空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

安倍政権は“保守”でなく“革新国家主義”である

 このブログでも繰り返し書いて来た事であるが、筆者は生まれてからずっと保守思想の持ち主であり続けてきた。
 左翼とか革新勢力とかいった類には、ただ反感しか抱いた事が無い。
 だから歴史を学んでいた大学生時代には、筆者は同級生たちの多くからコチコチの右翼と見なされていた。

 しかしその紛れもなき保守思想の持ち主の筆者は安倍政権が大嫌いで、アベ政治が一日も早く終わる事を願ってやまないでいる。
 と言うより、あの小泉政権も大嫌いで、なぜ日本国民の八割があのような人物を熱狂的に支持したのか、今もまるで理解できないでいる。
 筆者は選挙の際には欠かさず投票しているが、20世紀には筆者はほぼ自民党とその候補者に票を入れていた。
 だが小泉純一郎氏が政権の座についた2001年から、筆者は自民党とその候補者には一切票を入れていない。
 今の筆者の政治的な立ち位置は、間違いなく反自民である。

 と言っても、筆者が左翼に“転向”したわけではない。
 筆者の思想は今も昔と変わらず保守のままで、変わったのは自民党の方だと断言する。

 安倍首相は何かと言えば「戦後レジームからの脱却」と言い、歴代の自民党の首相の中でも最も改憲に熱意を燃やしている。
 そして憲法第九条についての自民党歴代の内閣の解釈を、安倍内閣の閣議で変えてのけた。そして安保法制を数の力で可決して、自衛隊をアメリカ軍と一緒に海外で戦える部隊にしてしまった。
 さらに次の国政選挙で三分の二の議席を占め、悲願の憲法“改正”をしようとしている。

 その安倍首相と自民党は、憲法をどう変え、日本をどう作り替えたいと思っているのか。
 それは自民党が発表した「日本国憲法改正草案」を見ればよくわかる。
 その「Q&A増補版」で、人権についてこう書かれている事に注目していただきたい。

 権利は、共同体の歴史、伝統、文化の中で徐々に生成されてきたものです。したがって、人権規定も、我が国の歴史、文化、伝統を踏まえたものであることも必要だと考えます。現行憲法の規定の中には、西欧の天賦人権説に基づいて規定されていると思われるものが散見されることから、こうした規定は改める必要があると考えました。


 おわかりだろうか。
 今の憲法を変えたいという自民党の方々は、「人権は、人が誰もが生まれながらにして持っているものではない」とお考えなのだ
 まるで「日本の歴史や文化や伝統には、人権などというものは無かった」と言っているように聞こえるのは、筆者だけであろうか。

 だから自民党の憲法改正草案では、「何とか国民の権利を削り、代わりに義務を課してやろう」という姿勢があちこちに見える。

 例えば日本国憲法の第十二条では、こう書かれている。

 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。


 これを安倍首相と自民党は、こう変えたいと公表している。

 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民はこれを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。


 この現憲法と自民党の改憲草案がどう違うのか、理解できない人は馬鹿とまでは言わないまでも鈍感である。
 自民党の案では、自由や権利は公益及び公の秩序に反さない範囲でのみ認めるという事になっている。
 現憲法で言う「公共の福祉」と自民党が変えたい「公益及び公の秩序」とは、似ているようで中身は大違いである。

 ちなみに福祉という意味を広辞苑で調べてみると、「幸福。公的扶助やサービスによる生活の安定、充足」とある。
 そして公益は「国家または社会公共の利益」で、秩序は「物事の条理。物事の正しい順序・筋道。特に、社会などの規則立った関係」である。
 つまり現憲法では、「国民は皆の幸福や生活の安定の為に自由や権利を使いなさいよ」と言っている。
 それを自民党は、「国民の自由や権利の代償に責任と義務が伴い、国家や社会の利益や秩序に反しない範囲内でのみ許される」と変えたい
のだ。

 例えば貴方の家や土地に、新たに道路や鉄道などを作る計画が持ち上がったとしよう。
 現憲法では個人の権利が尊重されるから、貴方の意志を無視して立ち退かせて道路や鉄道を作る事はかなり難しい。出来ないわけではないが、話し合いや裁判などにかなりの時間がかかり、立ち退く際には補償金も少なからず支払われる事になる。
 しかしもし、自民党の草案通りの憲法に変えられたらどうなるか。
 国民の自由や権利は「常に公益及び公の秩序に反してはならない」のだから、公益の名のもとに貴方の家や土地は容赦なく、公の言い値で取り上げられる事になるだろう。
 それ以外にも公立の保育所だろうが学校だろうが官庁だろうが自衛隊や米軍の基地だろうが、公の施設の建設に対する反対は、公益の名のもとに一切出来なくなるだろう。

 例の安保法制の時、反対するデモが国会前で盛んに行われたが。
 あの種の国策に反対するデモも、公の秩序を乱すという理由で排除されかねない
 そもそも「公の秩序」と言うが、それを乱していると誰が決めるのか。おそらくそれは、時の政府に違いあるまい。
 自由や権利が、公益及び公の秩序の下に置かれるとするならば。
 時の政府に反するような国民の活動はすべて、憲法違反として取り締まる事が可能
である。

 この「国民の自由や権利には責任や義務が伴い、常に公益及び公の秩序に反してはならない」という自民党の憲法改正案を恐ろしいと感じない貴方は、ひどく鈍感か、または戦時体制下の大日本帝国に郷愁の念を抱く全体主義者のどちらかだ。

 それにしても安倍首相ら自民党の改憲したい人達は、「公益及び公の秩序」という言葉が大好きだ。
 先ほど紹介した憲法第十二条に続く第十三条にも、その「公益及び公の秩序」という語句が出て来る。

 まず現憲法の第十三条を読んでいただきたい。

 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。


 そしてこの第十三条を、安倍首相と自民党はこう変えたいというのだ。

 全て国民は、として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公益及び公の秩序に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限に尊重されなければならない。


 この違いがわからない貴方は、もはや鈍感を通り越して馬鹿である。
 現憲法では、公共の福祉、つまり皆の幸福や生活の安定に反しない限り尊重されている「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」が、安倍首相と自民党の改憲草案では、例の公益と公の秩序という名のもとに制限されてしまうのだ。

 さらにまた、現憲法で尊重されなければならないとされていた“個人”が、安倍首相と自民党が進める改憲草案では“人”に置き換えられている事にも注目していただきたい。
 安倍首相と自民党は、国民をそれぞれ個性のありかけがえのない個別の人間としてではなく、十把一絡げの同じ人としか見ていないのである。

 先日、筆者の家にもマイナンバーの通知が届いたが。
 そこに記されている十二桁の数字を見て、筆者はナチスが強制収容所に送ったユダヤ人の囚人の名前を奪い、数字の入れ墨を腕に入れて管理した事を連想してゾッとしたものである。
 しかし国にとっては、筆者など一億二千万分の一の、無味乾燥な十二桁の数字に置き換えて管理すべき存在でしか無いのだろう。
 だが筆者は黒沢一樹という個性ある個人であって、あのような無味乾燥な十二桁の数字で片付けられてはたまらないと心から思った。

 一億二千万の国民を、個性ある一人一人の人間と見るか。
 それとも、全てまとめて同じ“人”と見るか。

 個人と人とは、意味合いがそれくらい違うのである。
 現憲法と違い、自民党が憲法草案で“個人”の個を削って“人”に置き換えた事に、個を認めず自由や権利を制限したい意図が明らかに見える。

 安倍首相の祖父である岸信介元首相は、先の大戦で東条英機内閣の閣僚を務めたA級戦犯容疑者である。そして安倍首相自身もその祖父を敬愛している事を公言しており、だからか刑死したA級戦犯を昭和殉難者として称えている
 その首相が意欲を度々示している改憲だけに、自民党の憲法草案には日本をかつての全体主義の国に戻したい思惑が込められているように思えてならない。

 筆者は高度経済成長を遂げている日本に生まれ育った。
 その日本は真面目に働けば贅沢は出来ずとも普通に暮らせる、国民が“総中流”の国家だった。
 そして自衛隊という戦力と日米安保という同盟関係があって他国から攻められる事も無く、同時に憲法第九条のおかげで海外に自衛隊を派兵して死者を出す事も無かった。
 ベトナム戦争の時、韓国はアメリカの為にベトナムで戦わされた。しかし日本は、憲法第九条があるおかげでアメリカに付き合わされてベトナムで戦わされる事を免れた。
 同じ理由で、中東での戦争にも参加せずに済んできた。
 あの太平洋戦争の後、他国から攻められた事も、他国を攻めた事も無い。そして自衛力はあるが一人も殺さず、そして殺された事も無い。
 筆者はそんな日本を愛し、そして自民党政権を支持してきた。

 だが2001年に国民の熱狂の中で小泉政権が誕生してから、その全てが変わってきた
 職場には派遣さんが溢れ、将来の見通しを立てて生きて行ける正社員が少なくなった。
 またその正社員になれても、ブラック企業で使い潰される人々も少なくない。
 総中流など昔の話で、一部の人だけが儲かり多くの人の暮らしが苦しくなり貧困層が増えた。
 それもこれも、小泉政権から安倍政権までの自民党政権がグローバル経済の名のもとに押し進めている、新自由主義による経済政策のせいだ。
 そして小泉政権はイラクに自衛隊を派兵し、安倍政権は解釈改憲をし安保法制も成立させて、自衛隊がアメリカの為に海外で戦えるようにした。
 さらにまた、公益と公共の秩序の名のもとに国民の自由と権利を制限しようという意図が見え見えの憲法を国民に押しつけようとしている。
 こんな自民党と現政権を、どうして支持できようか。

 話は冒頭に戻る。
 筆者は根っからの保守主義者なのに、なぜアベ政治は大嫌いで、小泉政権以来の自民党は支持できずにいるのか。
 それは筆者が保守で、小泉政権以来の自民党は革新勢力だからである。
 社会主義に変えようというのが、かつての革新勢力であった。それとは真逆の方向で、総中流だった社会を新自由主義経済の導入で格差を広げ、自衛隊という戦力を保持しながら専守防衛だったのを解釈改憲と安保法制で海外で戦えるようにし、新しい憲法で国民の自由と権利を制限して戦前のような全体主義に近い社会に戻そうという安倍首相と今の自民党は、明らかに“保守”では無く“革新国家主義者”だ

 マスコミも含めて日本の人々は、安倍政権を保守だと思っている。
 しかし欧米のメディアは、初めから安倍政権を革新ナショナリストと見ていた
 事実、安倍首相は繰り返し「戦後レジームからの脱却」と口にしている。
 戦後の自民党の歴代内閣が築いてきた日本の社会を、安倍首相は変えたいのだ。
 左でなく右の国家主義者とは言え、安倍首相とその取り巻き達が、日本の社会を変えようとしている“革新勢力”であることは事実だ。
 そして保守派である筆者は、安倍首相が敵視する戦後レジームの時代の、国民の自由と権利が最大限に保障され、格差が少なく普通に働けば普通に報われ、自衛隊がありつつ平和であった社会が続いて欲しいと願っている
 だから新自由主義経済で格差を押し広げ、自衛隊を海外で戦えるようにし、「今の国民の自由と権利は個人主義の行き過ぎで、公益と秩序を重んじた戦前のような社会にしたい」と考える安倍政権と自民党は、断じて支持できない。

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憲法の大基本。

憲法の大基本。

それは憲法というものは
「国民から国家への命令」である。

この一点に尽きます。

ということは憲法を国民が守る必要は
全く無いと言うことです。憲法を守るのは
国家(政府)が対象になります。

「命令」をされる側が自分の考えで
「命令」の内容を変えてはいけない。

実はコレが憲法解釈問題の本質です。

極めてシンプルなことで、ここには
思想もヘッタクレもありません。

そこを無視したら政党・政治家関係なく
「何をやっているんだ、馬鹿者。」と
言われるのは当たり前のことです。

どんな仕事だって、そうだと思います。

それとも私の考え方が変でしょうか?

ogotch | URL | 2016-05-14(Sat)10:48 [編集]


Re: 憲法の大基本。

> 憲法の大基本。
>
> それは憲法というものは
> 「国民から国家への命令」である。
>
> この一点に尽きます。
>
> ということは憲法を国民が守る必要は
> 全く無いと言うことです。憲法を守るのは
> 国家(政府)が対象になります。
>
> 「命令」をされる側が自分の考えで
> 「命令」の内容を変えてはいけない。
>
> 実はコレが憲法解釈問題の本質です。
>
> 極めてシンプルなことで、ここには
> 思想もヘッタクレもありません。
>
> そこを無視したら政党・政治家関係なく
> 「何をやっているんだ、馬鹿者。」と
> 言われるのは当たり前のことです。
>
> どんな仕事だって、そうだと思います。
>
> それとも私の考え方が変でしょうか?

 全くその通りだと思います。
 ogotchさんのおっしゃる事が正論そのものです。

 私とて「今の憲法が全て正しく、一言一句変えてはならない」と思っているわけではありません。
 ただ今の憲法を変えたい政治家には、どうも国家権力を強めて国民を縛りたい意思が透けて見えるように思えてならないのです。
 今、改憲を強く主張する人たちは、あの戦争を美化してA級戦犯を称える、戦前の大日本帝国が大好きな人達ばかりですからね。
 で、「安倍首相とそのお仲間の考える改憲をするくらいなら、そのまま変えずにいた方がずっとマシ」と思ってしまうのです。

黒沢一樹 | URL | 2016-05-19(Thu)15:32 [編集]