にありがちな、ツンツンしたアルコールの嫌な刺激が殆ど無く、例の砂糖に似た甘味のせいか味に角を感じずにどんどん飲めてしまうのである。
 甲類の焼酎を飲んでいる方は、一度いいちこを飲んでみてほしい。その甲類とはまるで違う、飲みやすさとまろやかさに驚く筈だ。

 いいちこについて、筆者は繰り返し「砂糖に似た甘さ」と書いてきたが。
 事実かつてのいいちこは、製品に白砂糖を入れていた
 いいちこだけてでなく、二階堂雲海など、売れていて有名な“本格焼酎”の多くが製品に砂糖を入れていたのである。
 蒸留酒は、出来たてはどうしてもアルコールの刺激が舌にピリピリ来る。だからウイスキーやブランデーなどは、何年も貯蔵するのである。
 貯蔵して時間を置くことで、アルコールと水の分子が結合してまろやかな味になるのだ。
 しかし長く貯蔵するには、時間だけでなくコストもかかる。
 で、「糖類を加える事で、アルコールの刺激を消してマイルドに見せかけてしまおう」と考えるメーカーが出て来た。

 実際、糖類を加えるとアルコールのツンツンした刺激がかなり消える。
 筆者は以前、糖類添加と明記された韓国焼酎(甲類)を飲んだ事があるが、美味いとは決して言えないものの、甲類とは思えないほど飲みやすかった。
 甲類の韓国焼酎でさえそうなのだから、減圧蒸留でイオン交換樹脂濾過とは言え日本の本格焼酎に砂糖を入れれば、もっとマイルドで飲みやすくなるに決まっているのだ。
 だからいいちこや二階堂や雲海などのメーカーは、製品に砂糖を入れた。
 そしてその事で本格焼酎の評判を落とし、九州の焼酎業界で問題になった。
 それで少なくともいいちこは、製品に砂糖を入れるのを止めた。

 断言するが、今のいいちこには砂糖は入っていない。その事は、筆者も自分で確かめてみた。
 確かめる方法は簡単だ。調べたい焼酎をスプーンに入れ、そのスプーンをガスコンロの火で炙れば良いだけだ。
 糖類を入れてあれば、火で炙るうちに糖分がカラメル状になり、スプーンに茶色く焦げ付く。
 そしてスプーンに注いで炙ったいいちこはそうなる事なく、綺麗に蒸発した。

 砂糖を入れてアルコールの刺激を隠しマイルドにしたから、いいちこは全国で売れた。
 しかしその白砂糖添加が問題になって、どうするか三和酒類の社内でかなりの議論になったという。
 その結果、三和酒類はいいちこに砂糖を入れるのを止め、企業努力で砂糖を入れていた以前の製品に近い味のいいちこを作り出した。
 砂糖を入れ続けていては評判にかかわる。
 しかし味を変えて、それまでのファンに離れられても困る。
 そのあたりを考えての、悩んだ末の決断であったろう。
 しかし砂糖を入れていた頃の製品と味を変えないよう努めたゆえに、「いいちこなんか、砂糖を入れてるダメな焼酎じゃねえか」と今もなお信じている人達が少なからずいる。
 実は筆者も飲んでみて砂糖に似た甘味を感じ、砂糖添加を疑った。

 だから思うのだが、いいちこは甘味をもう少し控えめにと言うか、麦の自然な甘味に戻した方が良いのではないだろうか。
 せっかく砂糖添加を止めたのに、その砂糖を入れていた時代の製品に似せた甘さゆえに砂糖添加を疑われたのでは意味が無いのではないか。

 殆ど無味無臭で砂糖に似た甘さしか感じないのが、常圧蒸留で個性の強い本格焼酎が好きな筆者には不満だ。
 しかし世の中にはライトでマイルドな焼酎が好きな人も多くいるだろうし、いいちこはそんな人達には愛されるだろうと思う。
 味も香りも筆者にはまるで物足りないのだが、決して不味くはないし、飲みやすい焼酎である事は認める。
「自らお金を払ってまで飲む気にはなれないが、客として招かれた先で出されれば普通に飲める」というのが、いいちこに対する筆者の正直な評価だ。

 書き忘れたが、いいちこは飲み方を選ばない。
 先週紹介したさつま無双の古式づくりは断然お湯割りが美味く、水などで割ると味も匂いも物足りないものになってしまった。
 しかしいいちこは、湯で割ろうと水で割ろうとロックにしようと、味も匂いも殆ど変わらない。
 そういう意味でも、飲みやすい焼酎と言えよう。

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