空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

お受験(21)・理性と自分のキモチ、どっちを大事にします?

 話をリホさんに戻すと、まだガキだった当時の黒沢としては、何か騙されたような、リホさんの言葉をまともに信じてバカを見たような気がしてならなかったよ。
「受験に専念したいから」という理由で、一年後にまた会う約束をして音信不通になって。でも実際には彼女は予備校で勉強と恋愛を両立させていて、約束の一年後の連絡すらくれなかったワケで。

 ただリホさんにしてみれば、それらはすべて“結果論”なんだよね。
 地元を離れた時点では、彼女はホントに受験に専念するつもりでいて。
 そしてその一年間、黒沢だけでなく家族以外の誰とも、中学時代からの一番の親友とも連絡を取らずにいたのも事実でさ。
 で、進路が決まった後に約束の連絡をくれなかったのも、「大事な彼氏がちゃんといるのに、他の男と連絡を取るなんて良くない」って判断なんだろうね。

 バカだよお前は、「合格するまで連絡しない」とか言われたくらいで、何でハイソウデスカと引き下がるんだよ。ホントに好きだったらそれくらいで諦めないで、もっと粘って連絡先を強引にでも聞き出しておかなきゃダメだって。
 そんな風に言う人、きっとかなりいるだろうね。でもそこで強く出なかったことを間違いだったとは、黒沢にはどうしても思えないんだよ。

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 例の『モノクローム』で黒沢がどうにも納得できなかったのが、ズバリそこなんだよ。
 例のA子さんルートのラストで、A子さんが頑張ってスランプを脱して、もっと大きな世界に羽ばたいて行こうとする時に。彼女の意志を尊重してそのまま行かせるか、それとも「ダメだ、オレと一緒にいろ!」と迫っちゃうか……ってのね。

 あのさ、リホさんに「全寮制の予備校に行くから、受かるまで誰とも会わない」と言われた時、感情のまま「イヤだ! せっかく同じ東京に居るのに会えないなんて、絶対納得できない!!」って粘る方が、黒沢にとってもずっと楽だったんだよ。
 だって知り合いなど一人もいない街に行って暮らし始めるんだよ? 何年も前からの付き合いで気心も知れているリホさんに「会いたい、側に居てほしい!」って、心底思ったさ。

 なのにヘタレで素直にそう言えなかったとかじゃないんだよ。だって当時の黒沢って、「キミの為なら死んでもいい」なんて恥ずかしいコトまで、本当に好きな女の子にはマジで言えちゃってたからね。
「好きだから会って!」と言ってしまいたい気持ちをあえて我慢して、リホさんの意志と将来を優先させたんだよ。

 だってさ、現実に凄い秀才でも受験のエキスパートでもないただの大学生の黒沢に、「気持ちの問題じゃなく具体的に」何が出来たと思う?
 ただ会って側にいるだけでも……って、結局それは黒沢のエゴじゃん? あえて全寮制の予備校を選んで友達全員と縁を切ってまで、一分一秒も惜しんで勉強したいリホさんにとって、それって迷惑にしかならないと思うし。

 黒沢ってガキの頃から妙に醒めたヤツでさ、何かする時には、自分のキモチはとりあえず脇に置いておいて。そして「どうしたら結果を出せるか?」ってことを第一に考えて行動してきたんだ。
 だって黒沢は小さい頃に東京から地方に引っ越したせいで、育った町では「日本語はできるけど、地元の言葉を喋らない異邦人」だったし。
 そしてチビで病弱で、外で体を動かすより部屋で静かに本や図鑑とかを読んでる方が好きだったし。
 これでバカだったら、ただの「冴えない陰キャラの子」として目立たず地味に過ごせたんだろうけど。ただ異常なくらいの本好きだったおかげで、勉強もかなり出来ちゃいまして。それも教科書に載ってないことや先生が知らないことまで、サラッと言えちゃうようなタイプでさ。

 ハイ、絵に描いたようなイジメのターゲットだよね。
 さらに自分なりにどれだけ頑張っても、優等生で外面の良い姉と比べられて「出来損ないの弟」って言われ続けてさ。
 だから厨二病が最も重症だった頃にはね、「教師も同級生も親戚も姉も全部テキで、親も味方ではなく、たった一人で世の中すべてと戦ってる」って、マジで思ってたよ。

 そうやって周りの全部と戦った結果、デスカ? ハイ見事に全敗、ってとこ。そしてそういう子供時代を過ごした結果、「いくら正論を吐いて頑張っても、数の力の前ではボロ負け」って現実が、骨の髄まで染み込んでるんだよねえ。
 日本人が大好きな“人の思い”なんかじゃ、物事や現実は一ミリも動かないんだよ、現実にはね。
 岩をいくら必死に睨んでいても、それだけじゃ穴なんて開くワケないよね。現実に岩に穴を開けたきゃ、ドリルとかそれなりのモノを持って来なきゃダメだろコレ常識。

 そう、だから国を護るのに必要なのも武力と外交的な駆け引き(←汚い手段も含む)であって、自虐史観の左の人達が呪文みたいに言う「平和を願うキモチ」も、日本サイコーの右の人達が大好きな「大和魂」も、どちらも現実の前では正直ゴミみたいなモノって思ってる。

 自分は間違ってない、でも周りは全部テキで勝てる筈もない、けどぜってー屈服したくねー。
 勝つのはムリ、それはガキで厨二病の自分にも判ってた。けど勝てないまでも少なくとも負けないで集団から半独立した自分を保つ為に、黒沢が黒沢らしく生きる為に全力で闘ったよ。
 その為に黒沢がまずしたことは、自分の感情を凍結すること。そして客観的に戦況を眺めて、自分自身も将棋の駒の一つのように扱って、圧倒的に不利な中でも負けないように手段を選ばないで闘うの。

 まず黒沢は頭デッカチな博士クンだから、それを生かして口喧嘩では絶対に負けないようにして。
 幸い黒沢には、姉という天敵が居て下さったからね。外での人当たりの良さとは裏腹に、実は身内には毒舌と皮肉とあてこすりの名人なんですな、この姉上さまが。
 家ではその姉との口喧嘩が絶えなくて、時にはテキは姉&母の連合軍になることも珍しくなかったりしてさ。

 よく「女を殴る男なんてサイテー!」とか言われるけど、女って男よりずっと口が回るし毒のある言葉も吐けるからさ。その言葉の棘に心を抉られてキレかけたことのある人って、男には少なくないと思う。
 でも男は、その女の毒舌に傷つくことさえ許されないんだよね。男が女に何か酷いことを言うと「サイテー、オンナノコにそんなコト言うなんて!」って鬼畜扱いされる。けどその反対に女に酷いことを言われてどれだけ心を傷つけられても、「何よ男でショ!」って感じで、むしろ傷つく方が情けないみたいな言い方をされる
 うん、それが今の日本の男女平等wの現実。だから日本の女権論者って、腹の底では冷笑されてまともに相手にされないんだよね。

 でさ、黒沢は常日頃から姉&母の女二人と口論をして、特に姉の方にはさんざん嫌味や当てこすりを言われても、一度も手を上げないで、言葉だけで応戦してきたんだよ。年上の女二人にそれだけ鍛えられて(?)いて、同級生相手の口喧嘩なんかに負けるワケないじゃん。
 当然、言い負かした相手にはキレられたり恨まれたりするし、殴られそうになるとかもあったよ。けどね、そこでビビると後はナメられっ放しになっちゃうから、殴られたら殴り返さなきゃ絶対ダメだよ

 怖いとか殴られたら痛いとか勝てる筈ないとか、そーゆーのは関係ないんだよ。DQNのドレイ&クラスの皆の笑いものになりたくなければ、たとえ負けようが「やられたら絶対やり返すぞオレは!」って姿勢を見せるのが大事だから。
 喧嘩を避けられない時には、それこそ死にもの狂いで全力でやる。ただその時にはできるだけ大勢の人が居る場で、教師などが止めに入って来ざるを得ないように派手にやることも忘れずに。
 ほら、DQNの軍団にボコられる時って、体育館裏とかトイレとか人目に付かない場所に連れ出されてやられるじゃん。だからそんな場合には、連れ出されそうになったらもうその場(自分のクラスとか廊下とか)で揉めて騒ぎを起こしちゃうの。
 うん、学校の帰り道とかもさ、人気のない場所をうっかり一人で帰ったりしないように気をつけてもいたよ。

 日露戦争の時の日本の指導者たちって、ホントにもう知謀の限りを尽くしていたんだよね。日本の国力では勝てないということを、感情は抜きにして客観的な判断で(←ココが大事)ちゃんと判ってて。
 だから実はもう最初から「目指せ、判定勝ち」って腹で、そして日本が戦場である程度勝ったらケンカを止めに入ってくれるよう、アメリカとかにコッソリ外交使節(金子堅太郎)を送って交渉してたんだよね。そうそう、明石大佐って秘密工作員をヨーロッパに派遣して、ロシア国内の革命派に武器を送って、ロシア政府の足を引っ張ってたりもして。
 戦いは全力でやる、けれど陰ではしっかり自分の限界も認識して、喧嘩の仲裁役も頼んでたのが日露戦争なんだよね。で、そうした実力の差を認めた上での負けない為の工夫を一切しないで、「気合いだァ!」と精神論のみで突っ込んじゃったのがあの太平洋戦争、というワケ。

 小学校の時の同級生に、まあイジメっ子ってやつがいてさ。始末が悪いことにソイツは格闘技マニアで、休み時間とか放課後になると黒沢を捕まえては、覚えたいろんな“技”を試すワケ。
 もちろん合意の上での遊びなんかじゃね~よ~。黒沢はイヤだって何度も言ってるんだけどさ、聞く耳持たネェって感じで無理矢理“格闘戦”を仕掛けてくるんだよ。
 いや、しばらく適当に相手して勝たせてやれば満足するとか、そんな甘いもんじゃなくてさ。こっちが痛がろうが苦しがろうが、何度ギブアップしても“技”をかけ続けて黒沢を痛めつけるワケ。
 そんなに格闘技が好きならさ、同じ格闘技マニア同士でまともな“試合”をすればいいじゃんか。でもソイツは他の強いヤツとはやり合わないで、イヤがる黒沢にばかり“格闘技”を挑むんだよ。

 断言する。話の通じないケダモノみたいなヤツって、ボクたち同じ人間の中にも絶対にいるんだよ。
 良識派とかリベラルっていうのかな、いわゆる“良い人”たちって「人にはみな良心がある、本当に悪い人なんか誰もいないんだよ」とか言いたがるけどさ、人間の本性が善か悪かについて語るなら、まずその前に試しにちょっとググってごらん。
 

 綾瀬の女子高生コンクリート詰め殺人事件。
 市川の一家四人殺し。
 光市母子殺人事件。
 

 こうした事件の加害者のクソガキどもってさ、人の皮を被った悪魔でも化け物でもないんだよ。コイツらも間違いなく我が同胞で同じ人間(←基本的人権アリ)だから

 でも例の「本当に悪い人なんか誰もいないんだよ」って言いたがる“良いヒトたち”って、そういうクソガキを同じ人間にカウントしたがらないんだよね。現実にどんなヒドい事件が起きても、ただ「ヒドい、そんなコトする人がいるなんて信じられないッ」で終わり
 いや、こーゆーヒトたちって「信じられない」んじゃなくて「固く信じてる」んだよ。例の「人にはみな良心があって、本当に悪い人なんか誰もいない」っていう、ご自分の美しい人間観をね。「目の前で起きている現実より、自分の胸の中にある理想の方が大事」っていう、どうにも話の通じない精神論者たちなんだよ。

 この種の“良いヒトたち”って、自分の価値観に合わない現実は頑として認めないんだよ。だから受け入れたくない事件が実際に起きると、「信じられないッ!」って切り捨てて拒むことで、そのお花畑脳の中のキレイな幻想を固く守り続けるんだよね。
 でも黒沢は、「性根の曲がった悪いヤツは間違いなく存在する」って思ってるから。でなければ、なぜ子供の頃に自分がイジメられたか理解できないし。

 チビで見るからに弱そうなヤツに大好きな格闘技の技をかけて、痛がって降参しても許さないで苦しめるのが楽しい。ガキの頃からそういう感覚でいたワルが、間違いなく存在するんだよ。
 この世の中でまずモノをいうのは、正義でも正論でもなく力だよ。だってそうでなければ、黒沢が過去にイジメられたことも、今もあちこちの学校や職場でイジメが絶えない現実も説明できないし。
 イジメに遭って泣いてても、現実には正義の味方なんて現れないし、誰も助けてなんかくれないからね。やられて悔しければ、結局は自分でやり返すしかないワケ。

 正義とかの精神論と根性だけじゃ、戦争だけでなくガキ同士のケンカや虐めにも勝てねーんだよ。その現実を、実際にケンカをして殴られた体の痛みでよぉ~くわかってたからさ、気合いや気力で勝てるみたいな精神論は今でも死ぬほど嫌いだよ。
 イジメられるのにいい加減ウンザリして、黒沢は学校で時々キレるようになってさ。だって自分は味方ナシの単体で戦闘力も5もないのに、敵は戦闘力10とか20以上で、しかもパーティー組んで攻撃して来るんだよ? それでもあえて戦うとしたら、ブチキレるくらいに暴れなきゃ、まるで歯が立たないワケで。
 それにそのキレっぷりに驚いてた相手が本気でかかって来たら、やはり地力の差というものが出てきてしまうのだよ。まっ、言ってみればパールハーバーの奇襲の後、アメリカにマジ激怒されて反撃されるような感じね。

 だからさ、キレてケンカするにも、その場所と時期も考えなきゃなんないんだよ。例の「騒ぎを聞いて、教師なり警官なり誰かが止めに来るような状況」ってやつね。
 うん、そのキレる時にもただカッとしてキレてたんじゃなくて、実はある程度計算もしてキレてたワケよ。日露戦争の日本が、ブチ切れて無茶な戦を仕掛けたように見せながら、実はイロイロ裏工作してたようにね。

 と言っても、「冷静に、演技でキレているフリをしていた」というのとは、少し違うんだけれど。
 本当はケンカなんかすごく嫌だし、身を守るためにやむを得ず、したくもないケンカをあえてするわけで、その時には手を出してきた相手にすごくハラを立てていたのは事実。けど頭の半分か三分の一くらいはすごく醒めていて、キレる場所やタイミングや限度や引き時とかを、そりゃもうパワーブースト時のデュアルコアのCPUみたいに脳をフル稼働させていろいろ高速演算してもいたんだよ。

 黒沢は中学生時代には、マジで「怒らせるとキレて狂う」って言われててさ。
 ちょっと考えてみて、一見チビで弱そうだけど「キレるとマジキチ」みたいなヤツが身近にいたら、「面倒だから、手を出すのは止めて放置しとこう」って思うでしょ? 本気でやり合えば、もちろん勝てると思っていてもね。
 うん、ズバリそれが狙い。

 って言うかさ、そうでもしなければ生き延びられなかったんだよ、黒沢は。
 ①そのまま耐えて、DQNどものドレイにされてイジメられ続ける。
 ②既知外と思われてもキレて暴れて、全力でイジメに反撃する。
 選択肢はその二つしかなくて、黒沢の価値観では、選ぶべき道は②しか無かったんだよね。
 だってさ、ドレイの道を選んだところで、結局殴られたり金品を巻き上げられたりするワケでさ。どちらにしても痛い目に遭うなら、「少しでも反撃して殴られる方がまだマシ」って思うじゃん?

 そーそー、ここで絶対忘れちゃいけないポイントだけれど、キレる時にも手は必ず相手に先に出させること例えどんな理由があろうとも、先に手を出した方が悪者になるのが今の世のルールだからね。
 実は黒沢も一度だけその原則を破ってしまって、後で痛い目に遭った事がありまして……。だから繰り返して言うけれど、喧嘩は最初の一発は相手に殴らせなきゃダメだよ。

 もしDQNに逆らったら、すんごくボコられるかも知れないよね。けど、それで怪我でもしたらむしろラッキーと言うか、不利になるのは相手の方だから。だってすぐ病院に行って診断書を取って、ケーサツに被害届けを出すとかすれば……ね?
 そうやってコトを大きくすると、相手の親だけでなく学校側も「ま、ここはひとつ穏便に」ってなりがちだけど、そこは「聞く耳なーし!」ってヤツで徹底的にやってやんの。
 生き延びるために本気でやるケンカってのはさ、ただ拳だけでなく教育委員会も警察も法律も、使えるモノは全部フルに使ってやるものなんよ。例の、日露戦争の時の日本と同じでね。

 でもそれを言うと、卑怯だの汚いだのとか言う人達が必ずいるよね。でも黒沢は、そういう人達に言いたいよ、「アンタら、力が無くて虐げられる者の痛みを知ってんのか?」って。
 って言うか、弱い者は手段なんか選んでいたら勝てません、って。正義だの何だのって、どうせ上っ面だけの建前なのが現実だし。

 ま、今なら③不登校って選択肢もあるよね。けど黒沢の子供の頃って、「学校は何があっても行くべきもの」って雰囲気だったんだよ。
 DQNのヤンチャは「若い時にはありがちなこと」と大目に見られて許されて、でも不登校は大問題で許されない……って感じ。マジでそういう空気だったんだよ、リーゼントのツッパリがリアルに存在して、校内暴力とか当たり前に起きていた頃にはさ。
 イジメるDQNより、イジメられて不登校になっちゃう子の方がより“問題のある子”扱いされちゃうような、そんな時代が本当にあったんだよ。だから不登校って選択肢は当時は殆ど考えられなくて、学校からも親からも世間からも許されなくてね。
 戦況は圧倒的に不利、なのに撤退して自宅での籠城戦は許されない。そんな状況の中で、黒沢はたった一人で戦いマシタよ。足りない腕力と体力を、気力とワル知恵を振り絞ってね。

 喧嘩の時に「正々堂々と」とか寝言を言うヤツがよくいるけどさ、現実の喧嘩は格闘技とかのスポーツとは違うんだってば。だってちゃんと決まったルールも無ければ、体格によるクラス分けも無いんだよ?
 中高年と若いDQN達によくいる、「若い頃は誰でもヤンチャするもので、喧嘩は男の通過儀礼」とか思ってるアナタ。理屈の通じないDQNどもに一方的に仕掛けられる“喧嘩”のどこがフェアがあるんだか、黒沢にもよく解るように教えて貰いたいものだね。
 しかも格闘技は負けたらただ悔しいだけだけれど、喧嘩の場合は違うでしょ。負けたらこちらは悪くないのにゴメンナサイと謝って、「もう逆らわないから許して下サイ」と服従を誓わなきゃならないワケ。で、以後はずっとその憎い敵のパシリでしょ?
 だから黒沢のような体力のないチビにとっては、喧嘩は大袈裟でなく生きるか死ぬかの闘いなんだよ。汚いだのキレイだのと、手段なんかいちいち選んでられるか、っての。

 うん、そりゃ殴られて血を出してもまだ向かって行くだけの闘志はもちろん必要だよ。でも闘志と根性だけじゃ現実の喧嘩には勝てないし、複数のDQNに気合いで真っ直ぐ向かって行っても、ただノされて玉砕するだけだってば。
「正義は必ず勝つ!」
 断言する、そんなの大嘘だしデタラメもいいところ
だね。道理も正義も、現実の圧倒的な暴力の前には何の意味もないから。
 そのことを、黒沢は何度も殴られて身をもって味わってるワケでさ。だから「仲間の強い思いと皆の願いの力で勝利して」みたいな精神論や綺麗事を聞くと、それだけで吐き気がしてくるよ。

 第二次世界大戦で連合国が枢軸国に勝利したのは、正義が連合国の方にあったからではなく、ただ国力と戦力が枢軸国より上回っていたからでさ
 だってもし「連合国=正義の味方」だとしたら、スターリンのソ連が何故そちらの方にいるのかね?
 スターリンって、実は殺した人の数ではヒトラーよりずっと上なんだよね。この二人の独裁者の違いは、「ヒトラーはよその国の人を多く殺して、スターリンは主に自国の国民を殺した」ってこと。うん、マジでただそれだけのことなんだ。

 でもチャーチルは「ヒトラーに勝つ為には、悪魔とも手を組む」と言ってソ連を仲間にして、ドイツ軍に苦戦していたソ連をうんと助けたんだよね。
 だってソ連を味方にしなければ、ヒトラーのドイツにはとても勝てなかったから。だから言葉通りに“赤い悪魔”と手を組んで、目の前の“鉤十字の悪魔”と戦ったワケ。そう、これがセイギの現実ってやつ。
 アメリカだって、日本に無差別爆撃を繰り返すわ原爆は落とすわで、数え切れないほどの民間人や女子供を殺しているしね。

 こうした実例をいくら挙げてもさ、必ずいるんだよね、「最後には正しいものが必ず勝つと信じたい」とか「人には良心が必ずある筈と思いたい」とか言い張る人達が。
 でもキミが何を信じたかろうがどう思いたかろうが、力は正義より強いのが間違いなく現実だから。
 日本でも「話せばわかる!」と言った首相が、青年将校に「問答無用!」で射殺されてるでしょ。うん、言うまでもなく五・一五事件の犬飼毅首相ね。
 言葉は、銃弾には勝てなかった。キミの思想信条はどうあれ、これは動かしようもない事実なんだよ。「こうであってほしい」というキミの願望は、「こうである」という世の中の現実とはまるで別物なんだよね。

 理想論をいくら声高に叫ぼうが、北朝鮮のように悪の栄えてる国は現に存在しているし。そしてそれと同じように、道理の通じないDQNも間違いなく身近に存在しているワケで。
 そんな現実世界の中ではさ、力の伴わない正義や正論なんかクソの役にも立たないんだよ。

 例えば日本の戦争責任についても、議論はいろいろあるけどさ。「侵略戦争を始めてしまってスミマセン」みたいな、ネトウヨに叩かれそうな道義の話は、とりあえず脇に置いておいて。
 実はあの戦争で黒沢が何より腹立たしいのは、侵略戦争はイケナイとかの道義論ではなく、「勝てるだけの戦力も策もないまま、神懸かりの精神論と根性論で無茶な戦争をおっ始めたこと」なんだよ。

 幕内秀夫という管理栄養士さんが、著書の中でこんな事を書いていてさ。

実践できない理想論は害にしかならない


 ……心の底から、本当にその通りだと思うよ。あの先の大戦で、その“実践できない理想論”で日本はどれだけ多くの自国民を死なせたよ?
 でも今の日本は民主主義で、バカでも既知外でも一人一票だからさ、選挙の結果もたいてい「モノをよく考えないで、気分や空気で動く人」や、例の「知性の薄いコーフンしやすい熱血漢」によって決められちゃうんだよね。
 で、後になって「ダマされたー!」とワメいて、信じて持ち上げたおバカな自分の責任は棚に上げて、指導者だけのせいにするんだよねぇ……。

 いやー、黒沢って厨二病を患っていた頃には、自分では「闇に覆われかけたセカイで、ただ一人強大な悪と闘う勇者」のつもりだったんだけどね。でもいつの間にか、戦士から魔導師(←しかも黒系)にすっかりジョブチェンジしちゃってたよ。
 HPが低い分MPは高めで、回避能力と(悪)賢さのポイントも高く、必殺技は「敵の単体および集団の精神にダメージを与える毒のコトバ」って、ホント黒魔導師のキャラだよな。それも味方のパーティーの一員って言うより、魔王の腹心とか敵の中ボスなんかに居そうだよね。

 だから高校生になった頃には、小学校の頃からの知人に「自分の為にならない人間は、容赦なく切り捨てるヤツ」なんて言われる人間になってたし。
 黒沢はそれにただ苦笑いしただけで、否定も肯定もしなかったよ。
 うん、当たらずも遠からず……って感じ。言っても相手を余計に怒らせるだけだろうから黙ってたけど、「世の中の人が黒沢に優しくないのに、何で黒沢が世の中の人に優しくしてあげなきゃなんないの?」ってマジで思ってたし。

 そんな感じで黒沢って理想や感情じゃなく、冷静に現実を見て頭でモノを考えて動くことを心がけているからさ、「会いたい→だから(相手に拒まれても)会いに行く」という発想が無いんだよ。
 例の『モノクローム』でも、あるヒロインのストーリーで「オレの側に居ろ」と言わずに彼女が望む広い世界に送り出して、見事にバッドエンドを引き当ててしまったようなヤツだからね。
 だからリホさんに「受験に専念するから、誰にも会わない」と言われた時も、「どうしてもと粘って連絡先を聞き出す」という選択肢は、黒沢には考えられなかったんだよね。

 と言うとさ、「それはオマエに、リホさんを想う気持ちが足りなかったからだ。もし本当に好きだったら、何としても会いたいと思う筈」って責める人が必ず出て来るんだよね。うん、そーゆー「自分のキモチに正直なのがイチバン!」って人たちには、相手の為を考えて会わずに耐える辛さなんて、まるで理解できないんだろうね。
 例えば小説でも雑誌の人生相談でも2chの不倫関係のスレッドでも、「既婚者でも誰かに恋をしてしまうのは仕方のないことで、不倫を責める人は本当の恋をしたことが無い、人の気持ちが解らない人なんだ」みたいに言う人が少なくないよね。本当に日本人って気持ちのまま突っ走っちゃうのが好きで、気持ちを抑えて耐える人の方がバカにされるんだから。
 で、黒沢はリホさんの「また一年後に」って約束を信じてただ待って、『モノクローム』と同じようにバッドエンドを引き当ててしまいましたとさ。

 結果としてはさ、現実は『モノクローム』の通りで「会いたい」って自分のキモチを優先させていれば、リホさんとのことも違う結果になっていたかも知れないね。
 それに当時の黒沢は、「約束は守られる」と固く信じていたから。人の心、特に女の子の気持ちがどれだけ変わりやすいかを、まるで解って無かったんだ。
 でも黒沢は、リホさんの意志と気持ちを優先したその時の決断を「間違っていた」とは、今でも思っていないんだ。って言うか、今でも「感情より理性優先」って行動原理で生きているからね。

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