空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

ウィンチェスターというスタンダード・スコッチ

 行きつけの酒屋でウィンチェスターというスタンダード・スコッチを初めて見て、まず「西部劇のライフル銃のような名前だな」と思ってしまった。
 瓶に貼られているラベルも、どこか安っぽい印象がある。
 だが値段が手頃(税込みで1004円)だったので、面白半分でつい買ってみてしまった。

ウインチェスターP1110103

 キャップを開けてグラスに注ぐと色は淡い金色で、花のような柔らかな香りが広がる。
 この価格帯のウイスキーにしては、アルコール臭は少なめだ。
 口に含むと澄んだ味わいに、ほのかな甘み。
 なかなか出来の良いライトタイプのスタンダード・スコッチで、味わいも軽くアフターフレーバーも花のように柔らかでそう長くは続かない。
 飲んだ後に、僅かにスモーキーさも感じる。

 千円ちょっとのスタンダード・スコッチとしては飲みやすいし、日本では殆ど名を知られていないのにもかかわらず、出来はなかなか良いと思う。
 ただ二千円クラスのウイスキー(ジョニ黒やシーバスリーガル等)と比べてしまうと、アルコールのキツさはあるし、香りや味の豊かさに物足りなさを感じてしまう。
 出来は悪くないが、あくまでも「スタンダード・スコッチとしては」という範囲内であって、過度の期待は禁物である。

 これをトワイスアップにするとアルコールの刺激がとても少なくなり、飲みやすくなる。
 しかし同時に微妙な香りが減り、味も水っぽくなる。
 だから1:2の水割りにするともっと飲みやすくなるが、同時にもっと軽く水っぽくなる。

 店はこのウィンチェスターについて、POPで濃いめのハイボールを勧めていた。
 その通りに濃いめのハイボールにしてみると、持ち味である花のような香りが炭酸の力で沸き立ち、とても飲みやすく嫌みもない。

 ただ元々ライトで繊細な味わいな為、ハイボールだけでなく水割りでも濃いめにしないと薄く水っぽくなりがちだ。
 だから水割りでもハイボールでも、割るなら薄くなり過ぎないように、濃いめにすべきだ。

 確かに店のPOPの通り、濃いめのハイボールにするとストレートより飲みやすく、そして炭酸の力で水割りより香りも立つ。
 ただ水割りでもハイボールでも、このウィンチェスターは何かで割ると本来のほのかな甘みが消え、代わりにビターさが出て来る。
 だからこのウイスキーの甘みを味わうには、ストレートで飲むしかない。

 このウィンチェスターは、ストレートで飲むべきか、それとも何かで濃いめに割って飲むべきか。
 そこはなかなか難しい。
 気楽に飲むなら、やはり濃いめのハイボールだろう。
 しかし味と香りをじっくり楽しむなら、やはりストレートが良い。
 ただリーズナブルな価格のスタンダード・スコッチだけに、アルコールの刺激もそれなりにある。
 体調によっては、そのアルコールの刺激がキツく飲みづらく感じる時も少なくない。
 だからこのウィンチェスターの飲み方は、食事をして談笑しながら気楽に飲みたい時には濃いめのハイボールが、元気な時にじっくり味わいたい時にはストレートが合っていると思う。

 このウィンチェスターを、ジョニーウォーカーの赤やリニューアル前のホワイトホースとも飲み比べてみたが。
 ウィンチェスターもなかなか良く出来たスタンダード・スコッチだとは思うが、ジョニ赤の方が濃く甘くスモーキーでかつ飲みやすく、アルコールの刺激も少なかった。

 個人的には、迷わずジョニ赤に軍配を上げるが。
 しかし花のような香りのライトなウイスキーを好み、スモーキー香が苦手な方は、「ウィンチェスターの方が好き」と言うかも知れない。

 ホワイトホースとの比較では、ホワイトホースの方が味わいも強いが、アルコールの刺激も強い。
 ウィンチェスターはトワイスアップにすると水っぽくなり、甘さがビターさに変わる。しかしホワイトホースはトワイスアップにするとビリビリ来るアルコールの強い刺激が適度に減り、味に甘みを強く感じるようになるから不思議だ。
 個人的には、ホワイトホースよりウィンチェスターの方が好きかも知れない。

 このウィンチェスター、無名だがライトタイプのスタンダード・スコッチとしては良く出来ている方だと思う。
 ライトタイプのスタンダード・スコッチと言うと、まずカティーサークの名が挙げられるが。
 ライトタイプのスコッチがお好きな方は、このウィンチェスターも一度味を見てみる価値はあると思う。

 最後に、ウィンチェスターという名からすぐに西部劇のライフル銃を連想してしまった筆者だが。
 調べてみたところ、ウィンチェスターとはイギリス南部の、かつてはウェセックス王国の首都だった都市の名前なのだそうだ。

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ジムビームを改めて飲んでみた

 180~200ml入りのウイスキーの小瓶は、700~750ml入りの通常のものと比べるとかなり割高だ。
 だからあまり美味しくないだろうと最初から予想されるもの以外は、なるべく手を出さないようにしている。
 180~200mlなら不味くても何とか飲み切れるが、700~750mlで不味いと持て余して飲み残す事になり、結局は高くついてしまう。だから味に不安があるものだけ、小瓶で買うことにしている。

 すると先日、行きつけのスーパーのお酒売り場で、ジムビームの小瓶(200ml)が在庫入れ替えの処分ということで、三百円を切る値段で売られていた。
 これなら1ccあたりの値段は通常の瓶と大差なく、しかも不味くても飲み残す事なく試し飲みできる。
 で、迷わず買って、サントリーが巨費を投じて買収したビーム社の定番ウイスキーを味見してみた。

ジムビームP1110083

 キャップを開けると、いかにもバーボンらしい、キャラメルに似た濃厚な甘い香りが漂う。
 グラスに注いで飲んでみると、やはり甘く、そして滑らかだ。
 少なくとも、口に含んだ瞬間は。

 このバーボン、ラベルには“ストレート・バーボン・ウイスキー”と書いてあるが、スタンダード品だけに熟成年数はやや若いのではないか。
 味は甘いのだが、それ以上にアルコールの刺激がキツい。
 ジムビームを少量口に含んだその時には甘いのだが、舌の上で転がして味わおうとすると、アルコールの刺激がビリビリ来て、味も何もわからなくなる。
 飲んだ後のアフターフレーバーは甘さと香ばしさだが、あまり余韻は長くない。

 アルコールの刺激は気になるものの、このジムビームはバーボンとしてはライトで癖が無く飲みやすい方ではないだろうか。
 筆者が以前飲んだエヴァン・ウィリアムズ7年など、ねっとりするほど甘く、そして原料のコーンによる独特の匂いが強烈だった。
 そのエヴァン・ウィリアムズ7年はとてもまろやかで口当たりこそ非常に良いものの、その癖のある香りには辟易させられた。
 それに比べてこのジムビームは甘さもバーボン独特の匂いも控えめで、バーボンとしては飲みやすい方に属すると思う。
 ただ若いアルコールの刺激がキツく、ストレートで飲むと、いくらチビチビ飲んでも口の中が痺れるようにピリピリするのはいただけない。

 で、竹鶴政孝氏がハイニッカを普段飲む時にしていたように、1:2の水割りにして飲んでみたら、これがなかなかイケた。ストレートで飲んだ時のアルコールの刺激が嘘のように消え、それでいて甘さとウイスキーの味わいもしっかり残って、非常に飲みやすいものになった。

 ついでにハイボールにしてみたのだが、最初は「あまり美味しくはないな」と思った。
 不味くはないのだが、バーボン独特の癖のある甘さと匂いがくどい感じで爽やかでない印象が残ったのだ。
 しかしそれは、筆者のバーボンの作り方に問題があったのだ。

 ハイボールであれ水割りであれ、筆者はウイスキーを薄めに割ってゴクゴク飲むのを好まない。
 基本はストレートで、割る場合も濃いめにして、チビチビ飲んで濃く深い味と香りをゆっくり楽しみたいのだ。
 だから普段あまり飲まないハイボールを飲む時も、つい濃いめに作ってしまう。
 日本では、ハイボールは1:4くらいに割るよう勧められている場合が多いが、1:4では筆者には薄すぎる。
 1:2のハイボールでさえ、筆者には充分な濃さに思えてしまうくらいだ。
 だからハイボールも、1:3以上には決して薄めない。
 少なくともスコッチや日本のウイスキーのハイボールは、それで良かったのだ。

 それでも「ジムビームなどバーボンのハイボールは、本当に美味しくないのか?」と疑問に思い、もう一度ジムビームのハイボールを作って飲んでみた。
 そしてこの時、筆者はうっかり炭酸を多めにグラスに注いでしまったのだ。
 これは薄くて水っぽいものになってしまっただろう。
 そう悔やみはしたが、作ってしまった以上、諦めて飲んでみた。
 そうしたら案外悪くなかったのだ、この(筆者としては)薄めのハイボールが。
 と言うより、ジムビームのハイボールは濃いめのものより薄めの方が美味かった。

 スコッチや日本のウイスキーより、バーボンは甘さが強いし、香りにも癖があるから。
 だから炭酸の力で味と香りをかき立てるハイボールの場合、濃いめでなく1:4くらいの方がスッキリ飲めるようだ。

 低価格のバーボンの中では、ジムビームは基本的にライトで飲みやすい方に属すると思うが、初めから割って飲むように造られているように思う。
 筆者は出来の良いウイスキーならストレートで飲みたいが、これをストレートで飲むのはキツい。
 ただ1:2の水割りか、1:4のハイボールにすると、甘さとウイスキーの味と香りを保ったままスイスイ飲める。だから割ることを前提に、気軽に晩酌用の酒として飲むには悪くないバーボンだと思った。

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あの独裁者も飲んでいる、シーバスリーガル12年。

 今はこのブログでも、酒に関する記事をいろいろ書いているが。
 しかし筆者は、長いこと酒が嫌いだった。
 正確に言えば、酒と言うより酒に飲まれる酔っ払いが大嫌いだった。
 特に酔って乱に及ぶ人間に対する感情は、今でも憎悪に近いものを持っている。

 筆者を“酒ギライ”にしたのは、まずは筆者の父親だった。
 筆者の父親は、いわゆる“アル中”と呼ばれる種類の人間だった。
 父は筆者が生まれる前から大酒飲みで、しかも飲んで暴れるタイプのタチの悪い酔っ払いだった。
 だから筆者は、幼い頃から酔って怒鳴って暴れる父親に怯えながら育った。
 それゆえ、酔って乱れる酒乱に対する嫌悪感は、生理的なレベルにまで達している。

 その酒ギライで酒乱の人間を憎悪している筆者が社会に出た頃には“アルハラ”などという言葉も無く、上司や先輩が勧める酒は拒まず、潰れるまで飲むのがむしろ協調性のある良い社会人のように思われていた。
 酒の付き合いが出来ない者は、社会人として失格。
 そのように世間では思われていた。
 そんな時代だから、あの“一気飲み”も盛んに行われていた。
 当然、酒はまず酔う為のものであり、質など二の次、三の次だった。
 日本酒はアル添どころか、糖類や酸味料まで入れたものが当たり前で。
 ビールも副原料入りの喉越しで一気に飲むタイプのものばかりで、ゆっくり味わって飲めるクラフトビールなどまず無かった。
 だから社会に出た筆者は、酒と酔っ払いがますます嫌いになった。

 その筆者が、まだ子供の頃に一度だけ、「このお酒はスゴい!」と思った事があった。
 筆者の父や、筆者自身は何も誇れるものの無い人間だが、母方の伯父の一人はただ人格者であるだけでなく、社会的にもそれなりの地位にある人だった。

 筆者の父は飲むと暴れる酷い酒乱だが、そんな家族内の恥を他人に言えるわけも無く、親戚にも内緒にしていた。
 だからその伯父は、父が酔うとどれだけ酷いかを知らず、「お酒が好きなら」と善意で高級酒を父に贈ってきたりした。
 父は酒があればすぐに飲み切ってしまうアル中だが、その伯父(父から見れば義兄)がくれた高級酒だけは、棚の奥に大切にしまってチビチビと飲んでいた。

 それだけに、そのお酒に子供心に強い興味を持ってしまったのだ。
 あの飲兵衛の親父が一気に飲まずに大切にするなんて、どんな凄いお酒なんだろう……と。
 で、未成年がお酒を口にするなど、本当にいけない事なのだが。
 しかし自制心に乏しい子供だっただけに、普段の酒ギライより好奇心の方が勝ってしまい、父が居ない時にほんの一口だけその酒を飲んでしまった。

 本当に、ほんの一嘗めだった。
 だがそのお酒は、本当に強烈だった。
 舌の上で何かが爆発したかのような強い刺激に襲われ、しかし同時に、ものすごく芳しい芳香にうっとりとさせられた。
 これは、子供の飲むものではない。
 そう痛いほど痛感すると同時に、香りの素晴らしさと、強烈なアルコールの刺激の下の重厚な味わいに感動させられた。
 だから筆者は、「大人になったら、お酒はウイスキーを飲んでみよう」と心に決めた。

 ちなみに、その伯父がくれたお酒とは、ジョニーウオーカーの黒である。
 ジョニ黒は今では高級酒と言う程のものでは無いが、当時は関税の関係で八千円以上した。

 さて、大人になった筆者は、同じ大学の仲間と何度かお酒を飲みに出掛けた。
 筆者は酒乱の人間や「オレの酒が飲めないのか!?」と凄む奴が大嫌いだから、自分の意志で酒を飲みに行く時には酒癖の悪くない気の合う少人数の仲間と乗みに行く事にしている。
 で、大学の仲間と飲みに行ったある時、ウイスキーが出された。
 子供の頃の体験で、「ウイスキーは素晴らしく美味しいもの」と思い込んでいた筆者は、ワクワクしながらその“ウイスキー”を飲んだ。

 ……不味かった。
 反吐が出るほど不味かった。
 香りは貧弱だし、それに何よりアルコールの刺激が余りにもキツい。
 味もヘッタクレも無く、ただアルコールの刺激が舌にビリビリ来るのだ。
 ストレートだけでなく、水で薄く割ってもまだアルコールの刺激がキツくて不味い。
 甲類の焼酎に、色とほんの少しの味と香りを付けただけ。
 その“ウイスキー”とは、まさにそんな感じだった。
 それがサントリーの、あの角瓶であった。

 日本で最も大きな洋酒メーカーの、そして最も売れている“ウイスキー”がクソ不味いのだから、「ウイスキーとは、実は不味いものだったのだ」と思い、筆者は子供の頃の記憶は間違いだったのかと悲しくなった。

 日本には「長いものには巻かれろ」という言葉があるが、筆者は(ガキとも言うが)かなりのへそ曲がりで、筋や理屈の通らない事は断固拒否するのをモットーにしている。
 例えば理屈抜きで「皆がそうしているのだから、お前も従え」と強制されると、意地でも逆らいたくなる性格だ。
 その変に意地っ張りな性格のせいで、生き辛い事も多いし損もかなりしている。
 だが今もってガキでへそ曲がりな筆者は、損をし敵を作ってでも意地と筋を通す方をあえて選ぶ。

 だから筆者は、「オレの酒を飲めないのか!?」とか「さあ、イッキ!」とか「酒の付き合いが出来ない者は社会人失格だよ?」とか言う奴の酒は、意地でも絶対に飲まない。
 で、酒飲みに対してトラウマがある筆者の気持ちをわかってくれて、「無理しなくていいんだよ」と言ってくれる人の酒は、頑張ってでも飲む。
 ガキだよね? 大人じゃないよね?
 だが、それが黒沢一樹という人間なのだ。

 で、その筆者の気持ちを理解してくれて、アルハラなどという言葉もまだ無かった時代に酒を無理強いしなかった良い上司が、ある時に新年会に筆者も招いてくれた。
 場所はその上司の自宅で、料理は奥様の手作りでとても美味しかった。
 そして出された酒はまずビールだったが、次に筆者はウイスキーを勧められた。
 大学時代に同級生と飲んだ時の記憶で、ウイスキーは不味いものと思っていたから。
 だが尊敬する良い上司が勧めてくれるだからと、我慢して飲んでみた。
 ……美味しかった。
 香り高くて飲みやすく、メチャメチャ美味しかった。
 それはシーバスリーガルの12年で、上司がニコニコしながらこう言った。
「黒沢が来るから、こいつを用意しておいたんだ」

 そのシーバスリーガル12年は、子供の頃の筆者を感動させたジョニ黒とはまた違う味と香りだったが。
 しかしサントリーの角瓶を飲んで「ウイスキーは不味いもの」と思い込んでいた筆者の偏見を打ち破って、ウイスキーを筆者の最も好きな酒にしてくれた。

 と言うと、「サントリーの角瓶だって、充分美味いぞ!」と怒られてしまいそうだが。
 今の角瓶は違うのかも知れない。
 しかし筆者が大学生だった頃の、以前の角瓶は本当に酷かった。
 何しろまず、当時の角瓶は“リキュール・ウイスキー”だったのだから。
 僅か22%のモルト原酒を樽貯蔵ナシの“グレーン・アルコール”なるもので希釈して、それにリキュールで香りと味を付けたものを、特級のウイスキーとして売っていたのだ、大サントリーは。
 焼け跡闇市の終戦直後の混乱期にではなく、高度経済成長を遂げ日本が立派に先進国入りした後にもなって、だぞ。
 筆者がサントリーの社風を嫌い、このブログで度々サントリーのウイスキーを悪く言うのは、そういうわけだ。
 特級の角瓶ですらそうだったのだから、貧乏な大学生や若い社会人が“ウイスキー”として飲んでいたそれ以下の製品(ホワイトやレッド)の中身はもっと酷かった。

 今の角瓶の原材料表示を見ると「モルト、グレーン」となっているから、リキュールで味と香りを付けるのは流石に止めたのだろう。
 しかし日本洋酒業界の規定によると、「モルトは麦芽を、グレーンは穀物を意味する」のだそうだ。
 だから角瓶の原材料の“グレーン”が「ちゃんとしたグレーン・ウイスキー」か、それとも「樽貯蔵ナシのただの穀物アルコール」かは、今もって謎なのである。

シーバスリーガル年P1110044

 さて、話は戻るが、今回記事に取り上げたいシーバスリーガル12年は、サントリーの角瓶のせいでウイスキー嫌いになっていた筆者を、再びウイスキーの魅力にとりつかせてくれた思い出深いウイスキーだ。

 封を切りキャップを開けると、それだけで果実にも似た、甘く豊かな香りが辺りに広がる。
 ただ果実の香りだけでなく、ハニーな香りやら、樽の香りやら、スモーキー・フレーバーやら、いろいろな香りが複雑に混ざり合う。
 味はまず甘く、そしてビター。軽過ぎず、しかし重過ぎもせず、滑らかでストレートで抵抗なくスッと飲めてしまう。
 そして余韻は長く、心地良い。

 それはもちろん、日本酒や焼酎などを飲むようにゴクリと飲んでは駄目だが。
 唇を湿らすように、少しずつゆっくり味わえば、良い芳香に満ちていて、安いウイスキーにありがちなアルコールの刺激は殆ど感じない。チェイサーもあまり必要としないくらいだ。
 グラスに口をつけ、少しだけ口に含み舌の上で転がしてから飲むと、鼻孔いっぱいに良い香りが広がる。
 飲み干した後のグラスにも、甘さと樽の香りとスモーキーさがたっぷり残り、その香りさえ愛おしく感じるくらいだ。

 筆者はこれを、ジョニ黒、そしてブラックニッカ・ブレンダーズスピリットと飲み比べてみたが。
 香りの複雑さと豊かさの点では、間違いなくこのシーバスリーガル12年が一番だ。
 これに比べると、ジョニ黒の香りはややシンプルで、そして甘さとスモーキー香が突出しているように思える。
 味わいは、ジョニ黒の方が重厚で力強い。
 しかしシーバスリーガル12年が劣るというわけでなく、こちらの方がバランスが取れていて味も香りも複雑で、一般的にはより好まれるかも知れない。
 ただ、筆者個人としては、ジョニ黒の個性ある味の方が少しだけ余計に好きだが。
 ブラックニッカ・ブレンダーズスピリットの香りは、シーバスリーガル12年の華やかさには僅かに及ばない。しかしブラックニッカ・ブレンダーズスピリットには濃く甘いチョコに似た強い香りとスモーキーさがあり、これはこれで捨てがたい。
 味も、ブラックニッカ・ブレンダーズスピリットの方が濃く甘く滑らかだ。

 ジョニ黒とブラックニッカ・ブレンダーズスピリットは、良い出来だが味と香りに個性がある。甘さやスモーキーさがはっきりしているから、飲む人を少しばかり選ぶかも知れない。
 好きな人は大好きだろうが、中には苦手な人もいるかも知れない……という感じだ。
 その点、シーバスリーガル12年は香りはとても華やかな上、ハニーな甘さやら樽香やら果実香やらスモーキー香やらいろんな要素が、突出する事なくバランス良く複雑に絡み合っている。
 味と香りのバランスの取り方が本当に見事で、「ウイスキーは好きだが、これは嫌い」と言う人はまず居ないだろうと思われる。

 最近、韓国に亡命した北朝鮮の政府高官によると、金第一書記らの特権階級は中国の貿易会社を利用して贅沢品を手に入れていて、その中にシーバスリーガルも含まれているという。
 あの国の、悪評高い独裁者と同じ酒を飲んでいるのかと思うと、何か妙な気分になるが。
 まあ、金第一書記に好かれようと、シーバスリーガルに罪は無いし、ある意味「あの独裁者すら認めた銘酒」と言えるかも知れない。
 さあ、貴方も豊かな味と香りのシーバスリーガルを飲んで、独裁者の気分を味わってみたらいかがかな?

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福徳長種類の“無銘”を飲んで考えた

 近所のスーパーのお酒売場で、無銘という200mlのペットボトル入りのウイスキーを見つけた。「そのまま飲み頃!」というのが売り文句の、最初から度数12%に薄めた、水割りウイスキーだ。
 メーカーは、博多の華などの焼酎等を製造している福徳長酒類だ。
 この福徳長酒類は、博多の華も同じ度数12%の、同じ200ml入りのペットボトルで売り出している。
 キャップの色も「そのまま飲み頃!」という売り文句も、無銘と博多の華は全く同じだ。

水割りウイスキー無銘P1100949

福徳長酒類P1110112

 で、そのまま割らずに飲める焼酎と同じアイディアで売り出されたものと思われるが。
 税込みで130円という安い値段に興味を引かれて、どんなものか試しに買って飲んでみた。

 キャップを開け、グラスに注いでも、ウイスキーとしての香りはほのかでしかない。
 それでありながら、僅かだがアルコールの臭いがするのはいただけない。
 が、飲んでみると、度数12%まで水で薄めているにいては、意外にウイスキーらしい味がする。特にウイスキーの甘い味を感じる。
 ただやはりアルコールの刺激だけが舌に残り、アフターフレーバーは残らない。

 度数12%というと、度数37%のお手頃価格のウイスキーを1:2で水割りにしたのと、ほぼ同じ度数になると思われる。
 それでブラックニッカ・クリアを1:2の水割りにして、この無銘と飲み比べてみた。
 すると意外にも、この無銘の方がウイスキーらしい味わいと甘味を強く感じた。
 ただブラックニッカ・クリアは1:2まで水で薄めると、アルコールの刺激は全くと言って良いほど感じなくなる。しかし無銘は、ほぼ同じ度数の水割りなのに、熟成していないアルコールの刺激を間違いなく感じる。

 この無銘の原材料は、モルトとスピリッツだ。グレーン・ウイスキーを使わず、モルト原酒を樽熟成ナシのただのアルコールで希釈して、更にそれを水で割って作っているのだ。
 だからそのアルコールの刺激的な臭いと味を、間違いなく感じる。

 前にも書いたが、この水割りウイスキー無銘を売り出した福徳長酒類は、麦焼酎の博多の華も水で割って同じ度数12%のものを売り出しているが。
 熟成の義務や必要の無い焼酎を普段飲んでいる方は、この無銘のアルコールの刺激が気にならないかも知れない。
 しかし少なくとも樽熟成したモルトとグレーンのみで造ったまともなウイスキーを飲んでいる人なら、この無銘のアルコール臭さと舌に残る刺激が気になる筈だ。

 筆者はこの無銘を、リニューアル以前のホワイトホースを1:2で水割りにしたものとも飲み比べてみた。
 結果はホワイトホースの水割りの方がずっと滑らかで、アルコールの刺激は全く無く、しかもアフターフレーバーもちゃんと残った。
 ただ意外な事に、ウイスキーらしい味(特に甘さ)は無銘の方がやや濃いように感じた。

 アルコールの刺激の強さは、無銘>>>>ブラックニッカ・クリア>ホワイトホースだが。
 しかしウイスキーらしい味の濃さという点では、無銘>ホワイトホース>>>ブラックニッカ・クリアという結果になる。
 一体これは、どういう事だろうか。
 無銘はまず最初に価格設定があり、ブレンドにグレーン・ウイスキーを使わず、スピリッツと称する安価なアルコールで希釈する事で原価を下げ、その分モルト原酒をしっかり使ったのだろうか。

 実は筆者は、この無銘をバーボン(ジム・ビーム)を1:2で水割りにしたものとも飲み比べてみた。
 そしたら無銘にかなり似ていたのだ、その濃い味わいと甘さが。
 それで筆者は、この無銘はバーボンを水割りにしたものかと思いかけた。
 だが無銘の原材料には、「モルト、スピリッツ」と表記してある。
 もし無銘の原酒がバーボンなら、原材料にグレーンも入っていなければおかしい。
 それで筆者は、「バーボン樽で貯蔵したモルト原酒を使用したのではないか」と推測したが、真実はどうであろうか。

 この無銘が、それなりにウイスキーらしい味を出している事は認める。
 そしていつもお手頃価格の焼酎を飲んでいる方は気にならないだろうが、樽熟成したウイスキーを飲んでいる者としては、度数12%でこのアルコールの臭いと舌に残る刺激は気に入らない。

 話は変わるが、ウイスキーの世界的な産地と言えば、イギリス(スコットランド)とアイルランドとアメリカとカナダだ。
 そして近年、日本は勝手にその中に日本も付け加え、「ウイスキーの世界五大産地」と自称しているが。
 確かに近年、日本のウイスキーの質が向上し、世界で認められている。
 ただ質が向上したのは日本の一部のウイスキーであって、日本のウイスキーすべての質が良くなったわけではない。

 皆さんは、世界で最も多くの“ウイスキー”を生産し、かつ消費しているのがどこの国か、ご存知だろうか。
 イギリス? アメリカ?
 いや、実はインドなのだ。
 そのインドが何故、ウイスキーの世界○大産地を名乗れないのか。
 それはズバリ、インドで作られて消費される“ウイスキー”の質が悪いからだ。
 10%程度の原酒をアルコール(スピリッツ)で希釈したものが、インドでは“ウイスキー”として多く出回っているのだ。
 だから生産量と消費量がいくら世界一でも、インドは他国からウイスキーの世界○大産地として認められないのだ。

 で、日本の場合はどうであろうか。
 確かにサントリーやニッカやイチローズ・モルト等、世界で高く評価されるウイスキーを造っているメーカーもある。
 しかし同時に、日本は今もなおスピリッツや樽熟成ナシの穀物アルコールで希釈した“まがいものウイスキー”も作り続けている。

 他のイギリスやアイルランドやアメリカやカナダではウイスキーの定義が法律でハッキリしていて、単純にしてわかりやすく言えば、「度数40%以上で穀物のみを使い、年単位で樽熟成したもの」しかどこの国でもウイスキーとして認めていない。
 それに比べて、「ウイスキーの世界五大産地の一角」を称する、我が日本はどうであろうか。
 日本の酒税法によれば、日本ではウイスキーは「アルコール(スピリッツ)や香料を加えたものもOK」で、しかも樽熟成の年数どころか、「樽熟成をしなさい」という規定すら無いのだ。

 このブログで、何回も繰り返し書いてきたが。
 日本の洋酒業組合の規定では、原材料のモルトは麦芽を、グレーンは穀物を意味するのだそうだ。
 だから原材料に「モルト、グレーン」と書いてあるからといって、間違いなく樽熟成してあるのだななどと信じたら大間違いなのである。
 事実サントリーは少なくとも1980年代まで、あの日本で大人気の角瓶に、樽熟成ナシのグレーン・アルコールと称するものとリキュールを混ぜていた。

 おわかりだろうか。
 廃糖蜜から作った最も安価なアルコールのみをスピリッツと称し、穀物から作ったアルコールなら樽熟成ナシでも「グレーン」で通用してしまうのだ、この日本という国では。
 そもそもウイスキーに樽熟成の規定が無いのだから、原材料に「モルト、グレーン」と書いてあってもちゃんと樽熟成を経た本物かどうか信用出来ないのが、この国のウイスキー業界の実状なのだ。

 なるほど、近年は日本のウイスキーが世界的な賞も取っている。
 しかしピンの方は良くても、キリの方はインド並に粗悪な製品が出回っている現状で「ウイスキー世界五大産地の一角」を自称するのはおこがましいと、筆者は考える。
 世界五大産地を称するなら、少なくともウイスキーの定義を他の四カ国と同一にして、「度数40%以上で穀物のみを使い、年単位で樽熟成したもの」のみをウイスキーと認めるよう、法改正すべきだ。
 法改正が無理なら、少なくとも日本洋酒業界内でそう自主規制すべきだ。
 樽熟成の規定すら無く、アルコールを混ぜてもOKという現状で「ウイスキーの世界五大産地」を自称するなど、日本人として他の四カ国に恥ずかしくないのだろうか。

 と言うと、「安いウイスキーの需要もある、それを認めないのは庶民イジメだ」と言う人も出て来るかも知れないが。
 他のウイスキーの世界四大産地、イギリスやアイルランドやアメリカやカナダの人達は、樽熟成ナシのアルコールを混ぜたまがいものの“ウイスキー”など無くとも、少なくとも何も困ってはいない。
 樽熟成ナシのアルコールを混ぜた安い偽ウイスキーが無くなって困るなら、甲類の焼酎を飲めば良い。それだけの話ではないか。

 ウイスキーには年単位の樽熟成が必要だし、樽熟成していないものはウイスキーと認めるべきではないと、福徳長酒類の水割りウイスキー無銘を飲んで改めて思った。
 廃糖蜜から作ったアルコールは、スピリッツと表示されるからまだ良いが。穀物を原料としたグレーン・アルコールは、我が日本国のウイスキーの原材料表示ではただ「グレーン」と表記されるのだから、本当にたちが悪い。
 そのただの穀物アルコールと、ちゃんと樽熟成したグレーン・ウイスキーを区別する為にも、日本のそのあたりの原材料表示は改めるべきだと思うが、サントリーやニッカなどの日本のウイスキーの大手メーカーはどう考えているのだろうか。

 日本でせっかく良いウイスキーを造っても。
 樽熟成の規定すら無く、樽熟成していないアルコールを混ぜても構わないなど粗悪な製法も許しているままでは、日本のウイスキーのイメージが落ちるばかりではないだろうか。
 筆者は別に、「お金持ちだけ飲める、高いウイスキーだけ造れ」と言っているのではない。
「安かろう、悪かろう」ではなく、安くてもそこそこ飲める製品を造る為、せめて他の世界のウイスキー四大生産国と同じレベルの製造基準が日本にも必要ではないかと、強く訴えたい。

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ブラックニッカ・クリアを再び飲んでみた

 ニッカで一番売れているウイスキーは、ブラックニッカ・クリアであるらしい。
 筆者はこのウイスキーには、物足りなさを感じ、否定的な印象を持っていた。それで「ブラックニッカ・クリアはウイスキーではない」というような事を以前このブログに書いた。
 その事で、ブラックニッカ・クリアをお好きな方からお叱りも受けた。
 それらのお叱りよりも、「働いて初めて貰った給料で買ったウイスキーがブラックニッカ・クリアだったので、複雑な気持ちになった」というコメントは、筆者の胸にズシリと残り続けた。

 で、今年はブラックニッカ発売60周年でもあるし、ブラックニッカの基本とも言えるブラックニッカ・クリアを、改めて一本じっくり飲んでみることにした。

ブラックニッカ・クリアP1100907

 キャップを開けると、香りは穏やかだ。
 飲むとまず甘さを感じるが、度数は37%なのにアルコールのピリピリする刺激がかなり強い。
 ストレートで飲むとただアルコールがキツいだけでなく、余韻も短い。しかしクリアな味で、サントリーのレッドトリス・クラシックよりクセや濁りのないスッキリした味だ。

 開封した直後は味も香りも薄く、トワイスアップでも水っぽく感じられて物足りない。にもかかわらず、アルコールの刺激だけはまだしっかり残る。
 竹鶴政孝氏は、日頃はハイニッカを1:2の水割りにして飲んでいたと言うが。
 ブラックニッカ・クリアもそのようにして飲んでみたところ、トワイスアップよりさらに薄く水っぽく物足りなくなった。ただアルコールの刺激は無くなり、気軽にグイグイ飲める。

 キャップを開けて味見をした後、一週間ほど放置してまた改めて飲んでみた。
 すると今度は、チョコレートに似た甘い香りがはっきり出てきた。
 そのせいかアルコールのツンツンした刺激も減り、味も甘さを増したように思えた。

 それをリニューアル前のホワイトホースと飲み比べてみたが、ホワイトホースの方が明らかに香り高く味も深い。しかしブラックニッカ・クリアには味に苦みもクセも無く、味と香りが薄い分だけ、ウイスキーを飲み慣れない人には親しみやすいかも知れない。
 ただストレートで飲むには、若いアルコールの刺激がどうにも強すぎる。

 で、開封して何日も経ったブラックニッカ・クリアをまたトワイスアップにしたが、かなり飲みやすくはなるが、アルコールの刺激はまだ残る。

 そのキャップを開けて一週間後のものを、再び竹鶴氏流の1:2の水割りにしてみたところ、今度は意外に悪くなかった。確かに香りはほのかだが、日本酒や1:1に割った焼酎を飲む用に多めに口に含んでスイスイ飲めば、穀物の味と甘さを確かに感じ、これは間違いなくウイスキーだと思った。そして飲んだ後にアフターフレーバーも残った。
 ブラックニッカ・クリアで最も気になる若いアルコールのピリピリした刺激も、この1:2の水割りでは殆ど気にならなくなる。

 さらにハイボールにもしてみたが、やはり味と香りは薄いものの、イヤ味なく飲みやすく、それでいてウイスキーの味は間違いなくある。

 このブラックニッカ・クリアは、ストレートやトワイスアップで少しずつチビチビ味わって飲むのには全く向いていない。
 しかし竹鶴氏流の1:2の水割りや、今の日本人に好まれるハイボールにして気軽に飲むと、値段の割になかなか悪くないのだ。
 そしてノンピートだから、ピート香やビターさが苦手な人にも好まれるだろう。

 このブラックニッカ・クリアは、キャップを開けた直後には色付きで度数の高い麦焼酎のようなものだが。
 開封して一週間も経てば、ちゃんとウイスキーらしい香りと味も出てくる。
 あくまでも割って飲むべき製品で、ストレート等の濃いめでチビチビ味わって飲むには向かない。
 濃いめでは若いアルコールの刺激が強すぎて美味しくないが、水割りやハイボールにすれば気軽に飲め、そしてウイスキーらしい味と香りも間違いなくある。
 だからこれは色付き麦焼酎ではなく、間違いなくウイスキーだ。

 濃いめでじっくり飲みたい本格派には、かなり物足りないだろうが。
 しかし「まがいもの」というわけでもなく、水や炭酸で割って気軽に飲むには悪くないウイスキーだと、改めて飲んでみて思った。

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ブラックニッカ・ブレンダーズスピリットを飲んでみた

 とうとう飲んでみました、ブラックニッカ誕生60周年を記念する限定販売の、ブラックニッカ・ブレンダーズスピリットを。
 筆者が買った店では本体2500円、税込み2700円と言ったところで、「ジョニ黒やシーバス・リーガル12年などの、12年もののブレンデット・スコッチより少し高いかな」という程度だった。

ニッカ・ブラックニッカ・ブレンダーズP1100739

 ただキャップを開けただけで、グラスに中身を注ぐ前からチョコレートやナッツ等を思わせる甘い香りが漂ってくる。
 グラスに注ぐと、その香りはもっと豊か、かつ華やかに周囲に広がる。
 口に含むとまず甘さを、そしてスパイシーさを感じる。味わいは重厚だが、しかしなめらかで口当たりはとても良い。
 スモーキー香は初めはあまり感じず、複雑で奥深い味わいの中から次第に立ち上がってくる感じだ。
 余韻はかなり長く続き、香ばしさとスモーキーさをしっかりと感じる。

 このウイスキーはアイラ島のスコッチと違って、ピート香を初めから強く感じるタイプではなく、飲むうちに次第に感じるタイプだ。
 瓶の裏面のラベルに書いてあるように、あくまでも「穏やかなピートのコクと余韻」だ。
 初めはピート香を意識せず、しかし余韻の中に穏やかに、かつ確かに残るという感じだ。
 だからピート香が好きな人にも、あまり好きでない人にも嫌われないと思う。

 アルコール度数は43%だが、そのやや高めの度数を感じさせないまろやかさがあり、そして味は重厚で、香りは華やかだ。
 これを飲んでしまうと、同じニッカの製品で本体2300円で売られていたスーパーニッカが、味でも香りでもあらゆる面で物足りなく思え、割高に感じられてしまう。

 実は筆者は、ニッカのウイスキーでは去年の8月に惜しくも終売になってしまったG&Gがかなり好きだ。
 はっきり言って、スーパーニッカよりG&Gの方が間違いなく好きだ。
 その買い置きして大切にとっておいたG&Gと、ブラックニッカ・ブレンダーズスピリットを飲み比べてみた。
 甘くスモーキーで、G&Gは確かに美味い。
 しかし比べてしまうと、この誕生60周年記念のブラックニッカ・ブレンダーズスピリットの方が間違いなく香り高く、かつまろやかで深い味だった。

 ついでに、ブラックニッカ・ブレンダーズスピリットを良質なスコッチの定番、ジョニーウォーカーの黒ラベルとも飲み比べてみた。
 ジョニ黒は甘くビターでスモーキーで、なめらかさではブラックニッカ・ブレンダーズスピリットを僅かに上回っているように感じた。
 飲みやすさの点では、ジョニ黒の方が上かも知れない。
 しかし筆者には、ブラックニッカ・ブレンダーズスピリットの方が味と香りがより濃く凝縮されているように思えた。
 個人的には、ブラックニッカ・ブレンダーズスピリットはジョニ黒にも決して負けていないと思うし、「むしろこちらの方が上」と感じる人もいるのではないかと思った。

 よく「ジャパニーズ・ウイスキーは割っても味のバランスが崩れにくいのが特徴」と言われるが。
 筆者はこのブラックニッカ・ブレンダーズスピリットを、トワイスアップにして飲んでもみた。するとアルコールのキツさが全くと言って良いほどなくなり、とても飲みやすくなる。そして甘さがよりハッキリするだけでなく、フルーティーさも感じられた。
 が、ストレートでも飲み慣れた者にとっては充分になめらかだし、ストレートの時の重厚さが薄れて少し水っぽく感じられてしまうのもまた事実だ。

 このブラックニッカ・ブレンダーズスピリットを、ある程度加水して飲むのと、ストレートで飲むのと。
 どちらが良いかは、「人による」と思う。
 飲みやすさを優先するなら、少量加水すると良いと思うし、本来の味と香りを楽しみたければ、ストレートのままが良い。
 筆者個人は、ストレートのままの味と香りが好きだ。

 日本では、ウイスキーと言えば以前は「水割り」で、今では「ハイボール」が当たり前のような風潮だ。
 まあ、このブラックニッカ・ブレンダーズスピリットをハイボールにしても、別に不味くはないのだろうとは思う。
 けれどストレートで充分美味しく飲め、トワイスアップですら少し薄めに感じてしまう筆者としては、このブラックニッカ・ブレンダーズスピリットをそれ以上に薄く割って飲む気にはどうしてもなれず、ハイボール等での味についてはコメントできない事をお詫びしておく。

 ブラックニッカの発売60周年を記念した、このブラックニッカ・ブレンダーズスピリットには、ごく少量なのだろうが60年前の1956年に蒸留されたモルト原酒もブレンドされているという。
 確かにこれは、その60年の歴史を感じられる重厚かつ香り高い立派なウイスキーだった。
 これが今後もずっと生産されるレギュラー商品でなく、“Bottled in 2016”と明記された数量限定生産品であることが、残念でならなく思う。

 しかしまあ、貴重な古いモルト原酒も使用した製品であるから、数量限定というのも仕方のない事なのであろう。
 だから60年前のモルト原酒もブレンドしたこのブラックニッカ・ブレンダーズスピリットに興味のある方や、この味と香りに魅せられた方は、一日も早く酒屋に行き、当製品を確保しておくことをお勧めする。

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良く出来たスコッチ、バランタイン・ファイネスト

 筆者は酒の中ではウイスキーが一番好きで、ウイスキーの中でもスコッチが最も好きだ。
 しかしスコッチなら何でも好き、というわけでもない。

 これは個人的な好みの問題で、良し悪しを言っているのではないが。
 カティーサークVAT69、それに100パイパーズなどのスコッチは、どうしても好きになれない。
 そしてその「好きになれなかったスコッチ」の中に、実は今回取り上げるバランタイン・ファイネストも入っていた。

 同じバランタインでも、12年モノのブルーラベルの方は間違いなく美味しかった。
 しかし最も安いファイネストの方には、何故か良い印象が無かった。

 が、お酒やウイスキーの事だけでなく、いろいろな事にお詳しくて識見のある、筆者も尊敬しているogotch氏が、ファイネストも含めてバランタインを誉めてらっしゃった。
 それで筆者も、改めてバランタインをファイネストからじっくり味わってみる事にした。

 実を言うと、バランタイン・ファイネストを飲んだ経験は、筆者は以前にたった一度しかない。
 それもかなり以前、何かの機会にその一度きり飲んだだけなのに、何故か美味くないという印象を持ってしまっていた。
 だから自分の金で700ml入りのバランタイン・ファイネストを買ったのは、今回が本当に初めてだ。

バランタインP1100672

バランタインP1100676

バランタインP1100675

 で、買ってキャップを開けてみた瞬間に、まず驚かされた。
 10年以上熟成させたシングルモルトのキャップはコルクを使用したものが多いが、リーズナブルな価格のウイスキーのキャップは殆ど薄い金属のみで出来ている。
 だから中には、飲まずに数年置いておくと、キャップの隙間から蒸発して中身が減ってしまうものもある。

ボストンクラブLUMIX FX9 109

 見ていただきたい。
 これが同じキリンのボストンクラブ・豊醇原酒である。
 右の方が最近買ったもので、その隣にあるのが数年前に買って置いておいたものだ。
 数年前に買ったものの方がただ色が濃いだけでなく、開封していないのに量も少し減っている。

 コルクなどを使用していない金属だけのキャップでも、かなり年月が経っても中身が減っていないものもある。
 しかし薄い金属のみのキャップは隙間から中身が蒸発する可能性があるのも事実である。
 つまり中にコルクを使用しているか、キャップの上にさらに封を施してあるもの以外のウイスキーは、買ったら何年も置いておかず、ほどほどの期間内に飲んでしまった方が良いという事だろう。

 が、このバランタイン・ファイネストは違う。
 金属のキャップの下に、さらにプラスチックの封が施されているのだ。
 バランタインで最も安い、量販店では税込み千円前後で売られている製品であるにもかかわらず。
 このしっかりしたキャップだけでも、バランタインの製品に対する愛と品質に対する自信が感じられた。

 で、そのキャップを開けてグラスに注ぐと、まず穏やかで優しい香りが漂ってきた。
 初めは少しおとなしめくらいに感じられた香りだが、時が経つにつれてチョコレートを思わせる豊かな甘い香り広がってくる。
 香りはただ甘いだけでなく複雑で奥深いものがあり、その底に程良いスモーキーさもある。
 安いウイスキーにありがちな、アルコールのツンとする刺激的な臭いがかなり少ないのにも感心した。

 飲んでみると、口当たりは滑らかで甘い。その甘さも単純に甘いというのではなく、豊かでいろいろな要素が絡み合っているように感じる。
 この価格帯のウイスキーには若いアルコールの刺激がキツ過ぎて、何かで割らねば飲みにくいものが多いが、これはストレートで充分に美味しく飲める数少ないスタンダード・スコッチだ。

 トワイスアップにすると元々そう強くないアルコールの刺激は全くと言って良いほど無くなり、本当に気軽にスイスイ飲める。
 そして香りにフルーティーさも出てくる。
 しかしストレートでの深い味わいを楽しんだ後でトワイスアップを飲むと、何か水っぽく感じられて物足りなくなるのも事実だ。
 アルコールの刺激に慣れていない人はトワイスアップで飲むと良いと思うが、筆者は出来ればストレートでその味と余韻を楽しみたい。

 筆者はこのバランタイン・ファイネストを、ジョニー・ウォーカーの赤リニューアルされる以前のホワイトホースとも飲み比べてみた。
 以前のホワイトホースとは甲乙つけがたい印象だったが、ホワイトホースの方がやや甘さが強いように感じた。
 そしてジョニ赤と比べると、ジョニ赤の方が甘さやスモーキーさがよりはっきりしていて、バランタイン・ファイネストの方が味も香りも複雑で繊細なように思えた。

 ついでにジョニー・ウォーカーの黒とも飲み比べてみたが、これはさすがにジョニ黒の方が明らかに豊潤でより熟成されていた。
 しかし価格を考えると、価格ほどに味と香りの差があるようには思えなかった。
 量販店では千円前後で買えるスタンダード・スコッチとしては、バランタイン・ファイネストは文句なしに美味しい、コスパに優れたウイスキーだと断言できる。

 昔、一杯だけ飲んで何故美味しくないと思ってしまったのか、その理由が筆者自身にも全くわからない。かなり昔の、まだスコッチを飲み始めた頃の事ゆえ、ウイスキーの味がわかっていなかったのだとしか思えない。
 今になって飲み直してみれば、これが量販店で千円で買えるとは信じがたいほど良いスタンダード・スコッチだった。

 最後に、バランタイン・ファイネストを日本で流行りのハイボールにもしてみたのだが。
 はっきり言って、ガッカリの味と香りだった。
 断っておくが、バランタイン・ファイネストで作ったハイボールが決して不味いというわけではない。
 ただ美味くもないのだ。

 例えばジョニ赤やホワイトホースは、ハイボールにしてもそれなりの美味さがある。炭酸で何倍かに割っても、「ああ、ジョニ赤だな」と言うような個性も保っている。
 しかしバランタイン・ファイネストの場合、ハイボールにするとそれらしい味と香りが感じられなくなり、他の安いウイスキーを炭酸で割ったのと同じようなものになってしまう。

 そういえばジョニ赤やホワイトホースには時々販促用の景品のグラスが付けられ、ハイボールにして飲むよう割り方まで細かく書いてあるが。
 しかし少なくとも筆者は、バランタイン・ファイネストにハイボール用のグラスが景品に付けられて売られているのを見た事がない。
 筆者が見たバランタイン・ファイネストに付けられていた販促用の景品は、バランタインの名前入りのハンカチだった。
 という事は、「販売業者のサントリーも、バランタイン・ファイネストはハイボールにはあまり合わないとわかっているのではないか」と勘ぐるのは、筆者の邪推であろうか。

 これは筆者の個人的な好みでもあるが。
 バランタイン・ファイネストは日本人が好きなハイボールでも普通に飲め、トワイスアップでも悪くはないが。
 しかしストレートで飲むのが一番美味しい、良く出来たスタンダード・スコッチだと思う。

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値段を考えれば案外悪くない、甲州韮崎GOLD

 食料品も扱うDIYショップのお酒コーナーで偶然にコレを見つけた時、一瞬「ワインか?」と思ってしまった。
 何しろ瓶の黒いラベルに金の大きな文字で、甲州と書いてあるのだから。
 さらにその文字に交差させて、横に白文字でKOSHUとも書いてある。
 しかし改めてよく見てみると、ラベルの下側にはウイスキーと書いてあるし、瓶の中の液体も綺麗な琥珀色である。

 ウイスキーの色は濃く綺麗だ。
 そして原材料も、モルトとグレーンだけである。
 しかし度数は37%で、値段も本体のみで797円、税込みで860円とかなり安い。
 製造者も山梨県の株式会社サン.フーズと、少なくとも筆者は初めて聞く名前である。
「これは地雷か?」と、思ってしまった。

 しかしウイスキーを造ってくれる会社が日本に増えるのは良い事だと思い、支援するつもりも込めて2本買ってしまった。
 ウイスキーの熟成には何年もかかるし、数年先の需要まで見越して生産せねばならない。
 ただ近年のウイスキーブームに乗って、「これはイケる!」と安易に考えて韮崎市に蒸留所を造ったわけではなかろうと筆者は思う。

甲州韮崎ゴールドP1100551

 さて、キャップを開けてみると、穏やかな甘い香りを感じる。香りそのものは弱い方だが、アルコールの刺激もまた殆どしない。
 グラスに注いで揺すってみて、甘い香りの中からようやくアルコールの匂いが出て来る感じだ。
 そのままストレートで飲んでみても、感じるのはまずほのかな甘さで、アルコールの刺激はこの価格帯のウイスキーにしては間違いなく少ない。

 もちろん、12年モノのブレンデッド・スコッチとは出来がまるで違う。
 税込みで860円の安ウイスキーだけに、香りは弱いしアルコールの刺激もそれなりにある。
 しかし税込み860円の製品にしては穏やかな香りと味わいの中にコクとウイスキーらしい深みもあり、なかなか上出来のウイスキーと言えよう。
 断言するが、サントリーのトリス・クラシックやニッカのブラックニッカ・クリアなどより良い出来だと筆者は思う。

 この甲州韮崎GOLD、ストレートで飲んでも税込み860円の製品とは思えないほどアルコールの刺激は少ない。そして優しい甘さと、ナッツのような味わいを感じる。
 元々香りが控え目なせいか、アフターフレーバーも弱い。
 しかし若いアルコールのピリピリした感じはこの価格帯のウイスキーとしてはかなり少なく、普段気楽に飲む用のウイスキーとしてはまろやかで上出来と言えよう。

 アルコール度数が37%のせいか、トワイスアップにするとアルコールの刺激が殆ど無くなる代わり、少し薄く水っぽく感じてしまう。
 で、さらに氷も入れ1:3程度の水割りにしてみると、本当に薄い水っぽいものになってしまう。
 ちなみに常温の水で1:3に割ってみると、コクや香りは殆ど無いものの、ほのかな甘さはしっかり感じることが出来た。

 さらにオン・ザ・ロックでも飲んでみたが、アルコールの刺激が少し和らいでストレートより飲みやすくなる。
 しかし同時に、氷で冷やされると持ち味の甘みが無くなってしまう上に、元々控え目な香りも引いてしまうので、あまりお勧めしたくない。

 で、ハイボールにもしてみたが、これが意外にイケた。
 ハイボールにしても香りはさほど立たないが、ウイスキーらしい味わいとコクはしっかり残り、ビターさの中に僅かな甘みも感じられてなかなか良い感じだ。
 筆者は個人的にハイボールはあまり好きではないが、この甲州韮崎GOLDについてはハイボールが最も合っていると思う。
 でなければストレートか、ウイスキー1に対して水0.8くらいの、トワイスアップよりやや濃いめの常温の水割りが良い。

 この甲州韮崎ゴールドの裏のラベルには、こう書いてある。

 豊かな緑が広がる八ヶ岳の麓、甲州韮崎の地でこだわりぬいた原酒をじっくりと熟成、ブレンドしました。甘い樽熟香と、まろやかで奥深い味わいをお楽しみ下さい。


 これはあくまでも税込価格860円という価格帯も考えた上での私見だが。
 千円未満のウイスキーとしては、充分に合格点をあげても良いと思った。
 今、筆者の手元にある甲州韮崎ゴールドは、キャップを開けると微かにピート香もある甘く魅惑的な樽熟香を漂わせる。
 普段、気軽に飲むウイスキーとしてはなかなかに良い製品だ。

 この株式会社サン.フーズのウイスキーには、ゴールドの文字が付かないただの甲州韮崎もあって、こちらは原酒の希釈にグレーンの他スピリッツも使っているらしい。
 そのスピリッツ入りのただの“甲州韮崎”の方はまだ飲んだ事が無いが、どちらにしろ千円もしないのだ、どうせ飲むならモルトとグレーンのみで造った甲州韮崎ゴールドの方をお勧めしたい。
 筆者は甲州韮崎ゴールドを飲んで、値段の割に意外にアルコールの刺激が少ないのに驚いた。
 それがこの甲州韮崎ゴールドの魅力でもある。
 なのにあえて樽熟成ナシのスピリッツを入れて、アルコールの刺激をツンツンさせ、せっかくのまろやかさをブチ壊しにするなど、馬鹿げた行為としか思えない。

 安い割には良い出来と思ったこの甲州韮崎ゴールドだが、筆者は一つだけ不満がある。
 それは度数が37%という事だ。
 スピリッツを入れてでもより安く売りたい、そして飲む方も最初からハイボール等で割って飲むのが前提であろう甲州韮崎の方は、酒税も最も安い度数37%で良かろう。
 しかしモルトとグレーンだけで造った上級品のゴールドの方は、世界標準の度数40%であるべきと筆者は思う。
 事実ストレートやトワイスアップで飲んでみて、甲州韮崎ゴールドの度数37%は「やや薄い」と感じる。
 この甲州韮崎ゴールド、原酒をあと少し多く入れて度数を40%にしたら、もっと香り高く味わい深いウイスキーになっただろうと残念に思う。

 インターネットでHPを見てみると、この株式会社サン.フーズが単式蒸留焼酎免許を取得したのは2013年で、ウイスキー製造免許を取得したのは2014年だという。
 と言う事は、この甲州韮崎ゴールドの原酒は最初から株式会社サン.フーズの韮崎工場の蒸留所で蒸留したものではなく、輸入したものなど買ったものを韮崎で寝かせてブレンドしたものではないだろうか。
 しかしだとしても、元は本みりん等を造っていた従業員55人の地方の小さな会社が、税込み860円でこれだけのウイスキーを造れたのは、なかなか立派なことだと思う。

「度数を40%まで上げてほしい」とか、「もう少し華やかな香りが立てばもっと良い」などの不満は幾つかあるものの。
 大サントリーの白州蒸留所からさほど遠くない山梨県韮崎市で新たにウイスキーを造り始めた株式会社サン.フーズが、将来さらに美味しいウイスキーを造ってくれる事を期待してやまない。

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ニッカが造ったスコッチ、フォートウィリアム

 ボウモアやラフロイグなど、サントリーが幾つものスコッチの蒸留所を買収して傘下におさめた事は、ウイスキー好きの間では有名である。
 サントリーだけでなく、実はニッカもスコッチの蒸留所を買収している。
 それがベン・ネヴィスである。

 そして近年の日本でのウイスキー(と言うよりハイボール)人気を見てか、ニッカと親会社のアサヒビールが、そのベン・ネヴィスをキーモルトとしたスタンダード・スコッチを売り出した。
 それが今回紹介する、フォートウィリアムである。

フォートウィリアムP1100400

 瓶の裏面のラベルの説明を読んでみると、このフォートウイリアムは品質になかなか自信ありげである。
スコッチの伝統技法で作られた原酒をニッカウヰスキー社ブレンダーにより日本人の繊細な味覚にかなう、甘くやわらかでスムースな味わいに仕上げ」たと書いてある。
 そしてまた、「ストレート、オンザロック、水割り・ハイボール(ウイスキー1:水またはソーダ2の割合)でお楽しみください」と。
 千円程度のスタンダード・スコッチで、まずストレートで飲むことを勧められるスコッチは少ない。
 しかもこのフォートウィリアムは、水割りはともかくハイボールも1:2とかなり濃いめに作ることを勧めているのだ。
 これはニッカが自信を持って作った、よほど良いものに違いない。
 筆者はそう信じて迷わず購入した。

 で、キャップを開けてみるとまずアルコールの匂いが鼻を突く
 グラスに注いで軽く揺すってフレーバーを立ててみても、ただアルコールの刺激が強烈になるだけだった。
 スタンダード・スコッチも含めて筆者は数多くの外国製ウイスキーを飲んできたが、ここまでアルコールの匂いがキツいものはそう多くない。

 それでも匂いはともかくとして、味の方は良いのかも知れない。そう思い、気を取り直して飲んでみたのだが、味の方もまたアルコールが強烈で舌が痺れるほどだ。
 飲むというより僅かに唇を浸す程度にして、チェイサーで舌を潤してもアルコールの刺激が強過ぎて、とても美味しく飲めたものではない。

 裏のラベルには「甘くやわらかでスムース」と書いてあるが、断言するが嘘だ。
 甘さは他の一般的なウイスキーより弱めで、ビターでドライな味わいだと筆者は感じた。
 そして何よりもアルコールの刺激が強烈すぎて、やわらかでスムースどころか熟成の足りない若い原酒の刺々しさしか感じられない。
 これをストレートで楽しんで飲める人がいるとすれば、甲類焼酎をそのままグイグイ飲めてしまうようなかなりの酒豪だろう。

 それでもこのフォートウィリアムも、「英国政府の管理の下にスコットランドにおいて、蒸留、貯蔵、ブレンド及び瓶詰めされた」本物のスコッチだ。
 日本の安価なウイスキーによくある、原材料にはグレーンと表記しつつ所蔵ナシの穀物アルコールで原酒を希釈するような事はしておらず、モルトもグレーンも三年以上樽貯蔵したウイスキーを使用している筈だ。
 それでこんなにアルコールの刺激が強いとは、筆者もかなり驚いてしまった。
 若い。
 断言するが、フォートウィリアムに使われているモルトとグレーンはかなり若く、三年という貯蔵規定をギリギリ満たす程度のものだろう。

 で、その若いアルコールの刺激がキツいフォートウィリアムだが、トワイスアップにしてみてもまだアルコールがツンツンする。
 しかし甘さとなめらかさも少しだけ出てきて、ストレートよりは飲みやすくなった。
 ニッカのブレンダーが手がけたと言うが、スモーキー香は殆どなく、ウッディな樽香が主体のように思える。

 オンザロックも案外に飲みやすい。美味しいとは言えないが、氷で冷やすとアルコールの刺激が少し減る。そして良い意味でも悪い意味でもスッキリした味わいになる。

 ハイボールにすると、アルコールのツンツンする感じが消えてかなり飲みやすくなる。
 ただ裏のラベルでは水割りだけでなくハイボールも1:2で割るように推奨していたが、ハイボールにその割合はいささか濃すぎるのではないか。
 このフォートウィリアムは元々ビターでドライな味わいなので、ハイボールにすると冷やされることで少ない甘味が殆ど無くなり、苦味がより際立つ結果になる。
 推奨されている1:2の割合のハイボールでは、ただドライなだけでなく少し苦すぎる。
 ただこのフォートウィリアムのハイボールはドライで甘くないので、1:3~4に割って食事をしながら飲むには良いだろう。

 あと、1:2の水割りも案外悪くなかった。
 ニッカの創業者である竹鶴政孝氏は、日頃はハイニッカを1:2の水割りで飲んでいたという。
 そのハイニッカの1:2の水割りは、筆者には少しばかり水っぽ過ぎて物足りないように思えた。
 しかしフォートウィリアムの1:2の水割りは、意外なほど薄くなり過ぎずにウイスキーらしい味が残る感じで悪くなかった。
 フォートウイリアムはストレートやオンザロックではもちろん、トワイスアップですらアルコールの刺々しさを感じる。しかし1:2の水割りにするとそのアルコールの刺激が消え、それでいてウイスキーらしさもまだ残るのである。
 ただその1:2の水割りを飲む時には、ストレートやオンザロックやトワイスアップで飲む時のようにチビチビ飲んではいけない。日本酒を飲むような感じで、少し多めに口に含んでスイスイ飲むと良い。
 とは言うものの、この1:2の水割りも「飲みやすい」とは言えるものの、「美味しい」とまでは言えない。

 少し以前、当ブログを読んで下さった方から、美味しくなかったスコッチについて書くよう要望をいただいた。
 ズバリ言って、このフォートウィリアムがその「美味しくなかったスコッチ」だ。
 正直に言うが、コレを飲んだ後でジョニ赤などの定評のあるスタンダード・スコッチを飲むと、その味の違いに愕然としてしまう。
 このアルコールの刺激のキツさばかりが際立つフォートウィリアムが、日本のニッカが手がけているとは、実に残念な話だ。

 ハイボールを好んで飲む者を対象に、キリンがどんなウイスキーを飲むかを調査したところ、次のような答えが返ってきたそうだ。
「すっきりしている」
「飲みやすい」
 それでキリンは、樽香が華やかに香る、スッキリとキレのある味わいに仕上げたオークマスター樽薫るを販売したという。
 そういう意味で、「ニッカのスコッチ」フォートウィリアムも、ハイボールにして飲めば「スッキリとしてキレが良く飲みやすい」と言えるのかも知れない。
 しかし個人的には、じっくり飲むには向かない、及第点以下の二度と買って飲もうとは思わないスコッチに分類したくなってしまう。

 最後に、ウイスキーの評価をする時に気を付けなければならないのは、「開封して飲んですぐ味と香りの良し悪しを決め付けない方がいい」という事だ。
 樽の中で何年も眠っていたウイスキーは、ブレンドされ瓶詰めされてもまだ味と香りが眠っている事が少なくない。
 で、開封してグラスに注いだ直後には、主に香りと、そして味が充分に広がりきらずにまだ縮こまっている事が多いのだ。
 その長年樽の中で眠っていた香りが広がるまでには、それなりの時間を必要とする。

 試してみてほしい、ウイスキーを開封した直後と、それから数日経った後では、香りと味が変わっている筈だ。
 良いウイスキーは最初から味も香りも上等だが、程々の値段のウイスキーの場合、開封してウイスキーが空気と触れ合うことで、数日後には驚くほど華やかな香りになっていることがある。
 また、主に国産のお手頃価格のウイスキーの中には、開封直後には華やかな香りがしたのに、数日後には妙に香りが減ってしまっているものもある。そしてそれは、何らかの手法で香りを後から人工的に付けている証拠だ。

 今回話題にしたフォートウィリアムだが、筆者は「水準以下のあまり出来の良くないスコッチ」と判断した。
 しかし開封して一週間後には相変わらずアルコールの刺激がキツい駄目なウイスキーのままだったが、半月ほど経ってからはそのアルコールの刺激が少し和らいで、メープルシロップに似た甘い香りが漂いマイルドになり、飲みやすくなってきた上にコクも出てきた事も付記しておく。

 皆さんも、もしあまり香りも立たずアルコールの刺激がキツい、不味いウイスキーに出合ってしまったら。
 短気を起こして捨ててしまったりせず、数日放置してみてほしい。
 そして味を見て、まだ不味いようだったらまたキャップをしてさらに数日置いておく。
 これはダメだと諦めて処分してしまう前に、その数日置いておいてはまた味を見てみるプロセスを何度か繰り返してみてほしい。
 今回のフォートウィリアムも、ツンツンした強いアルコールの刺激の下から甘さやコクが出て来るまでに、半月もの時間を必要とした。

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出来の良いスタンダード・スコッチ、デュワーズ・ホワイト

 筆者がよく行く酒の量販店に、「多くのバーテンダーに高く評価されている」という趣旨の宣伝文句が書かれているスコッチがある。
 それが今回取り上げる、デュワーズ・ホワイトだ。

デュワーズ・ホワイトP1100318

 色は明るめの黄金色で、キャップを開けるとハニーで穏やかな甘い香りが漂ってくる。
 スモーキー香はごく僅か。
 値段は酒の量販店で千円ちょっとだが、同価格帯のウイスキーの中ではかなりなめらかで、実際に飲んでみてもアルコールの刺激も少なめだ。

 それはもちろん、12年モノのスコッチや、二千円クラスの国産ウイスキーと比べたら、アルコールのツンツンした感じはある。
 しかし同価格帯のスタンダード・スコッチの中では、明らかにまろやかで飲みやすい。
 ストレートで飲んで充分に甘くおいしい。
 むしろ割ってトワイスアップにしてしまうと、より飲みやすくはなるがやや水っぽく薄く感じてしまうくらいだ。

 このデュワーズ・ホワイトは、スタンダード・スコッチの中ではライトなタイプに属すると思う。
 ライトなタイプのお手頃価格のウイスキーは、味と香りが控え目である為に、アルコールのツンツンする刺激が目立ち、色と香りを付けた甲類のウイスキーに近い味わいになってしまうものが少なくない。
 しかしこのデュワーズ・ホワイトはマイルドで上品で、ストレートで飲んでも口当たりはなめらかだ。

デュワーズ・ホワイトP1100410

 デュワーズ・ホワイトの輸入業者はバカルディジャパンだが、筆者が買ったものはオリジナルの大きなハイボール・タンブラーを付けて売られていた。
 そしてそのハイボール・タンブラーの箱に書かれている内容によれば、ハイボールはデュワーズを世界に広めたトミー・デュワーズが、1905年にアメリカで誕生させたのだという。

デュワーズ・ホワイトP1100413

 あえてそう書いたハイボール・タンブラーを景品に付けて売るという事は、「デュワーズ・ホワイトはハイボールで飲むのがお勧め」と輸入業者は考えている、という事だろう。
 そして造ったジョン・デュワーズ&サンズ社も、デュワーズ・ホワイトは割って飲むことを前提にしているのだろう。

 で、ハイボールにもして飲んでみたのだが、確かにハイボールにすると香りが立ち、ごく僅かだったスモーキー香もちゃんとわかるようになる。
 ただハイボールにすると冷やされるせいか、常温でストレートで飲んでいた時に感じた甘みが引っ込み、代わりにビターさが出てくる。
 そのデュワーズ・ホワイトのオリジナルのハイボール・タンブラーの箱には、ウイスキー1に対して3~4のソーダを入れるように書いてあった。筆者はその濃い方の1:3で作ってみたが、個人的にはそれでも薄めにかんじられた。
 元々がライトな味わいなので、濃い味でじっくり楽しみたい者には、割ってしまうとどうしても薄く感じられてしまう。

 とは言え元々が上品でまろやかなスコッチだから、ハイボールもとてもなめらかで飲みやすく、下手なビールより間違いなく美味い。
 甘くなく、そしてビールほど苦くもない冷たい炭酸飲料としてハイボールを飲む人が多いようだが、その用途にこのデュワーズ・ホワイトは持ってこいだ。「ハイボール=角瓶」などと決め付けずに、ハイボールが好きな方はこのデュワーズ・ホワイトのハイボールも試してみてもらいたいと思う。
 上品で癖が無く、それでいて味と香りもちゃんとあるハイボールを楽しめることを保証する。

 しかし個人的には、このデュワーズ・ホワイトはストレートが最も味わい深くて美味いと思う。
 それはもちろん、ジョニーウォーカーやバランタインやシーバス・リーガルなど12年モノのブレンデッド・スコッチとは比較にならない。
 だが千円ちょっとで手に入るウイスキーの中では、数少ないストレートで美味しく飲める製品の一つだ。
 ハイボールでも悪くない。
 だがハイボールだけでなく、一度は是非ストレートで飲んでみてほしいスコッチだ。
 トミー・デュワーズ氏がハイボールを誕生させたという由来からも、デュワーズ・ホワイトはおそらく割って飲む事を前提にブレンドされているのだろうが。
 しかし筆者自身は、割らずにそのまま飲むのが最も楽しめる。

 このライトで上品で繊細なスタンダード・スコッチは、割るとどうしても薄く感じられてしまう。
 しかしストレートではアルコールの刺激が少しキツく感じるという方は、ロックか、またはウイスキー2に水1で割ってみることをお勧めする。
 1:1のトワイスアップではやや薄くなり過ぎるが、2:1程度に濃いめに割るとアルコールのキツさがかなり消えて、ストレートは苦手な人でもきっと飲めるのではないかと思う。

 このデュワーズには12年モノもあるが、それもいつか必ず飲んでみようと思わせるほど、デュワーズ・ホワイトは出来が良いウイスキーだった。

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