空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

この真冬に、夏限定の“ほろよい涼みあんず”を飲んでみた

 家族が病人なもので、食材などの日々の買い物もほぼ筆者が受け持っている。
 近所にチェーン展開していて自社ブランド商品もいろいろと開発している大きめのスーパーもあるが、筆者はやや遠いが扱う食品はほぼ国産品という小さなスーパーを日々利用している。
 近所の大きなスーパーを利用するのは、小さなスーパーでは扱っていないものが欲しい時と、大きなスーパーに出店している百均ショップを利用する時だけである。

 で、その小さなスーパーにもお酒コーナーもあることはあるが、スペースは狭い上に品数も少なく、しかも値段も高めだ。
 そのスーパーは、食材に関してはかなりこだわりを持っているのだが。
 しかしお酒に関しては、金麦とかスーパードライとか角瓶とかの、ありきたりの売れ筋商品ばかりで、商品に対するこだわりは殆ど感じられない。
 ポリシーを持って国産の良いものを揃えている食材と違い、「どうしてもお酒が欲しい人の為に、とりあえず置いてある」という感じが見え見えだ。
 酒の専門店の価格よりかなり割高なロバートブラウン・スペシャルなど、店頭に長く置かれ過ぎて薄く埃を被っているし、チューハイなども去年の夏の限定商品がまだ平気で置かれていたりする有り様だ。

サントリー・ほろよい涼みあんずP1110179

 その中に、ほろよい涼みあんずを見つけた。
 例の、去年の夏限定商品の売れ残りである。
 それも1本や2本どころではなく、10本以上まだ売れ残っていた。
 今は真冬だというのに、その缶には夏祭りを思わせる花火や団扇の絵が賑やかに描かれており、その中に形だけ杏の絵があった。
 このあまりにも今の季節とのミスマッチ具合がおかしくて、ついその缶を手に取ってみた。
 赤く書かれた夏限定の文字も、涼みあんずという名前も、売れ残って真冬となってしまった今では、見るだけで寒々しい。
 そして缶を裏返すと、賞味期限は今年の5月になっている。
 この10本はある「夏限定」の「涼みあんず」、おそらくこのまま売れること無く、今年の夏を待たずに処分されてしまうのだろうな。
 そう思ったら何やら哀れな気がして、つい手に取った1本をそのまま買い物籠に入れてレジに行ってしまった。

 メーカーは筆者が好きになれずにいるサントリーだし、果汁も僅か2パーセントで、原材料を見ると糖類に酸味料と香料に加えてカラメル色素も入れられている。
 あんず果汁2パーセントって、350mlの缶に僅か7ccだよ?
 入れられている果汁など、ほんの形だけのものだ。
 缶には「あんずの甘酸っぱさが心地よい」と書かれているが、その甘酸っぱさは殆ど糖類と酸味料によるもので、香りも香料によるものだろう。
 だから去年の夏にも目にはしたものの、冷笑してスルーし、そのまま忘れ去ったのだろうと思う。

 だが真冬の酒コーナーに売れ残っている夏祭りを思わせる絵柄がもの悲しくて、1本だけつい買ってしまった。
 そのまま売れ残って廃棄されるのを1本だけ救うつもりで買ったので、正直、味には全く期待していなかった。
 別にあんずが好きと言うわけでもないし、糖類と酸味料と香料で味と香りを作ったニセの果物のチューハイがどんなものかは、およそ見当もついていたし。

 で、プルタブを開けてグラスに注ぐと、いかにも本物っぽいあんずの香りが広がる。
 飲んでみても、確かにあんずの味だ。
 糖類を入れてはいるが甘さは控え目で程良くベタつかず、酸味料による適度な酸っぱさと良くバランスが取れている。
 色はカラメル色素によるものだろうが、梅酒に似た感じで、あんずの雰囲気が良く出ている。
 メーカーが「あんずの甘酸っぱさが心地よい」と言う通り、程良く甘酸っぱく、そして後に果物(あんず)の味が残る感じで、意外に美味しく飲めた。

 誤解の無いように言っておくが、そこはあんず果汁2パーセントで、味と香りは殆ど糖類と酸味料と香料、そして色はカラメル色素で仕立てた缶チューハイだ。
 果汁を多く使っている缶チューハイとは違い、そこは作りモノっぽいチープさも感じる。
 飲んだ後のグラスも、ただ水で流して洗っただけではあんずの匂いが落ちずにしっかり残った。
 香料の匂いは本物の果物の香りよりずっと強いのだなと、変な所で感心してしまった。
 しかし糖類と酸味料と香料で殆どの味と香りを作った缶チューハイの中では、かなり上手にそれらしい味と香りに仕立ててあるのもまた事実だ。
 そしてまた何となく残る作りモノっぽいチープな味と香りが、夏祭りの屋台の食べ物とも良く合っているようにも思える。

 筆者はこの夏限定のほろよい涼みあんずを、真冬に、暖房の効いた部屋で飲んだのだが。
 缶の可愛い花火や団扇の絵を見ながらコレを飲んでいると、夏祭りの情景が自然に脳裏に浮かんできた。
 メーカーは「夏にぴったりの味わい」で、「ぜひ冷やしてお飲みください」と言うが、夏の夜に花火でも見ながら、屋台で出すようなものを食べつつこれを飲んだら、さぞ気分が出ただろうなと思った。
 真冬の寒い日にコレを買って飲んでみて、筆者は決して後悔しなかった。

 コレの売れ残りが、そのまま処分されてしまうのは惜しいと思う。
 けれど糖類や酸味料や香料で作ったややジャンクな味だけに、売れ残りを一人で買い占めて何本も飲む気には、とてもなれない。
 飲むにしても、1本か2本で充分だ。

 と言うわけで、去年の夏に限定販売されたほろよい涼みあんず、もし貴方の近くのお店に売れ残っていたら、良かったら1本、試しに飲んでみて下され。
 期待して飲むとガッカリするけれど、期待せずに飲むと案外悪くないのだ、コレが。

 ところで、缶チューハイのアルコール度は1%から9%程度まで様々あるが、このほろよいシリーズは3%と軽めの方だ。
 缶チューハイの売れ筋は、度数7~9%のストロング系だそうだが、筆者はストロング系の缶チューハイは好かない。
 何故ならストロング系の缶チューハイは、飲んでいてアルコールの刺激がツンツン来るからだ。

 ストロング系の缶チューハイを好む人は、ビールではもの足りず、酔えるまで飲むとお腹がガバガバになってしまうのだという。
 実は筆者は、ハイボールなら濃いめが好きだ。
 度数7%の普通のハイボール缶では薄すぎて全然もの足りず、度数9%の“濃いめ”として売られている商品でもまだ薄いと思ってしまうくらいだ。
 しかしストロング系の缶チューハイは、どうしても好きになれない。
 それはハイボールに使われているウイスキーは、とりあえず年単位で樽熟成してある為、濃いめでも炭酸で割ればアルコールの刺激が殆ど無くなるからだ。
 それに対し缶チューハイは、熟成など全くしていないスピリッツ(平たく言えば甲類焼酎)を使っているから、濃いめにするとどうしてもアルコールのイヤな刺激が出てくる。
 ストロング系の缶チューハイを好む人達は、糖類や酸味料や香料でも隠し切れないあのアルコールのツンツン来る刺激が気にならないのだろうかと、不思議に思う。
 ビールでは度数がもの足りなくてストロング系の缶チューハイを飲んでいる方は、是非ハイボールも試してみてほしいと思う。

 さらに言えば、筆者はウイスキーはハイボールでなくストレートで飲むのを一番好む。
 10年以上樽熟成した良質なウイスキーは、度数40%のものをそのまま飲んでもアルコールの強さが気にならない。
 しかし缶チューハイに使われるようなスピリッツこと甲類焼酎の安っぽく荒々しいアルコールの刺激は、希釈し度数7~9%にして更に果物の味と香りを付けてもまだ不快でならない。
 缶チューハイに使われている“スピリッツ”とは、そういうレベルのものなのだろう。

 で、アルコール度数3%のほろよいシリーズだが。
 この度数は、お酒に強くてなかなか酔えない人には、全くもの足りない度数だろうと思う。
 しかし筆者のような下戸にとっては、気分良く文字通りに「ほろよい」になれる、ちょうど良い度数なのだ。
 そしてストロング系ではもちろん、5%前後の缶チューハイでもアルコールのツンツン来るイヤな刺激と苦みをまだ何となく感じるが、3%となると殆どと言って良いほど感じなくなる。
 お酒っぼくなくてジュースのようで、本当に飲みやすいのだ、この度数3%の缶チューハイは。

 と言うわけで、下戸の筆者は度数3%の缶チューハイは嫌いではない。
 アルコールのイヤな刺激を感じる事なく、気持ち良く酔えて、アルコールに弱い者に優しいお酒だと思う。
 ストロング系の缶チューハイもあっても良いが、度数3%のライトな缶チューハイも無くしてほしくないものだと思う。

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ジムビームを改めて飲んでみた

 180~200ml入りのウイスキーの小瓶は、700~750ml入りの通常のものと比べるとかなり割高だ。
 だからあまり美味しくないだろうと最初から予想されるもの以外は、なるべく手を出さないようにしている。
 180~200mlなら不味くても何とか飲み切れるが、700~750mlで不味いと持て余して飲み残す事になり、結局は高くついてしまう。だから味に不安があるものだけ、小瓶で買うことにしている。

 すると先日、行きつけのスーパーのお酒売り場で、ジムビームの小瓶(200ml)が在庫入れ替えの処分ということで、三百円を切る値段で売られていた。
 これなら1ccあたりの値段は通常の瓶と大差なく、しかも不味くても飲み残す事なく試し飲みできる。
 で、迷わず買って、サントリーが巨費を投じて買収したビーム社の定番ウイスキーを味見してみた。

ジムビームP1110083

 キャップを開けると、いかにもバーボンらしい、キャラメルに似た濃厚な甘い香りが漂う。
 グラスに注いで飲んでみると、やはり甘く、そして滑らかだ。
 少なくとも、口に含んだ瞬間は。

 このバーボン、ラベルには“ストレート・バーボン・ウイスキー”と書いてあるが、スタンダード品だけに熟成年数はやや若いのではないか。
 味は甘いのだが、それ以上にアルコールの刺激がキツい。
 ジムビームを少量口に含んだその時には甘いのだが、舌の上で転がして味わおうとすると、アルコールの刺激がビリビリ来て、味も何もわからなくなる。
 飲んだ後のアフターフレーバーは甘さと香ばしさだが、あまり余韻は長くない。

 アルコールの刺激は気になるものの、このジムビームはバーボンとしてはライトで癖が無く飲みやすい方ではないだろうか。
 筆者が以前飲んだエヴァン・ウィリアムズ7年など、ねっとりするほど甘く、そして原料のコーンによる独特の匂いが強烈だった。
 そのエヴァン・ウィリアムズ7年はとてもまろやかで口当たりこそ非常に良いものの、その癖のある香りには辟易させられた。
 それに比べてこのジムビームは甘さもバーボン独特の匂いも控えめで、バーボンとしては飲みやすい方に属すると思う。
 ただ若いアルコールの刺激がキツく、ストレートで飲むと、いくらチビチビ飲んでも口の中が痺れるようにピリピリするのはいただけない。

 で、竹鶴政孝氏がハイニッカを普段飲む時にしていたように、1:2の水割りにして飲んでみたら、これがなかなかイケた。ストレートで飲んだ時のアルコールの刺激が嘘のように消え、それでいて甘さとウイスキーの味わいもしっかり残って、非常に飲みやすいものになった。

 ついでにハイボールにしてみたのだが、最初は「あまり美味しくはないな」と思った。
 不味くはないのだが、バーボン独特の癖のある甘さと匂いがくどい感じで爽やかでない印象が残ったのだ。
 しかしそれは、筆者のバーボンの作り方に問題があったのだ。

 ハイボールであれ水割りであれ、筆者はウイスキーを薄めに割ってゴクゴク飲むのを好まない。
 基本はストレートで、割る場合も濃いめにして、チビチビ飲んで濃く深い味と香りをゆっくり楽しみたいのだ。
 だから普段あまり飲まないハイボールを飲む時も、つい濃いめに作ってしまう。
 日本では、ハイボールは1:4くらいに割るよう勧められている場合が多いが、1:4では筆者には薄すぎる。
 1:2のハイボールでさえ、筆者には充分な濃さに思えてしまうくらいだ。
 だからハイボールも、1:3以上には決して薄めない。
 少なくともスコッチや日本のウイスキーのハイボールは、それで良かったのだ。

 それでも「ジムビームなどバーボンのハイボールは、本当に美味しくないのか?」と疑問に思い、もう一度ジムビームのハイボールを作って飲んでみた。
 そしてこの時、筆者はうっかり炭酸を多めにグラスに注いでしまったのだ。
 これは薄くて水っぽいものになってしまっただろう。
 そう悔やみはしたが、作ってしまった以上、諦めて飲んでみた。
 そうしたら案外悪くなかったのだ、この(筆者としては)薄めのハイボールが。
 と言うより、ジムビームのハイボールは濃いめのものより薄めの方が美味かった。

 スコッチや日本のウイスキーより、バーボンは甘さが強いし、香りにも癖があるから。
 だから炭酸の力で味と香りをかき立てるハイボールの場合、濃いめでなく1:4くらいの方がスッキリ飲めるようだ。

 低価格のバーボンの中では、ジムビームは基本的にライトで飲みやすい方に属すると思うが、初めから割って飲むように造られているように思う。
 筆者は出来の良いウイスキーならストレートで飲みたいが、これをストレートで飲むのはキツい。
 ただ1:2の水割りか、1:4のハイボールにすると、甘さとウイスキーの味と香りを保ったままスイスイ飲める。だから割ることを前提に、気軽に晩酌用の酒として飲むには悪くないバーボンだと思った。

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あの独裁者も飲んでいる、シーバスリーガル12年。

 今はこのブログでも、酒に関する記事をいろいろ書いているが。
 しかし筆者は、長いこと酒が嫌いだった。
 正確に言えば、酒と言うより酒に飲まれる酔っ払いが大嫌いだった。
 特に酔って乱に及ぶ人間に対する感情は、今でも憎悪に近いものを持っている。

 筆者を“酒ギライ”にしたのは、まずは筆者の父親だった。
 筆者の父親は、いわゆる“アル中”と呼ばれる種類の人間だった。
 父は筆者が生まれる前から大酒飲みで、しかも飲んで暴れるタイプのタチの悪い酔っ払いだった。
 だから筆者は、幼い頃から酔って怒鳴って暴れる父親に怯えながら育った。
 それゆえ、酔って乱れる酒乱に対する嫌悪感は、生理的なレベルにまで達している。

 その酒ギライで酒乱の人間を憎悪している筆者が社会に出た頃には“アルハラ”などという言葉も無く、上司や先輩が勧める酒は拒まず、潰れるまで飲むのがむしろ協調性のある良い社会人のように思われていた。
 酒の付き合いが出来ない者は、社会人として失格。
 そのように世間では思われていた。
 そんな時代だから、あの“一気飲み”も盛んに行われていた。
 当然、酒はまず酔う為のものであり、質など二の次、三の次だった。
 日本酒はアル添どころか、糖類や酸味料まで入れたものが当たり前で。
 ビールも副原料入りの喉越しで一気に飲むタイプのものばかりで、ゆっくり味わって飲めるクラフトビールなどまず無かった。
 だから社会に出た筆者は、酒と酔っ払いがますます嫌いになった。

 その筆者が、まだ子供の頃に一度だけ、「このお酒はスゴい!」と思った事があった。
 筆者の父や、筆者自身は何も誇れるものの無い人間だが、母方の伯父の一人はただ人格者であるだけでなく、社会的にもそれなりの地位にある人だった。

 筆者の父は飲むと暴れる酷い酒乱だが、そんな家族内の恥を他人に言えるわけも無く、親戚にも内緒にしていた。
 だからその伯父は、父が酔うとどれだけ酷いかを知らず、「お酒が好きなら」と善意で高級酒を父に贈ってきたりした。
 父は酒があればすぐに飲み切ってしまうアル中だが、その伯父(父から見れば義兄)がくれた高級酒だけは、棚の奥に大切にしまってチビチビと飲んでいた。

 それだけに、そのお酒に子供心に強い興味を持ってしまったのだ。
 あの飲兵衛の親父が一気に飲まずに大切にするなんて、どんな凄いお酒なんだろう……と。
 で、未成年がお酒を口にするなど、本当にいけない事なのだが。
 しかし自制心に乏しい子供だっただけに、普段の酒ギライより好奇心の方が勝ってしまい、父が居ない時にほんの一口だけその酒を飲んでしまった。

 本当に、ほんの一嘗めだった。
 だがそのお酒は、本当に強烈だった。
 舌の上で何かが爆発したかのような強い刺激に襲われ、しかし同時に、ものすごく芳しい芳香にうっとりとさせられた。
 これは、子供の飲むものではない。
 そう痛いほど痛感すると同時に、香りの素晴らしさと、強烈なアルコールの刺激の下の重厚な味わいに感動させられた。
 だから筆者は、「大人になったら、お酒はウイスキーを飲んでみよう」と心に決めた。

 ちなみに、その伯父がくれたお酒とは、ジョニーウオーカーの黒である。
 ジョニ黒は今では高級酒と言う程のものでは無いが、当時は関税の関係で八千円以上した。

 さて、大人になった筆者は、同じ大学の仲間と何度かお酒を飲みに出掛けた。
 筆者は酒乱の人間や「オレの酒が飲めないのか!?」と凄む奴が大嫌いだから、自分の意志で酒を飲みに行く時には酒癖の悪くない気の合う少人数の仲間と乗みに行く事にしている。
 で、大学の仲間と飲みに行ったある時、ウイスキーが出された。
 子供の頃の体験で、「ウイスキーは素晴らしく美味しいもの」と思い込んでいた筆者は、ワクワクしながらその“ウイスキー”を飲んだ。

 ……不味かった。
 反吐が出るほど不味かった。
 香りは貧弱だし、それに何よりアルコールの刺激が余りにもキツい。
 味もヘッタクレも無く、ただアルコールの刺激が舌にビリビリ来るのだ。
 ストレートだけでなく、水で薄く割ってもまだアルコールの刺激がキツくて不味い。
 甲類の焼酎に、色とほんの少しの味と香りを付けただけ。
 その“ウイスキー”とは、まさにそんな感じだった。
 それがサントリーの、あの角瓶であった。

 日本で最も大きな洋酒メーカーの、そして最も売れている“ウイスキー”がクソ不味いのだから、「ウイスキーとは、実は不味いものだったのだ」と思い、筆者は子供の頃の記憶は間違いだったのかと悲しくなった。

 日本には「長いものには巻かれろ」という言葉があるが、筆者は(ガキとも言うが)かなりのへそ曲がりで、筋や理屈の通らない事は断固拒否するのをモットーにしている。
 例えば理屈抜きで「皆がそうしているのだから、お前も従え」と強制されると、意地でも逆らいたくなる性格だ。
 その変に意地っ張りな性格のせいで、生き辛い事も多いし損もかなりしている。
 だが今もってガキでへそ曲がりな筆者は、損をし敵を作ってでも意地と筋を通す方をあえて選ぶ。

 だから筆者は、「オレの酒を飲めないのか!?」とか「さあ、イッキ!」とか「酒の付き合いが出来ない者は社会人失格だよ?」とか言う奴の酒は、意地でも絶対に飲まない。
 で、酒飲みに対してトラウマがある筆者の気持ちをわかってくれて、「無理しなくていいんだよ」と言ってくれる人の酒は、頑張ってでも飲む。
 ガキだよね? 大人じゃないよね?
 だが、それが黒沢一樹という人間なのだ。

 で、その筆者の気持ちを理解してくれて、アルハラなどという言葉もまだ無かった時代に酒を無理強いしなかった良い上司が、ある時に新年会に筆者も招いてくれた。
 場所はその上司の自宅で、料理は奥様の手作りでとても美味しかった。
 そして出された酒はまずビールだったが、次に筆者はウイスキーを勧められた。
 大学時代に同級生と飲んだ時の記憶で、ウイスキーは不味いものと思っていたから。
 だが尊敬する良い上司が勧めてくれるだからと、我慢して飲んでみた。
 ……美味しかった。
 香り高くて飲みやすく、メチャメチャ美味しかった。
 それはシーバスリーガルの12年で、上司がニコニコしながらこう言った。
「黒沢が来るから、こいつを用意しておいたんだ」

 そのシーバスリーガル12年は、子供の頃の筆者を感動させたジョニ黒とはまた違う味と香りだったが。
 しかしサントリーの角瓶を飲んで「ウイスキーは不味いもの」と思い込んでいた筆者の偏見を打ち破って、ウイスキーを筆者の最も好きな酒にしてくれた。

 と言うと、「サントリーの角瓶だって、充分美味いぞ!」と怒られてしまいそうだが。
 今の角瓶は違うのかも知れない。
 しかし筆者が大学生だった頃の、以前の角瓶は本当に酷かった。
 何しろまず、当時の角瓶は“リキュール・ウイスキー”だったのだから。
 僅か22%のモルト原酒を樽貯蔵ナシの“グレーン・アルコール”なるもので希釈して、それにリキュールで香りと味を付けたものを、特級のウイスキーとして売っていたのだ、大サントリーは。
 焼け跡闇市の終戦直後の混乱期にではなく、高度経済成長を遂げ日本が立派に先進国入りした後にもなって、だぞ。
 筆者がサントリーの社風を嫌い、このブログで度々サントリーのウイスキーを悪く言うのは、そういうわけだ。
 特級の角瓶ですらそうだったのだから、貧乏な大学生や若い社会人が“ウイスキー”として飲んでいたそれ以下の製品(ホワイトやレッド)の中身はもっと酷かった。

 今の角瓶の原材料表示を見ると「モルト、グレーン」となっているから、リキュールで味と香りを付けるのは流石に止めたのだろう。
 しかし日本洋酒業界の規定によると、「モルトは麦芽を、グレーンは穀物を意味する」のだそうだ。
 だから角瓶の原材料の“グレーン”が「ちゃんとしたグレーン・ウイスキー」か、それとも「樽貯蔵ナシのただの穀物アルコール」かは、今もって謎なのである。

シーバスリーガル年P1110044

 さて、話は戻るが、今回記事に取り上げたいシーバスリーガル12年は、サントリーの角瓶のせいでウイスキー嫌いになっていた筆者を、再びウイスキーの魅力にとりつかせてくれた思い出深いウイスキーだ。

 封を切りキャップを開けると、それだけで果実にも似た、甘く豊かな香りが辺りに広がる。
 ただ果実の香りだけでなく、ハニーな香りやら、樽の香りやら、スモーキー・フレーバーやら、いろいろな香りが複雑に混ざり合う。
 味はまず甘く、そしてビター。軽過ぎず、しかし重過ぎもせず、滑らかでストレートで抵抗なくスッと飲めてしまう。
 そして余韻は長く、心地良い。

 それはもちろん、日本酒や焼酎などを飲むようにゴクリと飲んでは駄目だが。
 唇を湿らすように、少しずつゆっくり味わえば、良い芳香に満ちていて、安いウイスキーにありがちなアルコールの刺激は殆ど感じない。チェイサーもあまり必要としないくらいだ。
 グラスに口をつけ、少しだけ口に含み舌の上で転がしてから飲むと、鼻孔いっぱいに良い香りが広がる。
 飲み干した後のグラスにも、甘さと樽の香りとスモーキーさがたっぷり残り、その香りさえ愛おしく感じるくらいだ。

 筆者はこれを、ジョニ黒、そしてブラックニッカ・ブレンダーズスピリットと飲み比べてみたが。
 香りの複雑さと豊かさの点では、間違いなくこのシーバスリーガル12年が一番だ。
 これに比べると、ジョニ黒の香りはややシンプルで、そして甘さとスモーキー香が突出しているように思える。
 味わいは、ジョニ黒の方が重厚で力強い。
 しかしシーバスリーガル12年が劣るというわけでなく、こちらの方がバランスが取れていて味も香りも複雑で、一般的にはより好まれるかも知れない。
 ただ、筆者個人としては、ジョニ黒の個性ある味の方が少しだけ余計に好きだが。
 ブラックニッカ・ブレンダーズスピリットの香りは、シーバスリーガル12年の華やかさには僅かに及ばない。しかしブラックニッカ・ブレンダーズスピリットには濃く甘いチョコに似た強い香りとスモーキーさがあり、これはこれで捨てがたい。
 味も、ブラックニッカ・ブレンダーズスピリットの方が濃く甘く滑らかだ。

 ジョニ黒とブラックニッカ・ブレンダーズスピリットは、良い出来だが味と香りに個性がある。甘さやスモーキーさがはっきりしているから、飲む人を少しばかり選ぶかも知れない。
 好きな人は大好きだろうが、中には苦手な人もいるかも知れない……という感じだ。
 その点、シーバスリーガル12年は香りはとても華やかな上、ハニーな甘さやら樽香やら果実香やらスモーキー香やらいろんな要素が、突出する事なくバランス良く複雑に絡み合っている。
 味と香りのバランスの取り方が本当に見事で、「ウイスキーは好きだが、これは嫌い」と言う人はまず居ないだろうと思われる。

 最近、韓国に亡命した北朝鮮の政府高官によると、金第一書記らの特権階級は中国の貿易会社を利用して贅沢品を手に入れていて、その中にシーバスリーガルも含まれているという。
 あの国の、悪評高い独裁者と同じ酒を飲んでいるのかと思うと、何か妙な気分になるが。
 まあ、金第一書記に好かれようと、シーバスリーガルに罪は無いし、ある意味「あの独裁者すら認めた銘酒」と言えるかも知れない。
 さあ、貴方も豊かな味と香りのシーバスリーガルを飲んで、独裁者の気分を味わってみたらいかがかな?

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福徳長種類の“無銘”を飲んで考えた

 近所のスーパーのお酒売場で、無銘という200mlのペットボトル入りのウイスキーを見つけた。「そのまま飲み頃!」というのが売り文句の、最初から度数12%に薄めた、水割りウイスキーだ。
 メーカーは、博多の華などの焼酎等を製造している福徳長酒類だ。
 この福徳長酒類は、博多の華も同じ度数12%の、同じ200ml入りのペットボトルで売り出している。
 キャップの色も「そのまま飲み頃!」という売り文句も、無銘と博多の華は全く同じだ。

水割りウイスキー無銘P1100949

福徳長酒類P1110112

 で、そのまま割らずに飲める焼酎と同じアイディアで売り出されたものと思われるが。
 税込みで130円という安い値段に興味を引かれて、どんなものか試しに買って飲んでみた。

 キャップを開け、グラスに注いでも、ウイスキーとしての香りはほのかでしかない。
 それでありながら、僅かだがアルコールの臭いがするのはいただけない。
 が、飲んでみると、度数12%まで水で薄めているにいては、意外にウイスキーらしい味がする。特にウイスキーの甘い味を感じる。
 ただやはりアルコールの刺激だけが舌に残り、アフターフレーバーは残らない。

 度数12%というと、度数37%のお手頃価格のウイスキーを1:2で水割りにしたのと、ほぼ同じ度数になると思われる。
 それでブラックニッカ・クリアを1:2の水割りにして、この無銘と飲み比べてみた。
 すると意外にも、この無銘の方がウイスキーらしい味わいと甘味を強く感じた。
 ただブラックニッカ・クリアは1:2まで水で薄めると、アルコールの刺激は全くと言って良いほど感じなくなる。しかし無銘は、ほぼ同じ度数の水割りなのに、熟成していないアルコールの刺激を間違いなく感じる。

 この無銘の原材料は、モルトとスピリッツだ。グレーン・ウイスキーを使わず、モルト原酒を樽熟成ナシのただのアルコールで希釈して、更にそれを水で割って作っているのだ。
 だからそのアルコールの刺激的な臭いと味を、間違いなく感じる。

 前にも書いたが、この水割りウイスキー無銘を売り出した福徳長酒類は、麦焼酎の博多の華も水で割って同じ度数12%のものを売り出しているが。
 熟成の義務や必要の無い焼酎を普段飲んでいる方は、この無銘のアルコールの刺激が気にならないかも知れない。
 しかし少なくとも樽熟成したモルトとグレーンのみで造ったまともなウイスキーを飲んでいる人なら、この無銘のアルコール臭さと舌に残る刺激が気になる筈だ。

 筆者はこの無銘を、リニューアル以前のホワイトホースを1:2で水割りにしたものとも飲み比べてみた。
 結果はホワイトホースの水割りの方がずっと滑らかで、アルコールの刺激は全く無く、しかもアフターフレーバーもちゃんと残った。
 ただ意外な事に、ウイスキーらしい味(特に甘さ)は無銘の方がやや濃いように感じた。

 アルコールの刺激の強さは、無銘>>>>ブラックニッカ・クリア>ホワイトホースだが。
 しかしウイスキーらしい味の濃さという点では、無銘>ホワイトホース>>>ブラックニッカ・クリアという結果になる。
 一体これは、どういう事だろうか。
 無銘はまず最初に価格設定があり、ブレンドにグレーン・ウイスキーを使わず、スピリッツと称する安価なアルコールで希釈する事で原価を下げ、その分モルト原酒をしっかり使ったのだろうか。

 実は筆者は、この無銘をバーボン(ジム・ビーム)を1:2で水割りにしたものとも飲み比べてみた。
 そしたら無銘にかなり似ていたのだ、その濃い味わいと甘さが。
 それで筆者は、この無銘はバーボンを水割りにしたものかと思いかけた。
 だが無銘の原材料には、「モルト、スピリッツ」と表記してある。
 もし無銘の原酒がバーボンなら、原材料にグレーンも入っていなければおかしい。
 それで筆者は、「バーボン樽で貯蔵したモルト原酒を使用したのではないか」と推測したが、真実はどうであろうか。

 この無銘が、それなりにウイスキーらしい味を出している事は認める。
 そしていつもお手頃価格の焼酎を飲んでいる方は気にならないだろうが、樽熟成したウイスキーを飲んでいる者としては、度数12%でこのアルコールの臭いと舌に残る刺激は気に入らない。

 話は変わるが、ウイスキーの世界的な産地と言えば、イギリス(スコットランド)とアイルランドとアメリカとカナダだ。
 そして近年、日本は勝手にその中に日本も付け加え、「ウイスキーの世界五大産地」と自称しているが。
 確かに近年、日本のウイスキーの質が向上し、世界で認められている。
 ただ質が向上したのは日本の一部のウイスキーであって、日本のウイスキーすべての質が良くなったわけではない。

 皆さんは、世界で最も多くの“ウイスキー”を生産し、かつ消費しているのがどこの国か、ご存知だろうか。
 イギリス? アメリカ?
 いや、実はインドなのだ。
 そのインドが何故、ウイスキーの世界○大産地を名乗れないのか。
 それはズバリ、インドで作られて消費される“ウイスキー”の質が悪いからだ。
 10%程度の原酒をアルコール(スピリッツ)で希釈したものが、インドでは“ウイスキー”として多く出回っているのだ。
 だから生産量と消費量がいくら世界一でも、インドは他国からウイスキーの世界○大産地として認められないのだ。

 で、日本の場合はどうであろうか。
 確かにサントリーやニッカやイチローズ・モルト等、世界で高く評価されるウイスキーを造っているメーカーもある。
 しかし同時に、日本は今もなおスピリッツや樽熟成ナシの穀物アルコールで希釈した“まがいものウイスキー”も作り続けている。

 他のイギリスやアイルランドやアメリカやカナダではウイスキーの定義が法律でハッキリしていて、単純にしてわかりやすく言えば、「度数40%以上で穀物のみを使い、年単位で樽熟成したもの」しかどこの国でもウイスキーとして認めていない。
 それに比べて、「ウイスキーの世界五大産地の一角」を称する、我が日本はどうであろうか。
 日本の酒税法によれば、日本ではウイスキーは「アルコール(スピリッツ)や香料を加えたものもOK」で、しかも樽熟成の年数どころか、「樽熟成をしなさい」という規定すら無いのだ。

 このブログで、何回も繰り返し書いてきたが。
 日本の洋酒業組合の規定では、原材料のモルトは麦芽を、グレーンは穀物を意味するのだそうだ。
 だから原材料に「モルト、グレーン」と書いてあるからといって、間違いなく樽熟成してあるのだななどと信じたら大間違いなのである。
 事実サントリーは少なくとも1980年代まで、あの日本で大人気の角瓶に、樽熟成ナシのグレーン・アルコールと称するものとリキュールを混ぜていた。

 おわかりだろうか。
 廃糖蜜から作った最も安価なアルコールのみをスピリッツと称し、穀物から作ったアルコールなら樽熟成ナシでも「グレーン」で通用してしまうのだ、この日本という国では。
 そもそもウイスキーに樽熟成の規定が無いのだから、原材料に「モルト、グレーン」と書いてあってもちゃんと樽熟成を経た本物かどうか信用出来ないのが、この国のウイスキー業界の実状なのだ。

 なるほど、近年は日本のウイスキーが世界的な賞も取っている。
 しかしピンの方は良くても、キリの方はインド並に粗悪な製品が出回っている現状で「ウイスキー世界五大産地の一角」を自称するのはおこがましいと、筆者は考える。
 世界五大産地を称するなら、少なくともウイスキーの定義を他の四カ国と同一にして、「度数40%以上で穀物のみを使い、年単位で樽熟成したもの」のみをウイスキーと認めるよう、法改正すべきだ。
 法改正が無理なら、少なくとも日本洋酒業界内でそう自主規制すべきだ。
 樽熟成の規定すら無く、アルコールを混ぜてもOKという現状で「ウイスキーの世界五大産地」を自称するなど、日本人として他の四カ国に恥ずかしくないのだろうか。

 と言うと、「安いウイスキーの需要もある、それを認めないのは庶民イジメだ」と言う人も出て来るかも知れないが。
 他のウイスキーの世界四大産地、イギリスやアイルランドやアメリカやカナダの人達は、樽熟成ナシのアルコールを混ぜたまがいものの“ウイスキー”など無くとも、少なくとも何も困ってはいない。
 樽熟成ナシのアルコールを混ぜた安い偽ウイスキーが無くなって困るなら、甲類の焼酎を飲めば良い。それだけの話ではないか。

 ウイスキーには年単位の樽熟成が必要だし、樽熟成していないものはウイスキーと認めるべきではないと、福徳長酒類の水割りウイスキー無銘を飲んで改めて思った。
 廃糖蜜から作ったアルコールは、スピリッツと表示されるからまだ良いが。穀物を原料としたグレーン・アルコールは、我が日本国のウイスキーの原材料表示ではただ「グレーン」と表記されるのだから、本当にたちが悪い。
 そのただの穀物アルコールと、ちゃんと樽熟成したグレーン・ウイスキーを区別する為にも、日本のそのあたりの原材料表示は改めるべきだと思うが、サントリーやニッカなどの日本のウイスキーの大手メーカーはどう考えているのだろうか。

 日本でせっかく良いウイスキーを造っても。
 樽熟成の規定すら無く、樽熟成していないアルコールを混ぜても構わないなど粗悪な製法も許しているままでは、日本のウイスキーのイメージが落ちるばかりではないだろうか。
 筆者は別に、「お金持ちだけ飲める、高いウイスキーだけ造れ」と言っているのではない。
「安かろう、悪かろう」ではなく、安くてもそこそこ飲める製品を造る為、せめて他の世界のウイスキー四大生産国と同じレベルの製造基準が日本にも必要ではないかと、強く訴えたい。

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濃姫の里隠し吟醸と清州桜酒造

 スーパーや量販店の酒コーナーに行くと、一合の紙パックで売られている安酒をよく見る。
 ある店で、その中に吟醸酒を見つけた。
 愛知県清須市の清洲桜酒造の、濃姫の里隠し吟醸というやつだ。

 アル添だが間違いなく精米歩合60%の吟醸酒で、なのに値段はワンカップより安い。
 安かったから、騙されたつもりで買って飲んでみたのだが、思ったより悪くなかった。
 で、今度は四合瓶のを買って、じっくり味わって飲んでみた。

清州桜隠し吟醸P1100965

 冷やで飲む日本酒は、筆者はいつもワイングラスで飲んでいるのだが。
 グラスに注ぐと、華やかで甘い吟醸香が心地良い。四合入りの瓶で買って値段は七百円もしなかったが、これは間違いなく吟醸酒だ。
 味も悪くはない。
「薄い」と言うか「スッキリした」と言うか微妙な部分はあるが、とても飲みやすくイヤ味が無い。
 口に含み、舌の上で転がしていると、適度な辛味と苦味、そして僅かな甘味を感じる。

 これは吟醸酒だがアル添だから、アルコールを加え水を足している分だけ薄まり、純米酒のようなふくらみや奥深さが味に欠ける点はある。
 しかしそれも「良質な純米酒と比べれば」という話であって、比べなければ気にせずスイスイ飲めてしまう。
 ちびちびゆっくり飲んでも美味しいが、純米でない分だけ軽さもあるのでグイグイたくさん飲めてしまいそうだ。
 値段は安いのに香り高くイヤ味なく美味しく、どんどん飲めるコストパフォーマンスの良い美酒だ。

 日本酒としての出来と味は、もちろん以前このブログに書いた会津の寫楽の方がずっと良い。
 しかし寫楽の値段は、この濃姫の里隠し吟醸の倍以上だ。
 それを考えれば、濃姫の里隠し吟醸は本当に良く出来た酒だと思う。

 ただ、プラス1.0という日本酒度にしては、辛さが少し気になる。
 数値的にはやや辛口という程度なのだが、甘さもあるのに舌に残るのは辛さだ。
 それはやはり、添加しているアルコールのせいではないだろうか。

 純米酒を飲み慣れた筆者からすると、アル添のこの濃姫の里隠し吟醸は、「スッキリした辛口」とも「ふくらみに欠け、アルコールの辛さのある」とも言える微妙なところがある。
 しかし香りは良いし、辛口で酸味も甘さもあり後口もキレも良く、値段を考えれば文句など言えない。

 人によっては、甘辛両方の味をしっかり感じる旨口の純米酒を「重い」と感じる方もいる。
 そういうスッキリした酒を好む方には、むしろ純米酒より美味しく飲みやすく思えるかも知れない。
 この濃姫の里隠し吟醸の売り文句は「フルーティーな香りと淡麗でスッキリとした上品な味わい」だが、その看板に偽りはない。

 この濃姫の里隠し吟醸を造っている清洲桜酒造は、一合入りの紙パックで百円前後の安い酒を主に造っている会社だが。値段の安さも大事だが、酒の造り手としてはせめてこのレベルの酒も売り出せねば、酒を造っていて楽しくなかろうと思う。
 濃姫の里隠し吟醸を知る人は、そう多くないだろうが。筆者としては、安くて良い酒だと自信を持って言える。
 特別に美味い酒ではない、しかし値段を考えれば充分過ぎるほど良い酒だ。

 で、つい調子に乗って、この清洲桜酒造の主力商品であろうと思われる、清洲城信長鬼ころしも飲んでみた。
 一合で百円前後、そして3リットルの紙パックでも千二百円を切る値段で売られている、文字通りの安酒だ。
 もちろんアル添だが、醸造用アルコールに加えて糖類と酸味料まで入れてある。
 筆者は以前にも、その種の酒を飲んでみた事があるのだが、あまりの不味さに一口で吐き出してしまった。
 その最低クラスの日本酒を、濃姫の里隠し吟醸を出した清洲桜酒造はどう造るだろうか。
 恐る恐る、試し飲みしてみた。

清州城信長鬼ころしP1100936

 例によってワイングラスに注いでみると、香りは(良くもないが)このクラスの糖類&酸味料入りの安酒としては悪くない。
 味も同様で、決して美味しいとは言えないのだが、これはとりあえず飲めてしまう。
 口に含むとまず苦味を、そして酸味と辛味を感じる。その辛さも添加されたアルコールによるもので、飲み下した後で舌がピリピリする。
 しかしそれでも、飲もうと思えば普通に飲めてしまうのだ。
 美味しいとは思わない。
 だが吐き出してしまいたくなるほど不味いとも思わない。

 アル添で、しかも糖類と酸味料も加えられているから、甘さも辛さも酸味も後から加えられたものの味が大きく影響している筈だ。
 なのに案外不味くなく、ベタつくこともなく、日本酒らしい味をとりあえずは保っている。
 美味いとは決して言えないが、安さを最優先した中で限界いっぱい良い酒を造るべく、メーカーはよく努力したと思う。
 他社の同クラス一合で百円の紙パックの酒は、筆者には不味すぎてどうしても飲めず、一口で吐き出してしまった。
 しかし清洲桜のコレは、一合を最後まで飲めた。
 美味いとは決して思わないが、味の点ではワンカップなど大手の他社のもっと高い普通酒と変わらないと思った。

 清洲城信長鬼ころしは、美味しい酒を少しずつ味わって飲みたい人には、もちろん全然向かない。
 しかし値段の安さを最優先して飲む人達に、少しでも気持ち良く飲んでもらえるように、メーカーは努力して造っていると思った。

 この清洲桜酒造は、ええなもという焼酎も一合の紙パックを百円前後で売り出している。
 安い焼酎と言えば、たいてい廃糖密から作ったアルコールを薄めた甲類焼酎だ。
 しかしええなもは、本格焼酎もブレンドした甲乙混和焼酎だ。
 ただこの“甲乙混和焼酎”というのがくせ者で、よく見ると乙類の本格焼酎は香り付け程度に、全体の10~20%程度しか加えられておらず、殆どがただのアルコールというまがい物が少なくない。
 しかし清洲桜酒造のええなもは、甲類と乙類を50%ずつ混ぜている。
 他の安い甲乙混和焼酎の中では、かなり良心的に造っている。

 もちろん、このええなもより、本物の本格焼酎の方がずっと美味い。
 しかし百円で買える焼酎としては、よく努力して造っているように思う。

 今回、筆者が取り上げた濃姫の里隠し吟醸を造ったこの清洲桜酒造は、「同じ質ならより安く、同じ値段ならより良いものを」というポリシーで頑張っているように思えた。
 何しろ第一に考えているのが安さだから、美酒の蔵元として有名になる事は無いだろうが。
 しかし安さを優先しつつ、その中で最大限に品質も保つべく努力している清洲桜酒造のような会社もある事も、酒好きの人達に知ってほしいと思う。

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ザ・モルツとサントリーのビールについて

 ビールと発泡酒と新ジャンル酒に分かれていたビール類の税金が、将来的に統一されることになった。
 この事をアサヒとサッポロは歓迎し、新ジャンル酒などの売り上げが大きいサントリーとキリンは困惑していると聞いた。

 新ジャンル酒の売り上げに頼らねばならない程、サントリーのビールは不味いのだろうか。
 そんな疑問を持って、サントリーのビールの基本であろうザ・モルツを飲んでみた。

サントリー・ザ・P1100879

 プルタブを開けグラスに注ぐと、好ましい香りが漂うが、香り自体は比較的抑えめだ。
 味わいは軽いが、イヤ味は全く無い。程良い苦味だけでなく、よく味わえば麦の甘みもある。

 サントリーの二代目社長であった佐治敬三氏はすっきりしたビールを求め、そのため苦味とコクが求められた時代には、サントリーのビールは「水くさい」と言われたという。
 飲んでみて断言できるが、ザ・モルツは決して水くさくも水っぽくもない。
 香りは華やかではないものの、よく嗅げば甘い良い香りはするし、麦の甘さも程良い苦味もある。

 ただ気楽に喉越しでゴクゴク飲めてしまう軽さがあり、ビールにコクと飲みごたえを求める人は物足りなさを感じると思う。
 缶には「グッとくる‘うまみ’」とあるが、うまみとコクに関しては正直に言って物足りない。

 とは言うものの、ゆっくり、じっくり味わって飲んでも、やや薄く感じるものの‘うまみ’は間違いなくある。
 喉越しに飲んでも美味しいが、喉越しに一気に飲み干してしまうには勿体ない繊細で上質な味わいがこのビールにはある。

 じっくり味わうにはややもの足りず、一気飲みしてしまってはせっかくの‘うまみ’が充分に感じられない。
 じっくり味わうにも、喉越しで飲み干すにも、どちらにしてもやや中途半端に思える。
 ただこのビール、イヤ味というものが全く無いのだ。気持ち良くスイスイ飲めてしまうし、味わって飲めばそれなりに‘うまみ’も感じられる。
 このザ・モルツは「大好き!」と言う人と「嫌いだ」と言う人が分かれるタイプのビールではなく、ビールは喉越し派にも、じっくり味わいたい派にも嫌われない、万人向けの優等生的なビールに思える。
 実際、このビールを飲んで「不味い、嫌いだ!」と言う人は、まず居ないのではないかと思う。

 個人的に言えば、これより美味いビールは他にもっとあると思うし、数あるビールの中からあえて選んで買おうとするほどのものではないと思う。
 しかし宴席などで出されたら、喜んで飲みたいと思う。
 ザ・モルツとは、筆者にとってそんなビールだった。

 これが佐治敬三氏の求めた、すっきりしたビールなのだろうが。
 筆者個人の好みから言えば、ザ・モルツはやや薄味で、コクとうま味について物足りなく感じる。
 しかし同時に、驚くほど味に癖やイヤ味が無いのだ。
 これほど抵抗無くスイスイ飲めるビールは、そう多くない。

 ビールとしては、もちろんより高価なザ・プレミアム・モルツの方が、味も香りも強くて上等なのだと思う。
 しかし味わいが軽い分だけ、プレモルよりザ・モルツの方が飲みやすいという人もいるのではないかと思われる。

 また、同じビールでもアサヒのスーパードライなどの“日本人好みのビール”には、完全に「キンキンに冷やして喉越しで飲む専用」で、ぬるくなってきたり、ゆっくりじっくり飲んだりすると、途端に不味くなるものが少なくない。
 しかしこのザ・モルツは、少し薄味ではあるものの、ぬるくなっても、ゆっくりじっくり飲んでも嫌な味にならず‘うまみ’を感じられる。

 ビール類に関して、サントリーは新ジャンル酒の金麦に頼っている部分が大きいようだが。
 筆者も以前、金麦も飲んでみた。新ジャンル酒としては不味くは無かったが、非常に薄味な上に金属的な嫌な味もあり、決して好ましいものでは無かった。
 暑くて喉が渇いた時に、よく冷やして一気飲みするには良いが、とてもじっくり味わって飲めるようなシロモノではなかった。
 はっきり言うが、ザ・モルツと金麦の味(品質)の差は、値段の差よりも大きいと思った。

 だから筆者は、サントリーはもっと自信を持ってビールを造れば良いと思う。
 筆者はサントリーという会社に好意的でなく、このブログでもサントリーのウイスキーや赤玉ワイン等について批判ばかり書いてきたが。
 ただビールに関しては、サントリーの製品は決して悪くないと思う。
 今回取り上げたザ・モルツも、筆者の好みとは少し違うが良く出来た万人向けのビールだと思うし、ザ・プレミアム・モルツ香るエールは個人的にもかなり好きだ。

 麦芽とホップだけで造ったサントリーのビールは、製品については他の日本の大手メーカーに決して劣らない。
 だからサントリーのあの宣伝力を、金麦でなく本物のビールの方に向ければ、サントリーのビールはもっと売れるのではないかと思われる。
 少なくとも品質の点からみれば、数年後のビール類の税金の統一を、サントリーは決して不安に思うことは無いのではないかと筆者は考える。

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会津の銘酒“寫楽”を飲んでみた

 筆者は幼い頃から歴史、特に日本の歴史が好きで、それで大学も史学科に進学した。
 その事を知っている母の古い知人に、「歴史が好きなら、是非」と、寫楽というお酒を戴いた。
 会津若松の、純米酒である。

寫楽P1100969

 筆者は日本人だし、できる事なら日本酒を大好きになりたいのだが。
 ただ日本酒は美味いものと不味いものの差がかなりあり、当たり外れが甚だしい。

 無論、ウイスキーやビールやワインなどの他の酒でも、美味い不味いの差はある。
 しかし日本酒ほどその差が激しいものは、他に無いのではないかと思われる。

 何しろ日本酒には、戦時中の米不足により「三倍に薄め、アルコールや糖類や酸味料等を加えて増量したまがいものの酒を作ってきた」という歴史がある。
 そして酒を水増しし、アルコール等を加えて作れば儲かるという事を覚えた酒造会社が、戦争が終わり米が余るようになった今もなお、嵩増ししたまがいものの酒を作り続けている。

 例えばワインはどんな安物も葡萄のみで造られていて、水増ししてアルコール等で似せた味に作ったものなどあり得ない。
 と言うと、訳知り顔で「ポートワイン等の、発酵途中でアルコールを加えた一部のワインもある」と言う人が必ず出て来る。
 しかしその発酵途中で加えられるものはブランデーであって、日本のいわゆる“アル添酒”のようにただのアルコールを加えるのとは意味がまるで違う。

 残念ながらこの国では、水で嵩増ししアルコール等を加えたまがい物が日本酒として広く売られ、そして飲まれている。
 だから日本酒は、美味いものはとても美味しいが、不味いものはどうしようもなく酷い味だ。

 筆者が戴いた寫楽はとりあえず純米酒で、アルコールや糖類や酸味料を加えたその種のまがい物ではないが。
 しかし葡萄だけで造られたワインすべてが美味いとは限らないように、米と米麹だけで造られた日本酒も、純米だからといって美味いとは限らない。
 香りが良くなかったり、変に渋味が強かったりする、あまり美味しくない純米の日本酒も筆者は何度か飲んできた。

 だから寫楽を戴いた時、嬉しいのと同時に「これは困った」と思った。
 自分で金を出して買ったものなら、不味ければ「不味い!」と遠慮なく言える。
 しかし親の古い知人が、「歴史が好きな息子さんに」と好意でわざわざ会津若松から買って来て下さったものに、「不味かった」とは言えないではないか。
 もし不味くても、作り笑顔で「美味しかったデス、本当に有り難うございマシタ」と嘘を言わねばならぬのは心苦しい。

 だから「もし美味しくなかったら、何と嘘の誉め言葉を言おう」と半ばビクビクしながら飲んでみることにした。
 が、そんな心配は、全くの杞憂だった。

 キャップを開けた瞬間に、青リンゴを思わせるフルーティーな香りが優しく鼻孔をくすぐった。
 分類上は純米酒だが、注いだグラスに鼻を近付けて嗅げば、柔らかな吟醸香が間違いなくある。
 と言っても「華やかに立ち上る」というほど強いものではなく、心地よく穏やかな香りなので、食事の妨げになる事は無い。

 味も、ありがちな水のような淡麗辛口ではなく、甘辛のバランスの取れた、優しい、そしてふくらみのある豊かな味だ。
 口に含んだ瞬間、「少し甘いか?」と思うのだが、適度な辛さがそれを上手く抑え、程良い酸味がキレの良さももたらしている。
 じっくり味わえばほのかな苦味もあるが、それも決して不快なものではなく、雑味やイヤ味を全く感じない。

 これは本当に美味しい。
 香りはフルーティーだが食事の妨げになるほど華やかでなく、味は甘さも辛さもありふっくらと豊かで、酸味や苦味も程良く、バランスの取れた文句の付け所が全く無い銘酒だ。
 これより美味い日本酒は、筆者は七賢大中屋(純米大吟醸)以外に飲んだ事がない。

 筆者は酒を飲むくせにかなりの下戸で、杯に一杯か二杯飲むだけで顔だけでなく掌も赤くなってしまう。
 そんな有り様だから、空腹時に酒を飲むと350mlの缶ビール一本で足元が怪しくなるくらい酔ってしまう。
 だから筆者は酒は食事とは別に、食後に飲む事が多い。
 日本酒も、食後にゆっくり酒だけで味わっている。
 しかしこのふっくらと豊かで優しい味の寫楽を飲んで、「食中酒として飲んだら、さぞ食事を美味しくするだろう」と思った。
 事実ネットで見てみると、この寫楽の純米酒は地酒の専門店では食中酒として勧めている。

 この頂き物の寫楽純米酒だが、本当に良い酒だった。
 贈って下さった方に、義理やお世辞でなく心から「美味しかった、ありがとうございました」と言える事が、筆者としてもとても嬉しい。
 こんな良い酒を飲んで年を越し新年を迎えられる筆者は幸せだと、心から思う。

 遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
 新年という事で、当ブログも更新を暫くお休みさせていただきます。
 七日の土曜日よりまた駄文を書き連ねますので、今年もよろしくお願い致します。


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ブラックニッカ・クリアを再び飲んでみた

 ニッカで一番売れているウイスキーは、ブラックニッカ・クリアであるらしい。
 筆者はこのウイスキーには、物足りなさを感じ、否定的な印象を持っていた。それで「ブラックニッカ・クリアはウイスキーではない」というような事を以前このブログに書いた。
 その事で、ブラックニッカ・クリアをお好きな方からお叱りも受けた。
 それらのお叱りよりも、「働いて初めて貰った給料で買ったウイスキーがブラックニッカ・クリアだったので、複雑な気持ちになった」というコメントは、筆者の胸にズシリと残り続けた。

 で、今年はブラックニッカ発売60周年でもあるし、ブラックニッカの基本とも言えるブラックニッカ・クリアを、改めて一本じっくり飲んでみることにした。

ブラックニッカ・クリアP1100907

 キャップを開けると、香りは穏やかだ。
 飲むとまず甘さを感じるが、度数は37%なのにアルコールのピリピリする刺激がかなり強い。
 ストレートで飲むとただアルコールがキツいだけでなく、余韻も短い。しかしクリアな味で、サントリーのレッドトリス・クラシックよりクセや濁りのないスッキリした味だ。

 開封した直後は味も香りも薄く、トワイスアップでも水っぽく感じられて物足りない。にもかかわらず、アルコールの刺激だけはまだしっかり残る。
 竹鶴政孝氏は、日頃はハイニッカを1:2の水割りにして飲んでいたと言うが。
 ブラックニッカ・クリアもそのようにして飲んでみたところ、トワイスアップよりさらに薄く水っぽく物足りなくなった。ただアルコールの刺激は無くなり、気軽にグイグイ飲める。

 キャップを開けて味見をした後、一週間ほど放置してまた改めて飲んでみた。
 すると今度は、チョコレートに似た甘い香りがはっきり出てきた。
 そのせいかアルコールのツンツンした刺激も減り、味も甘さを増したように思えた。

 それをリニューアル前のホワイトホースと飲み比べてみたが、ホワイトホースの方が明らかに香り高く味も深い。しかしブラックニッカ・クリアには味に苦みもクセも無く、味と香りが薄い分だけ、ウイスキーを飲み慣れない人には親しみやすいかも知れない。
 ただストレートで飲むには、若いアルコールの刺激がどうにも強すぎる。

 で、開封して何日も経ったブラックニッカ・クリアをまたトワイスアップにしたが、かなり飲みやすくはなるが、アルコールの刺激はまだ残る。

 そのキャップを開けて一週間後のものを、再び竹鶴氏流の1:2の水割りにしてみたところ、今度は意外に悪くなかった。確かに香りはほのかだが、日本酒や1:1に割った焼酎を飲む用に多めに口に含んでスイスイ飲めば、穀物の味と甘さを確かに感じ、これは間違いなくウイスキーだと思った。そして飲んだ後にアフターフレーバーも残った。
 ブラックニッカ・クリアで最も気になる若いアルコールのピリピリした刺激も、この1:2の水割りでは殆ど気にならなくなる。

 さらにハイボールにもしてみたが、やはり味と香りは薄いものの、イヤ味なく飲みやすく、それでいてウイスキーの味は間違いなくある。

 このブラックニッカ・クリアは、ストレートやトワイスアップで少しずつチビチビ味わって飲むのには全く向いていない。
 しかし竹鶴氏流の1:2の水割りや、今の日本人に好まれるハイボールにして気軽に飲むと、値段の割になかなか悪くないのだ。
 そしてノンピートだから、ピート香やビターさが苦手な人にも好まれるだろう。

 このブラックニッカ・クリアは、キャップを開けた直後には色付きで度数の高い麦焼酎のようなものだが。
 開封して一週間も経てば、ちゃんとウイスキーらしい香りと味も出てくる。
 あくまでも割って飲むべき製品で、ストレート等の濃いめでチビチビ味わって飲むには向かない。
 濃いめでは若いアルコールの刺激が強すぎて美味しくないが、水割りやハイボールにすれば気軽に飲め、そしてウイスキーらしい味と香りも間違いなくある。
 だからこれは色付き麦焼酎ではなく、間違いなくウイスキーだ。

 濃いめでじっくり飲みたい本格派には、かなり物足りないだろうが。
 しかし「まがいもの」というわけでもなく、水や炭酸で割って気軽に飲むには悪くないウイスキーだと、改めて飲んでみて思った。

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限定製造の、麦とホップ赤

 筆者はビール類なら、主に麦芽とホップだけで造られたビールを飲む。
 ただ風呂上がりや暑い時などに、喉の渇きを癒す為に飲むなら新ジャンル酒も悪くないと思う。
 その新ジャンル酒も様々で、どうも好みに合わず「まずい!」と思ってしまうものもあれば、値段の割には良く出来ていると思えるものもある。

 で、その新ジャンル酒の中で、筆者が最も良く出来ていると思っているのが、サッポロ麦とホップだが。
 先日、よく行く酒屋で見慣れない赤い缶の麦とホップを見かけ、迷わず買ってみた。

サッポロ・麦とホップ赤P1100889

 その麦とホップ赤だが、プルタブを開けた途端にホップの良い香りが漂ってくる。
 味も香りの良さに劣らず、本物のビールに近いコクと旨味を感じる。
 新ジャンル酒なのに、少しずつ、じっくり飲んでも悪くない。
 ただその分だけ、喉越しでグイグイ飲むと少し重い印象を受けるかも知れない。

 ドイツ産麦芽とバイエルン産ホップを一部使用し、ドイツのビール祭りで親しまれるスタイルを参考に作られたというが、本物のドイツ産ビールには及ばないものの、それにかなり近い味を低価格で実現している。
 これまでに飲んだ何種類かの新ジャンル酒の中で、個人的には一番美味いと思った。

 メーカーは「一口目の麦の甘み」「しっかりとしたコク」「美しい赤い色」を実現したと謳っているが、それはすべて真実だ。
 ゆっくり、じっくり飲んでも美味い。日本の一部のビール類にありがちな、金属的な嫌な味が全く無い、嫌味のない美味しい新ジャンル酒だ。
 筆者は好きだが、人によっては「苦いし、重い」とも言う。
 この麦とホップ赤は、ビールを味わって飲む人が安く気軽に楽しんで飲むもののように思える。一気にゴクゴク、プハーッとやりたがる、日本に多い喉越し派のビール飲みには、ちょっと合わないかも。

 もちろん、本物のドイツのビールにはとても及ばない。
 しかし本物のビールの約半分という値段を考えれば、充分過ぎるほどの味と香りだ。
 筆者ならば、国産の下手なビール(糖質副原料をゴチャゴチャ入れたヤツ)よりも、こちらの方を飲みたいくらいだ。
 安い値段で、ドイツのビール風の味と香りを出そうと頑張ったこの麦とホップ赤、限定製造だそうだから、興味のある方は酒屋にお急ぎを。

 と、麦とホップ赤を誉めて書きはしたものの。
 もしこれが、麦芽とホップのみで造られた本物のビールと同じ値段で売られていたら。
 その場合には、筆者も間違いなく本物のビールの方を選ぶ。
 良く出来てはいるが、これはやはり発泡酒をさらにスピリッツで割った新ジャンル酒で、麦芽とホップをたっぷり使った本当のビールには勝てない。
 ただ「値段を考えれば、本当に良く出来ている」ということだ。

 国は、近いうちにビールと発泡酒と新ジャンル酒の税金を一本化するという。
 もしそうなって、ビールと発泡酒と新ジャンル酒の価格差が縮まったとしたら。
 それでもなお、あえてビールでなく発泡酒や新ジャンル酒を選んで飲む人が、どれだけ残るだろうか。
 この麦とホップ赤も、「本物のビールの半額の新ジャンル酒としては」という前提で、特に良く出来ていると思うのであって。
 だから他の酒に比べて異常に高過ぎる日本のビールに対する税金が是正され、ビールと発泡酒と新ジャンル酒の値段に余り差が無くなれば、筆者はこの麦とホップ赤でなく、本物のビールを飲むと思う。

 ビール類に対する税が統一されたら、発泡酒や新ジャンル酒はやがて消え行くのだろうか。

 そんな事を考えながら、少し複雑な気持ちで麦とホップ赤を飲んだ。

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ブラックニッカ・ブレンダーズスピリットを飲んでみた

 とうとう飲んでみました、ブラックニッカ誕生60周年を記念する限定販売の、ブラックニッカ・ブレンダーズスピリットを。
 筆者が買った店では本体2500円、税込み2700円と言ったところで、「ジョニ黒やシーバス・リーガル12年などの、12年もののブレンデット・スコッチより少し高いかな」という程度だった。

ニッカ・ブラックニッカ・ブレンダーズP1100739

 ただキャップを開けただけで、グラスに中身を注ぐ前からチョコレートやナッツ等を思わせる甘い香りが漂ってくる。
 グラスに注ぐと、その香りはもっと豊か、かつ華やかに周囲に広がる。
 口に含むとまず甘さを、そしてスパイシーさを感じる。味わいは重厚だが、しかしなめらかで口当たりはとても良い。
 スモーキー香は初めはあまり感じず、複雑で奥深い味わいの中から次第に立ち上がってくる感じだ。
 余韻はかなり長く続き、香ばしさとスモーキーさをしっかりと感じる。

 このウイスキーはアイラ島のスコッチと違って、ピート香を初めから強く感じるタイプではなく、飲むうちに次第に感じるタイプだ。
 瓶の裏面のラベルに書いてあるように、あくまでも「穏やかなピートのコクと余韻」だ。
 初めはピート香を意識せず、しかし余韻の中に穏やかに、かつ確かに残るという感じだ。
 だからピート香が好きな人にも、あまり好きでない人にも嫌われないと思う。

 アルコール度数は43%だが、そのやや高めの度数を感じさせないまろやかさがあり、そして味は重厚で、香りは華やかだ。
 これを飲んでしまうと、同じニッカの製品で本体2300円で売られていたスーパーニッカが、味でも香りでもあらゆる面で物足りなく思え、割高に感じられてしまう。

 実は筆者は、ニッカのウイスキーでは去年の8月に惜しくも終売になってしまったG&Gがかなり好きだ。
 はっきり言って、スーパーニッカよりG&Gの方が間違いなく好きだ。
 その買い置きして大切にとっておいたG&Gと、ブラックニッカ・ブレンダーズスピリットを飲み比べてみた。
 甘くスモーキーで、G&Gは確かに美味い。
 しかし比べてしまうと、この誕生60周年記念のブラックニッカ・ブレンダーズスピリットの方が間違いなく香り高く、かつまろやかで深い味だった。

 ついでに、ブラックニッカ・ブレンダーズスピリットを良質なスコッチの定番、ジョニーウォーカーの黒ラベルとも飲み比べてみた。
 ジョニ黒は甘くビターでスモーキーで、なめらかさではブラックニッカ・ブレンダーズスピリットを僅かに上回っているように感じた。
 飲みやすさの点では、ジョニ黒の方が上かも知れない。
 しかし筆者には、ブラックニッカ・ブレンダーズスピリットの方が味と香りがより濃く凝縮されているように思えた。
 個人的には、ブラックニッカ・ブレンダーズスピリットはジョニ黒にも決して負けていないと思うし、「むしろこちらの方が上」と感じる人もいるのではないかと思った。

 よく「ジャパニーズ・ウイスキーは割っても味のバランスが崩れにくいのが特徴」と言われるが。
 筆者はこのブラックニッカ・ブレンダーズスピリットを、トワイスアップにして飲んでもみた。するとアルコールのキツさが全くと言って良いほどなくなり、とても飲みやすくなる。そして甘さがよりハッキリするだけでなく、フルーティーさも感じられた。
 が、ストレートでも飲み慣れた者にとっては充分になめらかだし、ストレートの時の重厚さが薄れて少し水っぽく感じられてしまうのもまた事実だ。

 このブラックニッカ・ブレンダーズスピリットを、ある程度加水して飲むのと、ストレートで飲むのと。
 どちらが良いかは、「人による」と思う。
 飲みやすさを優先するなら、少量加水すると良いと思うし、本来の味と香りを楽しみたければ、ストレートのままが良い。
 筆者個人は、ストレートのままの味と香りが好きだ。

 日本では、ウイスキーと言えば以前は「水割り」で、今では「ハイボール」が当たり前のような風潮だ。
 まあ、このブラックニッカ・ブレンダーズスピリットをハイボールにしても、別に不味くはないのだろうとは思う。
 けれどストレートで充分美味しく飲め、トワイスアップですら少し薄めに感じてしまう筆者としては、このブラックニッカ・ブレンダーズスピリットをそれ以上に薄く割って飲む気にはどうしてもなれず、ハイボール等での味についてはコメントできない事をお詫びしておく。

 ブラックニッカの発売60周年を記念した、このブラックニッカ・ブレンダーズスピリットには、ごく少量なのだろうが60年前の1956年に蒸留されたモルト原酒もブレンドされているという。
 確かにこれは、その60年の歴史を感じられる重厚かつ香り高い立派なウイスキーだった。
 これが今後もずっと生産されるレギュラー商品でなく、“Bottled in 2016”と明記された数量限定生産品であることが、残念でならなく思う。

 しかしまあ、貴重な古いモルト原酒も使用した製品であるから、数量限定というのも仕方のない事なのであろう。
 だから60年前のモルト原酒もブレンドしたこのブラックニッカ・ブレンダーズスピリットに興味のある方や、この味と香りに魅せられた方は、一日も早く酒屋に行き、当製品を確保しておくことをお勧めする。

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