空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

バランタイン12年

 諸事情があって、東京にはたまにしか行けないのだが。
 その数年前に東京に行った時、帰る直前に妙にウイスキーが飲みたくなった。
 で、乗る高速バスの時間も迫っていたので、東京駅の売店でウイスキーの小瓶を買った。
 50ml入りのミニチュアボトルなのに、とても高かった。
 何年も前の事だから正確な値段は覚えていないが、一本(繰り返すが50ml)で千円近くした。
 それが、バランタイン12年ことブルーラベルとの初めての出逢いだった。

 何しろ疲れていたし、乗り心地も良いとは言えない高速バスに揺られながらだから、ゆっくり、じっくり味わうゆとりも無かったが。
 それでもとても美味しく飲みやすくて、50mlの小瓶などすぐに飲み干してしまった。

 で、そのバランタイン12年を、700ml入りの通常の瓶を買ってじっくり飲み直してみた。

バランタイン12年P1110138

 キャップを開けると、甘く豊かな、そして僅かにスモーキーな香りが漂う。
 口に含むと、滑らかで優しい味わい。
 甘くクリーミーで、舌の上で転がすと花の蜜を吸っているような上品な甘さを感じる。
 そしてそのハニーな甘さは、次第に清涼感のある心地良いスパイシーさに変わる。
 飲み下した後の余韻は、それなりに長く続く。アフターフレーバーは品の良い甘さと、そして僅かなスモーキーさだ。
 飲んでいる間はスモーキーさを感じないのだが、飲み干した後の息にスモーキー香が絶妙な残り香として残る。

 男性で、香水の匂いをプンプンさせた女性が好きな人はそう多くないだろう。
 実は筆者も、化粧の濃い香水臭い女性は好まない。
 しかし近付いても全く化粧臭くなく、なのに通り過ぎた瞬間に良い香りがほのかに残る女性にはドキッとして、思わず振り向いてしまう。
 このバランタイン12年のスモーキー香は、ちょうどそんな感じの魅惑的なスモーキーさだ。

 このバランタイン12年は、トワイスアップでもそれなりに飲める。甘さがより引き立つし、アルコールの刺激も全くなくなり、まろやかでとても飲みやすくなる。
 が、トワイスアップにすると同時にビターさも出てくる感じだ。そして味も香りも薄くなり、アフターフレーバーも長く続かなくなる。
 個人的には、ストレートで飲むのが一番ではないかと思う。その方が、味も香りもずっとギュッと凝縮された感じで魅力的だ。

 シーバスリーガル12年ジョニーウォーカーの黒とも飲み比べてみたが、このバランタイン12年が味も香りも最も繊細な感じだ。
 シーバスリーガルの方がよりフルーティーで香りが華やかだが、「匂いがキツ過ぎ」と言う人もいる。
 確かにシーバスリーガルは「色っぽい大人の女性」と言う感じで、筆者も含めて好きな人は好きになるのだが、清楚で控え目な女性が好みの方には、少々色気過剰で派手過ぎに思えるだろう。

 そう、バランタイン12年は清楚で控え目な美人そのものなのだ。
 例えばジョニ黒も良い味と香りだが、ピート香がはっきりしていて、いかにも「スコッチです!」という自己主張がある。
 好きな人は大好きになるのだが、スモーキーさが苦手な人はあまり好きになれないかも知れない。
 甘さもバランタイン12年はハニーで上品なのだが、ジョニ黒はしっかりとした甘さを感じる。

 バランタイン12年は、バランスが本当に良く取れている優しいスコッチだ。
 初めは柔らかに甘く、そしてビターさやスパイシーさも続いて適度に出てくる。そして最後のアフターフレーバーにほのかにスモーキー香が残る。
 スコッチのいろいろな味わいが、最良のバランスの上にすべて備えられているという感じだ。

 筆者は10年以上貯蔵したシングルモルトと12年以上貯蔵したブレンデッドに不味いものはほぼ無いと思っている。
 そこにあるのは、まあ大体は個人的な好き嫌いであろう。
 で、シーバスリーガル12年とジョニ黒については、「好き嫌いが、それなりに分かれるだろうな」と思った。
 事実、筆者の知人にもシーバスリーガルの長く続く濃い香りを「しつこい、好きじゃない」と言った人がいた。
 そしてジョニ黒についても、その骨太で男性的な味わいをキツいと感じる人もいるだろう。
 その点で、このバランタイン12年については「嫌いとか苦手だとか言う人は、まずいないだろうな」と感じた。

 筆者自身は、シーバスリーガル12年もジョニ黒も大好きだし、喜んで飲むが。
 しかしもし他人に12年モノのブレンデッド・ウイスキーを贈るとしたら、筆者なら間違いなくこのバランタイン12年を選ぶ。

 氷で冷やすと香りが弱くなるし、バランタイン12年は繊細だからロックで飲む気にはなれず、またトワイスアップですら薄く感じたので、ハイボールも試してみることなく、筆者はひたすらストレートでこれを飲んでいる。
 滑らかで優しい味のウイスキーなので、チェイサーも少ししか要らず、ストレートで気持ち良く飲めてしまう。
 しかし強いクセも無くバランスも良く取れているので、日本人が大好きなハイボールにしたらグイグイ飲め過ぎてしまうのではないだろうか。

 結論としては、ストレートで気持ち良く飲める、バランスの取れたとても良いスコッチだ。
 ただ一つ文句を付けるとしたら、バランタイン・ファイネストとの質の差だ。
 ジョニーウォーカーの場合、赤と黒には味や香りに似通った部分がはっきりあって、ジョニ赤は「ジョニ黒の廉価版」という感じが強くある。
 しかしバランタイン・ファイネストには、12年の弟分と言えるような似通った部分があまり感じられないのだ。

 いや、バランタイン・ファイネストも、スタンダード・スコッチとしてはかなり良く出来たウイスキーだ。
 しかし一度12年をしっかり味わって飲んでしまうと、「ファイネストはもう飲まなくても良いかな、12年があれば充分だし」という気持ちになってしまうのだ。
 ジョニ赤には、ジョニ黒の血を引いた廉価版の弟分という存在価値があるのだが、バランタイン・ファイネストはその“12年の弟分としての血”が少し薄いように感じられる。

 そう言えば、ディスカウント系の大型酒店では、バランタイン・ファイネストはジョニ赤など他のスタンダード・スコッチより少し安い値段で売られていることが少なくない。
 少しでも安くする為に味を落とすより、他のスタンダード・スコッチと同じか少し高いくらいの値段にしてでも味を良くした方が、結局はバランタインの為になると思うのだが、どうだろうか。

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インドの青鬼の虜になる

 まず初めにお断りしておくが、筆者は酒は味と香りを堪能しつつゆっくり飲みたい種類の人間である。
 だから酒をろくに味わいもせず、一気にゴクゴク飲む事は好かない。
 それゆえ、日本で人気のハイボールもどうも好きになれない。
 ビールも日本流の「キンキンに冷やして喉越しで、ゴクゴク、プハーッ!」という飲み方には馴染めず、コクのある濃いビールを、10~13℃の(日本の感覚からすれば)ややぬるいくらいの温度で、ゆっくり、じっくり飲む事を愛している。

 それは蒸し暑くて喉がカラカラに渇いている時には、ビール類を日本流に喉越しで一気に飲む事もありマス。
 しかしその場合にも、飲むならば軽くて嫌味の無い上に廉価な新ジャンル酒に限っている。
 筆者は貧乏性なのだろう。
 350mlで二百円以上もする本物のビールを、ろくに味わいもせず喉越しで一気飲みする気には、どうしてもなれないのだ。
 暑い時に、ただ喉の渇きを癒す為に飲むなら、よく冷えた麦茶か炭酸水で充分ではないか。
 そしてその方が、コスト的にもずっと安くつく。

 そういう嗜好を持っているせいか、筆者は日本の大手メーカーが大量生産している、喉越し重視のピルスナータイプのビール類が嫌いだ。
 繰り返し言うが、これは筆者個人の好みの問題だ。
 その独断であえて言わせて貰えば、日本の大手メーカーの糖質副原料入りのビールは、筆者にとっては「不味くてどうしようもないモノ」でしかない。
 だから先週も、日本ではよく売れているというキリンの淡麗についてけなすような文章を書いた。

 だが職場の宴会などでは、まず間違いなくその種の副原料をたっぷり入れた喉越し重視の不味いヤツが、最初の乾杯の為の一杯として出て来る。
 大勢で飲みに行った時の、例の「とりあえず、ビール」というアレだ。
 そんな時には、最初の一杯には我慢して形だけ口をつけるものの、それ以上飲む気にはどうしてもなれない。

 職場の付き合いでの宴会などで、大手メーカーの麦芽をあえて減らして米やらコーンやらスターチやらを混ぜ込んだ、旨味が薄くてただ苦いだけの喉越し系のものを“ビール”と信じ込んでいた筆者の目を覚まさせてくれたのは、麦芽とホップだけで造ったドイツの本物のビールや、日本の個性あるクラフトビールとの出合いだった。
 そうした薫り高くコクのあるビールを、キンキンに冷やすのでなく適度にぬるくして、喉越しでなくゆっくりじっくり味わいながら飲む事を覚えて、筆者はビールを心から「旨い!」と思えるようになった。

 で、日本のクラフトビールの中では、筆者は軽井沢のヤッホーブルーイングの製品をこよなく愛している。
 主力商品のよなよなエールはもちろん、水曜日のネコ東京ブラックも大好きだし、そして限定商品の“僕ビール、君ビール”もとても美味しかった。
 ただ筆者は、インドの青鬼という製品だけはずっと敬遠してきた。
 何しろ缶の裏面の説明に、「驚愕の苦味」と書いてある。
 さらに「アルコール度が高く、ホップをふんだんに使った」ともあるし、店のPOPにも「くせになる強烈な苦さ」とも書いてある。
 そこまで「苦い、苦い」と書いてあるのを見て、つい長いこと手を出さずに来た。

インドの青鬼P1110095

 が、その驚愕の苦味というのが、どれほどのものか知りたい気持ちが湧いてきて、怖いもの見たさに似た気持ちで、つい一本買ってみてしまった。

 缶のプルタブを開けると、まずホップの強い香りが漂う。
 しかしその香りは決して不快ではなく、むしろ爽やかさを感じるくらいだ。
 グラスに口をつけると、確かに苦い!
 しかし決して嫌な苦味ではなく、クセになりそうな心地良い苦味だ。

 注意しておくが、このビール、日本流にキンキンに冷やして喉越しでゴクゴク飲むと、ただ強烈に苦いだけだ。
 コレを日本流に喉越しで一缶を一気に飲ませると、殆ど罰ゲーム用のシロモノになる。
 しかし冷蔵庫から出して缶のまま常温で10分ほど放置し、程良くぬるく(10~13℃)なってからグラスに注ぎ、ゆっくり、じっくり味わいながら飲むと、苦さと共にホップの香りとハーブ感ある爽やかさを、長く続く余韻と共に充分に味わうことができる

 このインドの青鬼は、缶の裏面に「驚愕の苦味と深いコク」と書いてあるが、確かにただ苦いだけでなくコクがあり飲みごたえ充分だ。
 そして苦さは強烈だが、その底にほのかな甘さすらある。
 驚愕の苦味と言うが、苦さに驚くのは最初だけで、慣れてしまえばただ心地良いだけになる。
 缶の裏面に「飲む者を虜にします」とあるが、確かにこれはクセになる味と香りだ。
 ホップの味と香りがとても心地良く美味しく、後味もとても良い。良質な苦味で、口の中がサッパリする。
 確かに苦いが、これは本当に心地良い苦味だ。

 苦いという宣伝にビビっていた筆者だが。
 しかし考えてみれば筆者はギネスのビールも好きで、それもギネスのただの生ビールより、エクストラスタウトのギネスの方がずっと好きだった。
 そのかなり苦い筈のギネス・エクストラスタウトが好きなのだから、インドの青鬼も好きになれて当然だったのだ。
 そのギネス・エクストラスタウト以上に、筆者はこのインドの青鬼の方が好きかも知れない。

 ギネスのようなスタウトビールの苦さは、主にローストされた麦芽の香ばしい苦味だが。
 しかしこのインドの青鬼の苦さは、ホップによるハープ感のある爽やかな苦味だ。
 このインドの青鬼は、インドへの長い過酷な輸送に耐えられるようホップを多く使い、アルコール度数も高めて造られたインディア・ペールエール(IPA)という種類のビールだ。
 このスタウトビールの苦さとは全く違う、強いが爽やかでサッパリした苦味と余韻は、ビールをゆっくりじっくり味わって飲むことを知っているビール好きをまさに虜にして、2本、3本と続けて飲みたくさせてしまう。
 インドの青鬼は、ホップの味と香りの素晴らしさを堪能し尽くせる逸品と言える。

 度数は7%と、普通のビールよりやや高い。
 しかし飲んでいる時にはそのアルコールの強さやキツさは殆ど感じず、飲み終えてから良いが回ってくる感じだから、そこは要注意だ。
 ホップの爽やかな味と香りの虜になって、つい飲み過ぎてしまわないように気をつけたい。

 ホップの味や質を売り文句にしているビールは、日本の大手メーカーのビールにも幾つもある。
 ただそのすべてが旨いわけではなく、「ただちょっと苦いだけかな」という程度で、味に深みやコクが欠けるものもある。
 いくらホップを売りにしていても、日本の大手メーカーのピルスナータイプのビールは、「やはり喉越しで飲む人達の為のものだな」と思わされるものばかりだ。
 そんな中でインドの青鬼は、ホップも間違いなく上等な物を使っている上に、エールビールの味わい深さも兼ね備えた本当に旨いヒールだと断言できる。

“魔の味”を知ってしまった
熱狂的ビールファンの為のビールです。


 缶の裏面には、そう書いてあるが。
 筆者もその“魔の味”の虜になってしまい、すぐにまた追加のインドの青鬼を買いに酒屋に走ってしまった。
 苦めのビールが苦手でなく、ホップの魅力をとことん味わいたい方は、是非このインドの青鬼を飲んでみてほしい。
 驚愕の苦味という売り文句に尻込みして飲まずにいると、このビールの旨さとホップの真の魅力を知らずに後悔することになりマスよ!

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キリン淡麗

 数年後に、ビール類の税が統一される。
 で、ビールが売れているアサヒとサッポロはそれを歓迎し、新ジャンル酒の金麦が売れているサントリーと発泡酒の淡麗が売れているキリンはそうでもないらしい事は、以前にも書いた。

 実は筆者は、発泡酒というものに殆ど興味が持てず、飲もうとも思えなかった。
 味ならば麦芽の使用率が高い本物のビールの方が良いに決まっているし、安さなら新ジャンル酒の方に分があるからだ。
 が、キリンでコレが売れていると言うならば、一度飲んでみねばなるまいと思って買ってみた。

キリン淡麗P1110153

 グラスに注いでみたが、香りは取り立てて言うべきものは無い。良くも悪くもなく地味、と言ったところか。
 グラスに口をつけてみると、飲みやすくグイグイいける。
 しかし“淡麗”と言うより、味にコクと深みがないと言った感じだ。
 そのくせビールの苦味だけでなく、渋味とイヤ味がある。
 飲んだ後に舌に変な苦味も残って、後味がよろしくない。

 キンキンに冷やして、喉越しで一気にゴクゴク飲むなら、それなりに飲めてしまう。
 しかしぬるくなればなる程、イヤ味が強く前面に出て来て不味くなる。

 この発泡酒、単に苦いだけでなく、麦芽を減らして糖質副原料を多く使ったビール類にありがちな、何とも言えないイヤ味がある。
 最近少しずつ飲まれるようになってきた、筆者も好きなエール系のクラフトビールとは真逆で、キリンの淡麗は、ゆっくりじっくり味わって飲めば飲むほど、変な不味さとイヤ味を強く感じる
 かと言って、キンキンに冷やして喉越しで一気に飲むなら、幾つかの新ジャンル酒の方が安い上にイヤ味も無くて飲みやすいくらいだ。
 はっきり言うが、期間限定販売だったサッポロの麦とホップ赤など、新ジャンル酒だったがキリン淡麗より間違いなく旨かった。

 ビールは基本的にキンキンに冷やさず、ゆっくりじっくり味わって飲みたい筆者としては、このキリン淡麗は不味いとしか言いようのない発泡酒だった。
 で、何故こんなモノが日本で売れているのが、筆者なりに考えてみたのだが。
 思うに、ゆっくり味わって飲むエール系のビールの旨さを知らず、「ビールは苦いもので、キンキンに冷やして喉越しで飲むべき」と信じている、昔ながらの日本のビール好きが、このキリンの淡麗を好んで飲んでいるのではないだろうか。
 うん、「ビールはほろ苦く、それをキンキンに冷やして喉越しで飲むもの」と思っている人達には、コレが美味しいのだろう。

 だがただ苦いだけでなく、コクがあり、ほのかな甘味やフルーティーな香りのある豊かな味のビールを、ゆっくり味わいながら飲む事を覚えてしまうと、麦芽を減らして副原料で補った痩せた味のビール類を喉越しで一気飲みする行為が、何とも馬鹿らしく思えてくる。
 このキリン淡麗は、本物のビールより数十円安いかも知れないが。
 しかし他の新ジャンル酒より数十円高いのもまた事実だ。
 こんなモノをキンキンに冷やして喉越しで一気に飲むなら、新ジャンル酒で出来の良いものを飲んだ方がマシだし、お金も無駄に使わなくて済むと思うのだが、日本では何故かこのキリン淡麗が売れている。

 キンキンに冷やして喉越しで飲むには悪くないが、ただ「飲みやすい」というだけで旨味を感じない上に後味が良くない。
 そしてゆっくりじっくり味わって飲めば飲むほど、不味くなる。
 個人的には、味わって飲むビールとは、まさに対極にあると思うのだが。
 しかし昔ながらの日本のビールを飲み慣れた人達には、ほろ苦いが(コクが無いゆえに)軽めで、喉越しでゴクゴク飲めてしまうこれが「旨い」のだろう。

 筆者であれば、キリンのビール類を飲むならもう少しお金を出してでも一番搾りを飲む。
 この淡麗と違い、一番搾りの方がずっと旨い上にイヤ味も無い。値段の差以上に味の差があると、筆者個人は思う。
 だから数年後のビール類の税額の統一に向けて、キリンは一番搾りなど本物のビールの製造に力を注ぎ、淡麗のような発泡酒など造るのはもう止めても良いのではないかと思ってしまう。

 値段も新ジャンル酒より高く、そして味も感心できなかった、このキリン淡麗だが。
 飲み終えたグラスに鼻を寄せて残り香を嗅いでみると、麦の甘さとホップの香りを確かに感じて意外に悪くないのだ。
 残り香は悪くないのに、じっくり味わって飲むとなぜ不味く、そして舌に残る後味も良くないのか、それが本当に謎だ。

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ウィンチェスターというスタンダード・スコッチ

 行きつけの酒屋でウィンチェスターというスタンダード・スコッチを初めて見て、まず「西部劇のライフル銃のような名前だな」と思ってしまった。
 瓶に貼られているラベルも、どこか安っぽい印象がある。
 だが値段が手頃(税込みで1004円)だったので、面白半分でつい買ってみてしまった。

ウインチェスターP1110103

 キャップを開けてグラスに注ぐと色は淡い金色で、花のような柔らかな香りが広がる。
 この価格帯のウイスキーにしては、アルコール臭は少なめだ。
 口に含むと澄んだ味わいに、ほのかな甘み。
 なかなか出来の良いライトタイプのスタンダード・スコッチで、味わいも軽くアフターフレーバーも花のように柔らかでそう長くは続かない。
 飲んだ後に、僅かにスモーキーさも感じる。

 千円ちょっとのスタンダード・スコッチとしては飲みやすいし、日本では殆ど名を知られていないのにもかかわらず、出来はなかなか良いと思う。
 ただ二千円クラスのウイスキー(ジョニ黒やシーバスリーガル等)と比べてしまうと、アルコールのキツさはあるし、香りや味の豊かさに物足りなさを感じてしまう。
 出来は悪くないが、あくまでも「スタンダード・スコッチとしては」という範囲内であって、過度の期待は禁物である。

 これをトワイスアップにするとアルコールの刺激がとても少なくなり、飲みやすくなる。
 しかし同時に微妙な香りが減り、味も水っぽくなる。
 だから1:2の水割りにするともっと飲みやすくなるが、同時にもっと軽く水っぽくなる。

 店はこのウィンチェスターについて、POPで濃いめのハイボールを勧めていた。
 その通りに濃いめのハイボールにしてみると、持ち味である花のような香りが炭酸の力で沸き立ち、とても飲みやすく嫌みもない。

 ただ元々ライトで繊細な味わいな為、ハイボールだけでなく水割りでも濃いめにしないと薄く水っぽくなりがちだ。
 だから水割りでもハイボールでも、割るなら薄くなり過ぎないように、濃いめにすべきだ。

 確かに店のPOPの通り、濃いめのハイボールにするとストレートより飲みやすく、そして炭酸の力で水割りより香りも立つ。
 ただ水割りでもハイボールでも、このウィンチェスターは何かで割ると本来のほのかな甘みが消え、代わりにビターさが出て来る。
 だからこのウイスキーの甘みを味わうには、ストレートで飲むしかない。

 このウィンチェスターは、ストレートで飲むべきか、それとも何かで濃いめに割って飲むべきか。
 そこはなかなか難しい。
 気楽に飲むなら、やはり濃いめのハイボールだろう。
 しかし味と香りをじっくり楽しむなら、やはりストレートが良い。
 ただリーズナブルな価格のスタンダード・スコッチだけに、アルコールの刺激もそれなりにある。
 体調によっては、そのアルコールの刺激がキツく飲みづらく感じる時も少なくない。
 だからこのウィンチェスターの飲み方は、食事をして談笑しながら気楽に飲みたい時には濃いめのハイボールが、元気な時にじっくり味わいたい時にはストレートが合っていると思う。

 このウィンチェスターを、ジョニーウォーカーの赤やリニューアル前のホワイトホースとも飲み比べてみたが。
 ウィンチェスターもなかなか良く出来たスタンダード・スコッチだとは思うが、ジョニ赤の方が濃く甘くスモーキーでかつ飲みやすく、アルコールの刺激も少なかった。

 個人的には、迷わずジョニ赤に軍配を上げるが。
 しかし花のような香りのライトなウイスキーを好み、スモーキー香が苦手な方は、「ウィンチェスターの方が好き」と言うかも知れない。

 ホワイトホースとの比較では、ホワイトホースの方が味わいも強いが、アルコールの刺激も強い。
 ウィンチェスターはトワイスアップにすると水っぽくなり、甘さがビターさに変わる。しかしホワイトホースはトワイスアップにするとビリビリ来るアルコールの強い刺激が適度に減り、味に甘みを強く感じるようになるから不思議だ。
 個人的には、ホワイトホースよりウィンチェスターの方が好きかも知れない。

 このウィンチェスター、無名だがライトタイプのスタンダード・スコッチとしては良く出来ている方だと思う。
 ライトタイプのスタンダード・スコッチと言うと、まずカティーサークの名が挙げられるが。
 ライトタイプのスコッチがお好きな方は、このウィンチェスターも一度味を見てみる価値はあると思う。

 最後に、ウィンチェスターという名からすぐに西部劇のライフル銃を連想してしまった筆者だが。
 調べてみたところ、ウィンチェスターとはイギリス南部の、かつてはウェセックス王国の首都だった都市の名前なのだそうだ。

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この真冬に、夏限定の“ほろよい涼みあんず”を飲んでみた

 家族が病人なもので、食材などの日々の買い物もほぼ筆者が受け持っている。
 近所にチェーン展開していて自社ブランド商品もいろいろと開発している大きめのスーパーもあるが、筆者はやや遠いが扱う食品はほぼ国産品という小さなスーパーを日々利用している。
 近所の大きなスーパーを利用するのは、小さなスーパーでは扱っていないものが欲しい時と、大きなスーパーに出店している百均ショップを利用する時だけである。

 で、その小さなスーパーにもお酒コーナーもあることはあるが、スペースは狭い上に品数も少なく、しかも値段も高めだ。
 そのスーパーは、食材に関してはかなりこだわりを持っているのだが。
 しかしお酒に関しては、金麦とかスーパードライとか角瓶とかの、ありきたりの売れ筋商品ばかりで、商品に対するこだわりは殆ど感じられない。
 ポリシーを持って国産の良いものを揃えている食材と違い、「どうしてもお酒が欲しい人の為に、とりあえず置いてある」という感じが見え見えだ。
 酒の専門店の価格よりかなり割高なロバートブラウン・スペシャルなど、店頭に長く置かれ過ぎて薄く埃を被っているし、チューハイなども去年の夏の限定商品がまだ平気で置かれていたりする有り様だ。

サントリー・ほろよい涼みあんずP1110179

 その中に、ほろよい涼みあんずを見つけた。
 例の、去年の夏限定商品の売れ残りである。
 それも1本や2本どころではなく、10本以上まだ売れ残っていた。
 今は真冬だというのに、その缶には夏祭りを思わせる花火や団扇の絵が賑やかに描かれており、その中に形だけ杏の絵があった。
 このあまりにも今の季節とのミスマッチ具合がおかしくて、ついその缶を手に取ってみた。
 赤く書かれた夏限定の文字も、涼みあんずという名前も、売れ残って真冬となってしまった今では、見るだけで寒々しい。
 そして缶を裏返すと、賞味期限は今年の5月になっている。
 この10本はある「夏限定」の「涼みあんず」、おそらくこのまま売れること無く、今年の夏を待たずに処分されてしまうのだろうな。
 そう思ったら何やら哀れな気がして、つい手に取った1本をそのまま買い物籠に入れてレジに行ってしまった。

 メーカーは筆者が好きになれずにいるサントリーだし、果汁も僅か2パーセントで、原材料を見ると糖類に酸味料と香料に加えてカラメル色素も入れられている。
 あんず果汁2パーセントって、350mlの缶に僅か7ccだよ?
 入れられている果汁など、ほんの形だけのものだ。
 缶には「あんずの甘酸っぱさが心地よい」と書かれているが、その甘酸っぱさは殆ど糖類と酸味料によるもので、香りも香料によるものだろう。
 だから去年の夏にも目にはしたものの、冷笑してスルーし、そのまま忘れ去ったのだろうと思う。

 だが真冬の酒コーナーに売れ残っている夏祭りを思わせる絵柄がもの悲しくて、1本だけつい買ってしまった。
 そのまま売れ残って廃棄されるのを1本だけ救うつもりで買ったので、正直、味には全く期待していなかった。
 別にあんずが好きと言うわけでもないし、糖類と酸味料と香料で味と香りを作ったニセの果物のチューハイがどんなものかは、およそ見当もついていたし。

 で、プルタブを開けてグラスに注ぐと、いかにも本物っぽいあんずの香りが広がる。
 飲んでみても、確かにあんずの味だ。
 糖類を入れてはいるが甘さは控え目で程良くベタつかず、酸味料による適度な酸っぱさと良くバランスが取れている。
 色はカラメル色素によるものだろうが、梅酒に似た感じで、あんずの雰囲気が良く出ている。
 メーカーが「あんずの甘酸っぱさが心地よい」と言う通り、程良く甘酸っぱく、そして後に果物(あんず)の味が残る感じで、意外に美味しく飲めた。

 誤解の無いように言っておくが、そこはあんず果汁2パーセントで、味と香りは殆ど糖類と酸味料と香料、そして色はカラメル色素で仕立てた缶チューハイだ。
 果汁を多く使っている缶チューハイとは違い、そこは作りモノっぽいチープさも感じる。
 飲んだ後のグラスも、ただ水で流して洗っただけではあんずの匂いが落ちずにしっかり残った。
 香料の匂いは本物の果物の香りよりずっと強いのだなと、変な所で感心してしまった。
 しかし糖類と酸味料と香料で殆どの味と香りを作った缶チューハイの中では、かなり上手にそれらしい味と香りに仕立ててあるのもまた事実だ。
 そしてまた何となく残る作りモノっぽいチープな味と香りが、夏祭りの屋台の食べ物とも良く合っているようにも思える。

 筆者はこの夏限定のほろよい涼みあんずを、真冬に、暖房の効いた部屋で飲んだのだが。
 缶の可愛い花火や団扇の絵を見ながらコレを飲んでいると、夏祭りの情景が自然に脳裏に浮かんできた。
 メーカーは「夏にぴったりの味わい」で、「ぜひ冷やしてお飲みください」と言うが、夏の夜に花火でも見ながら、屋台で出すようなものを食べつつこれを飲んだら、さぞ気分が出ただろうなと思った。
 真冬の寒い日にコレを買って飲んでみて、筆者は決して後悔しなかった。

 コレの売れ残りが、そのまま処分されてしまうのは惜しいと思う。
 けれど糖類や酸味料や香料で作ったややジャンクな味だけに、売れ残りを一人で買い占めて何本も飲む気には、とてもなれない。
 飲むにしても、1本か2本で充分だ。

 と言うわけで、去年の夏に限定販売されたほろよい涼みあんず、もし貴方の近くのお店に売れ残っていたら、良かったら1本、試しに飲んでみて下され。
 期待して飲むとガッカリするけれど、期待せずに飲むと案外悪くないのだ、コレが。

 ところで、缶チューハイのアルコール度は1%から9%程度まで様々あるが、このほろよいシリーズは3%と軽めの方だ。
 缶チューハイの売れ筋は、度数7~9%のストロング系だそうだが、筆者はストロング系の缶チューハイは好かない。
 何故ならストロング系の缶チューハイは、飲んでいてアルコールの刺激がツンツン来るからだ。

 ストロング系の缶チューハイを好む人は、ビールではもの足りず、酔えるまで飲むとお腹がガバガバになってしまうのだという。
 実は筆者は、ハイボールなら濃いめが好きだ。
 度数7%の普通のハイボール缶では薄すぎて全然もの足りず、度数9%の“濃いめ”として売られている商品でもまだ薄いと思ってしまうくらいだ。
 しかしストロング系の缶チューハイは、どうしても好きになれない。
 それはハイボールに使われているウイスキーは、とりあえず年単位で樽熟成してある為、濃いめでも炭酸で割ればアルコールの刺激が殆ど無くなるからだ。
 それに対し缶チューハイは、熟成など全くしていないスピリッツ(平たく言えば甲類焼酎)を使っているから、濃いめにするとどうしてもアルコールのイヤな刺激が出てくる。
 ストロング系の缶チューハイを好む人達は、糖類や酸味料や香料でも隠し切れないあのアルコールのツンツン来る刺激が気にならないのだろうかと、不思議に思う。
 ビールでは度数がもの足りなくてストロング系の缶チューハイを飲んでいる方は、是非ハイボールも試してみてほしいと思う。

 さらに言えば、筆者はウイスキーはハイボールでなくストレートで飲むのを一番好む。
 10年以上樽熟成した良質なウイスキーは、度数40%のものをそのまま飲んでもアルコールの強さが気にならない。
 しかし缶チューハイに使われるようなスピリッツこと甲類焼酎の安っぽく荒々しいアルコールの刺激は、希釈し度数7~9%にして更に果物の味と香りを付けてもまだ不快でならない。
 缶チューハイに使われている“スピリッツ”とは、そういうレベルのものなのだろう。

 で、アルコール度数3%のほろよいシリーズだが。
 この度数は、お酒に強くてなかなか酔えない人には、全くもの足りない度数だろうと思う。
 しかし筆者のような下戸にとっては、気分良く文字通りに「ほろよい」になれる、ちょうど良い度数なのだ。
 そしてストロング系ではもちろん、5%前後の缶チューハイでもアルコールのツンツン来るイヤな刺激と苦みをまだ何となく感じるが、3%となると殆どと言って良いほど感じなくなる。
 お酒っぼくなくてジュースのようで、本当に飲みやすいのだ、この度数3%の缶チューハイは。

 と言うわけで、下戸の筆者は度数3%の缶チューハイは嫌いではない。
 アルコールのイヤな刺激を感じる事なく、気持ち良く酔えて、アルコールに弱い者に優しいお酒だと思う。
 ストロング系の缶チューハイもあっても良いが、度数3%のライトな缶チューハイも無くしてほしくないものだと思う。

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ジムビームを改めて飲んでみた

 180~200ml入りのウイスキーの小瓶は、700~750ml入りの通常のものと比べるとかなり割高だ。
 だからあまり美味しくないだろうと最初から予想されるもの以外は、なるべく手を出さないようにしている。
 180~200mlなら不味くても何とか飲み切れるが、700~750mlで不味いと持て余して飲み残す事になり、結局は高くついてしまう。だから味に不安があるものだけ、小瓶で買うことにしている。

 すると先日、行きつけのスーパーのお酒売り場で、ジムビームの小瓶(200ml)が在庫入れ替えの処分ということで、三百円を切る値段で売られていた。
 これなら1ccあたりの値段は通常の瓶と大差なく、しかも不味くても飲み残す事なく試し飲みできる。
 で、迷わず買って、サントリーが巨費を投じて買収したビーム社の定番ウイスキーを味見してみた。

ジムビームP1110083

 キャップを開けると、いかにもバーボンらしい、キャラメルに似た濃厚な甘い香りが漂う。
 グラスに注いで飲んでみると、やはり甘く、そして滑らかだ。
 少なくとも、口に含んだ瞬間は。

 このバーボン、ラベルには“ストレート・バーボン・ウイスキー”と書いてあるが、スタンダード品だけに熟成年数はやや若いのではないか。
 味は甘いのだが、それ以上にアルコールの刺激がキツい。
 ジムビームを少量口に含んだその時には甘いのだが、舌の上で転がして味わおうとすると、アルコールの刺激がビリビリ来て、味も何もわからなくなる。
 飲んだ後のアフターフレーバーは甘さと香ばしさだが、あまり余韻は長くない。

 アルコールの刺激は気になるものの、このジムビームはバーボンとしてはライトで癖が無く飲みやすい方ではないだろうか。
 筆者が以前飲んだエヴァン・ウィリアムズ7年など、ねっとりするほど甘く、そして原料のコーンによる独特の匂いが強烈だった。
 そのエヴァン・ウィリアムズ7年はとてもまろやかで口当たりこそ非常に良いものの、その癖のある香りには辟易させられた。
 それに比べてこのジムビームは甘さもバーボン独特の匂いも控えめで、バーボンとしては飲みやすい方に属すると思う。
 ただ若いアルコールの刺激がキツく、ストレートで飲むと、いくらチビチビ飲んでも口の中が痺れるようにピリピリするのはいただけない。

 で、竹鶴政孝氏がハイニッカを普段飲む時にしていたように、1:2の水割りにして飲んでみたら、これがなかなかイケた。ストレートで飲んだ時のアルコールの刺激が嘘のように消え、それでいて甘さとウイスキーの味わいもしっかり残って、非常に飲みやすいものになった。

 ついでにハイボールにしてみたのだが、最初は「あまり美味しくはないな」と思った。
 不味くはないのだが、バーボン独特の癖のある甘さと匂いがくどい感じで爽やかでない印象が残ったのだ。
 しかしそれは、筆者のバーボンの作り方に問題があったのだ。

 ハイボールであれ水割りであれ、筆者はウイスキーを薄めに割ってゴクゴク飲むのを好まない。
 基本はストレートで、割る場合も濃いめにして、チビチビ飲んで濃く深い味と香りをゆっくり楽しみたいのだ。
 だから普段あまり飲まないハイボールを飲む時も、つい濃いめに作ってしまう。
 日本では、ハイボールは1:4くらいに割るよう勧められている場合が多いが、1:4では筆者には薄すぎる。
 1:2のハイボールでさえ、筆者には充分な濃さに思えてしまうくらいだ。
 だからハイボールも、1:3以上には決して薄めない。
 少なくともスコッチや日本のウイスキーのハイボールは、それで良かったのだ。

 それでも「ジムビームなどバーボンのハイボールは、本当に美味しくないのか?」と疑問に思い、もう一度ジムビームのハイボールを作って飲んでみた。
 そしてこの時、筆者はうっかり炭酸を多めにグラスに注いでしまったのだ。
 これは薄くて水っぽいものになってしまっただろう。
 そう悔やみはしたが、作ってしまった以上、諦めて飲んでみた。
 そうしたら案外悪くなかったのだ、この(筆者としては)薄めのハイボールが。
 と言うより、ジムビームのハイボールは濃いめのものより薄めの方が美味かった。

 スコッチや日本のウイスキーより、バーボンは甘さが強いし、香りにも癖があるから。
 だから炭酸の力で味と香りをかき立てるハイボールの場合、濃いめでなく1:4くらいの方がスッキリ飲めるようだ。

 低価格のバーボンの中では、ジムビームは基本的にライトで飲みやすい方に属すると思うが、初めから割って飲むように造られているように思う。
 筆者は出来の良いウイスキーならストレートで飲みたいが、これをストレートで飲むのはキツい。
 ただ1:2の水割りか、1:4のハイボールにすると、甘さとウイスキーの味と香りを保ったままスイスイ飲める。だから割ることを前提に、気軽に晩酌用の酒として飲むには悪くないバーボンだと思った。

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あの独裁者も飲んでいる、シーバスリーガル12年。

 今はこのブログでも、酒に関する記事をいろいろ書いているが。
 しかし筆者は、長いこと酒が嫌いだった。
 正確に言えば、酒と言うより酒に飲まれる酔っ払いが大嫌いだった。
 特に酔って乱に及ぶ人間に対する感情は、今でも憎悪に近いものを持っている。

 筆者を“酒ギライ”にしたのは、まずは筆者の父親だった。
 筆者の父親は、いわゆる“アル中”と呼ばれる種類の人間だった。
 父は筆者が生まれる前から大酒飲みで、しかも飲んで暴れるタイプのタチの悪い酔っ払いだった。
 だから筆者は、幼い頃から酔って怒鳴って暴れる父親に怯えながら育った。
 それゆえ、酔って乱れる酒乱に対する嫌悪感は、生理的なレベルにまで達している。

 その酒ギライで酒乱の人間を憎悪している筆者が社会に出た頃には“アルハラ”などという言葉も無く、上司や先輩が勧める酒は拒まず、潰れるまで飲むのがむしろ協調性のある良い社会人のように思われていた。
 酒の付き合いが出来ない者は、社会人として失格。
 そのように世間では思われていた。
 そんな時代だから、あの“一気飲み”も盛んに行われていた。
 当然、酒はまず酔う為のものであり、質など二の次、三の次だった。
 日本酒はアル添どころか、糖類や酸味料まで入れたものが当たり前で。
 ビールも副原料入りの喉越しで一気に飲むタイプのものばかりで、ゆっくり味わって飲めるクラフトビールなどまず無かった。
 だから社会に出た筆者は、酒と酔っ払いがますます嫌いになった。

 その筆者が、まだ子供の頃に一度だけ、「このお酒はスゴい!」と思った事があった。
 筆者の父や、筆者自身は何も誇れるものの無い人間だが、母方の伯父の一人はただ人格者であるだけでなく、社会的にもそれなりの地位にある人だった。

 筆者の父は飲むと暴れる酷い酒乱だが、そんな家族内の恥を他人に言えるわけも無く、親戚にも内緒にしていた。
 だからその伯父は、父が酔うとどれだけ酷いかを知らず、「お酒が好きなら」と善意で高級酒を父に贈ってきたりした。
 父は酒があればすぐに飲み切ってしまうアル中だが、その伯父(父から見れば義兄)がくれた高級酒だけは、棚の奥に大切にしまってチビチビと飲んでいた。

 それだけに、そのお酒に子供心に強い興味を持ってしまったのだ。
 あの飲兵衛の親父が一気に飲まずに大切にするなんて、どんな凄いお酒なんだろう……と。
 で、未成年がお酒を口にするなど、本当にいけない事なのだが。
 しかし自制心に乏しい子供だっただけに、普段の酒ギライより好奇心の方が勝ってしまい、父が居ない時にほんの一口だけその酒を飲んでしまった。

 本当に、ほんの一嘗めだった。
 だがそのお酒は、本当に強烈だった。
 舌の上で何かが爆発したかのような強い刺激に襲われ、しかし同時に、ものすごく芳しい芳香にうっとりとさせられた。
 これは、子供の飲むものではない。
 そう痛いほど痛感すると同時に、香りの素晴らしさと、強烈なアルコールの刺激の下の重厚な味わいに感動させられた。
 だから筆者は、「大人になったら、お酒はウイスキーを飲んでみよう」と心に決めた。

 ちなみに、その伯父がくれたお酒とは、ジョニーウオーカーの黒である。
 ジョニ黒は今では高級酒と言う程のものでは無いが、当時は関税の関係で八千円以上した。

 さて、大人になった筆者は、同じ大学の仲間と何度かお酒を飲みに出掛けた。
 筆者は酒乱の人間や「オレの酒が飲めないのか!?」と凄む奴が大嫌いだから、自分の意志で酒を飲みに行く時には酒癖の悪くない気の合う少人数の仲間と乗みに行く事にしている。
 で、大学の仲間と飲みに行ったある時、ウイスキーが出された。
 子供の頃の体験で、「ウイスキーは素晴らしく美味しいもの」と思い込んでいた筆者は、ワクワクしながらその“ウイスキー”を飲んだ。

 ……不味かった。
 反吐が出るほど不味かった。
 香りは貧弱だし、それに何よりアルコールの刺激が余りにもキツい。
 味もヘッタクレも無く、ただアルコールの刺激が舌にビリビリ来るのだ。
 ストレートだけでなく、水で薄く割ってもまだアルコールの刺激がキツくて不味い。
 甲類の焼酎に、色とほんの少しの味と香りを付けただけ。
 その“ウイスキー”とは、まさにそんな感じだった。
 それがサントリーの、あの角瓶であった。

 日本で最も大きな洋酒メーカーの、そして最も売れている“ウイスキー”がクソ不味いのだから、「ウイスキーとは、実は不味いものだったのだ」と思い、筆者は子供の頃の記憶は間違いだったのかと悲しくなった。

 日本には「長いものには巻かれろ」という言葉があるが、筆者は(ガキとも言うが)かなりのへそ曲がりで、筋や理屈の通らない事は断固拒否するのをモットーにしている。
 例えば理屈抜きで「皆がそうしているのだから、お前も従え」と強制されると、意地でも逆らいたくなる性格だ。
 その変に意地っ張りな性格のせいで、生き辛い事も多いし損もかなりしている。
 だが今もってガキでへそ曲がりな筆者は、損をし敵を作ってでも意地と筋を通す方をあえて選ぶ。

 だから筆者は、「オレの酒を飲めないのか!?」とか「さあ、イッキ!」とか「酒の付き合いが出来ない者は社会人失格だよ?」とか言う奴の酒は、意地でも絶対に飲まない。
 で、酒飲みに対してトラウマがある筆者の気持ちをわかってくれて、「無理しなくていいんだよ」と言ってくれる人の酒は、頑張ってでも飲む。
 ガキだよね? 大人じゃないよね?
 だが、それが黒沢一樹という人間なのだ。

 で、その筆者の気持ちを理解してくれて、アルハラなどという言葉もまだ無かった時代に酒を無理強いしなかった良い上司が、ある時に新年会に筆者も招いてくれた。
 場所はその上司の自宅で、料理は奥様の手作りでとても美味しかった。
 そして出された酒はまずビールだったが、次に筆者はウイスキーを勧められた。
 大学時代に同級生と飲んだ時の記憶で、ウイスキーは不味いものと思っていたから。
 だが尊敬する良い上司が勧めてくれるだからと、我慢して飲んでみた。
 ……美味しかった。
 香り高くて飲みやすく、メチャメチャ美味しかった。
 それはシーバスリーガルの12年で、上司がニコニコしながらこう言った。
「黒沢が来るから、こいつを用意しておいたんだ」

 そのシーバスリーガル12年は、子供の頃の筆者を感動させたジョニ黒とはまた違う味と香りだったが。
 しかしサントリーの角瓶を飲んで「ウイスキーは不味いもの」と思い込んでいた筆者の偏見を打ち破って、ウイスキーを筆者の最も好きな酒にしてくれた。

 と言うと、「サントリーの角瓶だって、充分美味いぞ!」と怒られてしまいそうだが。
 今の角瓶は違うのかも知れない。
 しかし筆者が大学生だった頃の、以前の角瓶は本当に酷かった。
 何しろまず、当時の角瓶は“リキュール・ウイスキー”だったのだから。
 僅か22%のモルト原酒を樽貯蔵ナシの“グレーン・アルコール”なるもので希釈して、それにリキュールで香りと味を付けたものを、特級のウイスキーとして売っていたのだ、大サントリーは。
 焼け跡闇市の終戦直後の混乱期にではなく、高度経済成長を遂げ日本が立派に先進国入りした後にもなって、だぞ。
 筆者がサントリーの社風を嫌い、このブログで度々サントリーのウイスキーを悪く言うのは、そういうわけだ。
 特級の角瓶ですらそうだったのだから、貧乏な大学生や若い社会人が“ウイスキー”として飲んでいたそれ以下の製品(ホワイトやレッド)の中身はもっと酷かった。

 今の角瓶の原材料表示を見ると「モルト、グレーン」となっているから、リキュールで味と香りを付けるのは流石に止めたのだろう。
 しかし日本洋酒業界の規定によると、「モルトは麦芽を、グレーンは穀物を意味する」のだそうだ。
 だから角瓶の原材料の“グレーン”が「ちゃんとしたグレーン・ウイスキー」か、それとも「樽貯蔵ナシのただの穀物アルコール」かは、今もって謎なのである。

シーバスリーガル年P1110044

 さて、話は戻るが、今回記事に取り上げたいシーバスリーガル12年は、サントリーの角瓶のせいでウイスキー嫌いになっていた筆者を、再びウイスキーの魅力にとりつかせてくれた思い出深いウイスキーだ。

 封を切りキャップを開けると、それだけで果実にも似た、甘く豊かな香りが辺りに広がる。
 ただ果実の香りだけでなく、ハニーな香りやら、樽の香りやら、スモーキー・フレーバーやら、いろいろな香りが複雑に混ざり合う。
 味はまず甘く、そしてビター。軽過ぎず、しかし重過ぎもせず、滑らかでストレートで抵抗なくスッと飲めてしまう。
 そして余韻は長く、心地良い。

 それはもちろん、日本酒や焼酎などを飲むようにゴクリと飲んでは駄目だが。
 唇を湿らすように、少しずつゆっくり味わえば、良い芳香に満ちていて、安いウイスキーにありがちなアルコールの刺激は殆ど感じない。チェイサーもあまり必要としないくらいだ。
 グラスに口をつけ、少しだけ口に含み舌の上で転がしてから飲むと、鼻孔いっぱいに良い香りが広がる。
 飲み干した後のグラスにも、甘さと樽の香りとスモーキーさがたっぷり残り、その香りさえ愛おしく感じるくらいだ。

 筆者はこれを、ジョニ黒、そしてブラックニッカ・ブレンダーズスピリットと飲み比べてみたが。
 香りの複雑さと豊かさの点では、間違いなくこのシーバスリーガル12年が一番だ。
 これに比べると、ジョニ黒の香りはややシンプルで、そして甘さとスモーキー香が突出しているように思える。
 味わいは、ジョニ黒の方が重厚で力強い。
 しかしシーバスリーガル12年が劣るというわけでなく、こちらの方がバランスが取れていて味も香りも複雑で、一般的にはより好まれるかも知れない。
 ただ、筆者個人としては、ジョニ黒の個性ある味の方が少しだけ余計に好きだが。
 ブラックニッカ・ブレンダーズスピリットの香りは、シーバスリーガル12年の華やかさには僅かに及ばない。しかしブラックニッカ・ブレンダーズスピリットには濃く甘いチョコに似た強い香りとスモーキーさがあり、これはこれで捨てがたい。
 味も、ブラックニッカ・ブレンダーズスピリットの方が濃く甘く滑らかだ。

 ジョニ黒とブラックニッカ・ブレンダーズスピリットは、良い出来だが味と香りに個性がある。甘さやスモーキーさがはっきりしているから、飲む人を少しばかり選ぶかも知れない。
 好きな人は大好きだろうが、中には苦手な人もいるかも知れない……という感じだ。
 その点、シーバスリーガル12年は香りはとても華やかな上、ハニーな甘さやら樽香やら果実香やらスモーキー香やらいろんな要素が、突出する事なくバランス良く複雑に絡み合っている。
 味と香りのバランスの取り方が本当に見事で、「ウイスキーは好きだが、これは嫌い」と言う人はまず居ないだろうと思われる。

 最近、韓国に亡命した北朝鮮の政府高官によると、金第一書記らの特権階級は中国の貿易会社を利用して贅沢品を手に入れていて、その中にシーバスリーガルも含まれているという。
 あの国の、悪評高い独裁者と同じ酒を飲んでいるのかと思うと、何か妙な気分になるが。
 まあ、金第一書記に好かれようと、シーバスリーガルに罪は無いし、ある意味「あの独裁者すら認めた銘酒」と言えるかも知れない。
 さあ、貴方も豊かな味と香りのシーバスリーガルを飲んで、独裁者の気分を味わってみたらいかがかな?

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福徳長種類の“無銘”を飲んで考えた

 近所のスーパーのお酒売場で、無銘という200mlのペットボトル入りのウイスキーを見つけた。「そのまま飲み頃!」というのが売り文句の、最初から度数12%に薄めた、水割りウイスキーだ。
 メーカーは、博多の華などの焼酎等を製造している福徳長酒類だ。
 この福徳長酒類は、博多の華も同じ度数12%の、同じ200ml入りのペットボトルで売り出している。
 キャップの色も「そのまま飲み頃!」という売り文句も、無銘と博多の華は全く同じだ。

水割りウイスキー無銘P1100949

福徳長酒類P1110112

 で、そのまま割らずに飲める焼酎と同じアイディアで売り出されたものと思われるが。
 税込みで130円という安い値段に興味を引かれて、どんなものか試しに買って飲んでみた。

 キャップを開け、グラスに注いでも、ウイスキーとしての香りはほのかでしかない。
 それでありながら、僅かだがアルコールの臭いがするのはいただけない。
 が、飲んでみると、度数12%まで水で薄めているにいては、意外にウイスキーらしい味がする。特にウイスキーの甘い味を感じる。
 ただやはりアルコールの刺激だけが舌に残り、アフターフレーバーは残らない。

 度数12%というと、度数37%のお手頃価格のウイスキーを1:2で水割りにしたのと、ほぼ同じ度数になると思われる。
 それでブラックニッカ・クリアを1:2の水割りにして、この無銘と飲み比べてみた。
 すると意外にも、この無銘の方がウイスキーらしい味わいと甘味を強く感じた。
 ただブラックニッカ・クリアは1:2まで水で薄めると、アルコールの刺激は全くと言って良いほど感じなくなる。しかし無銘は、ほぼ同じ度数の水割りなのに、熟成していないアルコールの刺激を間違いなく感じる。

 この無銘の原材料は、モルトとスピリッツだ。グレーン・ウイスキーを使わず、モルト原酒を樽熟成ナシのただのアルコールで希釈して、更にそれを水で割って作っているのだ。
 だからそのアルコールの刺激的な臭いと味を、間違いなく感じる。

 前にも書いたが、この水割りウイスキー無銘を売り出した福徳長酒類は、麦焼酎の博多の華も水で割って同じ度数12%のものを売り出しているが。
 熟成の義務や必要の無い焼酎を普段飲んでいる方は、この無銘のアルコールの刺激が気にならないかも知れない。
 しかし少なくとも樽熟成したモルトとグレーンのみで造ったまともなウイスキーを飲んでいる人なら、この無銘のアルコール臭さと舌に残る刺激が気になる筈だ。

 筆者はこの無銘を、リニューアル以前のホワイトホースを1:2で水割りにしたものとも飲み比べてみた。
 結果はホワイトホースの水割りの方がずっと滑らかで、アルコールの刺激は全く無く、しかもアフターフレーバーもちゃんと残った。
 ただ意外な事に、ウイスキーらしい味(特に甘さ)は無銘の方がやや濃いように感じた。

 アルコールの刺激の強さは、無銘>>>>ブラックニッカ・クリア>ホワイトホースだが。
 しかしウイスキーらしい味の濃さという点では、無銘>ホワイトホース>>>ブラックニッカ・クリアという結果になる。
 一体これは、どういう事だろうか。
 無銘はまず最初に価格設定があり、ブレンドにグレーン・ウイスキーを使わず、スピリッツと称する安価なアルコールで希釈する事で原価を下げ、その分モルト原酒をしっかり使ったのだろうか。

 実は筆者は、この無銘をバーボン(ジム・ビーム)を1:2で水割りにしたものとも飲み比べてみた。
 そしたら無銘にかなり似ていたのだ、その濃い味わいと甘さが。
 それで筆者は、この無銘はバーボンを水割りにしたものかと思いかけた。
 だが無銘の原材料には、「モルト、スピリッツ」と表記してある。
 もし無銘の原酒がバーボンなら、原材料にグレーンも入っていなければおかしい。
 それで筆者は、「バーボン樽で貯蔵したモルト原酒を使用したのではないか」と推測したが、真実はどうであろうか。

 この無銘が、それなりにウイスキーらしい味を出している事は認める。
 そしていつもお手頃価格の焼酎を飲んでいる方は気にならないだろうが、樽熟成したウイスキーを飲んでいる者としては、度数12%でこのアルコールの臭いと舌に残る刺激は気に入らない。

 話は変わるが、ウイスキーの世界的な産地と言えば、イギリス(スコットランド)とアイルランドとアメリカとカナダだ。
 そして近年、日本は勝手にその中に日本も付け加え、「ウイスキーの世界五大産地」と自称しているが。
 確かに近年、日本のウイスキーの質が向上し、世界で認められている。
 ただ質が向上したのは日本の一部のウイスキーであって、日本のウイスキーすべての質が良くなったわけではない。

 皆さんは、世界で最も多くの“ウイスキー”を生産し、かつ消費しているのがどこの国か、ご存知だろうか。
 イギリス? アメリカ?
 いや、実はインドなのだ。
 そのインドが何故、ウイスキーの世界○大産地を名乗れないのか。
 それはズバリ、インドで作られて消費される“ウイスキー”の質が悪いからだ。
 10%程度の原酒をアルコール(スピリッツ)で希釈したものが、インドでは“ウイスキー”として多く出回っているのだ。
 だから生産量と消費量がいくら世界一でも、インドは他国からウイスキーの世界○大産地として認められないのだ。

 で、日本の場合はどうであろうか。
 確かにサントリーやニッカやイチローズ・モルト等、世界で高く評価されるウイスキーを造っているメーカーもある。
 しかし同時に、日本は今もなおスピリッツや樽熟成ナシの穀物アルコールで希釈した“まがいものウイスキー”も作り続けている。

 他のイギリスやアイルランドやアメリカやカナダではウイスキーの定義が法律でハッキリしていて、単純にしてわかりやすく言えば、「度数40%以上で穀物のみを使い、年単位で樽熟成したもの」しかどこの国でもウイスキーとして認めていない。
 それに比べて、「ウイスキーの世界五大産地の一角」を称する、我が日本はどうであろうか。
 日本の酒税法によれば、日本ではウイスキーは「アルコール(スピリッツ)や香料を加えたものもOK」で、しかも樽熟成の年数どころか、「樽熟成をしなさい」という規定すら無いのだ。

 このブログで、何回も繰り返し書いてきたが。
 日本の洋酒業組合の規定では、原材料のモルトは麦芽を、グレーンは穀物を意味するのだそうだ。
 だから原材料に「モルト、グレーン」と書いてあるからといって、間違いなく樽熟成してあるのだななどと信じたら大間違いなのである。
 事実サントリーは少なくとも1980年代まで、あの日本で大人気の角瓶に、樽熟成ナシのグレーン・アルコールと称するものとリキュールを混ぜていた。

 おわかりだろうか。
 廃糖蜜から作った最も安価なアルコールのみをスピリッツと称し、穀物から作ったアルコールなら樽熟成ナシでも「グレーン」で通用してしまうのだ、この日本という国では。
 そもそもウイスキーに樽熟成の規定が無いのだから、原材料に「モルト、グレーン」と書いてあってもちゃんと樽熟成を経た本物かどうか信用出来ないのが、この国のウイスキー業界の実状なのだ。

 なるほど、近年は日本のウイスキーが世界的な賞も取っている。
 しかしピンの方は良くても、キリの方はインド並に粗悪な製品が出回っている現状で「ウイスキー世界五大産地の一角」を自称するのはおこがましいと、筆者は考える。
 世界五大産地を称するなら、少なくともウイスキーの定義を他の四カ国と同一にして、「度数40%以上で穀物のみを使い、年単位で樽熟成したもの」のみをウイスキーと認めるよう、法改正すべきだ。
 法改正が無理なら、少なくとも日本洋酒業界内でそう自主規制すべきだ。
 樽熟成の規定すら無く、アルコールを混ぜてもOKという現状で「ウイスキーの世界五大産地」を自称するなど、日本人として他の四カ国に恥ずかしくないのだろうか。

 と言うと、「安いウイスキーの需要もある、それを認めないのは庶民イジメだ」と言う人も出て来るかも知れないが。
 他のウイスキーの世界四大産地、イギリスやアイルランドやアメリカやカナダの人達は、樽熟成ナシのアルコールを混ぜたまがいものの“ウイスキー”など無くとも、少なくとも何も困ってはいない。
 樽熟成ナシのアルコールを混ぜた安い偽ウイスキーが無くなって困るなら、甲類の焼酎を飲めば良い。それだけの話ではないか。

 ウイスキーには年単位の樽熟成が必要だし、樽熟成していないものはウイスキーと認めるべきではないと、福徳長酒類の水割りウイスキー無銘を飲んで改めて思った。
 廃糖蜜から作ったアルコールは、スピリッツと表示されるからまだ良いが。穀物を原料としたグレーン・アルコールは、我が日本国のウイスキーの原材料表示ではただ「グレーン」と表記されるのだから、本当にたちが悪い。
 そのただの穀物アルコールと、ちゃんと樽熟成したグレーン・ウイスキーを区別する為にも、日本のそのあたりの原材料表示は改めるべきだと思うが、サントリーやニッカなどの日本のウイスキーの大手メーカーはどう考えているのだろうか。

 日本でせっかく良いウイスキーを造っても。
 樽熟成の規定すら無く、樽熟成していないアルコールを混ぜても構わないなど粗悪な製法も許しているままでは、日本のウイスキーのイメージが落ちるばかりではないだろうか。
 筆者は別に、「お金持ちだけ飲める、高いウイスキーだけ造れ」と言っているのではない。
「安かろう、悪かろう」ではなく、安くてもそこそこ飲める製品を造る為、せめて他の世界のウイスキー四大生産国と同じレベルの製造基準が日本にも必要ではないかと、強く訴えたい。

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濃姫の里隠し吟醸と清州桜酒造

 スーパーや量販店の酒コーナーに行くと、一合の紙パックで売られている安酒をよく見る。
 ある店で、その中に吟醸酒を見つけた。
 愛知県清須市の清洲桜酒造の、濃姫の里隠し吟醸というやつだ。

 アル添だが間違いなく精米歩合60%の吟醸酒で、なのに値段はワンカップより安い。
 安かったから、騙されたつもりで買って飲んでみたのだが、思ったより悪くなかった。
 で、今度は四合瓶のを買って、じっくり味わって飲んでみた。

清州桜隠し吟醸P1100965

 冷やで飲む日本酒は、筆者はいつもワイングラスで飲んでいるのだが。
 グラスに注ぐと、華やかで甘い吟醸香が心地良い。四合入りの瓶で買って値段は七百円もしなかったが、これは間違いなく吟醸酒だ。
 味も悪くはない。
「薄い」と言うか「スッキリした」と言うか微妙な部分はあるが、とても飲みやすくイヤ味が無い。
 口に含み、舌の上で転がしていると、適度な辛味と苦味、そして僅かな甘味を感じる。

 これは吟醸酒だがアル添だから、アルコールを加え水を足している分だけ薄まり、純米酒のようなふくらみや奥深さが味に欠ける点はある。
 しかしそれも「良質な純米酒と比べれば」という話であって、比べなければ気にせずスイスイ飲めてしまう。
 ちびちびゆっくり飲んでも美味しいが、純米でない分だけ軽さもあるのでグイグイたくさん飲めてしまいそうだ。
 値段は安いのに香り高くイヤ味なく美味しく、どんどん飲めるコストパフォーマンスの良い美酒だ。

 日本酒としての出来と味は、もちろん以前このブログに書いた会津の寫楽の方がずっと良い。
 しかし寫楽の値段は、この濃姫の里隠し吟醸の倍以上だ。
 それを考えれば、濃姫の里隠し吟醸は本当に良く出来た酒だと思う。

 ただ、プラス1.0という日本酒度にしては、辛さが少し気になる。
 数値的にはやや辛口という程度なのだが、甘さもあるのに舌に残るのは辛さだ。
 それはやはり、添加しているアルコールのせいではないだろうか。

 純米酒を飲み慣れた筆者からすると、アル添のこの濃姫の里隠し吟醸は、「スッキリした辛口」とも「ふくらみに欠け、アルコールの辛さのある」とも言える微妙なところがある。
 しかし香りは良いし、辛口で酸味も甘さもあり後口もキレも良く、値段を考えれば文句など言えない。

 人によっては、甘辛両方の味をしっかり感じる旨口の純米酒を「重い」と感じる方もいる。
 そういうスッキリした酒を好む方には、むしろ純米酒より美味しく飲みやすく思えるかも知れない。
 この濃姫の里隠し吟醸の売り文句は「フルーティーな香りと淡麗でスッキリとした上品な味わい」だが、その看板に偽りはない。

 この濃姫の里隠し吟醸を造っている清洲桜酒造は、一合入りの紙パックで百円前後の安い酒を主に造っている会社だが。値段の安さも大事だが、酒の造り手としてはせめてこのレベルの酒も売り出せねば、酒を造っていて楽しくなかろうと思う。
 濃姫の里隠し吟醸を知る人は、そう多くないだろうが。筆者としては、安くて良い酒だと自信を持って言える。
 特別に美味い酒ではない、しかし値段を考えれば充分過ぎるほど良い酒だ。

 で、つい調子に乗って、この清洲桜酒造の主力商品であろうと思われる、清洲城信長鬼ころしも飲んでみた。
 一合で百円前後、そして3リットルの紙パックでも千二百円を切る値段で売られている、文字通りの安酒だ。
 もちろんアル添だが、醸造用アルコールに加えて糖類と酸味料まで入れてある。
 筆者は以前にも、その種の酒を飲んでみた事があるのだが、あまりの不味さに一口で吐き出してしまった。
 その最低クラスの日本酒を、濃姫の里隠し吟醸を出した清洲桜酒造はどう造るだろうか。
 恐る恐る、試し飲みしてみた。

清州城信長鬼ころしP1100936

 例によってワイングラスに注いでみると、香りは(良くもないが)このクラスの糖類&酸味料入りの安酒としては悪くない。
 味も同様で、決して美味しいとは言えないのだが、これはとりあえず飲めてしまう。
 口に含むとまず苦味を、そして酸味と辛味を感じる。その辛さも添加されたアルコールによるもので、飲み下した後で舌がピリピリする。
 しかしそれでも、飲もうと思えば普通に飲めてしまうのだ。
 美味しいとは思わない。
 だが吐き出してしまいたくなるほど不味いとも思わない。

 アル添で、しかも糖類と酸味料も加えられているから、甘さも辛さも酸味も後から加えられたものの味が大きく影響している筈だ。
 なのに案外不味くなく、ベタつくこともなく、日本酒らしい味をとりあえずは保っている。
 美味いとは決して言えないが、安さを最優先した中で限界いっぱい良い酒を造るべく、メーカーはよく努力したと思う。
 他社の同クラス一合で百円の紙パックの酒は、筆者には不味すぎてどうしても飲めず、一口で吐き出してしまった。
 しかし清洲桜のコレは、一合を最後まで飲めた。
 美味いとは決して思わないが、味の点ではワンカップなど大手の他社のもっと高い普通酒と変わらないと思った。

 清洲城信長鬼ころしは、美味しい酒を少しずつ味わって飲みたい人には、もちろん全然向かない。
 しかし値段の安さを最優先して飲む人達に、少しでも気持ち良く飲んでもらえるように、メーカーは努力して造っていると思った。

 この清洲桜酒造は、ええなもという焼酎も一合の紙パックを百円前後で売り出している。
 安い焼酎と言えば、たいてい廃糖密から作ったアルコールを薄めた甲類焼酎だ。
 しかしええなもは、本格焼酎もブレンドした甲乙混和焼酎だ。
 ただこの“甲乙混和焼酎”というのがくせ者で、よく見ると乙類の本格焼酎は香り付け程度に、全体の10~20%程度しか加えられておらず、殆どがただのアルコールというまがい物が少なくない。
 しかし清洲桜酒造のええなもは、甲類と乙類を50%ずつ混ぜている。
 他の安い甲乙混和焼酎の中では、かなり良心的に造っている。

 もちろん、このええなもより、本物の本格焼酎の方がずっと美味い。
 しかし百円で買える焼酎としては、よく努力して造っているように思う。

 今回、筆者が取り上げた濃姫の里隠し吟醸を造ったこの清洲桜酒造は、「同じ質ならより安く、同じ値段ならより良いものを」というポリシーで頑張っているように思えた。
 何しろ第一に考えているのが安さだから、美酒の蔵元として有名になる事は無いだろうが。
 しかし安さを優先しつつ、その中で最大限に品質も保つべく努力している清洲桜酒造のような会社もある事も、酒好きの人達に知ってほしいと思う。

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ザ・モルツとサントリーのビールについて

 ビールと発泡酒と新ジャンル酒に分かれていたビール類の税金が、将来的に統一されることになった。
 この事をアサヒとサッポロは歓迎し、新ジャンル酒などの売り上げが大きいサントリーとキリンは困惑していると聞いた。

 新ジャンル酒の売り上げに頼らねばならない程、サントリーのビールは不味いのだろうか。
 そんな疑問を持って、サントリーのビールの基本であろうザ・モルツを飲んでみた。

サントリー・ザ・P1100879

 プルタブを開けグラスに注ぐと、好ましい香りが漂うが、香り自体は比較的抑えめだ。
 味わいは軽いが、イヤ味は全く無い。程良い苦味だけでなく、よく味わえば麦の甘みもある。

 サントリーの二代目社長であった佐治敬三氏はすっきりしたビールを求め、そのため苦味とコクが求められた時代には、サントリーのビールは「水くさい」と言われたという。
 飲んでみて断言できるが、ザ・モルツは決して水くさくも水っぽくもない。
 香りは華やかではないものの、よく嗅げば甘い良い香りはするし、麦の甘さも程良い苦味もある。

 ただ気楽に喉越しでゴクゴク飲めてしまう軽さがあり、ビールにコクと飲みごたえを求める人は物足りなさを感じると思う。
 缶には「グッとくる‘うまみ’」とあるが、うまみとコクに関しては正直に言って物足りない。

 とは言うものの、ゆっくり、じっくり味わって飲んでも、やや薄く感じるものの‘うまみ’は間違いなくある。
 喉越しに飲んでも美味しいが、喉越しに一気に飲み干してしまうには勿体ない繊細で上質な味わいがこのビールにはある。

 じっくり味わうにはややもの足りず、一気飲みしてしまってはせっかくの‘うまみ’が充分に感じられない。
 じっくり味わうにも、喉越しで飲み干すにも、どちらにしてもやや中途半端に思える。
 ただこのビール、イヤ味というものが全く無いのだ。気持ち良くスイスイ飲めてしまうし、味わって飲めばそれなりに‘うまみ’も感じられる。
 このザ・モルツは「大好き!」と言う人と「嫌いだ」と言う人が分かれるタイプのビールではなく、ビールは喉越し派にも、じっくり味わいたい派にも嫌われない、万人向けの優等生的なビールに思える。
 実際、このビールを飲んで「不味い、嫌いだ!」と言う人は、まず居ないのではないかと思う。

 個人的に言えば、これより美味いビールは他にもっとあると思うし、数あるビールの中からあえて選んで買おうとするほどのものではないと思う。
 しかし宴席などで出されたら、喜んで飲みたいと思う。
 ザ・モルツとは、筆者にとってそんなビールだった。

 これが佐治敬三氏の求めた、すっきりしたビールなのだろうが。
 筆者個人の好みから言えば、ザ・モルツはやや薄味で、コクとうま味について物足りなく感じる。
 しかし同時に、驚くほど味に癖やイヤ味が無いのだ。
 これほど抵抗無くスイスイ飲めるビールは、そう多くない。

 ビールとしては、もちろんより高価なザ・プレミアム・モルツの方が、味も香りも強くて上等なのだと思う。
 しかし味わいが軽い分だけ、プレモルよりザ・モルツの方が飲みやすいという人もいるのではないかと思われる。

 また、同じビールでもアサヒのスーパードライなどの“日本人好みのビール”には、完全に「キンキンに冷やして喉越しで飲む専用」で、ぬるくなってきたり、ゆっくりじっくり飲んだりすると、途端に不味くなるものが少なくない。
 しかしこのザ・モルツは、少し薄味ではあるものの、ぬるくなっても、ゆっくりじっくり飲んでも嫌な味にならず‘うまみ’を感じられる。

 ビール類に関して、サントリーは新ジャンル酒の金麦に頼っている部分が大きいようだが。
 筆者も以前、金麦も飲んでみた。新ジャンル酒としては不味くは無かったが、非常に薄味な上に金属的な嫌な味もあり、決して好ましいものでは無かった。
 暑くて喉が渇いた時に、よく冷やして一気飲みするには良いが、とてもじっくり味わって飲めるようなシロモノではなかった。
 はっきり言うが、ザ・モルツと金麦の味(品質)の差は、値段の差よりも大きいと思った。

 だから筆者は、サントリーはもっと自信を持ってビールを造れば良いと思う。
 筆者はサントリーという会社に好意的でなく、このブログでもサントリーのウイスキーや赤玉ワイン等について批判ばかり書いてきたが。
 ただビールに関しては、サントリーの製品は決して悪くないと思う。
 今回取り上げたザ・モルツも、筆者の好みとは少し違うが良く出来た万人向けのビールだと思うし、ザ・プレミアム・モルツ香るエールは個人的にもかなり好きだ。

 麦芽とホップだけで造ったサントリーのビールは、製品については他の日本の大手メーカーに決して劣らない。
 だからサントリーのあの宣伝力を、金麦でなく本物のビールの方に向ければ、サントリーのビールはもっと売れるのではないかと思われる。
 少なくとも品質の点からみれば、数年後のビール類の税金の統一を、サントリーは決して不安に思うことは無いのではないかと筆者は考える。

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