空と虹と恋と

 大好きな写真のこと、そしてゲームやコミックスの話から歴史&時事問題まで、思いつくまま雑多に語ってみたいと思っております。さらに筆者の度重なるイタい失恋話についても、どうぞ憫笑しつつお読み下さいまし。

クラフトラベル柑橘香るペールエール

 缶に大きな字で[Craft Label]と書いてある、不思議なビールが店頭にあった。
 その文字の下に“柑橘香るペールエール”とは書いてあるものの、メーカー名は見当たらない。

クラフトラベルP1100592

 で、缶の裏面には、こう書いてある。

ビールのある日々に、
新鮮な驚きと楽しさを。
そんな思いを込めた、ちょっと前向きで
ハレやかな気分になれるビールです。
フレーバーホップが織りなす
柑橘の香りと、
個性的なのに親しみやすい
味わいをお楽しみください。


 ……なかなか旨そうじゃないか。

 で、缶の横をよく見てみると、小さな目立たない字で「販売者:ジャパンプレミアムブリュー株式会社、製造者:サッポロビール株式会社」と書いてある。
 奇妙な事に、この販売者のジャパンプレミアムブリューと製造者のサッポロビールは、どちらも会社の所在地が「東京都渋谷区恵比寿4-20-1」になっている。
 ついでに言えば、製品についてのお問い合わせ先は販売者のジャパンプレミアムブリューでなく、製造元のサッポロビールお客様センターになっている。

 会社の所在地は同じなのに、なぜ販売元と製造元を分けなければならないのか、なぜ堂々とサッポロビールと大きく書いて売り出さないのか、そのあたりの事情はよくわからない。
 だがとりあえず、クラフトラベルとして売られているこのビールは、サッポロビールの製品である事は間違いないようだ。

 実は筆者は、缶の裏面の宣伝文句を見て「買って飲んでみよう!」と思った。
 これがサッポロビールの製品だと気付いたのは、家に買って帰って、缶の横の細かい字までとっくりと見てからの事である。

 このクラフトラベル柑橘香るペールエールのプルタブを開けた途端に、柑橘の華やかな香りがあたりに広がる。
 グラスに注ぐと、色はウイスキーのような美しい琥珀色だ。
 口をつけると、しっかりとした、しかし心地良いホップの苦味と香りを感じる。しかしただそれだけでなく、麦の甘味も感じる。
 コクがあり、ホップがただ苦いだけでなく魅惑的な香りと深い味わいを楽しめる。そして後味もとても爽やかだ。

 実はこの製造者がサッポロビールで販売者がジャパンプレミアムブリューのCraft Labelには、他にHello! ヴァイツェンというビールもあって、これもなかなかに旨い。個人的には、サントリーのプレミアムモルツ・香るエールより好きなくらいだ。
 で、この同じCraft Labelの柑橘香るペールエールとHello! ヴァイツェンを比べてみると、Hello! ヴァイツェンは苦味がほのかで甘く軽やかで、かつ香りも華やかで飲みやすい。それに対し柑橘香るペールエールの方がホップが効いていて正統派のビールにより近く、飲みごたえもこちらの方がある。
 しかしどちらにしろ、Craft Labelの柑橘香るペールエールとHello! ヴァイツェンはどちらもかなり出来が良く、ビールはゆっくり、じっくり味わって飲みたい筆者などは、「同じサッポロのヱビスより間違いなくこちらの方が旨いし、好きだ!」と思ってしまう。

 誤解しないでほしいが、ヱビスは国産の大手メーカーのビールとしてはかなり好きだ。
 しかしそのヱビスより、このCraft Labelの柑橘香るペールエールとHello! ヴァイツェンの方が美味しくて出来が良いと、筆者は個人的に思う。

 日本は蒸し暑いから仕方のない事なのかも知れないが、日本には「ビールは暑さをしのぎ喉の渇きを癒す為に、キンキンに冷やして喉越しでゴクゴク、プハーッと飲むもの」と信じている人が多すぎる。
 確かに暑い時には、筆者も軽めで安い新ジャンル酒をゴクゴク飲む事もある。
 しかし日本も熱帯ではないのだから、キンキンに冷やしたビールを喉越しで飲んで美味しいのは、夏から秋の初めまでのせいぜい四ヶ月くらいではないだろうか。
 冬には、この日本だって氷点下になるし、雪も降る。そんな時期に凍えながらキンキンに冷やしたビールを喉越しで飲んで、本当に旨いのかと筆者は疑問に思う。

 はっきり言うが、筆者は下戸だ。
 本当の話だが、日本酒を杯に一杯飲んだだけで顔が赤くなってしまう。
 よく、「健康に良い酒の適量は、ビールなら500mlで日本酒は一合、ウイスキーはダブル(60ml)で焼酎は120ml」と言われるが。
 筆者はそれだけ飲めばもう顔が真っ赤になり、足元も怪しくなってくる。そしてそれ以上飲むと、すぐ頭が痛くなってくる。
 その適量を超えて飲めば二日酔いになるし、二日酔いはとても苦しい。
 酒飲みの中には、「酒は飲んで吐いて強くなるものだ」という馬鹿がいるが。
 ほろ酔いの気持ち良さは、筆者にもよくわかる。
 しかし吐いて酷い頭痛に苦しんでまで酔っぱらいたい酒飲みの気持ちが、筆者には全くわからない。
 二日酔いに苦しみつつまだ飲む人を見ると、「オマエはマゾか?」と言いたくなる。

 そのくらい酒に弱いせいか、筆者は酒をゴクゴク一気に飲むのを好まない。
 だから大好きなウイスキーもストレートなどの濃い状態でチビチビ飲む事が多く、日本で流行っているハイボールはどうしても好きになれない。

 そういう人間だから、筆者は付き合いの飲み会で喉越しで飲むように作られた国産の大手メーカーのビールばかり飲まされて、ビールがずっと好きになれずにきた。
 特に国産の大手メーカーの、米やらコーンやらスターチなどの糖質副原料を混ぜ込んだビールなど、暑くて喉が渇いている時にキンキンに冷やして一気飲みするのでなければ、とても飲めないシロモノだ。
 喉越しが売りの副原料入りのビールを、少しぬるくなった状態で飲んでみてごらん。本当に不味いから。

 それが海外や日本の小さな会社が造ったエールビールを飲んで、「ビールって、こんなに香り高く味わい深くて美味しいものなのか!」と驚かされた。
 本当に良いビールは、キンキンに冷やすのではなく程良く冷たい程度で飲むと本当に美味い。
 ビールも含めて酒というものは、冷やし過ぎると香りが薄くなってしまうのだ。だから不味いビールはキンキンに冷やさないと厭な臭いと変な味が出て来てしまうし、本当に旨いビールは10~13℃くらいで香りが豊かになり、キンキンに冷やし過ぎるとせっかくの香りが台無しになってしまうのだ。

 筆者は酒に弱いから、後で苦しむとわかっていながら酔っ払うまで酒を飲むのは嫌いだ。
 良い酒を、ゆっくり、じっくり味と香りを楽しみながら、ほろ酔い程度に飲むのが筆者の流儀だ。
 だから日本の大手メーカーが作る喉越し重視の、味も香りも薄いビールをガブガブ飲むのも大嫌いだ。
 それだけに、このCraft Labelのように香り高く味わい深い、ゆっくり、じっくり飲んでこそ美味しいビールが、サッポロビールのような大手メーカーからも出された事を、とても嬉しく思う。

 まだ飲んでいないが、サントリーもプレモル香るエールの他に、CRAFT SELECTペールエールというのを出している。
 サッポロビールのCraft Label柑橘香るペールエールと同じで、これも「柑橘を思わせる爽やかな香りと心地よい苦味」が売りだと言う。

 暑い夏に喉が渇いた時の為に、喉越しで飲む従来の日本のビールがあっても良いとは思う。
 しかし日本もいつも暑いわけではないし、飲む人もいつも喉が渇いているわけではない。
 日本ではスーパードライのようなビールが人気だが、ビールの通にスーパードライは「最初の一杯こそ美味いが、二杯、三杯と飲むにつれて不味くなる」とも言われているわけを、日本のビール飲みにも少し考えてもらいたいものだ。
 いくら暑い夏でも、キンキンに冷えていないと不味くなるスッキリ系の薄いビールを、そう何杯も美味しく喉越しで飲み続けられるものではない。
 日本人もそろそろ「ビールは喉越しで、ゴクゴク、プハーッ飲むもの」という思い込みは捨てて、適度に冷やしたビールを、ゆっくり、じっくり味わって飲むことも知ってほしいと思う。

 ぬるめのビールというと、不味そうだと思う日本人は多いだろう。
 で、そのぬるめのビールを喉越しでなくゆっくり飲むなど、想像するだけでゾッとするというビール飲みが、日本には少なからずいるのではないだろうか。
 だが実は、本当に旨いビールはややぬるいくらいでより香り高く味わい深くなるのだ。
 暑くてしかも喉が渇いていれば、キンキンに冷やしてありさえすれば新ジャンル酒だって美味しく感じる。
 そのビールが本当に旨いかどうかは、ややぬるくなった時点で、喉も渇いていない状態でじっくり味わって飲んで初めてわかるのだと、筆者は思う。

 これは好みの問題だろうが、筆者は日本の大手メーカーの副原料入りのビールは「本当に不味い!」と思っている。
 だからサッポロやサントリーが、副原料を使わない香り高くて味わい深いビールを出してくれようとしている事を、心から歓迎したい。

 日本の夏は蒸し暑いとは言え、秋の半ばから春の終わり頃まではそう暑くはない筈だ。
 何故そんな時期にもビールはキンキンに冷やして喉越しで飲まねばならないのか、皆さんは不思議に思ったことは無いだろうか。
 麦芽とホップだけで造ったクラフト系のビールの多くは、喉越しで飲むには確かにやや重い。
 しかし喉越しで飲むには苦くて重いビールも、キンキンに冷やすのでなく程良く冷やせば香りも立つし、ゆっくり、じっくり飲めばまた違う豊かな味わいが感じられる筈だ。

 暑い夏はともかく、せめて秋の半ばから春の終わり頃までは、ビールをキンキンに冷やして喉越しで一気に飲むのは控えたらどうだろうか。
 あまり冷やし込まずに、ゆっくり、じっくり飲んで美味しいビールの存在を知ると、「ビールは暑い時に喉越しで飲んでこそ美味しいよね」などと言えなくなる。
 筆者は香り高く味の濃いエールビールを、真冬にも楽しんで飲んでいる。
 と言うより、「暑い時に喉の渇きを癒す為に喉越しで飲むなら、麦茶で充分」と思っている。

 それはともかく、販売者がジャパンプレミアムブリューで製造者がサッポロビールのCraft Labelは、ヤッホーブルーイングのエールビールにも負けない、なかなか良いビールだ。
 出来ればこれをうっかりキンキンに冷やして喉越しで一気に飲んだりせず、ゆっくり、じっくり味わって飲んでみてほしいデス。

 繰り返すけれど、「ビールはみなキンキンに冷やすもの」というのは間違いだから。
 キンキンに冷やすべきビールは、大手メーカーのビールに多いラガー系で副原料入りの、味も香りもライトなやつだけだ。
 香りの良さが特徴のビールをキンキンに冷やすと、その香りの良さが半減してしまいマス。
 エールビールなど、程々に冷やしゆっくりじっくり飲んでこそ美味しいビールもあるのだという事を、もっと多くの日本の人に知ってもらいたいと、切に願う。

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インドの青鬼の虜になる

 まず初めにお断りしておくが、筆者は酒は味と香りを堪能しつつゆっくり飲みたい種類の人間である。
 だから酒をろくに味わいもせず、一気にゴクゴク飲む事は好かない。
 それゆえ、日本で人気のハイボールもどうも好きになれない。
 ビールも日本流の「キンキンに冷やして喉越しで、ゴクゴク、プハーッ!」という飲み方には馴染めず、コクのある濃いビールを、10~13℃の(日本の感覚からすれば)ややぬるいくらいの温度で、ゆっくり、じっくり飲む事を愛している。

 それは蒸し暑くて喉がカラカラに渇いている時には、ビール類を日本流に喉越しで一気に飲む事もありマス。
 しかしその場合にも、飲むならば軽くて嫌味の無い上に廉価な新ジャンル酒に限っている。
 筆者は貧乏性なのだろう。
 350mlで二百円以上もする本物のビールを、ろくに味わいもせず喉越しで一気飲みする気には、どうしてもなれないのだ。
 暑い時に、ただ喉の渇きを癒す為に飲むなら、よく冷えた麦茶か炭酸水で充分ではないか。
 そしてその方が、コスト的にもずっと安くつく。

 そういう嗜好を持っているせいか、筆者は日本の大手メーカーが大量生産している、喉越し重視のピルスナータイプのビール類が嫌いだ。
 繰り返し言うが、これは筆者個人の好みの問題だ。
 その独断であえて言わせて貰えば、日本の大手メーカーの糖質副原料入りのビールは、筆者にとっては「不味くてどうしようもないモノ」でしかない。
 だから先週も、日本ではよく売れているというキリンの淡麗についてけなすような文章を書いた。

 だが職場の宴会などでは、まず間違いなくその種の副原料をたっぷり入れた喉越し重視の不味いヤツが、最初の乾杯の為の一杯として出て来る。
 大勢で飲みに行った時の、例の「とりあえず、ビール」というアレだ。
 そんな時には、最初の一杯には我慢して形だけ口をつけるものの、それ以上飲む気にはどうしてもなれない。

 職場の付き合いでの宴会などで、大手メーカーの麦芽をあえて減らして米やらコーンやらスターチやらを混ぜ込んだ、旨味が薄くてただ苦いだけの喉越し系のものを“ビール”と信じ込んでいた筆者の目を覚まさせてくれたのは、麦芽とホップだけで造ったドイツの本物のビールや、日本の個性あるクラフトビールとの出合いだった。
 そうした薫り高くコクのあるビールを、キンキンに冷やすのでなく適度にぬるくして、喉越しでなくゆっくりじっくり味わいながら飲む事を覚えて、筆者はビールを心から「旨い!」と思えるようになった。

 で、日本のクラフトビールの中では、筆者は軽井沢のヤッホーブルーイングの製品をこよなく愛している。
 主力商品のよなよなエールはもちろん、水曜日のネコ東京ブラックも大好きだし、そして限定商品の“僕ビール、君ビール”もとても美味しかった。
 ただ筆者は、インドの青鬼という製品だけはずっと敬遠してきた。
 何しろ缶の裏面の説明に、「驚愕の苦味」と書いてある。
 さらに「アルコール度が高く、ホップをふんだんに使った」ともあるし、店のPOPにも「くせになる強烈な苦さ」とも書いてある。
 そこまで「苦い、苦い」と書いてあるのを見て、つい長いこと手を出さずに来た。

インドの青鬼P1110095

 が、その驚愕の苦味というのが、どれほどのものか知りたい気持ちが湧いてきて、怖いもの見たさに似た気持ちで、つい一本買ってみてしまった。

 缶のプルタブを開けると、まずホップの強い香りが漂う。
 しかしその香りは決して不快ではなく、むしろ爽やかさを感じるくらいだ。
 グラスに口をつけると、確かに苦い!
 しかし決して嫌な苦味ではなく、クセになりそうな心地良い苦味だ。

 注意しておくが、このビール、日本流にキンキンに冷やして喉越しでゴクゴク飲むと、ただ強烈に苦いだけだ。
 コレを日本流に喉越しで一缶を一気に飲ませると、殆ど罰ゲーム用のシロモノになる。
 しかし冷蔵庫から出して缶のまま常温で10分ほど放置し、程良くぬるく(10~13℃)なってからグラスに注ぎ、ゆっくり、じっくり味わいながら飲むと、苦さと共にホップの香りとハーブ感ある爽やかさを、長く続く余韻と共に充分に味わうことができる

 このインドの青鬼は、缶の裏面に「驚愕の苦味と深いコク」と書いてあるが、確かにただ苦いだけでなくコクがあり飲みごたえ充分だ。
 そして苦さは強烈だが、その底にほのかな甘さすらある。
 驚愕の苦味と言うが、苦さに驚くのは最初だけで、慣れてしまえばただ心地良いだけになる。
 缶の裏面に「飲む者を虜にします」とあるが、確かにこれはクセになる味と香りだ。
 ホップの味と香りがとても心地良く美味しく、後味もとても良い。良質な苦味で、口の中がサッパリする。
 確かに苦いが、これは本当に心地良い苦味だ。

 苦いという宣伝にビビっていた筆者だが。
 しかし考えてみれば筆者はギネスのビールも好きで、それもギネスのただの生ビールより、エクストラスタウトのギネスの方がずっと好きだった。
 そのかなり苦い筈のギネス・エクストラスタウトが好きなのだから、インドの青鬼も好きになれて当然だったのだ。
 そのギネス・エクストラスタウト以上に、筆者はこのインドの青鬼の方が好きかも知れない。

 ギネスのようなスタウトビールの苦さは、主にローストされた麦芽の香ばしい苦味だが。
 しかしこのインドの青鬼の苦さは、ホップによるハープ感のある爽やかな苦味だ。
 このインドの青鬼は、インドへの長い過酷な輸送に耐えられるようホップを多く使い、アルコール度数も高めて造られたインディア・ペールエール(IPA)という種類のビールだ。
 このスタウトビールの苦さとは全く違う、強いが爽やかでサッパリした苦味と余韻は、ビールをゆっくりじっくり味わって飲むことを知っているビール好きをまさに虜にして、2本、3本と続けて飲みたくさせてしまう。
 インドの青鬼は、ホップの味と香りの素晴らしさを堪能し尽くせる逸品と言える。

 度数は7%と、普通のビールよりやや高い。
 しかし飲んでいる時にはそのアルコールの強さやキツさは殆ど感じず、飲み終えてから良いが回ってくる感じだから、そこは要注意だ。
 ホップの爽やかな味と香りの虜になって、つい飲み過ぎてしまわないように気をつけたい。

 ホップの味や質を売り文句にしているビールは、日本の大手メーカーのビールにも幾つもある。
 ただそのすべてが旨いわけではなく、「ただちょっと苦いだけかな」という程度で、味に深みやコクが欠けるものもある。
 いくらホップを売りにしていても、日本の大手メーカーのピルスナータイプのビールは、「やはり喉越しで飲む人達の為のものだな」と思わされるものばかりだ。
 そんな中でインドの青鬼は、ホップも間違いなく上等な物を使っている上に、エールビールの味わい深さも兼ね備えた本当に旨いヒールだと断言できる。

“魔の味”を知ってしまった
熱狂的ビールファンの為のビールです。


 缶の裏面には、そう書いてあるが。
 筆者もその“魔の味”の虜になってしまい、すぐにまた追加のインドの青鬼を買いに酒屋に走ってしまった。
 苦めのビールが苦手でなく、ホップの魅力をとことん味わいたい方は、是非このインドの青鬼を飲んでみてほしい。
 驚愕の苦味という売り文句に尻込みして飲まずにいると、このビールの旨さとホップの真の魅力を知らずに後悔することになりマスよ!

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キリン淡麗

 数年後に、ビール類の税が統一される。
 で、ビールが売れているアサヒとサッポロはそれを歓迎し、新ジャンル酒の金麦が売れているサントリーと発泡酒の淡麗が売れているキリンはそうでもないらしい事は、以前にも書いた。

 実は筆者は、発泡酒というものに殆ど興味が持てず、飲もうとも思えなかった。
 味ならば麦芽の使用率が高い本物のビールの方が良いに決まっているし、安さなら新ジャンル酒の方に分があるからだ。
 が、キリンでコレが売れていると言うならば、一度飲んでみねばなるまいと思って買ってみた。

キリン淡麗P1110153

 グラスに注いでみたが、香りは取り立てて言うべきものは無い。良くも悪くもなく地味、と言ったところか。
 グラスに口をつけてみると、飲みやすくグイグイいける。
 しかし“淡麗”と言うより、味にコクと深みがないと言った感じだ。
 そのくせビールの苦味だけでなく、渋味とイヤ味がある。
 飲んだ後に舌に変な苦味も残って、後味がよろしくない。

 キンキンに冷やして、喉越しで一気にゴクゴク飲むなら、それなりに飲めてしまう。
 しかしぬるくなればなる程、イヤ味が強く前面に出て来て不味くなる。

 この発泡酒、単に苦いだけでなく、麦芽を減らして糖質副原料を多く使ったビール類にありがちな、何とも言えないイヤ味がある。
 最近少しずつ飲まれるようになってきた、筆者も好きなエール系のクラフトビールとは真逆で、キリンの淡麗は、ゆっくりじっくり味わって飲めば飲むほど、変な不味さとイヤ味を強く感じる
 かと言って、キンキンに冷やして喉越しで一気に飲むなら、幾つかの新ジャンル酒の方が安い上にイヤ味も無くて飲みやすいくらいだ。
 はっきり言うが、期間限定販売だったサッポロの麦とホップ赤など、新ジャンル酒だったがキリン淡麗より間違いなく旨かった。

 ビールは基本的にキンキンに冷やさず、ゆっくりじっくり味わって飲みたい筆者としては、このキリン淡麗は不味いとしか言いようのない発泡酒だった。
 で、何故こんなモノが日本で売れているのが、筆者なりに考えてみたのだが。
 思うに、ゆっくり味わって飲むエール系のビールの旨さを知らず、「ビールは苦いもので、キンキンに冷やして喉越しで飲むべき」と信じている、昔ながらの日本のビール好きが、このキリンの淡麗を好んで飲んでいるのではないだろうか。
 うん、「ビールはほろ苦く、それをキンキンに冷やして喉越しで飲むもの」と思っている人達には、コレが美味しいのだろう。

 だがただ苦いだけでなく、コクがあり、ほのかな甘味やフルーティーな香りのある豊かな味のビールを、ゆっくり味わいながら飲む事を覚えてしまうと、麦芽を減らして副原料で補った痩せた味のビール類を喉越しで一気飲みする行為が、何とも馬鹿らしく思えてくる。
 このキリン淡麗は、本物のビールより数十円安いかも知れないが。
 しかし他の新ジャンル酒より数十円高いのもまた事実だ。
 こんなモノをキンキンに冷やして喉越しで一気に飲むなら、新ジャンル酒で出来の良いものを飲んだ方がマシだし、お金も無駄に使わなくて済むと思うのだが、日本では何故かこのキリン淡麗が売れている。

 キンキンに冷やして喉越しで飲むには悪くないが、ただ「飲みやすい」というだけで旨味を感じない上に後味が良くない。
 そしてゆっくりじっくり味わって飲めば飲むほど、不味くなる。
 個人的には、味わって飲むビールとは、まさに対極にあると思うのだが。
 しかし昔ながらの日本のビールを飲み慣れた人達には、ほろ苦いが(コクが無いゆえに)軽めで、喉越しでゴクゴク飲めてしまうこれが「旨い」のだろう。

 筆者であれば、キリンのビール類を飲むならもう少しお金を出してでも一番搾りを飲む。
 この淡麗と違い、一番搾りの方がずっと旨い上にイヤ味も無い。値段の差以上に味の差があると、筆者個人は思う。
 だから数年後のビール類の税額の統一に向けて、キリンは一番搾りなど本物のビールの製造に力を注ぎ、淡麗のような発泡酒など造るのはもう止めても良いのではないかと思ってしまう。

 値段も新ジャンル酒より高く、そして味も感心できなかった、このキリン淡麗だが。
 飲み終えたグラスに鼻を寄せて残り香を嗅いでみると、麦の甘さとホップの香りを確かに感じて意外に悪くないのだ。
 残り香は悪くないのに、じっくり味わって飲むとなぜ不味く、そして舌に残る後味も良くないのか、それが本当に謎だ。

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この真冬に、夏限定の“ほろよい涼みあんず”を飲んでみた

 家族が病人なもので、食材などの日々の買い物もほぼ筆者が受け持っている。
 近所にチェーン展開していて自社ブランド商品もいろいろと開発している大きめのスーパーもあるが、筆者はやや遠いが扱う食品はほぼ国産品という小さなスーパーを日々利用している。
 近所の大きなスーパーを利用するのは、小さなスーパーでは扱っていないものが欲しい時と、大きなスーパーに出店している百均ショップを利用する時だけである。

 で、その小さなスーパーにもお酒コーナーもあることはあるが、スペースは狭い上に品数も少なく、しかも値段も高めだ。
 そのスーパーは、食材に関してはかなりこだわりを持っているのだが。
 しかしお酒に関しては、金麦とかスーパードライとか角瓶とかの、ありきたりの売れ筋商品ばかりで、商品に対するこだわりは殆ど感じられない。
 ポリシーを持って国産の良いものを揃えている食材と違い、「どうしてもお酒が欲しい人の為に、とりあえず置いてある」という感じが見え見えだ。
 酒の専門店の価格よりかなり割高なロバートブラウン・スペシャルなど、店頭に長く置かれ過ぎて薄く埃を被っているし、チューハイなども去年の夏の限定商品がまだ平気で置かれていたりする有り様だ。

サントリー・ほろよい涼みあんずP1110179

 その中に、ほろよい涼みあんずを見つけた。
 例の、去年の夏限定商品の売れ残りである。
 それも1本や2本どころではなく、10本以上まだ売れ残っていた。
 今は真冬だというのに、その缶には夏祭りを思わせる花火や団扇の絵が賑やかに描かれており、その中に形だけ杏の絵があった。
 このあまりにも今の季節とのミスマッチ具合がおかしくて、ついその缶を手に取ってみた。
 赤く書かれた夏限定の文字も、涼みあんずという名前も、売れ残って真冬となってしまった今では、見るだけで寒々しい。
 そして缶を裏返すと、賞味期限は今年の5月になっている。
 この10本はある「夏限定」の「涼みあんず」、おそらくこのまま売れること無く、今年の夏を待たずに処分されてしまうのだろうな。
 そう思ったら何やら哀れな気がして、つい手に取った1本をそのまま買い物籠に入れてレジに行ってしまった。

 メーカーは筆者が好きになれずにいるサントリーだし、果汁も僅か2パーセントで、原材料を見ると糖類に酸味料と香料に加えてカラメル色素も入れられている。
 あんず果汁2パーセントって、350mlの缶に僅か7ccだよ?
 入れられている果汁など、ほんの形だけのものだ。
 缶には「あんずの甘酸っぱさが心地よい」と書かれているが、その甘酸っぱさは殆ど糖類と酸味料によるもので、香りも香料によるものだろう。
 だから去年の夏にも目にはしたものの、冷笑してスルーし、そのまま忘れ去ったのだろうと思う。

 だが真冬の酒コーナーに売れ残っている夏祭りを思わせる絵柄がもの悲しくて、1本だけつい買ってしまった。
 そのまま売れ残って廃棄されるのを1本だけ救うつもりで買ったので、正直、味には全く期待していなかった。
 別にあんずが好きと言うわけでもないし、糖類と酸味料と香料で味と香りを作ったニセの果物のチューハイがどんなものかは、およそ見当もついていたし。

 で、プルタブを開けてグラスに注ぐと、いかにも本物っぽいあんずの香りが広がる。
 飲んでみても、確かにあんずの味だ。
 糖類を入れてはいるが甘さは控え目で程良くベタつかず、酸味料による適度な酸っぱさと良くバランスが取れている。
 色はカラメル色素によるものだろうが、梅酒に似た感じで、あんずの雰囲気が良く出ている。
 メーカーが「あんずの甘酸っぱさが心地よい」と言う通り、程良く甘酸っぱく、そして後に果物(あんず)の味が残る感じで、意外に美味しく飲めた。

 誤解の無いように言っておくが、そこはあんず果汁2パーセントで、味と香りは殆ど糖類と酸味料と香料、そして色はカラメル色素で仕立てた缶チューハイだ。
 果汁を多く使っている缶チューハイとは違い、そこは作りモノっぽいチープさも感じる。
 飲んだ後のグラスも、ただ水で流して洗っただけではあんずの匂いが落ちずにしっかり残った。
 香料の匂いは本物の果物の香りよりずっと強いのだなと、変な所で感心してしまった。
 しかし糖類と酸味料と香料で殆どの味と香りを作った缶チューハイの中では、かなり上手にそれらしい味と香りに仕立ててあるのもまた事実だ。
 そしてまた何となく残る作りモノっぽいチープな味と香りが、夏祭りの屋台の食べ物とも良く合っているようにも思える。

 筆者はこの夏限定のほろよい涼みあんずを、真冬に、暖房の効いた部屋で飲んだのだが。
 缶の可愛い花火や団扇の絵を見ながらコレを飲んでいると、夏祭りの情景が自然に脳裏に浮かんできた。
 メーカーは「夏にぴったりの味わい」で、「ぜひ冷やしてお飲みください」と言うが、夏の夜に花火でも見ながら、屋台で出すようなものを食べつつこれを飲んだら、さぞ気分が出ただろうなと思った。
 真冬の寒い日にコレを買って飲んでみて、筆者は決して後悔しなかった。

 コレの売れ残りが、そのまま処分されてしまうのは惜しいと思う。
 けれど糖類や酸味料や香料で作ったややジャンクな味だけに、売れ残りを一人で買い占めて何本も飲む気には、とてもなれない。
 飲むにしても、1本か2本で充分だ。

 と言うわけで、去年の夏に限定販売されたほろよい涼みあんず、もし貴方の近くのお店に売れ残っていたら、良かったら1本、試しに飲んでみて下され。
 期待して飲むとガッカリするけれど、期待せずに飲むと案外悪くないのだ、コレが。

 ところで、缶チューハイのアルコール度は1%から9%程度まで様々あるが、このほろよいシリーズは3%と軽めの方だ。
 缶チューハイの売れ筋は、度数7~9%のストロング系だそうだが、筆者はストロング系の缶チューハイは好かない。
 何故ならストロング系の缶チューハイは、飲んでいてアルコールの刺激がツンツン来るからだ。

 ストロング系の缶チューハイを好む人は、ビールではもの足りず、酔えるまで飲むとお腹がガバガバになってしまうのだという。
 実は筆者は、ハイボールなら濃いめが好きだ。
 度数7%の普通のハイボール缶では薄すぎて全然もの足りず、度数9%の“濃いめ”として売られている商品でもまだ薄いと思ってしまうくらいだ。
 しかしストロング系の缶チューハイは、どうしても好きになれない。
 それはハイボールに使われているウイスキーは、とりあえず年単位で樽熟成してある為、濃いめでも炭酸で割ればアルコールの刺激が殆ど無くなるからだ。
 それに対し缶チューハイは、熟成など全くしていないスピリッツ(平たく言えば甲類焼酎)を使っているから、濃いめにするとどうしてもアルコールのイヤな刺激が出てくる。
 ストロング系の缶チューハイを好む人達は、糖類や酸味料や香料でも隠し切れないあのアルコールのツンツン来る刺激が気にならないのだろうかと、不思議に思う。
 ビールでは度数がもの足りなくてストロング系の缶チューハイを飲んでいる方は、是非ハイボールも試してみてほしいと思う。

 さらに言えば、筆者はウイスキーはハイボールでなくストレートで飲むのを一番好む。
 10年以上樽熟成した良質なウイスキーは、度数40%のものをそのまま飲んでもアルコールの強さが気にならない。
 しかし缶チューハイに使われるようなスピリッツこと甲類焼酎の安っぽく荒々しいアルコールの刺激は、希釈し度数7~9%にして更に果物の味と香りを付けてもまだ不快でならない。
 缶チューハイに使われている“スピリッツ”とは、そういうレベルのものなのだろう。

 で、アルコール度数3%のほろよいシリーズだが。
 この度数は、お酒に強くてなかなか酔えない人には、全くもの足りない度数だろうと思う。
 しかし筆者のような下戸にとっては、気分良く文字通りに「ほろよい」になれる、ちょうど良い度数なのだ。
 そしてストロング系ではもちろん、5%前後の缶チューハイでもアルコールのツンツン来るイヤな刺激と苦みをまだ何となく感じるが、3%となると殆どと言って良いほど感じなくなる。
 お酒っぼくなくてジュースのようで、本当に飲みやすいのだ、この度数3%の缶チューハイは。

 と言うわけで、下戸の筆者は度数3%の缶チューハイは嫌いではない。
 アルコールのイヤな刺激を感じる事なく、気持ち良く酔えて、アルコールに弱い者に優しいお酒だと思う。
 ストロング系の缶チューハイもあっても良いが、度数3%のライトな缶チューハイも無くしてほしくないものだと思う。

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濃姫の里隠し吟醸と清州桜酒造

 スーパーや量販店の酒コーナーに行くと、一合の紙パックで売られている安酒をよく見る。
 ある店で、その中に吟醸酒を見つけた。
 愛知県清須市の清洲桜酒造の、濃姫の里隠し吟醸というやつだ。

 アル添だが間違いなく精米歩合60%の吟醸酒で、なのに値段はワンカップより安い。
 安かったから、騙されたつもりで買って飲んでみたのだが、思ったより悪くなかった。
 で、今度は四合瓶のを買って、じっくり味わって飲んでみた。

清州桜隠し吟醸P1100965

 冷やで飲む日本酒は、筆者はいつもワイングラスで飲んでいるのだが。
 グラスに注ぐと、華やかで甘い吟醸香が心地良い。四合入りの瓶で買って値段は七百円もしなかったが、これは間違いなく吟醸酒だ。
 味も悪くはない。
「薄い」と言うか「スッキリした」と言うか微妙な部分はあるが、とても飲みやすくイヤ味が無い。
 口に含み、舌の上で転がしていると、適度な辛味と苦味、そして僅かな甘味を感じる。

 これは吟醸酒だがアル添だから、アルコールを加え水を足している分だけ薄まり、純米酒のようなふくらみや奥深さが味に欠ける点はある。
 しかしそれも「良質な純米酒と比べれば」という話であって、比べなければ気にせずスイスイ飲めてしまう。
 ちびちびゆっくり飲んでも美味しいが、純米でない分だけ軽さもあるのでグイグイたくさん飲めてしまいそうだ。
 値段は安いのに香り高くイヤ味なく美味しく、どんどん飲めるコストパフォーマンスの良い美酒だ。

 日本酒としての出来と味は、もちろん以前このブログに書いた会津の寫楽の方がずっと良い。
 しかし寫楽の値段は、この濃姫の里隠し吟醸の倍以上だ。
 それを考えれば、濃姫の里隠し吟醸は本当に良く出来た酒だと思う。

 ただ、プラス1.0という日本酒度にしては、辛さが少し気になる。
 数値的にはやや辛口という程度なのだが、甘さもあるのに舌に残るのは辛さだ。
 それはやはり、添加しているアルコールのせいではないだろうか。

 純米酒を飲み慣れた筆者からすると、アル添のこの濃姫の里隠し吟醸は、「スッキリした辛口」とも「ふくらみに欠け、アルコールの辛さのある」とも言える微妙なところがある。
 しかし香りは良いし、辛口で酸味も甘さもあり後口もキレも良く、値段を考えれば文句など言えない。

 人によっては、甘辛両方の味をしっかり感じる旨口の純米酒を「重い」と感じる方もいる。
 そういうスッキリした酒を好む方には、むしろ純米酒より美味しく飲みやすく思えるかも知れない。
 この濃姫の里隠し吟醸の売り文句は「フルーティーな香りと淡麗でスッキリとした上品な味わい」だが、その看板に偽りはない。

 この濃姫の里隠し吟醸を造っている清洲桜酒造は、一合入りの紙パックで百円前後の安い酒を主に造っている会社だが。値段の安さも大事だが、酒の造り手としてはせめてこのレベルの酒も売り出せねば、酒を造っていて楽しくなかろうと思う。
 濃姫の里隠し吟醸を知る人は、そう多くないだろうが。筆者としては、安くて良い酒だと自信を持って言える。
 特別に美味い酒ではない、しかし値段を考えれば充分過ぎるほど良い酒だ。

 で、つい調子に乗って、この清洲桜酒造の主力商品であろうと思われる、清洲城信長鬼ころしも飲んでみた。
 一合で百円前後、そして3リットルの紙パックでも千二百円を切る値段で売られている、文字通りの安酒だ。
 もちろんアル添だが、醸造用アルコールに加えて糖類と酸味料まで入れてある。
 筆者は以前にも、その種の酒を飲んでみた事があるのだが、あまりの不味さに一口で吐き出してしまった。
 その最低クラスの日本酒を、濃姫の里隠し吟醸を出した清洲桜酒造はどう造るだろうか。
 恐る恐る、試し飲みしてみた。

清州城信長鬼ころしP1100936

 例によってワイングラスに注いでみると、香りは(良くもないが)このクラスの糖類&酸味料入りの安酒としては悪くない。
 味も同様で、決して美味しいとは言えないのだが、これはとりあえず飲めてしまう。
 口に含むとまず苦味を、そして酸味と辛味を感じる。その辛さも添加されたアルコールによるもので、飲み下した後で舌がピリピリする。
 しかしそれでも、飲もうと思えば普通に飲めてしまうのだ。
 美味しいとは思わない。
 だが吐き出してしまいたくなるほど不味いとも思わない。

 アル添で、しかも糖類と酸味料も加えられているから、甘さも辛さも酸味も後から加えられたものの味が大きく影響している筈だ。
 なのに案外不味くなく、ベタつくこともなく、日本酒らしい味をとりあえずは保っている。
 美味いとは決して言えないが、安さを最優先した中で限界いっぱい良い酒を造るべく、メーカーはよく努力したと思う。
 他社の同クラス一合で百円の紙パックの酒は、筆者には不味すぎてどうしても飲めず、一口で吐き出してしまった。
 しかし清洲桜のコレは、一合を最後まで飲めた。
 美味いとは決して思わないが、味の点ではワンカップなど大手の他社のもっと高い普通酒と変わらないと思った。

 清洲城信長鬼ころしは、美味しい酒を少しずつ味わって飲みたい人には、もちろん全然向かない。
 しかし値段の安さを最優先して飲む人達に、少しでも気持ち良く飲んでもらえるように、メーカーは努力して造っていると思った。

 この清洲桜酒造は、ええなもという焼酎も一合の紙パックを百円前後で売り出している。
 安い焼酎と言えば、たいてい廃糖密から作ったアルコールを薄めた甲類焼酎だ。
 しかしええなもは、本格焼酎もブレンドした甲乙混和焼酎だ。
 ただこの“甲乙混和焼酎”というのがくせ者で、よく見ると乙類の本格焼酎は香り付け程度に、全体の10~20%程度しか加えられておらず、殆どがただのアルコールというまがい物が少なくない。
 しかし清洲桜酒造のええなもは、甲類と乙類を50%ずつ混ぜている。
 他の安い甲乙混和焼酎の中では、かなり良心的に造っている。

 もちろん、このええなもより、本物の本格焼酎の方がずっと美味い。
 しかし百円で買える焼酎としては、よく努力して造っているように思う。

 今回、筆者が取り上げた濃姫の里隠し吟醸を造ったこの清洲桜酒造は、「同じ質ならより安く、同じ値段ならより良いものを」というポリシーで頑張っているように思えた。
 何しろ第一に考えているのが安さだから、美酒の蔵元として有名になる事は無いだろうが。
 しかし安さを優先しつつ、その中で最大限に品質も保つべく努力している清洲桜酒造のような会社もある事も、酒好きの人達に知ってほしいと思う。

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ザ・モルツとサントリーのビールについて

 ビールと発泡酒と新ジャンル酒に分かれていたビール類の税金が、将来的に統一されることになった。
 この事をアサヒとサッポロは歓迎し、新ジャンル酒などの売り上げが大きいサントリーとキリンは困惑していると聞いた。

 新ジャンル酒の売り上げに頼らねばならない程、サントリーのビールは不味いのだろうか。
 そんな疑問を持って、サントリーのビールの基本であろうザ・モルツを飲んでみた。

サントリー・ザ・P1100879

 プルタブを開けグラスに注ぐと、好ましい香りが漂うが、香り自体は比較的抑えめだ。
 味わいは軽いが、イヤ味は全く無い。程良い苦味だけでなく、よく味わえば麦の甘みもある。

 サントリーの二代目社長であった佐治敬三氏はすっきりしたビールを求め、そのため苦味とコクが求められた時代には、サントリーのビールは「水くさい」と言われたという。
 飲んでみて断言できるが、ザ・モルツは決して水くさくも水っぽくもない。
 香りは華やかではないものの、よく嗅げば甘い良い香りはするし、麦の甘さも程良い苦味もある。

 ただ気楽に喉越しでゴクゴク飲めてしまう軽さがあり、ビールにコクと飲みごたえを求める人は物足りなさを感じると思う。
 缶には「グッとくる‘うまみ’」とあるが、うまみとコクに関しては正直に言って物足りない。

 とは言うものの、ゆっくり、じっくり味わって飲んでも、やや薄く感じるものの‘うまみ’は間違いなくある。
 喉越しに飲んでも美味しいが、喉越しに一気に飲み干してしまうには勿体ない繊細で上質な味わいがこのビールにはある。

 じっくり味わうにはややもの足りず、一気飲みしてしまってはせっかくの‘うまみ’が充分に感じられない。
 じっくり味わうにも、喉越しで飲み干すにも、どちらにしてもやや中途半端に思える。
 ただこのビール、イヤ味というものが全く無いのだ。気持ち良くスイスイ飲めてしまうし、味わって飲めばそれなりに‘うまみ’も感じられる。
 このザ・モルツは「大好き!」と言う人と「嫌いだ」と言う人が分かれるタイプのビールではなく、ビールは喉越し派にも、じっくり味わいたい派にも嫌われない、万人向けの優等生的なビールに思える。
 実際、このビールを飲んで「不味い、嫌いだ!」と言う人は、まず居ないのではないかと思う。

 個人的に言えば、これより美味いビールは他にもっとあると思うし、数あるビールの中からあえて選んで買おうとするほどのものではないと思う。
 しかし宴席などで出されたら、喜んで飲みたいと思う。
 ザ・モルツとは、筆者にとってそんなビールだった。

 これが佐治敬三氏の求めた、すっきりしたビールなのだろうが。
 筆者個人の好みから言えば、ザ・モルツはやや薄味で、コクとうま味について物足りなく感じる。
 しかし同時に、驚くほど味に癖やイヤ味が無いのだ。
 これほど抵抗無くスイスイ飲めるビールは、そう多くない。

 ビールとしては、もちろんより高価なザ・プレミアム・モルツの方が、味も香りも強くて上等なのだと思う。
 しかし味わいが軽い分だけ、プレモルよりザ・モルツの方が飲みやすいという人もいるのではないかと思われる。

 また、同じビールでもアサヒのスーパードライなどの“日本人好みのビール”には、完全に「キンキンに冷やして喉越しで飲む専用」で、ぬるくなってきたり、ゆっくりじっくり飲んだりすると、途端に不味くなるものが少なくない。
 しかしこのザ・モルツは、少し薄味ではあるものの、ぬるくなっても、ゆっくりじっくり飲んでも嫌な味にならず‘うまみ’を感じられる。

 ビール類に関して、サントリーは新ジャンル酒の金麦に頼っている部分が大きいようだが。
 筆者も以前、金麦も飲んでみた。新ジャンル酒としては不味くは無かったが、非常に薄味な上に金属的な嫌な味もあり、決して好ましいものでは無かった。
 暑くて喉が渇いた時に、よく冷やして一気飲みするには良いが、とてもじっくり味わって飲めるようなシロモノではなかった。
 はっきり言うが、ザ・モルツと金麦の味(品質)の差は、値段の差よりも大きいと思った。

 だから筆者は、サントリーはもっと自信を持ってビールを造れば良いと思う。
 筆者はサントリーという会社に好意的でなく、このブログでもサントリーのウイスキーや赤玉ワイン等について批判ばかり書いてきたが。
 ただビールに関しては、サントリーの製品は決して悪くないと思う。
 今回取り上げたザ・モルツも、筆者の好みとは少し違うが良く出来た万人向けのビールだと思うし、ザ・プレミアム・モルツ香るエールは個人的にもかなり好きだ。

 麦芽とホップだけで造ったサントリーのビールは、製品については他の日本の大手メーカーに決して劣らない。
 だからサントリーのあの宣伝力を、金麦でなく本物のビールの方に向ければ、サントリーのビールはもっと売れるのではないかと思われる。
 少なくとも品質の点からみれば、数年後のビール類の税金の統一を、サントリーは決して不安に思うことは無いのではないかと筆者は考える。

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会津の銘酒“寫楽”を飲んでみた

 筆者は幼い頃から歴史、特に日本の歴史が好きで、それで大学も史学科に進学した。
 その事を知っている母の古い知人に、「歴史が好きなら、是非」と、寫楽というお酒を戴いた。
 会津若松の、純米酒である。

寫楽P1100969

 筆者は日本人だし、できる事なら日本酒を大好きになりたいのだが。
 ただ日本酒は美味いものと不味いものの差がかなりあり、当たり外れが甚だしい。

 無論、ウイスキーやビールやワインなどの他の酒でも、美味い不味いの差はある。
 しかし日本酒ほどその差が激しいものは、他に無いのではないかと思われる。

 何しろ日本酒には、戦時中の米不足により「三倍に薄め、アルコールや糖類や酸味料等を加えて増量したまがいものの酒を作ってきた」という歴史がある。
 そして酒を水増しし、アルコール等を加えて作れば儲かるという事を覚えた酒造会社が、戦争が終わり米が余るようになった今もなお、嵩増ししたまがいものの酒を作り続けている。

 例えばワインはどんな安物も葡萄のみで造られていて、水増ししてアルコール等で似せた味に作ったものなどあり得ない。
 と言うと、訳知り顔で「ポートワイン等の、発酵途中でアルコールを加えた一部のワインもある」と言う人が必ず出て来る。
 しかしその発酵途中で加えられるものはブランデーであって、日本のいわゆる“アル添酒”のようにただのアルコールを加えるのとは意味がまるで違う。

 残念ながらこの国では、水で嵩増ししアルコール等を加えたまがい物が日本酒として広く売られ、そして飲まれている。
 だから日本酒は、美味いものはとても美味しいが、不味いものはどうしようもなく酷い味だ。

 筆者が戴いた寫楽はとりあえず純米酒で、アルコールや糖類や酸味料を加えたその種のまがい物ではないが。
 しかし葡萄だけで造られたワインすべてが美味いとは限らないように、米と米麹だけで造られた日本酒も、純米だからといって美味いとは限らない。
 香りが良くなかったり、変に渋味が強かったりする、あまり美味しくない純米の日本酒も筆者は何度か飲んできた。

 だから寫楽を戴いた時、嬉しいのと同時に「これは困った」と思った。
 自分で金を出して買ったものなら、不味ければ「不味い!」と遠慮なく言える。
 しかし親の古い知人が、「歴史が好きな息子さんに」と好意でわざわざ会津若松から買って来て下さったものに、「不味かった」とは言えないではないか。
 もし不味くても、作り笑顔で「美味しかったデス、本当に有り難うございマシタ」と嘘を言わねばならぬのは心苦しい。

 だから「もし美味しくなかったら、何と嘘の誉め言葉を言おう」と半ばビクビクしながら飲んでみることにした。
 が、そんな心配は、全くの杞憂だった。

 キャップを開けた瞬間に、青リンゴを思わせるフルーティーな香りが優しく鼻孔をくすぐった。
 分類上は純米酒だが、注いだグラスに鼻を近付けて嗅げば、柔らかな吟醸香が間違いなくある。
 と言っても「華やかに立ち上る」というほど強いものではなく、心地よく穏やかな香りなので、食事の妨げになる事は無い。

 味も、ありがちな水のような淡麗辛口ではなく、甘辛のバランスの取れた、優しい、そしてふくらみのある豊かな味だ。
 口に含んだ瞬間、「少し甘いか?」と思うのだが、適度な辛さがそれを上手く抑え、程良い酸味がキレの良さももたらしている。
 じっくり味わえばほのかな苦味もあるが、それも決して不快なものではなく、雑味やイヤ味を全く感じない。

 これは本当に美味しい。
 香りはフルーティーだが食事の妨げになるほど華やかでなく、味は甘さも辛さもありふっくらと豊かで、酸味や苦味も程良く、バランスの取れた文句の付け所が全く無い銘酒だ。
 これより美味い日本酒は、筆者は七賢大中屋(純米大吟醸)以外に飲んだ事がない。

 筆者は酒を飲むくせにかなりの下戸で、杯に一杯か二杯飲むだけで顔だけでなく掌も赤くなってしまう。
 そんな有り様だから、空腹時に酒を飲むと350mlの缶ビール一本で足元が怪しくなるくらい酔ってしまう。
 だから筆者は酒は食事とは別に、食後に飲む事が多い。
 日本酒も、食後にゆっくり酒だけで味わっている。
 しかしこのふっくらと豊かで優しい味の寫楽を飲んで、「食中酒として飲んだら、さぞ食事を美味しくするだろう」と思った。
 事実ネットで見てみると、この寫楽の純米酒は地酒の専門店では食中酒として勧めている。

 この頂き物の寫楽純米酒だが、本当に良い酒だった。
 贈って下さった方に、義理やお世辞でなく心から「美味しかった、ありがとうございました」と言える事が、筆者としてもとても嬉しい。
 こんな良い酒を飲んで年を越し新年を迎えられる筆者は幸せだと、心から思う。

 遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
 新年という事で、当ブログも更新を暫くお休みさせていただきます。
 七日の土曜日よりまた駄文を書き連ねますので、今年もよろしくお願い致します。


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限定製造の、麦とホップ赤

 筆者はビール類なら、主に麦芽とホップだけで造られたビールを飲む。
 ただ風呂上がりや暑い時などに、喉の渇きを癒す為に飲むなら新ジャンル酒も悪くないと思う。
 その新ジャンル酒も様々で、どうも好みに合わず「まずい!」と思ってしまうものもあれば、値段の割には良く出来ていると思えるものもある。

 で、その新ジャンル酒の中で、筆者が最も良く出来ていると思っているのが、サッポロ麦とホップだが。
 先日、よく行く酒屋で見慣れない赤い缶の麦とホップを見かけ、迷わず買ってみた。

サッポロ・麦とホップ赤P1100889

 その麦とホップ赤だが、プルタブを開けた途端にホップの良い香りが漂ってくる。
 味も香りの良さに劣らず、本物のビールに近いコクと旨味を感じる。
 新ジャンル酒なのに、少しずつ、じっくり飲んでも悪くない。
 ただその分だけ、喉越しでグイグイ飲むと少し重い印象を受けるかも知れない。

 ドイツ産麦芽とバイエルン産ホップを一部使用し、ドイツのビール祭りで親しまれるスタイルを参考に作られたというが、本物のドイツ産ビールには及ばないものの、それにかなり近い味を低価格で実現している。
 これまでに飲んだ何種類かの新ジャンル酒の中で、個人的には一番美味いと思った。

 メーカーは「一口目の麦の甘み」「しっかりとしたコク」「美しい赤い色」を実現したと謳っているが、それはすべて真実だ。
 ゆっくり、じっくり飲んでも美味い。日本の一部のビール類にありがちな、金属的な嫌な味が全く無い、嫌味のない美味しい新ジャンル酒だ。
 筆者は好きだが、人によっては「苦いし、重い」とも言う。
 この麦とホップ赤は、ビールを味わって飲む人が安く気軽に楽しんで飲むもののように思える。一気にゴクゴク、プハーッとやりたがる、日本に多い喉越し派のビール飲みには、ちょっと合わないかも。

 もちろん、本物のドイツのビールにはとても及ばない。
 しかし本物のビールの約半分という値段を考えれば、充分過ぎるほどの味と香りだ。
 筆者ならば、国産の下手なビール(糖質副原料をゴチャゴチャ入れたヤツ)よりも、こちらの方を飲みたいくらいだ。
 安い値段で、ドイツのビール風の味と香りを出そうと頑張ったこの麦とホップ赤、限定製造だそうだから、興味のある方は酒屋にお急ぎを。

 と、麦とホップ赤を誉めて書きはしたものの。
 もしこれが、麦芽とホップのみで造られた本物のビールと同じ値段で売られていたら。
 その場合には、筆者も間違いなく本物のビールの方を選ぶ。
 良く出来てはいるが、これはやはり発泡酒をさらにスピリッツで割った新ジャンル酒で、麦芽とホップをたっぷり使った本当のビールには勝てない。
 ただ「値段を考えれば、本当に良く出来ている」ということだ。

 国は、近いうちにビールと発泡酒と新ジャンル酒の税金を一本化するという。
 もしそうなって、ビールと発泡酒と新ジャンル酒の価格差が縮まったとしたら。
 それでもなお、あえてビールでなく発泡酒や新ジャンル酒を選んで飲む人が、どれだけ残るだろうか。
 この麦とホップ赤も、「本物のビールの半額の新ジャンル酒としては」という前提で、特に良く出来ていると思うのであって。
 だから他の酒に比べて異常に高過ぎる日本のビールに対する税金が是正され、ビールと発泡酒と新ジャンル酒の値段に余り差が無くなれば、筆者はこの麦とホップ赤でなく、本物のビールを飲むと思う。

 ビール類に対する税が統一されたら、発泡酒や新ジャンル酒はやがて消え行くのだろうか。

 そんな事を考えながら、少し複雑な気持ちで麦とホップ赤を飲んだ。

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大関ワンカップは、本当に若者や外国人向けの“入門酒”になりうるか?

 毎日新聞には、ロングセラー商品の誕生からの歴史を紹介する『もとをたどれば』という連載記事がある。
 そこで先日、コップ入りの日本酒の代名詞のような、大関ワンカップが取り上げられていた。

ワンカップ大関P1100685

 記事によると、大関ワンカップは東京五輪開幕に合わせて1964年10月10日に発売され、今も年間五千万本を売り上げているそうだ。
 ちなみに“ワンカップ”は登録商標で、大関のみが使える名前だということだ。
 筆者も他社のコップ入りの日本酒をつい「○○のワンカップ」などと言ってしまうが、それは正式には許されない事らしい。

 話がそれたが、その大関ワンカップについての記事で、少し気になる事が書いてあった。
 大関ワンカップは、ラベルに“SAKE One CUP OZEKI”と英語で表記されているが、「若年層や東京五輪で訪日する外国人も意識して」のことだという。
 また、大関はワンカップについて、「清酒を手軽に飲める『入門酒』としてもアピールしたい」とも話しているそうだ。

 正直に言えば、筆者は大関ワンカップを軽く見ていた。
「どうせ、酒を飲まずにいられない飲み助の為の安酒だろう」と。
 だが、大関がワンカップを、日本酒をあまり飲まない若年層や外国人にもアピールしたい入門酒と位置づけているのであれば、メーカーも品質に自信を持っていて、味もそれなりに良いのであろうと思い、初めて買って飲んでみることにした。

 コップ入りの清酒だが、筆者はあえてワイングラスで味わってみた。
 香りは殆ど無いと言っても良いくらい穏やかだ。
 そして透明で殆ど色が無く、活性炭で濾過のし過ぎではないかと思われるくらいだ。

 醸造用アルコールで嵩増ししている、いわゆるアル添酒だけに、飲むとアルコールのピリピリする刺激を少し感じる。
 殆ど水に近いくらいの無色透明になるまで濾過されているだけに、個性や味わいは弱いが飲みやすいこともまた確かだ。

 活性炭による濾過は、酒の雑味を消す為に行われる。
 しかし活性炭は酒の雑味だけを取り去ってくれるような都合の良いものではなく、「雑味だけでなく旨味も消してしまう」というのが実態だ。
 この大関ワンカップには、その活性炭による濾過の影響がはっきり出ている。
 不味いとまでは言わないが、旨いとも決して言えない。

 日本酒の味は、「甘・酸・辛・苦・渋」の五つで表現される。
 大関ワンカップはその五つの味のどれも突出しておらず、あえて言えばまず“辛”と“酸”を感じ、次に“渋”を感じ、次第に何とも言えない“甘”を感じる。
 濾過のし過ぎで旨味が薄く、色も水に近いほぼ無色透明なのに後味がスッキリせず、飲んだ後に質の良くない安酒を飲んだ時のような不快感が残る。
 筆者の個人的な感想をハッキリ言ってしまうと、「我慢すれば最後まで飲めるが、美味しいとはとても言えない」というところだ。

 筆者は、同じくらいの価格帯の、同じアル添の地酒も飲んだことがある。
 静岡県の芝川の富士錦金印と、岩手県二戸市の南部美人だ。
 どちらも活性炭による濾過をあまりしておらず、ワイングラスに注ぐと酒の色がもっと黄色みを帯びていて、大関ワンカップより間違いなく味にふくらみと酒としての旨味があった。

 筆者はこの大関ワンカップを、税込みで227円で買った。
 それだけの金を出せば、キリン一番搾りやサントリーのモルツなどの本物のビールが買える。
 それを考えれば、大関ワンカップは割高だ。

 メーカーはこの大関ワンカップを、「若年層や訪日外国人の入門酒としてもアピールしたい」と言うが、日本酒を飲み慣れていない若い人や外国人が飲んで「日本酒って美味しいね!」と思うとは、少なくとも筆者にはとても考えられない。
 大関ワンカップを美味しく飲める人は、2リットルや3リットルの紙パック入りで千円前後の日本酒を普段から大量に飲んでいるような、本物の飲兵衛ではないかと筆者は推察する。
 そしてそのようにいつもお手頃価格の日本酒を飲み慣れている人が、ちょっと一杯ひっかけたい時に手軽に買うのが、この大関ワンカップだろう。

 繰り返すが、日本酒を飲み慣れていない若者や外国人に、濾過のし過ぎで香りも立たず旨味も少ない上に後味も良くないこの大関ワンカップを飲ませたら、むしろ日本酒は旨くないものという偏見や固定観念を植え付けてしまうのではないかと危惧する。
 この大関ワンカップは決して入門用の酒ではなく、日本酒を、それもお手頃価格の日本酒を飲み慣れている人の為の酒だ。

 しかしワンカップの180mlという容量は、ちょっと味見の入門の為には適していると思う。
 それで同じ大メーカーの180ml入りの日本酒を探してみたところ、月桂冠大吟醸と、日本盛純米吟醸cheers bottleを見つけた。
 値段はどちらも税込みで月桂冠の大吟醸が268円、日本盛の純米大吟醸cheers bottleが270円と、大関ワンカップと50円も変わらず、プレミアム系のビールを買うようなものだ。

月桂冠大吟醸P1100774

 さて月桂冠大吟醸だが、キャップを開けた瞬間に梨のようなフルーティーな香りが広がる。
 ワイングラスに注ぐと、色は大関ワンカップより黄色味を帯びているものの、かなり透明に近い。
 さすが精米歩合50%だけあって、税込み268円の酒とは思えないほど香り高い。
 味はスッキリしていて、酸味と苦みをまず感じる。
 よく「日本酒は甘くベチャベチャしているから嫌い」という人がいるが、一度この月桂冠の大吟醸を飲んでみてほしい。変に甘くなくサラサラしていて、昔の日本酒の厭なイメージを持っている人は、これを飲めば味の違いに驚くだろう。

 ただ残念ながら、大吟醸だがアル添なので、飲みやすいが味に深みとふくらみがやや足りないように思える。
 しかしその分だけ、軽くスイスイ飲めるという面もある。

 安酒の、嵩増しの為のアルコール添加は論外だが。
 ただ吟醸酒や大吟醸酒の場合、少量のアルコールを入れた方がよりフルーティーな香りを引き出せるとも言う。
 この月桂冠の大吟醸は、味の奥行きよりも香り高さを優先した酒と言えよう。

 筆者のようにある程度日本酒も飲んでいる者は、「香りは良いが、味が少し痩せている」と思ってしまう。飲んだ後に、舌に僅かに渋みと辛さが残るのもやや気になる。
 しかし税込みで268円という値段を考えれば、文句を言う方が贅沢というものだろう。
 それに若者など日本酒を飲み慣れていない者にとっては、その味の軽さを「飲みやすい」と感じるかも知れない。
 淡麗辛口がブームでもあるし、水のようにサラサラした酒を良しとする人には、きっと喜ばれるだろうと思う。
 フルーティーな香りが高く、サラリとして飲みやすく、これぞ日本酒の入門用として、若い人や外国人に勧めたい酒だ。

 ただ一言、瓶の上に付いている小さな杯だが、あれは可愛いが実際に使って飲んでは駄目だ。
 筆者も試しに付いている杯でも一杯飲んでみたが、杯の材質のせいか、プラスチックのような妙な臭いがして、せっかくの吟醸香を殺してしまう。
 こうした大吟醸酒は、ちゃんとした杯かワイングラスで飲むべきだ。
 もしどうしても付いている杯で飲むなら、そのまま飲まず、一度よく洗ってから飲んでみると良い。そうすれば、気になる臭いが取れる。

日本盛純米吟醸P1100769

 最後に日本盛純米吟醸cheers bottleだが、「フルーティーな香り 豊かな米の旨み」と謳っているものの、吟醸香は程々だ。
 開封すればすぐに周囲に漂う……という程ではなく、「グラスに注ぎ、そのグラスの縁に顔を近づけると、爽やかなフルーティーな香りが鼻孔をくすぐる」という感じだ。

 香りは、月桂冠の大吟醸の方が間違いなく華やかだ。
 しかし味は、日本盛の純米吟醸cheers bottleの方がずっとふくらみがある。
 比べてしまうと、月桂冠の大吟醸が薄っぺらく感じてしまう。
 甘く、かつ辛い。
 しかもその辛さも、アル添のピリピリする辛さではなく、角のない自然な辛さ。
 口に含み、じっくり舌の上で転がしていたくなる良い味わい。
 月桂冠の大吟醸は、香りをより華やかにする為にアル添にしているのだろうが、日本盛の純米吟醸の方が酒として旨いと筆者は思う。

 グラスに注いでみた酒の色も、この日本盛の純米吟醸cheers bottleが3本のうちで一番濃い。
 活性炭の濾過が少ない分だけ、旨味も残っている。
 精米歩合も55%で、月桂冠の大吟醸と5%しか違わない。その精米歩合だからこそ、活性炭による濾過を過度に行わずとも雑味が無く、酒に旨味がしっかり残る。

 この味と香りで税込み270円と、プレミアム系のビールとほぼ同じというのは安い。
 これよりも美味しい純米吟醸酒は、もちろん他に幾つもある。しかしどれも、この日本盛の純米吟醸cheers bottleより間違いなく高い。

 税込みで268円の月桂冠の大吟醸と、270円の日本盛の純米吟醸cheers bottleは同じ店で買った。
 ほぼ同価格の2本の日本酒だが、日本酒を飲み慣れていない若者や外国人の入門用のお酒として、どちらも甲乙つけがたい。
 違いは、日本盛の純米吟醸cheers bottleに書いてある「フルーティーな香り 豊かな米の旨み」の一文だろう。

 月桂冠の大吟醸は淡麗辛口で、とにかく華やかな香りを立てることを第一に考えて造られている。
 味もスッキリしていて飲みやすいのだが、「フルーティーな香り最優先」という感じだ。
 それに対し日本盛の純米吟醸cheers bottleの方は、甘みも辛さもある旨口の豊潤な酒だ。吟醸香だけでなく、米の旨みも充分に引き出している。
 だから筆者は個人的に「日本盛の純米吟醸cheers bottleの方が、ずっと旨い」と思うが、その旨口で豊かな味を「重くて濃くてキツい」と感じる人がいるのもまた事実だ。

 で、大手メーカーのワンカップとそれに匹敵するような酒を飲んでみた結果だが。
 昔ながらの酒飲みで、お手頃価格のお酒をたくさん飲んでいる人には大関ワンカップ。
 香り高くフルーティーで、淡麗辛口のサラサラしたお酒が好きな人には、月桂冠の大吟醸。
 程々にフルーティーで、かつ豊かな旨みのあるお酒を飲みたい人には、日本盛の純米吟醸cheers bottleといったところだ。

 メーカーと大関ワンカップの愛飲者には申し訳ないが、日本酒を飲み慣れていない若者や外国人が大関ワンカップを飲んで「日本酒って、本当に美味いものなんだな!」と感動するとは、とても思えない。
 大関ワンカップを美味しく飲めるのは、多分いつも質より量でたくさん飲んでいるお酒好きだ。
 若者や外国人など日本酒の初心者に入門酒として勧められるのは、ほんの数十円しか値段の違わない日本盛の純米吟醸cheers bottleや月桂冠の大吟醸と思う。

 しかしスーパーのお酒コーナーや酒屋に多く並んでいるのは、大関ワンカップやそれ以下の安酒ばかりで、同じ180mlで本当に入門酒に向いていると思われる日本盛の純米吟醸cheers bottleや月桂冠の大吟醸は、一部のコンビニくらいにしか置いて無いのが残念である。
 日本盛の純米吟醸cheers bottleや月桂冠の大吟醸のような、良質で割安な日本酒の小瓶がもっと広く売られるようになれば、女性を含めた若者も、もっと日本酒を好きになるだろうに。
 大関もワンカップに、月桂冠や日本盛のような純米吟醸酒や大吟醸酒をラインナップに加えて広く売り出してほしいものだ。

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エビスとプレモルの黒ビールを、ギネスのエクストラ・スタウトと飲み比べてみた

 酒屋の店頭で、たまたまエビスプレミアム・ブラックとサントリーのザ・プレミアム・モルツ〈黒〉を見かけた。
 で、その国産大手メーカーの黒ビールを、世界の黒ビールの雄ギネスエクストラ・スタウトと飲み比べてみようと思い立った。

エビス・ブラックP1100703

 まずエビスプレミアム・ブラックだが、本当に色が濃い。グラスに注いでみるとコーヒーより濃い感じで、殆ど黒に近い色をしている。
 苦みは割とあるが、ローストした麦芽のそれと言うより、ホップが効いているという感じだ。
 しかしその苦さも決して不快なものではなく、「力強く、かつ美味しい」と言える範囲内だ。
 味も香りもあまり繊細なタイプではないが、コクがしっかりある。
 苦さの中に酸味もあるという感じだ。
 基本的にはあまり急がずじっくり飲むビールだと思うが、よく冷やしてゴクゴク飲んでも悪くない。

 ギネスのエクストラ・スタウトと比べると、ギネスの方がローストした麦芽の風味が強い。
 が、飲み比べるとエビスの方がコクがあり、ホップの苦みも強いのがよくわかる。その分だけ、ギネスの方がスイスイ飲みやすいと言えるかも知れない。
 逆に言えば、エビスのプレミアム・ブラックの方がより味わい深い印象もある。

 これは筆者の注ぎ方の問題かも知れないが、泡はギネスの方が細かくクリーミーだった。

サントリー・プレモル黒P1100762

 さて、続いてザ・プレミアム・モルツ〈黒〉だが、これはプルタブを開けグラスに注いだ時から爽やかな香りがする。僅かながら、フルーティーさも感じる。
 ただその分だけ、ローストされた麦芽の香ばしさやホップの苦みも、3種の黒ビールの中で最も弱い。

 しかし、だからこそ飲み比べた黒ビールの中で一番スムースに飲める。別に黒ビールが好きでない人でも、殆ど抵抗無く飲める筈。

 色はもちろん、コーヒーのような濃い色なのだが。
 しかし味と香りの点では、本格的な黒ビールと言うより「ちょっと苦めな良いビール」という感じ。
 黒ビールなのに、苦さだけでなく少しだがフルーティーさや甘さすら感じる。
 もちろん苦さは他のプレモルより強いのだが、後味は爽やかで、口の中に残る適度な苦みが心地良い。

 はっきり言うが、このプレモル〈黒〉は本格派の黒ビールと言うより、普通のビールが好きな人がちょっと趣向を変えて飲むのに良い感じだ。
 本格的な黒ビールが好きな人は「少し物足りない」と思うかも知れないし、普通のビール好きは「少し苦いかな」と思うかも知れない。
 しかしこれを飲んで「まずい」と言う人は殆どいないと思う。
 やや中途半端と言えなくもないが、黒ビールらしい味わいだけでなく、普通のビールとしての美味さもあるからだ。

 コクやローストされた麦芽の香ばしさを求める人には、エビスのプレミアム・ブラックやギネスのエクストラ・スタウトの方が向いている。しかしどちらも、好き嫌いがあり飲む人を選ぶはずだ。
 それに対しプレモルの〈黒〉は、全てのビール好きに勧められる出来の良さがある。
 意地の悪い言い方をすれば、プレモルの〈黒〉は熱心なファンを持つというより、嫌う人は少ないだろうというビールだ。

 ギネスのエクストラ・スタウトやエビスのプレミアム・ブラックは、黒ビール好きの為の黒ビールという印象だ。
 それに対しプレモルの〈黒〉は、本当の黒ビール好きにはやや物足りなさがある。黒ビールとしては、もう少しコクや麦芽のローストした感じがほしい。
 しかしこの限定醸造のプレモルの〈黒〉が、「ビール」しては出来が良く美味しいものであることには間違いない。

 国産の黒ビールと言えば、以前キリン一番搾りスタウトも飲み、その感想をこのブログにも書いた。
 麦芽をローストした香ばしさでは、今回取り上げた3種の黒ビールのどれよりも、キリン一番搾りスタウトが強い。
 ただ濃い色とローストされた麦芽の香ばしさに似合わず、意外に軽めの味わいでスッキリ飲みやすかった。だからこれも、プレモルの〈黒〉とは違った意味で黒ビール好きにはやや物足りなさの残る印象だった。

 で、エビスのプレミアム・ブラックにプレモル〈黒〉とギネスのエクストラ・スタウト、それにキリン一番搾りスタウトも加えた印象だが。
 しっかりした飲みごたえのある黒ビールが好きな方には、コクとホップの苦みが美味しいエビスのプレミアム・ブラックか、ローストされた麦芽の風味が生きているギネスのエクストラ・スタウト。
 黒ビールという事にこだわらず、ただ美味しいビールを飲みたい方には、プレモル〈黒〉。
 重いのは苦手だが、飲みやすく、かつローストした麦芽の香ばしさを求める方にはキリン一番搾りスタウトという印象だ。

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