空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

サントリー クラフトセレクト香り彩るビール PALE ALE

 サントリーはプレミアム・モルツに、香るエールという商品も出している。
 そのサントリーが、去年それとはまた別に、クラフトセレクト香り彩るビールPALE ALEという商品もラインナップに加えた。
 で、その同じサントリーのエールビールでどれほど味が違うものか、試しに飲み比べてみた。
 ちなみに、販売価格は今回取り上げる、クラフトセレクト香り彩るビールPALE ALEの方が僅かに安い。

サントリー・クラフト・ペールエールP1110047

 プルタブを開けると、フルーティーで華やかな香りが漂う。プレモル香るエールより薫り高く、「華やかに香る」と缶に書いてある言葉に偽りは無い。
 グラスに注ぐと色はやや濃く、泡も白ではなく僅かに茶色みを帯びている。
 飲んでみると、味わいはこのクラフトセレクト香り彩るビールPALE ALEの方が軽やかだ。プレモル香るエールの方が明らかに苦いし、コクもある。
 と言っても決して薄いわけでも、物足りないわけでもない。このクラフトセレクト香り彩るビールPALE ALEは良い意味で軽やかなのであって、しっかり味わえば確かなコクと味わいがある。

 缶の裏面には、味と香りについての自社評価が書かれている。
 そしてそれは以下の通りだ。
 香り  ●●●●●
 旨み  ●●●
 苦み  ●●●●
 ボディ ●●

 その香り5点の評価には、筆者も同意する。
 しかし筆者には、4点を付けるほど苦いとは思えなかった。
 確かに苦みはあるが程良いくらいで、他のビールと比べて決して苦いわけではない。むしろ、苦みの中に麦の甘みを感じるくらいだ。
 ただ飲んでいる時にはさほど苦さを感じないが、飲んだ後に口の中に残るのはホップの苦みだ。
 ただそれは決して深いな苦さではなく、むしろ心地良い苦みと言っても良い。
 軽やかな中に旨みもしっかりあるし、ボディもそれほど弱いとも思えない。
 筆者が評価するなら、「香り5、旨み4、苦み3、ボディ3」と点数を付けたいところだ。

 良い意味で軽やかで味に嫌みも無いので、喉越しで飲んだらスッと一気に飲めてしまうだろうが。
 しかしフルーティーで爽やかで、軽やかでありつつ確かなコクと旨みがあり、ゆっくり、じっくり飲んでとても美味い。
 この香り高くフルーティーで苦みの中に甘さを感じるところなど、ヴァイツェン・ビールにも似ているように思った。
 これは本当に美味いビールだ。
 プレモル香るエールも好きなビールだが、個人的にはこちらの方がより好きだ。
 これまで飲んだサントリーのビールの中で、筆者として一番好きだ。

 ただ、筆者が初めて見た時に「プレモル香るエールと、どう違うのだろう?」と疑問に思ったように、クラフトセレクト香り彩るビールPALE ALEという商品名では、プレモル香るエールとの違いをアピールしにくかったのかも知れない。
 現在はこのクラフトセレクト香り彩るビールPALE ALEは店頭から無くなっていて、代わりに類似したデザインで同じ色の缶の、東京・武蔵野ブルワリーの名前を前面に出した東京クラフトPALE ALEという商品が並んでいる。
 この東京クラフトPALE ALEが、今回飲んでみたクラフトセレクト香り彩るビールPALE ALEの缶のデザインと名称を少し変えた同一のものであるか、またいずれ飲んで確かめてみるつもりだ。

サントリー・クラフトセレクトP1110592

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キリンが造ったハイネケン

 ハイネケンというビールが存在する事だけは、筆者もかなり以前から知っていた。
 そして海外のビールとしては名前がよく知られているだけに、「あえて飲もう」という気持ちにはあまりなれないできた。
 ちなみにハイネケンは、オランダ最大で世界第二位の地位を占める超巨大メーカーである。
 で、他のもっと珍しいか、新しいビールばかり飲んできた。
 が、さる店のPOPに「香り高い」と書いてあるのを見て、今回そのハイネケンを飲んでみることにした。

ハイネケンP1100608

 まず缶を手に取って細かい字までよく読んでみると、原材料は麦芽とホップだけだ。
 他の多くの国産ビールのように、米やコーンやスターチ等の糖質副原料は使われていない。
 それは実に良いことだ。
 ただ原産国はオランダではなく、よく見ると販売はハイネケン・キリン株式会社ではあるものの、製造は麒麟麦酒株式会社とあった。
 ブランドは海外メーカーだが、実質はキリン製の国産ビールなのであった。

 それで「海外有名メーカーの皮を被った国産ビールかよwww」と、少しガッカリした気分で飲んでみた。
 プルタブを開けグラスに注ぐと、甘い果実と爽やかなホップの香りが漂う。
 これは想像以上に、キリン一番搾り以上に良いかも知れないと思いつつ飲んでみると、期待以上に美味かった。
 ホップの適度な苦みの奥にフルーティーな甘さがあり、とても美味しい。糖質副原料を使い麦芽の使用量を抑えたビールにありがちな、金属的な味や嫌みが全く無い。

 決して苦すぎず重すぎず軽やかな味わいで、喉越しで飲んでもスッキリ美味しい。
 しかし糖質副原料入りの製品のような、喉越しだけのただ軽いビールと違い、ちゃんと味わえばコクと深い味わいを確かに感じる。
 さすがは麦芽とホップだけで造られた本物のビールだと、心から感心した。

 冷蔵庫から出して10分ほど経ち、少しぬるくなると甘い果実香が立ち、味も深みと甘みが増してくる。麦の甘さとホップの適度な苦みのバランスがとても良い。
 よく冷やして喉越しで飲んでも良いが、少しぬるくしてじっくり味わって飲むともっと美味くなる。

 日本人は、ビールと言うとよくキンキンに冷やすのを良しとするが。
 しかし冷やし過ぎると香りが沈み、味も、特に甘みを感じられなくなるものだ。
 だから味と香りを堪能するブランデーでは、氷は入れず常温で飲むのが常識だ。
 ワインだって、冷やす適温というものがある。
 断言するが、キンキンに冷やして飲むべきビール類は、副原料入りの不味いビールと発泡酒や新ジャンル酒だけだ。
 不味いビール類はぬるくなると嫌な味や嫌な香りが目立つようになって、はっきり言ってもっと不味くなる。だから糖質副原料入りのビールや発泡酒や新ジャンル酒は、キンキンに冷やしてその嫌な味と香りを目立たなくした上で、喉越しで一気に飲む必要があるのだ。
 そのビールが本当に美味いかどうかは、少しぬるくして、ゆっくり、じっくり飲んで初めてわかる……というのが、筆者の私的な持論だ。

 ただ筆者が好きな「少しぬるくして、ゆっくり、じっくり飲んで美味しいビール」には、喉越しで一気に飲むと重く感じて旨さがよくわからなくなるものがある。
 しかしこの麒麟麦酒製造のハイネケンは冷やして喉越しでゴクゴク飲んでも軽やかで美味しく、少しぬるくなったところでゆっくりじっくり飲めばもっと味わい深く香り高く美味くなる。
 どう飲んでも美味い、本当に良く出来た文句なしのビールだ。

 これはラガービールだが、エールビールに負けない味の深みとコクがある。
 後味もとても良く、爽やかな苦みとほのかな甘さが口の中に残る。
 同じ麒麟麦酒の製品でも、キリンのどごし〈生〉などとは出来がまるで違う。
 暑く喉が渇いている時に喉越しで一気に飲んだらその差をあまり感じないかも知れないが、少しぬるくしてゆっくりじっくり飲むと、価格の差以上に味と品質の差を感じる。
 ハイネケンの価格は、同じキリン製ののどごし〈生〉のほぼ倍だが。
 筆者ならばのどごし〈生〉を2本飲むより、ハイネケン1本をゆっくりじっくり味わって飲みたい。

 筆者は少年の頃からずっと写真を撮り続けていて、そんな筆者にとってドイツのライカやカール・ツァイスの製品は高嶺の花の憧れの的だった。
 大人になって筆者もライカのカメラと交換レンズを入手したが、その為には節約を重ねた上に手持ちのカメラや価値ある蔵書を売り払うなどして、かなりのお金を出さなければらなかった。
 しかし今世紀に入って、その憧れのライカやカール・ツァイスのレンズを付けたコンデジが、それも僅か2~3万円くらいで売られるようになった。
 実はそれらのレンズは、名こそドイツの名門メーカーのものを冠しているものの、日本のレンズ製造メーカーが造ったものだった。
 性能がそのブランド元が要求する水準に達していさえすれば、製造元はどこでも良いのである。
 カメラやレンズだろうが、ビールだろうが、世界的なブランドとはそういうものである。

 そしてハイネケンも、世界約60カ国に110余の生産拠点を持っているという。
 麒麟麦酒もその一つなのだろうが、その国産のハイネケンも、麒麟麦酒の技術力を十分に発揮したキリンの名に恥じない逸品だ。

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意外にイケる、ベルモルト・ゴールド

 暑い。
 まだ5月だというのに、夏日や真夏日が続いている。
 こうなると「ビールは喉越しでゴクゴクではなく、ゆっくり味わって飲みたい」と思っている筆者でも、冷たいビール類を気持ち良くグイッと飲んでみたくなる。

 が、「ビールはゆっくり味わって飲む」のが基本の筆者にとって、夏の暑い時期にどんなビール類を飲むかは意外に難しい。
 日ごろ愛飲している、ゆっくり味わって飲んで美味しいビールは、ただ暑さと喉の渇きを癒す為に「ゴクゴク、プハーッ」と飲んでしまっては、あまりにも勿体ない。
 一気にゴクゴク飲んでしまうなら、麦とホップだけで造られた(そしてお値段もそれなりに高い)本物のビールでなく、発泡酒や新ジャンル酒で充分だと、筆者個人は思っている。
 しかし麦芽の使用率が低く糖質副原料をあれこれ使ったビール類には、喉が渇いている時に喉越しでゴクゴク飲んでも不味いものが、少なからずある。

 香り高く奥深い味とコクのある本物の良いビールは、喉越しで一気にゴクゴク飲み干してしまっては勿体ない。
 それに味のしっかりしたコクのあるビールは、喉越しで飲むと重く感じてあまり美味く思えないのも事実だ。
 暑さと喉の渇きを癒す為に喉越しでゴクゴク飲むなら、むしろ副原料入りの味も香りも軽いビール類の方が良い。
 しかしその種の麦芽が少なく副原料たっぷりのビール類には、ただ軽いだけでなく嫌味のある不味いものが少なからずある。
 いくら新ジャンル酒でも(350mlの缶で)百円かそれ以上するし、「変なビール類を飲むくらいなら、炭酸水を飲んだ方がずっとマシな上に、はるかに安くつく」という話になる。

 良いビールを見つけるのは、比較的簡単だ。
 香りの高さや味の深みに差こそあれ、麦芽とホップのみで造られたビールに不味いものは、まず無い。
 ビールは基本的に麦芽とホップのみで造るべきで、副原料として使用して味や香りを良くするのはオレンジピールやコリアンダーくらいだと、筆者は思っている。
 糖質副原料として米やコーンやスターチを入れたものは、味わって飲むと不味いものばかりだ。
 だから美味しいビールを飲みたければ、麦芽とホップだけで造られたものか、副原料にオレンジピールやコリアンダーを加えたベルジャン・ホワイトエールビールを選べばまず間違いない。
 麦芽とホップだけで造られたビールは、喉越しでゴクゴク飲みたい人達には「重い」と思われがちだが、サントリーのモルツやキリンの一番搾りなどは軽快に飲めて味に嫌味も無い上に、値段も副原料入りの他のビールとほぼ同じだ。

 日本という国では、麦芽の使用率が高いほど酒税も高くなるから。
 だから暑さと喉の渇きを癒す為に軽快に飲め、かつ一気に飲み干しても惜しくない値段のビール類を捜すとなると、どうしても発泡酒か新ジャンル酒の中から選ばざるを得なくなる。
 で、そうした発泡酒や新ジャンル酒は糖質副原料を少なからず使用している為、不味いものが少なくない。
 そしてその発泡酒や新ジャンル酒が「まあ飲めるレベル」か、「副原料の嫌な味があって、喉の渇きを癒すなら炭酸水や麦茶の方がずっとマシ」かは、「実際に飲んでみないとわからない」というのが実態だ。

 ただ筆者がいろいろ飲み比べてみた経験から言えば、新ジャンル酒でも副原料やスピリッツに麦を使ったものにはまだマシなものが多かった。
 そして税率の高いビールと同じで、米やコーンやスターチ等を使った新ジャンル酒や発泡酒には嫌味を感じる不味いものが多かった。
 麦芽とホップだけで造ったビールを「重い」と感じる人は、糖質副原料を使うと「味が軽快になる」とも言う。
 しかしその糖質副原料もただ味と香りを軽く(薄く)するだけでなく、原料によってそのビール類の味に影響を与える。
 そして麦芽に最も近い麦を糖質原料として使った新ジャンル酒が、最も嫌味が少なくビールの味に近く仕上がるように思える。

ベルモルト・ゴールド①P1110536ベルモルト・ゴールド②P1110538

 そして筆者は先日、お酒も扱う某ホームセンターで、妙な新ジャンル酒を見つけてしまった。
 その名をベルモルト・ゴールドと言い、ベルギー産で麦100パーセントと謳っている。
 しかもそれで、値段は330mlの缶でたった97円(税抜き)だ。
 当然、味見の為に少し買ってみた。

 缶の裏面に味や香りについての自社評価が、5段階評価で表示されており、それによるとコクと苦みが星4つ、香りが星3つで甘みが星2つになっている。
 が、冷蔵庫で冷やしプルタブを開けてみると、香りは殆ど立たない。そしてグラスに注ぐと、糖質副原料を多く使ったビール類にありがちな金属的な不快な匂いすら漂ってくる。

 これは筆者が苦みの強い、IPA(インディア・ペールエールビール)も好きだからかも知れないが。
 星4つとされている割には、苦みはそれほど強いと思えなかった。
 しかしそれより、喉越しでゴクゴク飲むと、匙を舌に押し当てたような金属的な嫌な味を強く感じた。そして後味もあまり良くなく、暑く喉が渇いた時に喉越しでゴクゴク飲むにはふさわしくないと思った。
 このベルギー産で麦100%のベルモルト・ゴールド、日本人がやりたがる「ゴクゴク、プハーッ」という飲み方では、はっきり言って不味い。

 ところが、だ。
 喉越しでぐいぐい飲まずに、ゆっくり味わって飲むと案外悪くないのだ。
 喉越しでゴクゴク飲むと、金属的な嫌味を感じて不味い。
 しかしゆっくり飲むとその嫌な金属的な味が消え、しっかりとしたコクとほのかで心地よい甘みを感じるのだ。

 このベルモルト・ゴールドは「欧州産最高級ホップを贅沢に使用し飲み応え十分のコクと旨味、爽快なキレ」と謳っている。
 爽快なキレについては疑問があるが、新ジャンル酒にしては確かに十分なコクと旨味を感じる。
 とても97円とは思えない、下手なビールよりしっかりしたコクと旨味を感じる。
 金属的な味と香りや、後味があまり爽やかでないなどの問題点はあるが、少なくともコクと旨味については新ジャンル酒の中では最高と言っても良い。

 新ジャンル酒や発泡酒はまず価格の安さが取り柄で、暑い時に喉の渇きを癒す為に喉越しでゴクゴク飲むのに向いている。
 しかしこのベルギー産の新ジャンル酒のベルモルト・ゴールドは、喉越しで気楽に飲むのには全く向いていない。
 ゆっくり飲めばビールに近い旨味とコクがあるものの、日本人に多い喉越しで「ゴクゴク、プハーッ」という飲み方をすると変に不味いというのが皮肉だ。

 ビールは、その生産国の気候に合った造り方をされる。
 暑い国では、どうしてもキンキンに冷やして喉越しで一気に飲んで美味しいような軽めのビールが好まれる。
 そして暑くない欧州では、ゆっくり味わって飲むのに適した、しっかりした味と香りのビールが好まれる。
 このベルモルト・ゴールドを造ったベルギーの人達は、蒸し暑い日本の気候を全くわかっておらず、ビールを喉越しで一気に飲む事も無いまま、よりビールに近いコクと旨味を出そうと頑張ったのだろう。

 このベルモルト・ゴールドは、大麦を副原料に使った発泡酒を、大麦のスピリッツで割った新ジャンル酒だが。
 その原材料表示を見てみると、発泡酒(大麦・麦芽・ホップ)と書いてある。
 そして原材料の表記は、使われている原料の多い順に書くのが通例だ。
 つまりベルモルト・ゴールドは、麦芽より副原料である大麦の方が多く使われているということだ。
 そのせいで例の金属的な嫌な味と匂いが出てしまったものと思われる。
 コストの問題もあろうが、税制の限度いっぱいまで麦芽を多く使っていれば、もっと良い味の新ジャンル酒になったのではないだろうか。

 もちろん、麦芽とホップだけで造られた本物のビールの方が、味も香りも間違いなく上だが。
 しかしこのベルモルト・ゴールド、97円という値段を考えれば間違いなく美味いのだ。
「ブラウマイスターこだわりのキレとコク」と缶に書いてある通り、欧州のビールのコクと旨味の片鱗を確かに感じる。
 ただ残念ながら、これはゆっくり味わって飲んでこそ旨い酒で、ビール類は夏に「ゴクゴク、プハーッ」とやりたい多くの日本人の飲み方にまるで合ってない。
 筆者個人としては、新ジャンル酒としてはかなり良い出来だと思うが。
 このベルモルト・ゴールドの旨さがわかる日本人のビール飲みがどれだけいるか、甚だ疑問だし心配だ。

 提案だが、このベルモルト・ゴールドは二本目以降に飲むビール類にすると良いだろう。
 まずはサントリーの金麦やキリンののどごし生などを喉越しで飲んで、暑さと喉の渇きを癒して。
 そしてその後でベルモルト・ゴールドをゆっくり飲めば、きっと「案外、悪くないね」と思って貰えるのではないだろうか。

 美味しい良いビールを飲みたければ、麦芽とホップだけで造った本物のビールを飲めば良いのだが。
 しかし懐事情が厳しい人もいるだろうし、そんな人がたくさん飲みたい時に、選択肢の一つとしてこのベルモルト・ゴールドも考慮していただければと思う。

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グランドキリン十六夜の月

 グランドキリン十六夜の月は、希少なカリプソホップとやらを使った限定醸造のIPAビールだ。

キリン・十六夜の月P1110255

 IPAことインディア・ペール・エール・ビールと言えば、赤道を通過するインドへの過酷な長旅に耐えるよう、ホップを増しアルコール度も高めにして造られたビールだが。
 ただこの十六夜の月の度数は5.5パーセントで、アルコール度はそれほど高くない。
 とは言うものの、ホップの苦味は普通のビールより確かに強い。
 このビールを他の日本のビールのようにキンキンに冷やし喉越しで「ゴクゴク、プハーッ」とやろうとしたら、間違いなく「苦ッ!」と思うだろう。

 が、これは喉越しで飲むべきピルスナータイプの、しかも糖質副原料を入れた薄いビールとは違う、じっくり味わって飲むべきエールビールなのだ。
 まずキンキンに冷やし込むのではなく、10~13℃くらいに程々に冷やして。
 そしてワインや良質な日本酒を味わうように、ゆっくり、じっくり味わってみてほしい。
 そうすればただ苦いだけでなく、その苦味の底にほのかな甘味や、ハーブ感のある爽やかな香りが堪能できる。
 苦いが、このビールの苦味はとても爽やかで心地良く、後味もとても良い。

 同じIPAビールでも、ヤッホープルーイングの“インドの青鬼”の方がより苦いし、ホップのハーブ感も強い。
 しかしその代わり、この十六夜の月にはフルーティーな甘さや爽やかさがある。
 インドの青鬼は「いかにもIPAビール」という感じだが、十六夜の月はIPAビールであるという事を特に意識せずに、少し苦いが甘くてフルーティーな香り高く味わい深いビールとして飲める。

 この十六夜の月は、飲み方によって味と香りが激変する。
 日本流に、キンキンに冷やして喉越しで「ゴクゴク、プハーッ」とやろうとすると、ただ強烈に苦いだけになる。
 しかし程々に冷やして少しずつ味わって飲むと、ほのかな甘さやフルーティーさやハーブ感が混じり合った、豊かな味と香りを楽しむ事ができる。

 このビールを何故キンキンに冷やしてはいけないか。
 それはキンキンに冷やすと、香りが薄れ甘味も感じにくくなってしまうからだ。
 十六夜の月をキンキンに冷やしてゴクゴク飲む人には、このビールの香りや苦味の下の甘味など、永遠に感じることができないだろう。
 この十六夜の月に限らず、香り高く味わい深い上質なビールはキンキンに冷やして喉越しで飲んではいけない。味も香りも台無しになってしまうからだ。
 キンキンに冷やして喉越しで「ゴクゴク、プハーッ」と飲むべきなのは、スーパードライのような味も香りも薄い糖質副原料(米・コーン・スターチ)入りの軽いビールや、発泡酒や新ジャンル酒のようなビール類だけだ。

 さて、この十六夜の月について、メーカーは「甘く熟した果実と柑橘の爽やかな香り」と謳っているが、確かにオレンジの香りと品の良い甘さを感じる。ゆっくり味わって飲むべき、本当に美味しいビールだ。
 確かに苦いが、ただ苦いだけでなく、苦さの中に豊かな香りと深いコクと旨味があり、さらに後味も良い美味しいビールだ。飲んでいて、何と心地良いことか!
 良質なクラフトビールにも負けない出来の良さで、大量生産が中心の大メーカーにもこんなビールが造れるのかと感心させられた。
 限定醸造でなく、ずっと造り続けてほしい良いビールだった。

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純米白川郷にごり酒

 一部の酒造メーカーが、日本酒を“清酒”と呼び換えようと動いた。
 日本酒と言えば、日本で、日本の原材料を使って作らなければならないが。
 だから人件費の安い海外で、コストの安い中国産米や米国産米を使って安い酒を大量生産したいメーカーが、「日本酒でなく、清酒と呼ぶようにしよう!」と企んだのである。
 清酒ならば、別に海外産でも構わないからね。

 しかしこの一部の腹黒いメーカーの、「日本酒を清酒と呼び換えれば、日本酒を海外で安く作れる」という魂胆には無理がある。
 それはそもそも、清酒は日本酒の一種だからである。

 日本酒は、元は砂糖を入れないあまり甘くない甘酒のような、白濁した濁り酒だった。
 が、室町時代になってからそのもろみの状態の濁った酒を濾過して澄んだものも作られるようになり、それが清酒と呼ばれるようになったのである。
 だから濁り酒(どぶろく)と清酒を併せて日本酒と言うのであり、「清酒なら、海外産でも問題ないよね?」と言い張りたい一部メーカーの言い抜けは、とんでもない屁理屈なのだ。

 話は戻るが、日本酒は元は白濁した濁り酒だった。今のような透明な酒(清酒)が当たり前に飲まれるようになったのは、江戸時代になってからである。
 五世紀頃に大陸から醸造技術が伝わって以来、日本では酒と言えば古代から中世までずっと濁り酒のことであった。
 で、日本人はその濁り酒を愛飲してきて、奈良時代の歌人として有名な大伴旅人も、酒を讃むる歌を十三首も詠んでいる。
 ウイスキーも好きだが日本酒にも興味のある筆者としては、その日本酒の原点とも言える濁り酒を、是非飲んでみたいものだと以前から思っていた。

 濁り酒は、今も捜せば売っている。
 しかし店頭で見つかる“濁り酒”と称するものの多くは、いわゆるアル添で、さらに糖類や酸味料まで入れたまがいものばかりである。
 そうした醸造用アルコールと糖類と酸味料で嵩増しした“濁り酒”は、はっきり言って不味すぎて飲むに耐えない。添加されたアルコールの刺激がキツい上に、ベッチャリとした不自然な甘さと妙な酸味が何とも言えない作りモノっぽい嫌な味を生み出している。

純米白川郷にごり酒P1110276

 で、そうしたまがいものの不味い“濁り酒”にうんざりしている時に、ようやく見つけたのだ、混ぜモノの無い本物の濁り酒を。
 それが今回紹介する、純米白川郷にごり酒である。
 純米だから、醸造用アルコールはもちろん糖類も酸味料も全く入っておらず、原材料は米と米麹だけである。

 表示されているマイナス25という日本酒度の通り、飲んでみるととても甘い。どんな甘口の清酒より、かなり甘い。
 しかし米と米麹だけによる甘さだから、その甘みにしつこさやくどさは全く無い。まるで、甘さを抑えた良質な甘酒のようだ。
 そしてただ甘いだけでなく、甘さの中にほのかな酸味も感じる。
 その甘味も酸味もどちらも自然なサラリとした味で、糖類や酸味料を後から加えた作りモノの“濁り酒”のそれとは全くの別物だ。

 また、アル添の自称“濁り酒”と違い、純米だからアルコールのピリピリした刺激が無く、飲み口も優しく滑らかだ。
 そして醸造用アルコールと水で嵩増ししていない為、ただ飲みやすいだけでなくコクがあり味わい深い。
 さすがに純米の濁り酒だ。アル添で糖類と酸味料も加えている自称“濁り酒”と飲み比べれば、本物とまがい物の違いが明らかにわかる。
 アル添で糖類と酸味料も加えられている、市場によく出回っている“濁り酒”は、甘さも酸味も人工的な上に味も薄っぺらい。
 しかしこの純米の濁り酒には、自然な甘さと酸味に食えて奥深い酒の旨味がある。
 コレを飲んでしまうと、アル添で糖類&酸味料入りのニセモノの濁り酒はもちろん、下手な甘酒も飲めなくなってしまう。

 古代には酒を造るのに麹は使わず、米を人が口で噛み、そして米も今のような白米でなく玄米を使っていた。
 だからこの純米白川郷にごり酒も、大伴旅人らが古代に飲んだ濁り酒とは、全く同じものというわけではないのだが。
 それでも純米白川郷にごり酒を味わいながらゆっくり飲むと、酒を愛した古代の歌人の気持ちも伝わってくるような気がする。

 ここで、大伴旅人が詠んだ「酒を讃むる歌」を幾つか紹介しよう。

 験なき 物を思はずは 一坏の 濁れる酒を 飲むべくあるらし


「思っても甲斐の無いことをくよくよ悩むより、一杯の酒を飲んだ方が良さそうだ」って、共感する方は現代も多くいるのではないだろうか。

 その「酒を讃むる歌」には、他にもこんなものがある。

 賢しみと 物いふよりは 酒飲みて 酔ひ泣きするし まさりたるらし


「偉そうな事を言うより酒を飲み、酔って泣く方がましだ」って、大伴旅人さんがいかに酒が好きだったか、よく伝わって来る。
 酔ひ泣きする……という事は、大伴旅人さんは泣き上戸だったのだろうか。
 相手をするのも面倒だろうが、まあ良いデスよ、酔っても絡んだり暴れたりしさえしなければ。

 あな醜 賢しらをすと 酒飲まぬ 人をよく見れば 猿にかも似る


 この酒好きの大伴旅人さんに言わせれば、「酒を飲まずに偉そうなことを言う人は醜くて、よく見れば猿に似ている」のだとか。
 猿に似ているのは、むしろ真っ赤な顔をして酔っぱらっている酒飲みの方ではないかと、言いたくなるのは、筆者だけだろうか。

 この酒飲み歌人の大伴旅人さんは、実は宮廷貴族で中務卿、中納言と歴任し、そして太宰帥にまで昇進するのだが。
 で、赴任した先の九州の太宰府に着くと、何かと理由をつけて酒宴を開いた。
 今で言えば、困ったアルハラ上司といったところだろうか。

 で、度々招かれた歌人で筑前守の山上憶良などは、こんな歌を詠んで大伴旅人の宴席から逃げている。

 憶良らは 今は罷らむ 子泣くらむ 其を負ふ母も 吾を待つらむそ


 こんな酒にまつわる古歌に思いを馳せながら、純米白川郷にごり酒を筆者は心から堪能した。
 アル添で糖類と酸味料を加えたまがいものの濁り酒は全くダメでカスとしか言いようが無いが、米と米麹だけで造った本物の濁り酒は本当に美味しい。

 そのまがいものの濁り酒と本物の濁り酒の見分け方について、最後にふれておこう。
 まがいものの自称“濁り酒”は、アルコールと水で嵩増ししているから薄く、店頭に置いておくと酒と酒粕がすぐに分離してしまう。
 だからまがいものの濁り酒は、瓶の中で殆ど清酒に近い状態になっていて、酒粕は瓶の底に薄く積もった状態になっている。
 で、ラベルにも「よく振ってお飲みください」と注意書きがされている。

桃川にごり酒P1100046

 しかし薄めて嵩増ししていない本物の濁り酒は、酒粕がいっぱい入っているので、わざわざ振らなくても瓶の上までしっかり白濁している。
 自家製の甘酒のように濃いから、もちろん「よく振ってお飲みください」などという注意書きも無い。
 もし本当の濁り酒に関心があるのなら、是非そのような見た目が甘酒に近い、瓶の上まで白濁した濃いものを選んでいただきたい。
 くれぐれも、瓶の中で酒と酒粕が分離して、酒粕が底に溜まってしまっているようなニセモノは買わないでいただきたい。
 濁り酒を称しながら、瓶の中で既に「清酒と酒粕」に分かれてしまっているのは、アルコールと水で嵩増し、味も糖類と酸味料で人工的に付けてある証拠だ。

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やはり美味しい、いちばん桜

 この春も出ました、オリオンビールの“いちばん桜”。
 オリオンビールの製品は、普通は沖縄で売られている。しかし毎春、アサヒビールがこのいちばん桜を季節限定で売り出している。

オリオンいちばん桜2017年P1110309

 日本の大手メーカーのビール類は、麦芽の他にたいてい糖質副原料(米やコーンやスターチなど)が使われている。
 そうしたビール類は、よく言えば軽く喉越しが良く感じるが、はっきり言えばコクも香りも薄い、飲みごたえの無いものになりがちだ。
 しかしこのオリオンいちばん桜は、副原料を使わず麦芽とホップだけで造った、「贅沢なコクと香り」を謳った麦芽100%のビールである。

 プルタブを開けると、フルーティーで華やかな香りが広がる。
 グラスに注いで味わってみると、スッキリしていて飲みやすく、嫌味が全く無い。そして軽やかな味でありながら、コクはしっかりとある。
 ホップの苦味も軽やかで、「ビールは苦いから好きじゃない」と言う方にも美味しく飲んでもらえると思う。
 そして最初に感じた適度な苦味は、次第にフルーティーな甘さに変わってくる。
 ビールと言うと「苦い」というイメージがあるが、このいちばん桜には、苦さの他に僅かだが甘みが確かにある。
 嫌み無く本当にスッキリしている上に、麦の旨さと甘さを感じられる良いビールだ。
 後味もとても良く、アロマホップを使用しているというだけあって、飲んだ後にホップの良い香りが口の中に残る。

 ビールは、暑い国とそうでない国とで味わいがかなり違う。
 暑い国のビールは、暑さをしのぎ喉の渇きを癒す為に飲むものになりがちで、だからどうしても喉越しでゴクゴク飲みやすい軽いビールが多くなる。
 一方、ドイツやベルギーやイギリスなどの、夏でもそう暑くない国ではビールをゴクゴク一気飲みする必要もないので、ゆっくり味わって飲むのに向いた、コクのある香り高いビールが好まれる。

 で、暑い国でゴクゴク飲んで「美味しい!」と思ったビールを日本の暑くない時期に飲むと、現地で飲んだ印象と違って「何でこんなモノを美味しいと思ったのだろう?」と不思議に思う事がある。
 一方、暑くない欧州のビールは、味わってゆっくり飲む人には良いが、喉越しでゴクゴク飲む人には旨味もよくわからず、ただ重いビールに思えてしまうようだ。

 つまり喉越しで「ゴクゴク、プハーッ」と一気に飲む人には、スーパードライのようなコクも味も香りも薄い糖質副原料入りのビールが向いていて、ゆっくりじっくり味わって飲みたい人には麦芽と良いホップで造った欧州系のビールが向いているということだろう。

 実は筆者はスーパードライのような糖質副原料入りのビールは好きでなく、ビールもゆっくり味わって飲まなければ勿体ないと思ってしまう種類の人間だ。
 香り高くコクのあり味わい深いビールを、筆者は好む。

 で、ビールは喉越しで飲むのに向いたものはコクも香りももの足りず、コクがあり香り高いものは、喉越しで飲む人はただ重く感じてしまう傾向にあるが。
 しかしこのオリオンビールのいちばん桜は、軽やかで一気に飲んでも美味しく、ゆっくり味わって飲めばコクと香りを楽しめる。
 喉越し派の人にも、ゆっくりじっくり飲む人にも向いた、とても良いビールだと筆者は思っている。

 アサヒビールは、このいちばん桜を季節限定で販売している他に、オリオンビールも通年販売している。
 正直に言うが、副原料入りの通常のオリオンビールは筆者はあまり好きではない。いちばん桜のようなコクも香りも無く、ただスッキリ飲める喉越し派だけの為のビールという印象だ。
 もしもオリオンビールを本土で通年売るのならば、副原料入りの通常のオリオンでなく、いちばん桜の方にするべきだと心から思う。
 通常のオリオンより、麦芽100%のいちばん桜の方が間違いなく美味しい。

 筆者は毎年、春にこのいちばん桜を飲むのを楽しみにしている。
 今年のいちばん桜も、期待通りに美味かった。
 この美味しいビールを春だけでなくいつも売ってくれるよう、アサヒビールに望みたい。

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なかなか美味しい、琥珀エビス

 サッポロのエビスにもいろいろありマスが、先日、行きつけの酒屋で限定販売の“琥珀エビス”を見つけまして、早速買って飲んでみまシタ。

サッポロ・琥珀P1110247

 プルタブを開けた途端に、多分麦によるものであろう甘い香りが辺りに漂う。
 グラスに注ぐと、その名の通り普通のビールよりやや色の濃い、美しい琥珀色。
 泡も白でなく、クリーム色という感じだ。

 メーカーは「コク深く、まろやかに」と謳っているが、意外にスッキリして飲みやすい。
 確かにコクはあり、決して軽めの薄いビールというわけではない。しかし比べてみると、通常のエビスの方が重たく感じる。
 ただスッキリしているだけでなく嫌味も全くなく、喉越しでスッと飲めてしまう。
 しかし飲みやすくてもコクはちゃんとあり、飲みごたえも充分にある。
 ホップの苦味は、程々といったところ。
 飲んでいる時にはほろ苦さを感じるが、後味には麦の甘さが残る。

 スーパードライに代表される喉越しで飲むタイプのビールは、コクが弱い上に味に何か嫌味があり、だからキンキンに冷やして一気に飲まないと美味くない傾向がある。
 日本の大手メーカーが作る“喉越し系”のビールの殆どは、ぬるくなったものを少しずつ味わって飲むとどうしようもなく不味い。
 しかしこの琥珀エビスは違う。
 冷やしてゴクゴク飲んでも美味いだけでなく、少しぬるくなったものをチビチビ味わって飲んでも充分に美味いのだ。

 国産のビールの中で「特に美味いビール」とまでは言わないが。
 コクや程良い苦味がある上に、スッキリして嫌味が全く無い、かなり出来の良いビールと言えよう。
 とにかく驚くほど嫌味が無く飲みやすい、それでいて飲みごたえもそれなりにあるビールだった。

 筆者はエビスは好きだが。
 その通常のエビスより、今回取り上げた琥珀エビスの方が好きだし、良く出来ていると思う。
 これが限定販売というのが、少しもったいないような気がする。
 出来れば限定でなく、今後もずっと販売して貰いたいと思ったビールだった。

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サントリー期間限定“春いちご”と“桜さくらんぼ”

 この春、サントリーから期間限定のチューハイが出た。
 栃木産とちおとめ使用の春いちごと、山形産佐藤錦使用の桜さくらんぼである。
 どちらも缶の絵が春らしく、とても綺麗である。
 そして百円ちょっとと、値段も手頃である。

サントリー・春いちご等P1110299

 で、主に缶の絵に惹かれて買ってみたようなものだが、まず春いちごの方から飲んでみた。
 グラスに注ぐと、実に美しい桜色に驚かされる。
 とは言え、それはいちごそのものの色ではなく、野菜色素と紅花色素によるものだが。
 ただ作りモノの色とは言え、合成の着色料によるものではない事だけは評価しても良かろう。

 さて、味だが最初の一口は甘すぎず、そして確かにいちごの味も感じる。
 ただ続けてゴクゴク飲んでいると少し甘すぎるように感じてきて、そして味もどこか作りモノっぽい部分も感じてくる。
 それもその筈、これにはいちごとスピリッツの他、甘味料(アセスルファムKおよびスクラロース)と酸味料と香料がバッチリ入れられている。
 だからいちごの味はするものの、それは香料や甘味料や酸味料によって作られた部分が多く、「なるほど栃木産とちおめの味だ!」と感じる部分はまず無い。
 はっきり言って、栃木産とちおとめで無く、他のどの苺を使用しても同じ味になったと思う。
 それでもあえて栃木産とちおとめを使ったのは、ブランド効果を狙ったと言うか、まあ飲み手の気分を盛り上げる為のものだろう。
 ついでに意地悪な事を言わせてもらえば、この春いちご、別に「栃木産とちおとめ百パーセント使用」と書いてあるわけでは無いから。
 他のいちごの中に、ちょこっと栃木産とちおとめを混ぜただけでも、「栃木産とちおとめ使用」と表示できるのである。
 だから「○○使用」と「○○のみ使用」は別だと見極める目が、消費者にも必要なのである。

 とは言うものの、この春いちご、果物の味のチューハイとしては決して悪くない。
 おなじみの「香料と糖類と酸味料で作ったチューハイ」の味だが、決して不味くはないし、とりあえず苺の味はするし、そして何よりも色がとても綺麗だ。
 お花見でもしながらこれを飲んだら、とても春らしい気分になれるだろう。
 取り立てて誉めるほど美味くはないが、百円ちょっとで買えるチューハイとしては悪くないと思う。

 そう、特に良くもないが缶チューハイとしては「悪くない」と言うのが、この春いちごの評価だ。
 限定出荷という事だが、これならラベルの絵を変え名称もただの“いちごチューハイ”として通年あっても悪くないと思う。

 とは言うものの、ウイスキーやビールや日本酒など普通の酒をいつも飲んでいる者には、このチューハイもやはり甘ったる過ぎる。
 最初の一口は良い。
 しかし飲み続けるうちに甘さが重くなってきて、飲み終えた後に残るのもやはり甘ったるさだ。

 逆に言えば、ウイスキーやビールや日本酒などを「苦い」とか「辛い」とか「キツい」とか感じて敬遠している、お酒を飲み慣れていない若い人達にはちょうど良いのかも知れない。
 アルコール度数も4%と控え目で、「ジュース気分で飲める軽いお酒」といったところだ。

 さて、もう一本の桜さくらんぼだが、グラスに注ぐとこちらも綺麗な桜色だ。そしてこちらも野菜色素と紅花色素で作った色だが、この桜さくらんぼの方が春いちごよりほんの少し色が淡い。

 ただ気になるのは、グラスに注いだ時から何か人工的な、塗料を思わせるような癖のある匂いがすることだ。
 筆者は以前、産地の知人に佐藤錦を一箱いただいてたくさん食べた事があるが。
 さくらんぼというものは、果物としては基本的に香りは少ない方だ。味もそれほど強くない。
 なのにさくらんぼらしい味と香りを、例の香料等で出そうとするから、何か妙な味と香りになってしまっているような気がする。
 甘さも、最初の一口からこちらの方が強く感じる。
 栄養成分の表示を見ると、エネルギーはどちらも100mlあたり50kcalで、桜さくらんぼの方が多く糖類を使用しているわけでは無いのだが。
 結局それだけ、さくらんぼの方がいちごよりそれらしい味と香りを出すのが難しかった、という事なのだろう。
 これはあくまでも、個人的な好みなのだが。
 日本酒やビールは苦手だけれどほろ酔い気分を楽しみたい人に、春いちごの方はお勧めできる。
 ただ桜さくらんぼの方は味と香りに癖があるので、ちょっとお勧めしたくない。

 ちなみに、このサントリーの期間限定の“春いちご”と“桜さくらんぼ”は、どちらも原材料名に「いちご」および「さくらんぼ」と書かれているが、果汁の使用割合が表示されていない。
 そしてその代わりに「-196℃」、「いちご浸漬酒使用」または「佐藤錦浸漬酒使用・桜リキュール使用」と書いてある。
 どちらも-196℃で粉砕した果実を漬けたスピリッツを使用したようで、だから果汁の使用割合は表示できなかったらしい。ただ、普通に果汁を混ぜたチューハイとの味や香りの違いは、残念ながら筆者にはわからなかった。

 何しろ筆者は、ホップをたくさん使った苦いインディア・ペールエールビールを美味しく飲めてしまうような人間だから。
 そのせいで、どんなチューハイも糖類を使用していると、「甘すぎる」と感じてしまう。
 だが「ビールは苦いから好きじゃない」という人達も確実に存在するし、そんな人達の為に、この春いちごのような甘いチューハイがあっても良いと思う。

 で、思ったのが。
 筆者自身はウイスキーはストレートで飲みたい人間で、日本で人気のハイボールは好きになれない。
 しかし「ビールは苦くて厭だが、甘ったるいチューハイも苦手」という人に、ハイボールはぴったりなのかも知れない。
 甘くも苦くもなく、食事と一緒にゴクゴク飲める。
 そういう意味でハイボールは好まれるのだなと、甘いチューハイを飲んでふと思った。

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クラフトラベル柑橘香るペールエール

 缶に大きな字で[Craft Label]と書いてある、不思議なビールが店頭にあった。
 その文字の下に“柑橘香るペールエール”とは書いてあるものの、メーカー名は見当たらない。

クラフトラベルP1100592

 で、缶の裏面には、こう書いてある。

ビールのある日々に、
新鮮な驚きと楽しさを。
そんな思いを込めた、ちょっと前向きで
ハレやかな気分になれるビールです。
フレーバーホップが織りなす
柑橘の香りと、
個性的なのに親しみやすい
味わいをお楽しみください。


 ……なかなか旨そうじゃないか。

 で、缶の横をよく見てみると、小さな目立たない字で「販売者:ジャパンプレミアムブリュー株式会社、製造者:サッポロビール株式会社」と書いてある。
 奇妙な事に、この販売者のジャパンプレミアムブリューと製造者のサッポロビールは、どちらも会社の所在地が「東京都渋谷区恵比寿4-20-1」になっている。
 ついでに言えば、製品についてのお問い合わせ先は販売者のジャパンプレミアムブリューでなく、製造元のサッポロビールお客様センターになっている。

 会社の所在地は同じなのに、なぜ販売元と製造元を分けなければならないのか、なぜ堂々とサッポロビールと大きく書いて売り出さないのか、そのあたりの事情はよくわからない。
 だがとりあえず、クラフトラベルとして売られているこのビールは、サッポロビールの製品である事は間違いないようだ。

 実は筆者は、缶の裏面の宣伝文句を見て「買って飲んでみよう!」と思った。
 これがサッポロビールの製品だと気付いたのは、家に買って帰って、缶の横の細かい字までとっくりと見てからの事である。

 このクラフトラベル柑橘香るペールエールのプルタブを開けた途端に、柑橘の華やかな香りがあたりに広がる。
 グラスに注ぐと、色はウイスキーのような美しい琥珀色だ。
 口をつけると、しっかりとした、しかし心地良いホップの苦味と香りを感じる。しかしただそれだけでなく、麦の甘味も感じる。
 コクがあり、ホップがただ苦いだけでなく魅惑的な香りと深い味わいを楽しめる。そして後味もとても爽やかだ。

 実はこの製造者がサッポロビールで販売者がジャパンプレミアムブリューのCraft Labelには、他にHello! ヴァイツェンというビールもあって、これもなかなかに旨い。個人的には、サントリーのプレミアムモルツ・香るエールより好きなくらいだ。
 で、この同じCraft Labelの柑橘香るペールエールとHello! ヴァイツェンを比べてみると、Hello! ヴァイツェンは苦味がほのかで甘く軽やかで、かつ香りも華やかで飲みやすい。それに対し柑橘香るペールエールの方がホップが効いていて正統派のビールにより近く、飲みごたえもこちらの方がある。
 しかしどちらにしろ、Craft Labelの柑橘香るペールエールとHello! ヴァイツェンはどちらもかなり出来が良く、ビールはゆっくり、じっくり味わって飲みたい筆者などは、「同じサッポロのヱビスより間違いなくこちらの方が旨いし、好きだ!」と思ってしまう。

 誤解しないでほしいが、ヱビスは国産の大手メーカーのビールとしてはかなり好きだ。
 しかしそのヱビスより、このCraft Labelの柑橘香るペールエールとHello! ヴァイツェンの方が美味しくて出来が良いと、筆者は個人的に思う。

 日本は蒸し暑いから仕方のない事なのかも知れないが、日本には「ビールは暑さをしのぎ喉の渇きを癒す為に、キンキンに冷やして喉越しでゴクゴク、プハーッと飲むもの」と信じている人が多すぎる。
 確かに暑い時には、筆者も軽めで安い新ジャンル酒をゴクゴク飲む事もある。
 しかし日本も熱帯ではないのだから、キンキンに冷やしたビールを喉越しで飲んで美味しいのは、夏から秋の初めまでのせいぜい四ヶ月くらいではないだろうか。
 冬には、この日本だって氷点下になるし、雪も降る。そんな時期に凍えながらキンキンに冷やしたビールを喉越しで飲んで、本当に旨いのかと筆者は疑問に思う。

 はっきり言うが、筆者は下戸だ。
 本当の話だが、日本酒を杯に一杯飲んだだけで顔が赤くなってしまう。
 よく、「健康に良い酒の適量は、ビールなら500mlで日本酒は一合、ウイスキーはダブル(60ml)で焼酎は120ml」と言われるが。
 筆者はそれだけ飲めばもう顔が真っ赤になり、足元も怪しくなってくる。そしてそれ以上飲むと、すぐ頭が痛くなってくる。
 その適量を超えて飲めば二日酔いになるし、二日酔いはとても苦しい。
 酒飲みの中には、「酒は飲んで吐いて強くなるものだ」という馬鹿がいるが。
 ほろ酔いの気持ち良さは、筆者にもよくわかる。
 しかし吐いて酷い頭痛に苦しんでまで酔っぱらいたい酒飲みの気持ちが、筆者には全くわからない。
 二日酔いに苦しみつつまだ飲む人を見ると、「オマエはマゾか?」と言いたくなる。

 そのくらい酒に弱いせいか、筆者は酒をゴクゴク一気に飲むのを好まない。
 だから大好きなウイスキーもストレートなどの濃い状態でチビチビ飲む事が多く、日本で流行っているハイボールはどうしても好きになれない。

 そういう人間だから、筆者は付き合いの飲み会で喉越しで飲むように作られた国産の大手メーカーのビールばかり飲まされて、ビールがずっと好きになれずにきた。
 特に国産の大手メーカーの、米やらコーンやらスターチなどの糖質副原料を混ぜ込んだビールなど、暑くて喉が渇いている時にキンキンに冷やして一気飲みするのでなければ、とても飲めないシロモノだ。
 喉越しが売りの副原料入りのビールを、少しぬるくなった状態で飲んでみてごらん。本当に不味いから。

 それが海外や日本の小さな会社が造ったエールビールを飲んで、「ビールって、こんなに香り高く味わい深くて美味しいものなのか!」と驚かされた。
 本当に良いビールは、キンキンに冷やすのではなく程良く冷たい程度で飲むと本当に美味い。
 ビールも含めて酒というものは、冷やし過ぎると香りが薄くなってしまうのだ。だから不味いビールはキンキンに冷やさないと厭な臭いと変な味が出て来てしまうし、本当に旨いビールは10~13℃くらいで香りが豊かになり、キンキンに冷やし過ぎるとせっかくの香りが台無しになってしまうのだ。

 筆者は酒に弱いから、後で苦しむとわかっていながら酔っ払うまで酒を飲むのは嫌いだ。
 良い酒を、ゆっくり、じっくり味と香りを楽しみながら、ほろ酔い程度に飲むのが筆者の流儀だ。
 だから日本の大手メーカーが作る喉越し重視の、味も香りも薄いビールをガブガブ飲むのも大嫌いだ。
 それだけに、このCraft Labelのように香り高く味わい深い、ゆっくり、じっくり飲んでこそ美味しいビールが、サッポロビールのような大手メーカーからも出された事を、とても嬉しく思う。

 まだ飲んでいないが、サントリーもプレモル香るエールの他に、CRAFT SELECTペールエールというのを出している。
 サッポロビールのCraft Label柑橘香るペールエールと同じで、これも「柑橘を思わせる爽やかな香りと心地よい苦味」が売りだと言う。

 暑い夏に喉が渇いた時の為に、喉越しで飲む従来の日本のビールがあっても良いとは思う。
 しかし日本もいつも暑いわけではないし、飲む人もいつも喉が渇いているわけではない。
 日本ではスーパードライのようなビールが人気だが、ビールの通にスーパードライは「最初の一杯こそ美味いが、二杯、三杯と飲むにつれて不味くなる」とも言われているわけを、日本のビール飲みにも少し考えてもらいたいものだ。
 いくら暑い夏でも、キンキンに冷えていないと不味くなるスッキリ系の薄いビールを、そう何杯も美味しく喉越しで飲み続けられるものではない。
 日本人もそろそろ「ビールは喉越しで、ゴクゴク、プハーッ飲むもの」という思い込みは捨てて、適度に冷やしたビールを、ゆっくり、じっくり味わって飲むことも知ってほしいと思う。

 ぬるめのビールというと、不味そうだと思う日本人は多いだろう。
 で、そのぬるめのビールを喉越しでなくゆっくり飲むなど、想像するだけでゾッとするというビール飲みが、日本には少なからずいるのではないだろうか。
 だが実は、本当に旨いビールはややぬるいくらいでより香り高く味わい深くなるのだ。
 暑くてしかも喉が渇いていれば、キンキンに冷やしてありさえすれば新ジャンル酒だって美味しく感じる。
 そのビールが本当に旨いかどうかは、ややぬるくなった時点で、喉も渇いていない状態でじっくり味わって飲んで初めてわかるのだと、筆者は思う。

 これは好みの問題だろうが、筆者は日本の大手メーカーの副原料入りのビールは「本当に不味い!」と思っている。
 だからサッポロやサントリーが、副原料を使わない香り高くて味わい深いビールを出してくれようとしている事を、心から歓迎したい。

 日本の夏は蒸し暑いとは言え、秋の半ばから春の終わり頃まではそう暑くはない筈だ。
 何故そんな時期にもビールはキンキンに冷やして喉越しで飲まねばならないのか、皆さんは不思議に思ったことは無いだろうか。
 麦芽とホップだけで造ったクラフト系のビールの多くは、喉越しで飲むには確かにやや重い。
 しかし喉越しで飲むには苦くて重いビールも、キンキンに冷やすのでなく程良く冷やせば香りも立つし、ゆっくり、じっくり飲めばまた違う豊かな味わいが感じられる筈だ。

 暑い夏はともかく、せめて秋の半ばから春の終わり頃までは、ビールをキンキンに冷やして喉越しで一気に飲むのは控えたらどうだろうか。
 あまり冷やし込まずに、ゆっくり、じっくり飲んで美味しいビールの存在を知ると、「ビールは暑い時に喉越しで飲んでこそ美味しいよね」などと言えなくなる。
 筆者は香り高く味の濃いエールビールを、真冬にも楽しんで飲んでいる。
 と言うより、「暑い時に喉の渇きを癒す為に喉越しで飲むなら、麦茶で充分」と思っている。

 それはともかく、販売者がジャパンプレミアムブリューで製造者がサッポロビールのCraft Labelは、ヤッホーブルーイングのエールビールにも負けない、なかなか良いビールだ。
 出来ればこれをうっかりキンキンに冷やして喉越しで一気に飲んだりせず、ゆっくり、じっくり味わって飲んでみてほしいデス。

 繰り返すけれど、「ビールはみなキンキンに冷やすもの」というのは間違いだから。
 キンキンに冷やすべきビールは、大手メーカーのビールに多いラガー系で副原料入りの、味も香りもライトなやつだけだ。
 香りの良さが特徴のビールをキンキンに冷やすと、その香りの良さが半減してしまいマス。
 エールビールなど、程々に冷やしゆっくりじっくり飲んでこそ美味しいビールもあるのだという事を、もっと多くの日本の人に知ってもらいたいと、切に願う。

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インドの青鬼の虜になる

 まず初めにお断りしておくが、筆者は酒は味と香りを堪能しつつゆっくり飲みたい種類の人間である。
 だから酒をろくに味わいもせず、一気にゴクゴク飲む事は好かない。
 それゆえ、日本で人気のハイボールもどうも好きになれない。
 ビールも日本流の「キンキンに冷やして喉越しで、ゴクゴク、プハーッ!」という飲み方には馴染めず、コクのある濃いビールを、10~13℃の(日本の感覚からすれば)ややぬるいくらいの温度で、ゆっくり、じっくり飲む事を愛している。

 それは蒸し暑くて喉がカラカラに渇いている時には、ビール類を日本流に喉越しで一気に飲む事もありマス。
 しかしその場合にも、飲むならば軽くて嫌味の無い上に廉価な新ジャンル酒に限っている。
 筆者は貧乏性なのだろう。
 350mlで二百円以上もする本物のビールを、ろくに味わいもせず喉越しで一気飲みする気には、どうしてもなれないのだ。
 暑い時に、ただ喉の渇きを癒す為に飲むなら、よく冷えた麦茶か炭酸水で充分ではないか。
 そしてその方が、コスト的にもずっと安くつく。

 そういう嗜好を持っているせいか、筆者は日本の大手メーカーが大量生産している、喉越し重視のピルスナータイプのビール類が嫌いだ。
 繰り返し言うが、これは筆者個人の好みの問題だ。
 その独断であえて言わせて貰えば、日本の大手メーカーの糖質副原料入りのビールは、筆者にとっては「不味くてどうしようもないモノ」でしかない。
 だから先週も、日本ではよく売れているというキリンの淡麗についてけなすような文章を書いた。

 だが職場の宴会などでは、まず間違いなくその種の副原料をたっぷり入れた喉越し重視の不味いヤツが、最初の乾杯の為の一杯として出て来る。
 大勢で飲みに行った時の、例の「とりあえず、ビール」というアレだ。
 そんな時には、最初の一杯には我慢して形だけ口をつけるものの、それ以上飲む気にはどうしてもなれない。

 職場の付き合いでの宴会などで、大手メーカーの麦芽をあえて減らして米やらコーンやらスターチやらを混ぜ込んだ、旨味が薄くてただ苦いだけの喉越し系のものを“ビール”と信じ込んでいた筆者の目を覚まさせてくれたのは、麦芽とホップだけで造ったドイツの本物のビールや、日本の個性あるクラフトビールとの出合いだった。
 そうした薫り高くコクのあるビールを、キンキンに冷やすのでなく適度にぬるくして、喉越しでなくゆっくりじっくり味わいながら飲む事を覚えて、筆者はビールを心から「旨い!」と思えるようになった。

 で、日本のクラフトビールの中では、筆者は軽井沢のヤッホーブルーイングの製品をこよなく愛している。
 主力商品のよなよなエールはもちろん、水曜日のネコ東京ブラックも大好きだし、そして限定商品の“僕ビール、君ビール”もとても美味しかった。
 ただ筆者は、インドの青鬼という製品だけはずっと敬遠してきた。
 何しろ缶の裏面の説明に、「驚愕の苦味」と書いてある。
 さらに「アルコール度が高く、ホップをふんだんに使った」ともあるし、店のPOPにも「くせになる強烈な苦さ」とも書いてある。
 そこまで「苦い、苦い」と書いてあるのを見て、つい長いこと手を出さずに来た。

インドの青鬼P1110095

 が、その驚愕の苦味というのが、どれほどのものか知りたい気持ちが湧いてきて、怖いもの見たさに似た気持ちで、つい一本買ってみてしまった。

 缶のプルタブを開けると、まずホップの強い香りが漂う。
 しかしその香りは決して不快ではなく、むしろ爽やかさを感じるくらいだ。
 グラスに口をつけると、確かに苦い!
 しかし決して嫌な苦味ではなく、クセになりそうな心地良い苦味だ。

 注意しておくが、このビール、日本流にキンキンに冷やして喉越しでゴクゴク飲むと、ただ強烈に苦いだけだ。
 コレを日本流に喉越しで一缶を一気に飲ませると、殆ど罰ゲーム用のシロモノになる。
 しかし冷蔵庫から出して缶のまま常温で10分ほど放置し、程良くぬるく(10~13℃)なってからグラスに注ぎ、ゆっくり、じっくり味わいながら飲むと、苦さと共にホップの香りとハーブ感ある爽やかさを、長く続く余韻と共に充分に味わうことができる

 このインドの青鬼は、缶の裏面に「驚愕の苦味と深いコク」と書いてあるが、確かにただ苦いだけでなくコクがあり飲みごたえ充分だ。
 そして苦さは強烈だが、その底にほのかな甘さすらある。
 驚愕の苦味と言うが、苦さに驚くのは最初だけで、慣れてしまえばただ心地良いだけになる。
 缶の裏面に「飲む者を虜にします」とあるが、確かにこれはクセになる味と香りだ。
 ホップの味と香りがとても心地良く美味しく、後味もとても良い。良質な苦味で、口の中がサッパリする。
 確かに苦いが、これは本当に心地良い苦味だ。

 苦いという宣伝にビビっていた筆者だが。
 しかし考えてみれば筆者はギネスのビールも好きで、それもギネスのただの生ビールより、エクストラスタウトのギネスの方がずっと好きだった。
 そのかなり苦い筈のギネス・エクストラスタウトが好きなのだから、インドの青鬼も好きになれて当然だったのだ。
 そのギネス・エクストラスタウト以上に、筆者はこのインドの青鬼の方が好きかも知れない。

 ギネスのようなスタウトビールの苦さは、主にローストされた麦芽の香ばしい苦味だが。
 しかしこのインドの青鬼の苦さは、ホップによるハープ感のある爽やかな苦味だ。
 このインドの青鬼は、インドへの長い過酷な輸送に耐えられるようホップを多く使い、アルコール度数も高めて造られたインディア・ペールエール(IPA)という種類のビールだ。
 このスタウトビールの苦さとは全く違う、強いが爽やかでサッパリした苦味と余韻は、ビールをゆっくりじっくり味わって飲むことを知っているビール好きをまさに虜にして、2本、3本と続けて飲みたくさせてしまう。
 インドの青鬼は、ホップの味と香りの素晴らしさを堪能し尽くせる逸品と言える。

 度数は7%と、普通のビールよりやや高い。
 しかし飲んでいる時にはそのアルコールの強さやキツさは殆ど感じず、飲み終えてから良いが回ってくる感じだから、そこは要注意だ。
 ホップの爽やかな味と香りの虜になって、つい飲み過ぎてしまわないように気をつけたい。

 ホップの味や質を売り文句にしているビールは、日本の大手メーカーのビールにも幾つもある。
 ただそのすべてが旨いわけではなく、「ただちょっと苦いだけかな」という程度で、味に深みやコクが欠けるものもある。
 いくらホップを売りにしていても、日本の大手メーカーのピルスナータイプのビールは、「やはり喉越しで飲む人達の為のものだな」と思わされるものばかりだ。
 そんな中でインドの青鬼は、ホップも間違いなく上等な物を使っている上に、エールビールの味わい深さも兼ね備えた本当に旨いヒールだと断言できる。

“魔の味”を知ってしまった
熱狂的ビールファンの為のビールです。


 缶の裏面には、そう書いてあるが。
 筆者もその“魔の味”の虜になってしまい、すぐにまた追加のインドの青鬼を買いに酒屋に走ってしまった。
 苦めのビールが苦手でなく、ホップの魅力をとことん味わいたい方は、是非このインドの青鬼を飲んでみてほしい。
 驚愕の苦味という売り文句に尻込みして飲まずにいると、このビールの旨さとホップの真の魅力を知らずに後悔することになりマスよ!

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